新宿歌舞伎町の街歩き(リディラバスタディツアー)

  • 更新日: 2018/11/01

新宿歌舞伎町の街歩き(リディラバスタディツアー)のアイキャッチ画像

興味本位でのぞいたスタディツアー<新宿・歌舞伎町>の世界。 案内人の視点が加わって街じゅうがダンジョン化してみえた日。

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これは『FINAL FANTASY XIV』プレイヤーのCooley Geeが、好きを追って未知のコンテンツに突入するおはなしです。




 2018年10月7日(日)、<社会の無関心を打破する>をモットーに活動する『リディラバ』主催のスタディツアー『歌舞伎町で餃子を食べながら、出所者の再チャレンジについて考えるツアー』というコンテンツに突入してきた。

 未開のフィールドMAP埋めたがりの冒険者として気になったのは、このツアーに新宿・歌舞伎町の街歩きがなぜ必要なのか?という点だ。他の地域ではダメなのか?代わりがきかないのだろうか、と。ツアー概要をまとめると、

① 刑務所からの出所者がぶつかる困難やその対応策(就労支援)を学ぶ
② 歌舞伎町を街歩き。案内人・千葉龍一さんを通して新たな側面を知る
③ 出所者を雇用する「新宿駆け込み餃子」で昼食がてら質問タイム

……新たな側面。やはりここが肝なのではないか。気になって仕方ない。




 新宿駅・西口改札より出て徒歩数分の「新宿ぺぺ」にて集合。実は、仕事でもプライベートでも新宿周辺に来ることがあまりないので、「アルタ前」とか「世界堂」とかいわれても迷うレベル。いわゆる、パッとテレポするのに必要なエーテライトをひらいてない状態。

 何度か訪れているにも関わらず土地勘がつかめないのは、誰もが分かるはずの目印的なポイントをまったく押さえずに去ってしまうからで、風脈の開拓も長年ほったらかしにしているから広い視点でそのフィールドをざっと眺めることもできない。

 なので、JR山手線にのっていたらごく自然と視界に入っているヤツと分かった今だから恥ずかしいのは重々承知でいうが、メール案内で見た「新宿ぺぺ」という字面だけでどこのID(インスタンスダンジョン)だよ、と本気でおもっていた。



 スタディツアーという目的のもと、ガイドの掲げるプラカードのまわりにぞろぞろと集まってくる冒険者たち。みんなでまわるのはまちがいないのだけど、ほとんどが初見でお互いのことを知らない。

 ふと、MMORPG『DQX』(ドラゴンクエストⅩ)の初期をおもいだす。万が一、操作ミスで一緒にパーティを組んでいる誰かが「魔法の迷宮」(ダンジョン)を抜けてしまっても再び連れ戻しやすいように、攻略パーティを集めるときは分かりやすい場所を指定して集合をかける。そんな時代があったのだ。今でもそうする場合があるのだろうか。引退して『FFXIV』(ファイナルファンタジー14)の世界に飛び込んだので分からないけれど。

 オンラインゲーム上だと、わたしの全身装備をアナライズしているひとが、1人や2人いてもおかしくない状況だ。どれくらいの本気度でそのコンテンツに臨んでいるのか?が分かる。ただ、リアル世界では格好だけではものごとの熟練度が分からない。

 わたしが防御力の低そうなラフな布切れを身にまとっているからといって、なめてかかっているわけではない。不夜城『新宿歌舞伎町』というID(インスタンスダンジョン)に突入するってのにアンタちょっとIL(アイテムレベル)低くない?みたいなギスギスは、起こらない(はずだ)。せいぜい、時間通りに来るタイプかどうかの判断くらいしかできない。



 刑務所からの出所者の就労をサポートする『新宿・駆け込み餃子』の、おもてがこんなかんじ。「再チャレンジ支援機構協力店」という木の看板が玄関の右端に掲げられている。その名の通り餃子料理のお店だ。お酒もある。

 出所者にとっては、従業員やお客さんとのコミュニケーションをとりながら働ける職場が生き直しに大切な環境になるという。

 なぜ、この店舗が選ばれたのか、なぜ餃子なのか、実際どれくらいの人を支援してきたのか、出所後の困難とはなにか、実際の再犯率はどうか、立ち直りに必須な条件とは、といった質疑応答もあった。ツアー参加者がどんなことを知りたいかで、巻き起こる議論も変わる場だ。気になるかたは、次回の『歌舞伎町で餃子を食べながら、出所者の再チャレンジについて考えるツアー』開催を待とう。参加希望者が多いと日程が再調整され募集がはじまる仕組みとなっている。



 スタディツアーの案内に、

 「歌舞伎町のまち歩きで様々なマイノリティの暮らしに出会う。」

 という一文があって、それに目がいった。マイノリティと聞くと、わたしの場合パッとおもい浮かべるのはLGBTQ(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、ジェンダークィア)だ。わたし自身もやんわりそれをうち明けながら暮らしている当事者だが、そうか、別の立場でそれを背負って生きにくさをかんじている人もいるのかなんて今さらのようにハッとした。



 壁に大きな龍の描かれた場所。一見なにも考えず素通りしがちな公園だが、歌舞伎町にこんなところあったんだ、なんておもいながら案内人:千葉龍一さんのガイドに耳を傾ける。ここでは深く触れないが(ツアー元に丸投げ)、「えっ」とか「んっ」とか「おぅ…」とか、冒険者たちの声のトーンが1段下がったのは分かった。社会史・風俗史の観点で観光が進むわけだけど、新宿をあまり知らない人にとっては「そういう視点で見たことなかった」という感想になるとおもう。「あんまりじろじろみないようにさらっと確認してくださいね」と言われながらの街歩きなんて、そうそうない。



 新宿『TOHOシネマズ』のゴジラ。毎日9回、昼12時から1時間ごとにあのテーマ曲が流れ、吠える。周辺をうろうろしているだけで時々ゴジラの叫び声がきこえるのだから、こわい。新宿は、なぜこんなにもコワモテな存在をよせ集めるのだろうか。

 旅行カバンをごろごろ引きながら歩く人々が、ところどころ立ち止まって、スマホやカメラを向けている。そういえば歌舞伎町の薬局の店頭になぜかキャリーケースがさらっと売られているのを見かけるが、旅行客なら元々持ってきているだろうし、誰に需要があるのだろう。

 そんなことを考えていたら、あとになって案内人の千葉さんがぽろっと「ケースを持って歩いている子をあちこちで目にするとおもいますが、実は、家出少女なのに観光客だと自称する子もいなくはない」。だからあんな店頭の目立つところに置いてあるのかどうかはさておき、なんとなくの違和感がそれで少し解消された気がした。





 繁華街のビルの並びやラブホテル街に、よく見るとレンタルオフィスやレンタルルームがちらほら見える。風俗業の出張ヘルス(デリヘル)がそこを活用しているケースもあるようだときいて、改めて街中を見渡す。これといって気にしていなかった風景が、ビビットになっていく。じぶんの知りえない事情があるのではないかと、テナントの隅々まで見逃せない。

 観光スポット巡りではない、街の知られざる側面を教えてもらうツアーだったが、フィールドにいる人々の話を聞くたび1つ1つの物件に意味が加わり、物語がうまれるような、ふしぎなかんじがした。

 このルートでは、性を売る彼女たちの暮らしが犯罪とまったく関わっていないとは言い切れない、というのを伝えたかったのだとおもう。事実、ツアーでは出所者である竹田淳子さんからその点に触れた深いお話を伺うことにもなった。犯罪に手を染めた背景にどんなリアルがあったのか、立ち直るきっかけは何だったのか、どうしてそれを語る立場になったのか、など。



 案内人・千葉龍一さんの設立した『株式会社 生き直し』玄関。

 「社会生活が困難になった若者や矯正施設出所者、刑余者等に社会参加や復帰の機会を拡大することを目的とする」場所で、なかを見せてもらうと清潔感とあたたかみのあるオフィスだった。

 毎週土曜、『日本駆け込み寺パトロール』として20~21時までボランティアで夜まわりをしていて、多いときは約20名近くにものぼる参加者で歌舞伎町を歩いているという。わたしは今回、土地勘のない街でひたすら千葉さんを追尾していたので、フィールドMAPはひらいていくけど踏破した感は、正直ない。じぶんが今どのあたりにいるのかいまいちわからず、方向感覚もなくなるので、都合をつけてパトロールに参加するといいかも、とおもった。





 刑務所では、受刑態度のよい模範囚ほどさまざまな資格を取得する(あるいは、まじめに取り組むからそう判断される)が、それを出所後にきちんと活用できるかというと、そうとはいえないらしい。なかでの生活は規則正しく、できることもすべきことも決まっている。ゆえに、外に出ると一気にそれがなくなって、どうしていいか分からなくなる人もいるという。

 生活費がなく、働くためにハローワークまで行っても、家(住所)がなければ登録ができない。右も左も分からず身動きがとれなくなってしまう出所者のために、『生き直し』がある。

 比べようのないことではあるが、『FINAL FANTASY XIV』のエオルゼアというはじめての世界で迷子になっているわたしを導いてくれた熟練タンクをおもいだす。茶化しているわけではない。サポートの仕方を知っている人が、なにも知らない人の手をひいて正しい方向に導く行為って、どこでだって尊い。むろん、やめようとおもえばやめられるゲームと違って、人生はそう簡単に諦めたくはないのだけど。





 歌舞伎町2丁目商興会と大久保公園の名称入りフラッグ。うっかりすると、本当にしょっちゅう迷子になるので、この旗がみえているあいだはこの道を歩いている、みたいな目印になるものを探しておく癖がある。スマホ持ってるならGoogleマップで調べたら?というのは正論だけども、地図を読めない女というのはそんな文明の利器を一切うまく使えないのである。チョコボがほしい、リアルで。



 有名ホストクラブ『愛 本店』の見える街角と、道端の風景。どこに焦点をあてていいか分からずぼんやりしてしまうが、千葉さんの案内でピントが調整されていく。

 スマホのカメラ機能で撮影する習慣は、エオルゼアで目に映るものをスクショしてまわる癖と同じだが、さすがに何件ものラブホテルやホストクラブがある道でなにかを凝視しまくっていると怪しまれそうだ。と、言ってるそばからパトカーが。奥のほうまでゆっくり進んで路上駐車する。お巡りさんが出てきて職務質問を、いや、あれはいったい……。「恐らく薬物検査ですね」え、こんな真っ昼間から!? 本当に? 完全にたじろいでしまう。しかし、歌舞伎町がそういう街なのだということだろう(写真には写っておりません)。





 ヌードシアター『DX歌舞伎町』。

 「ステージに立つ女性はすごくきれいだよ、ショーは芸術的。だから、女の子だけで観に来るお客さんもいるよ」と、出所者としてスタディツアーに参加している竹田淳子さんが教えてくれた。Twitterで鑑賞者を「ゆる募」したくなる案件だ。初見未予習で見学パーティがいい。なんなら4人シャキらなくてもいい。でも、ソロだと怖気づく。なお、ヌードシアター(ストリップ劇場)という形式の店舗はこのあたりだと『新宿ニューアート』含め2店舗のみとなっているらしい。



 『新宿ゴールデン街・花園街』の看板。

 お店の名称が細かく記されている。テナントの移り変わりが早いと未更新の場合も。枠がピンクやグリーンで色違いに分かれている理由、その情報だけは本で読んだ覚えがある。だから驚かないけれど、約15年前、上京してはじめて知ったときは、そういうところだったのか!とふるえた。

 よかれとおもって先に攻略本に触れたはいいが、「難しそう」「じぶんには早い」「ソロじゃムリ」と尻込みしてしまうコンテンツがあるのと似た感覚で、新宿ゴールデン街もわたしにとっては敷居の高い場所だった。

 ちなみに、スタディツアーで知り得た具体的な回答をいろいろと隠しているのは、ここですべての攻略内容を載せたいわけじゃないからである。現地のバーで聞き込みをするか、ウェブで検索するか、本で読むか、次のツアーが開催されたとき知るかは、お任せしたい。







 バーの門は、じぶんの「スキ」というアンテナを張って叩く。

 新宿ゴールデン街を歩いているときなら、店主のもつ味が直接おじゃまするきっかけになる。しかし、普段から呑み歩く習慣がなくても、開かれるイベントから逆検索でバーを知ることがある。わたしはどちらかというと後者で、元々誰かのファンでその人が〇〇やるよ!というのを聞いてお店の住所をクリックする。ウェブサーフィンで冒険先を探して、現地にのりこむのもたのしい。



 「もし、新宿で銃撃戦があるとしたらこの通りかもしれない」

 って、言われなければそんな物騒さは微塵もかんじない。そういう現実味のなさがじぶんの暮らしの平穏さをあらわしているなあとおもった。このあと、再び『新宿・駆け込み餃子』に戻り、さらに詳しく『出所者の再チャレンジについて考える』会がひらかれた。スタディツアーにの参加するきっかけは、人それぞれ。わたしの場合は、出所者と新宿歌舞伎町とのつながりを街歩きから知るツアーであることに興味をもった。

 わたしはずっと、おいしい料理店があるとか、観たい作品を扱う単館映画館があるとか、インスタ映えするオブジェがあるとか、有名本の著者サイン会があるとか、じぶんが気になるコンテンツありきで街にアクセスすることが多かった。だから、特定の店のなかだけで勉強会をするのでなく、街全体を通して学ぶという、肌でかんじる旅だったのが刺激的だった。これを機にときどき新宿に通うようになったし、いいツアーだったなあ。






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Cooley Gee

ジャンルを問わず好奇心の赴くままにコンテンツへの「突入」「徘徊」「対戦」「攻略」をする人

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