無計画に松ぼっくりを拾いに行く

  • 更新日: 2019/06/25

無計画に松ぼっくりを拾いに行くのアイキャッチ画像

偶然見つけた松ロード

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トンネルマニアの息子がいま松ぼっくりに興味があって、よく拾ってくる。



松ぼっくりがなっているところを見たいと言い出したのでした。
えっ秋じゃないの、と言ったところ、松ぼっくりは出来るのに2年かかるらしく、通年枝の上になっている、だからいつでも落ちていると。
そうなの? 松ぼっくりって秋の季語じゃなかったっけ。
まあとにかく、どこかでそんな情報を得てきて、だから見たいと。

それで、近くの知らない家の庭に松があったなあと思って近くまで見に行ったのですが、松ぼっくりが全然なってなかった。主人の心が貧しいんだろうか。

じゃあ海へ行こうか、となりまして。

海岸沿いには防風林として松がよく植えてあるので、海へ行けばなんとかなるんじゃないかと。
そういえば僕の地元は、沼津から田子の浦港のあたりまで、10kmに及ぶ松原が伸びている。千本松原という名前のくせに、Wikipediaによれば実際には30数万本あるらしい。えっふつう名前のほうの数字を盛らない? これってたとえば鬼コーチが千本ノックやるぞ!って言って実際のところ30数万本打ってるみたいなことですよ。30数万本練習してること誇らないんだ!? そのコーチは確実に頭おかしいし、あと、高確率で優勝しそう。

まあ、名前がついた当時は、千がとてつもなく大きな数を表す言葉だったのかもしれない。
真面目な話、千ってすごいですよ。たとえば犬が千匹居たらすごい。ちょっと笑っちゃう。
今日は科学が発達したことで秒速30万キロとか6x10の23乗とかちょっと数字がインフレ起こしてるけど、改めて考えると千もすごい。千手観音。手が千本ある。すごい。千日手。同じ局面が繰り返され千日経っても勝負がつかない。すごい。千すごい。千のすごさを再認識していこう。

それはどうでもいいのですが、松原。
どうせなら行ったことのない海岸へ行くことになり、横浜を出発した我々は千葉の外房、九十九里浜を目指しました。
九十九。また大きな数字が出てきた。ただこれはどうやら正しい数字のようで、源頼朝が測量をして九十九里あったから、という説が有力らしい。百にしないところが好感持てますよね。

さて、九十九里浜。名前は聞くけど行ったことない場所の上位にずっとあった。まさか松が目的で行くとは思っていなかったけれど。有名な海岸だし立派な松原があるんじゃないでしょうか。下調べもせず、フワフワした期待だけで車を走らせること2時間。

果たして、松原が無かった。正確には、入れる松原が無かった。




松原があるべきラインに九十九里有料道路というのがずっと伸びていて、松原がなかった。
海水浴場に駐車して付近を探ってみたところ、有料道路の陸側にちょっとだけ松原があったけれど、育てている最中なのか、ヒョロヒョロの松たちが保護保護! 保護林! みたいな感じでガッチリ守られていて入れなかった。

こ、これが有名な九十九里浜???

まあ、ふつう海水浴場は松原に入れることを推してないからな。水質とか?


素晴らしい松原があった

結論を言えば、松原はあった。
九十九里有料道路が途切れたら松原が復活するんじゃないかというインテリジェントな予想のもと、有料道路が終わるまで南下したら、あっさり松原があって笑っちゃった。



マジの松原が出てきたし、松原を真っ直ぐ突っ切る舗装された道まであった。



県道の自転車道らしい。そんなのあるんだ? 県って自転車のこと気に掛けてるんだ?



整備はあまりされていなさそう。
自転車道とはいえ、僕らが歩いている間に自転車は1台も通らず、犬をつれたおじいちゃんが1人通りました。







目的であった、若い松ぼっくりも見ることができました。
まだ青い。



こっちは茶色いな。もうすぐ落ちるのかな。



ただ、よく見るとここも細い松が多い。
日本緑化センター 松再生プロジェクトによれば、戦時中は砂鉄の採取場として、終戦後は燃料源として伐採されてしまい、九十九里の松原は壊滅しているんだそう。
それで、若い木が多いんだと思う。
松ぼっくりも、ちょっと前に大洗で拾ったものよりも若干小さい気がする。これはそういう種なのかもしれない、よくわかんない。

まあとにかく、目的は果たしたし、もう帰っていいな、と思ったけどちょっとまわりをうろうろすることに。




僕の考えるアメリカ人の富豪の家の庭のイメージと完全一致するビューの公園がありました。




なんかしらんけどでかい花が咲いてたのも富豪っぽかった。




イノシシが出るの?
海属性で青色基調になってるちょっと強いイノシシでしょうか。




スカートだけ履くとかあるんだ。




公園にも松があったので、綺麗なのを選別して拾う。
前日の雨に濡れたまつぼっくりは"かさ"が閉じていて、一見みすぼらしいものが多かったけど、乾くとしっかり広がる。



こういうのは、かさが閉じた状態で挟まったあと、広がって抜けなくなったということかな。




ところでこのあたりは大原海水浴場と言うらしいですね。



アーチの端は曲がりすぎていて、「うそよこ」に読める。
「うそよこ」の意味はよく分からないけれど、なんとなく歓迎されていない感じが音から伝わる。



ご当地キャラ、詰め込みすぎではないでしょうか。
実際、この絵には何個の要素が入ってるんだろう。
見れば見るほど、もしかしたらこれも何か意味があるのでは、という疑いが出てくる。目は水饅頭なのでは、とか。




小学生の絵が橋に使われているけど白黒。
小学生の絵の魅力の大部分は、想定外の色味じゃない?




塩田川にかかる一路橋。
山本有三の小説「真実一路」に出てくる橋にちなんでつけられたんだとか。
真実一路。迷うことなかれ。道はひとつだ。



何故かは分からないけど、一路橋のすぐ隣に、塩田川を渡る全く同じ機能の橋があった。
全く一路ではない。


津々ヶ裏のトンネル

そのあと息子のライフワークであるところのトンネルを見たいということになり、ちょっと地図で確認したところ、海岸沿いにいくつかトンネルがあることが分かりました。
海そばに切り立った崖のような地形があって、海岸道路がそこを通過するために短いトンネルを掘らざるを得ない状況はよくあるけど、ここにもいくつかそういうのがあります。

その中でも「津々ヶ裏」という場所が行きやすそうだったので何気なく向かい、こぢんまりとした原っぱに車を停めました。
降りたときに目に入ってきた風景が絶景で参った。



あれ? 最高の概念かな?



夫婦石ってつけそう! って思ったら夫婦石という名前だったやつ。やつら。
大きい方の岩には草木が茂っている。
ああいうのって、もともと陸続きだったころの名残なのか、種が飛んだのか、どっちなんだろう。







波が生まれて消滅する様を無限に眺めていられる。








先ほどまで砂浜だった場所、気がついたらかなりの水量になっていた。
渦って怖いな。
息子のサンダルが持っていかれた。
どんどん沖へ引っ張られていったので無茶はやめて諦めたけど、大波が返してくれた。ありがとう。
ありがとうじゃないわ。盗るな。




南房総国定公園というのがあって、これは南房総の海岸沿いが広範囲に指定されているんだそう。灯台などが有名みたい。
ここ津々ヶ裏の海岸は波の音以外は本当に静かで、何も無くて、好きで来るか、僕らのようにたまたま来るか、そんな感じの。
釣りをしている人と、足を濡らすツーリング中のカップルと、岸壁に座って無言で海を眺めている、部活帰りの女子高生たち。
そこに居るみんなで、遠慮がちに海を共有している気分。

あとで調べたら、朝日の撮影スポットとして有名でした。ちょうどこの夫婦岩の間から太陽が昇るんだとか。
なんだそりゃ。是非見たいな。




目的のトンネルも良かった。
海岸すぐ脇にある、津々ヶ裏トンネル。
出口が見えるくらいの短さでかわいい。
手乗り感がある。



せり出した台地を楽に通りたいという願望のみで貫通させたに違いない、無骨なトンネル。
このトンネルの設計者は、ここに波の音がかすかに忍び込んでずっとこだますることを計算していたでしょうか。

大きなサーは今の波の音。小さなサーは一つ前の波の音。
波が引くときの小さな音かもしれない。
一つの波の音が、引き延ばされたり、縮められたりしてしているだけのようにも聞こえてくる。
そのうち、ああ、ここは時間の概念が無いのか、と納得しました。

前職で、めちゃくちゃ怒ってるお客さんの電話を深夜にうっかり取ってしまったときにもこの感覚を味わったことがあります。
あのときも同じ言葉がこだまして、時間が消えた。




このトンネルでスモールトリップを楽しんでいたところ夕方になってしまい、帰りに酷い渋滞に巻き込まれました。

帰りの車の中でもあの「サー」の音が薄くこだましていて、僕はまだきっとあのトンネルの中に取り残されているのだろうな、と思いました。

そのあとエフエム横浜を千葉で聞いていたからだと分かって、ラジオを止めた。







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ヤスノリ

サンポー主宰。最近おちつきがある。

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