高いところから見て気になったところへ行くさんぽ〜香川県宇多津編

  • 更新日: 2024/01/11

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ここから気になる建物を発見するぞ

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高いところから景色を眺めるとき、妙に気になる場所がある。変な形の建物だったり、屋上に文字が書いてあったり、あるいは不自然に緑が広がっていたり。見ているときは「なんだろう」と思うのだけれど、景色を見ているうちにそんなことは忘れてしまって、記憶から抜け落ちてしまう。

でも、もしかすると、そのときの「なんだろう」には、面白さがつまっているのかもしれない。
ならば、行ってみるしかない。高いところから見て気になったところへ。


香川県の宇多津というところ

今回やってきたのは、香川県の宇多津という町。いま、私は事情があって香川県の丸亀市にいるのだが、宇多津はその隣の町。


▲赤く囲んであるところが宇多津町。すぐ横に瀬戸大橋がある。海沿いの町なのだ

どうして宇多津なのかというと、これがあるから。



高い塔。
「ゴールドタワー」だ。瀬戸内海の海岸沿いに、すっくと立っている。写真だと光の関係で見えづらいのだが、塔全体が金色で、宇多津の近くを運転しているととても目立つ。近くにある瀬戸大橋からもよく見える。


▲遠くからでもよく見える

今回はこの上から下界を見下ろして、気になった建物のところに行ってみよう。


そういえば、高所恐怖症だった

ゴールドタワーの中には子どもが遊べる「プレイパーク」や瀬戸内の物産が置いてある土産物屋などが入っている。平日の昼間だったからか、人はほとんどいなくて、係員の人がぼんやりと座っていた。


▲ゴールドタワーの中

この奥に、展望台の入り口がある。展望台へのチケットは大人・1500円。チケットを買って奥に進む。ゴールドタワーは全部で5階建てだ。というと、「あの高さで?」と思う人がいるかもしれない。しかし、これにはトリックがある。


▲2階と3階の間がめちゃくちゃある

3階が119mなのだ。つまり、2階と3階の間がめちゃくちゃ空いている。実は、ゴールドタワーの金色の壁面の中にはぎっしり施設が詰まっているのではなくて、そのほとんどは空洞になっている。要するに、中身は普通の塔なのだが、その周りに壁が張り巡らされている。だから、エレベーターに乗ると、外の景色が丸見え。


▲見えてる〜!

というか、しまった。自分、高所恐怖症だった……。そのことに気付き、背中にじんわりと嫌な汗をかく。なんてことをしてしまったのだ……。
ゴールドタワーにテンションが上がって、自分を見失っていた。


▲エレベーターにある手すりをぐっと握る

いつも思うのだけれど、なんで手すりを握ってしまうのだろう。別にそれで何かが解決するわけでもないのに。なぜか怖さが解消されるのだ。

足を震わせながら周りを見渡すと瀬戸内の絶景。


▲向こう側には瀬戸大橋が見えるんだけどさ

のびのびと楽しめないんだよ。景色の素晴らしさと怖さのジレンマに陥りながら、エレベーターは高度を増す。


気になる建物を探すぞ

やっと上に到着。エレベーターとフロアの間に空いているちょっとしたスキマを見ないように「無」の状態でエレベーターを降りる。
降りた瞬間、キラキラした景色が目に飛び込んでくる。



ゴールドタワーの展望台は「ソラキン」といって、金魚の水族館と一体になっている。美しい金魚の水槽を見ながら瀬戸内の絶景が見られるのだ。




▲瀬戸大橋と同じ高さで金魚や海水魚が泳いでいる

数フロアにわたってさまざまな水槽と魚が泳いでいて、ついつい魚に見惚れてしまう。できることなら、これをゆっくり、ずっと見ていたいが、今回の目的は気になる建物を探すことだった。後ろ髪を引かれる思いで、本題に行こう。

さっそく周りの景色を見てみる。

いやあ、エレベーターの恐怖に打ち勝っただけのことはあった。ゴールドタワーからの眺めはすごくよい。この日は天気が良かったこともあって景色は最高。瀬戸内の島がよく見える。


▲香川の海には小島がたくさん浮かぶ。これがいわゆる「多島美」というやつだ


▲瀬戸大橋。香川県・坂出市から岡山県の児島までを結ぶ。宇多津町は坂出市の隣


▲真下に目をやると、不思議なプールが。

これは、2020年に開園した四国水族館である。プールのようなものはイルカの水槽で、下から見ると、まるで瀬戸内海まで水面が続いているように見える。


▲下から見るとこうなってます(四国水族館のホームページより)

内陸にも目を向けてみる。



赤い丸で囲んだのが、丸亀城。日本一石垣が高いお城として知られている。かつてのゴールドタワーみたいなものだろう。


▲ゴールドタワーの真後ろから

右下に見える工場のようなものは、イオンタウン宇多津。ショッピングモールの外観って無機質で、ちょっと好き。「はるやま」、とか「au」とかのロードサイド沿い巨大看板もここからだと小さい(画面中央左ぐらいにある)。

丸亀には祖父母が住んでいたこともあって、小さいときからこの周辺にはよく足を運んでいた。だからか、だいたいの建物がわかる。でも、気になるものを見つけた。


▲山の中に、なにか白いものがある


▲アップ。アンテナ?

アンテナ的ななにか。船の上に付いていそう。白い建造物は、黒い山の中でもひときわ目立っている。これはなんだろう。

さらに横を見ると、


▲山の中に白いなにかがある。パート2


▲アップ。宮殿?

同じように、白い建物で、今度は宮殿のようにも見えるなにかが山の頂上の方に突然姿を現す。これも気になる。

香川の山奥にある二つの白い建造物、妙に心を惹かれるぞ。これは行ってみなければなるまい。


白い宮殿の方へ

ゴールドタワーを降り(降りるときも震えてた)、二つの建物の大体の位置を特定して、その方向に向かって行く。幸い、二つとも山の中にあるから、山の方向がわかれば、だいたいの行き方はわかる。

まずはゴールドタワーからより近そうだと思われる「白い宮殿」の方に行ってみる。
宇多津から車を走らせ(散歩じゃないのでは?)、数分。例のブツがあると思しき山のふもとにたどり着いた。山に登る道にはこんな看板が。


▲「St.ANGELINA」という看板。なんでしょうか

気になりつつ、山道を登っていく。


▲どんどん登ります

すると、道の途中にこんな碑があった。


▲瀬戸大橋竣工記念碑

この山からの瀬戸大橋の眺めは絶景らしく、ここに記念碑があるらしい。知らずにきたが、なんだかすごそうな山だぞ。なんだろう、ここは。


▲山道を登っていくとこれまで二車線あった道路がとうとう一車線になる

いよいよ本格的な山道か、と思いきや、麓にあった看板がまたある。


▲「St.ANGELINA」。どうやら山頂にあるらしい。

登っていくと、山頂にやってきた。山頂はロータリーのようになっていて、真ん中に丸い山のようなものがある。車から降り、その周りを見渡すと、あった。


▲ゴールドタワーから見えてたの、これか?

麓からずっと看板があった「St.ANGELINA」。確証を得るため別の角度から見てみる。


▲別の入り口から見たもの。確かに、真ん中の三角形をした建物がゴールドタワーから見た通りだ

間違いない、これがゴールドタワーから見た、あの、白い宮殿の正体だ。「St.ANGELINA」。ここがなんのための場所なのか、そもそもなんと読むのかすらわからない。

結局調べてみることにした。この施設は「サン・アンジェリーナ」という結婚式場らしい。山の上で瀬戸内海を臨みながら結婚式を挙げるという趣向だ。


▲サン・アンジェリーナからの景色

ちなみに、結婚式場のすぐ隣には、古墳がある。これを「積石塚古墳」というらしいが、ロータリーの真ん中にある丸い丘は古墳だったのだ。



古墳はかつての権力者の墓である。墓場の横に結婚式場。ここで結婚した人は、仲良くこの墓に入るのかもしれない。サン・アンジェリーナには、そんな「墓場までプラン」が用意されるに違いない。この山頂に人生がある。

ちなみにこの山の名前は、「聖通寺山」といって、ふもとにある「聖通寺」というお寺からその名前が付いたそうだ。


▲古墳イメージに引っ張られてるわけじゃないけど、聖通寺山の山頂にめちゃくちゃカラスがいた。「魔の山」感がそこはかとなくある

というわけで一箇所目のポイントは制覇。「聖通寺山」にある結婚式場「サン・アンジェリーナ」でした。


白いアンテナの方へ

では、二つ目に行ってみよう。こちらもまた、山の位置を頼りに車を走らせてみる(やっぱり散歩じゃないのでは)。

先ほどの山を降りていくと、山名の由来になった聖通寺がある。


▲聖通寺の境内

さらに降りて、住宅街のようなところを抜けると、そこに神社もある。


▲中を見ると


▲ブランコ神社。神が遊ぶブランコ

そのまま進む。すると、二箇所目の山の方に近づき、またもや山道になる。さきほどまで市街地だったとは思えないほどだ。めちゃくちゃ細い道や荒地を通りながらとりあえず上に進んでいく。


▲こんな道を進んでいく


▲途中看板があって、ここが「青の山」という山であることがわかる

なかなか、あの、白いアンテナのようなものが出てこない。とりあえず山道を走らせる。だんだん、オフロードみたいになってくる。


▲さらっと「イノシシ注意!」

ちなみに瀬戸内海は最近よくイノシシが出没するそうで、泳いで島を渡るらしい。みなさんも瀬戸内海に行くときは気を付けて。

そんなイノシシへの恐怖にいつもより慎重に車を走らせていると、あ。


▲まさかこれは?

今、目に入ったのは。あまりにも何気なく道沿いに現れたので、通り過ぎてしまった。引き返してみてみると。



間違いなくあれだ。ゴールドタワーから見えていたアンテナだ。ちょっと近づいてみると、こんな看板が。


▲厳格な注意

どうやら、これは「備讃海上交通安全センター」というらしい。調べてみると、ここは「備讃瀬戸海域における船舶交通の安全性及び効率性を向上させることを任務とし、海上保安庁が設置し運用しています」(「海上交通センター利用の手引き」より)とのこと。瀬戸内海は昔から海上交通が盛んで、出入りする船も多い。その船舶の安全を管理し、警備するのがこのセンターの役割なのだ。


▲ネットサイトには、毎日の気象情報が掲載されている(「【気象情報】青ノ山船舶通航信号所│備讃瀬戸海上交通センター」より)

ここは、備讃海上交通安全センターの中でも「青ノ山船舶通航信号所」と呼ばれている場所で、安全センターの一角を担う超重要施設なのである。
ということで中には入れないが、間近でそのアンテナを見ると、そのサイズ感に圧倒される。


▲この巨大なアンテナが瀬戸内海の交通を守っているのだ。瀬戸内海をじっと見つめているようにも見える

というわけで、二つ目は、「青ノ山船舶通航信号所」でした。ここもまったくその存在を知らなかった。


瀬戸内海を支える建物たちだった

ゴールドタワーから見えた二つの白い建物を訪れてみた。

宇多津にはそこそこの頻度で行っているから、だいたいの建物は分かるだろうと思っていたのだが、二つともまったく知らない場所だった。でも、二つとも瀬戸内海にとって重要な場所だった。

一つめのサン・アンジェリーナがあった聖通寺山は瀬戸大橋と関係が深い場所だったし、二つ目の白いアンテナは瀬戸内海の交通を守ってくれていた。
両方とも、瀬戸内海の歴史を語る上では、欠かせない存在だ。

というわけで、そんな場所を教えてくれたゴールドタワーにありがとう、といいたい。エレベーターは怖かったが。


▲ゴールドタワーの中にあった顔ハメパネル。金魚になれるってこと…?








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谷頭和希

ライター・作家。チェーンストアやテーマパーク、日本の都市文化について、東洋経済オンライン、日刊SPA!などのメディアに寄稿。著書に『ブックオフから考える』『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』。

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