1,000年と3時間半の散歩

  • 更新日: 2022/09/20

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ポケモンマンホール


2022年8月14日に私は奈良県に出かけた。JR〜近鉄奈良駅周辺では何度か遊んでいて、町並みは整っているし、遊ぶところはあるし、ご飯も酒も美味しいのでわざわざ遠出して無意味にふらついたこともあった。が、中心地たる奈良市しか知らず、周辺の様子に興味があったのと、せっかくアクセス的に便利な大阪市南部に暮らしているのだから確認しないのはもったいない。それに身が悶えるほど暇だ。と、JR天王寺駅から大和路快速に乗車し20分強、私は法隆寺を目指した。天気はやや曇りだが、まだまだ暑い日だった。



改札口の光景である。「北口徒歩20分」と案内があるが、見逃した私はそうとも知らず、言っても10分以内に法隆寺がでん、と現れるものとタカをくくっていたから、この後案外歩くことになる。




法隆寺は奈良県生駒郡斑鳩町に属している。斑鳩町のマスコットキャラ「パゴちゃん」である。仏塔を意味するポルトガル語(ポルトガル語由来かは諸説あり)「パゴタ」から「パゴちゃん」だそうである。柿のヘッドから仏塔を生やした、愛嬌たっぷりのキャラクターだ。ちなみに、パゴちゃんのパネルの横にはせんとくんも居たが、もうこいつはいいだろう、と今回は割愛した。




まっすぐ法隆寺を目指すのも勿体無いので、私は周辺を散策することにした。「サンロード◯◯」という名前のついている通り・商店街は全国でいくつ存在するのだろうか。




お盆休暇中ということもあってなのかそもそもなのかは定かではないが、商店街はほとんどの店がシャッターを降ろしていた。「笑」も同様だ。営業中の提灯が下がってはいるが。






酒屋「ももたろう」さんだ。奈良の地酒を豊富に取り揃えているようだ。近くの専用駐車場は「もも太朗」名義だった。あまり「ももたろう」の「たろう」が「朗らか」のほうであるケースは少ないので私は少々面食らった。




冗談抜きで入口がどこかわからなかった。そういう「箱」である可能性もある。ちなみに隣は、ビブグルマン掲載のクッパ定食で有名な韓国料理店だが、閉店中だった。




法隆寺までの道のりである。正直に言ってごく普通の県道である。くすんでいる。日本で最も有名な寺へと続く参道にはあまり見えない。オートバックスに向かう際の風景のようである。




柵越しで少々分かりづらいが、法隆寺を模した屋根をあしらった関西中心のスーパーマーケットチェーン「万代」である。「万代法隆寺店」の看板が渋い。あまり皆様は興味がないかもしれないが、私は「法隆寺近辺には渋い万代がある」と伝えるとテンションが上がる友人を2名知っている。近所の万代ではやたら滑舌のいい店長の店内放送が聴ける。




日本で最も古い建築物の近くでもカーネル氏は揚げた鶏を売っている。静かな微笑みのたたえかたが仏のように見えなくもない。




以前、京都の円山公園を歩いていたら「ピィ・ププリン・ピチュー」のマンホールを見つけたが、斑鳩町は「知らない鳥・鹿」だった。ポケモンはブラック/ホワイト以来手をつけていないので、その世代以降はまったく詳しくない。調べたらブラック/ホワイトも12年前の作品だった。そんな馬鹿な。我々の世代(90年前半生まれ)からすれば鹿のポケモンといえば「オドシシ」がいたが、最近の作品では登場していないのだろうか。当時からすでに影は薄かったが。




私が知らない土地を歩いている時に見つけると興奮するものとして、「初見のドラッグストア」がある。以前今里あたりを散歩していて「シグマ」を発見した時も嬉しかったが、「木のうた」は本当に知らなかった。信頼の1907年創業。確かに相談しやすそうである。




今度は唐突に「サッカー」を発見した。町をうろついていて「サッカー」を目にする機会はあまりないから気分が上がる。メンバー的には93年のころのA代表だろうか。ドーハの悲劇の年だ。カズがいる。カズって、あんなにサッカー頑張ってたのに結局ワールドカップに出られなくて、気の毒だと思う。




「並松商店街」を抜けた。ここもあまりシャッターが開いている店はなかった。






法隆寺の参道だ。両側に高くそびえた松の木が延々と並ぶまっすぐな道だ。ここまで来ると人通りも増えてきた。何もない平日の涼しい朝なんかに歩けば気分が冴えるだろう。もっとも、何もない平日の朝なんか全ての行動が最高なのだが。




いよいよ法隆寺だ。実はこの写真、拝観を終えた後で撮ったもので、というのも入り口前の看板に「敷地内撮影禁止」との貼り紙があったからだ。しかし敷地内でも構わず記念撮影をする観光客も多く、「アカンのにね」と訝っていたのだが、後から調べると「建物内の撮影はNGだが、外から撮る分には問題ない」とのことだった。ちゃんと言ってくれ。いずれにしても、法隆寺の写真なんか立派なものがいくらでも探せばあるのだから、そちらを参照してください。「柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺」の句碑もあったが、そんなものも無論撮れていない。が、よくよく考えれば「KFC斑鳩法隆寺店まで次の信号右折800m」の看板単品の写真のほうがこの世に展開されているとも思えないから貴重とも言える。




拝観料は1,500円で、他の寺社仏閣と比較するとお高く感じる人もいるかもしれないが、何せ創建1,400年である。一般的な鉄筋コンクリートのビルが法定耐用年数47年とされており、雨漏り・ひび割れ当たり前なのだから、莫大な維持費がかかるのも当然である。以前はクラウドファウンディングもされており、目標金額2,000万円のところ、それを大きく上回る1億4,000万円の支援金が寄せられたとのことである。永く続いてほしいものだ。本殿では御朱印をいただき、大宝蔵殿では飛鳥・奈良時代の国宝・重要文化財を見物した。1,500円でも十分安い。




法隆寺に隣接する尼寺「中宮寺」にも入った。本堂では国宝「菩薩半跏像」を拝むことができる。ダ・ヴィンチのモナリザ、エジプトのスフィンクスと並んで「世界三代微笑像」ともされているらしい。女性の絵と神話の生き物と仏像。比較対象が違いすぎるのではないか。ともかく、実物は静謐な表情を浮かべており、気品があった。




帰りにお土産屋で「にんにくの奈良漬」を購入した。私は無類の奈良漬好きである。しかも深めに漬かったボディ強めなほうが好みだ。地図を見て、「飛鳥神社」を目指そうとしたので店のおばちゃんに「飛鳥神社ってどの道ですか?」と尋ねると、「山道だし行っても何もないから地獄だから止めておくがよい。神社なら”龍田神社”のほうが近いからそこに向かえ」との指示が下された。観光地で働く人間の意見だから間違いないだろうと私は素直に龍田神社を目指した。




斑鳩町役場の前を過ぎる。「斑鳩町町民憲章」があった。斑鳩の人は普段どのくらい聖徳太子について考えて暮らしているのであろうか。






またもや人のいない商店街を歩く。活気のあまりない商店街名物である「花キュ〜ピット」と「太陽の光を存分に吸収したヤマザキサンロイヤル」の看板があった。




そろそろお土産屋での指示に怒りを覚え始めるほど歩いたところに、龍田神社に辿り着いた。後から調べると「聖徳太子が法隆寺を建立する際にありがたいお告げをいただいた場所」らしい。が、私のほかには自転車で訪れた男性がひとりだけで、静かなところだった。樹齢1000年を超える巨大なソテツが壮観だった。斑鳩はいちいち1000年単位で物事を語るからスケールが違う。




こちらも年季の入ったくじマシンである。私は年初の初詣で、八坂神社にて大吉のおみくじを引いていたのでマシンにお金を投入しなかった。




またぞろしばらく商店街を歩く。法隆寺駅方面に引き返すのも面白くないので、西に向かい、王子駅から帰路に着くことにした。休めるような店もなさそうだったのでただひたすら前進あるのみである。




小松も潰れている。




そろそろ竜田川に差し掛かる頃、営業中と思わしきのぼりの立った酒造店を見つけた。(一度通り過ぎて引き返す際に撮った写真のため、角度がいまいちで申し訳ない)奈良の日本酒は、「風の森」や「春鹿」などおいしいものが多いのでせっかくこんなところまで来たのだから地酒でも買って帰るかと立ち寄ってみることにした。

中に入ると、奥から杖をついたお婆さまが現れた。見たところ80後半〜90歳ぐらいだろうか、斑鳩の歴史のような風合いである。何事か声をかけていただいているのだが、まったく何を喋っているのかわからなかった。それはお婆さまのご高齢によるものなのか、失われた飛鳥時代の言葉を操っているためなのかは判別しかねたが、どうにか意思を伝え、一本「初時雨」という純米酒を購入できた。すると、お婆さまがサービスで「きざみ」とラベルの貼られた自家製の奈良漬をおまけしてくれた。部類の奈良漬好きの私は小躍りをした。




先ほどの店は「太田酒造」さんだった。酒蔵でもあったようだが、今では酒造りはやっていないようだ。(初時雨のラベルの製造者欄には大阪府岸和田市の住所が載っていた)せっかくだから奈良で造られた酒が欲しかったところだが、あのお婆さまとやり取りをできただけでもありがたい経験である。




竜田川を下る。在原業平の「ちはやぶる〜」でおなじみのあの竜田川である。水が澄んでいて空気がおいしかった。緑も濃くて、川のそばでは水切りで遊ぶ子どもたちの姿を見かけた。私は海が近いほうの町で育ったので、川遊びの経験があまりない。というか、そもそも少年時代はだいたい家にいた。




近鉄王寺駅だ。JR王寺から帰った方が金銭的にも時間的にも節約できるのだが、このような機会でもないと近鉄王寺線には乗らないだろう、と近鉄を選択してみた。というか、王寺から乗らなくても竜田川の交差点で北に登れば竜田川駅から近鉄に乗れたのじゃないかと今にしてみれば思うが、長時間、盆の西陽をくらいまともに判断できなくなっていた私はとにかく近鉄王寺から帰ろうという思考になっており、ともかくわざわざ時間をかけて近鉄王寺から生駒経由で大阪に帰った。途中、鶴橋で焼肉でも食べようかとも考えたが、最近鶴橋はティーンたちの韓国ブームの影響で普通に小綺麗になりつつあり、独身成人男性の寄り付く場所でもなくなってきているのであきらめた。




後日、太田酒造さんで購入した「初時雨」と、おまけの奈良漬を試しに味わってみた。私は日本酒が好きだが、翌日に酔いが残るから平日は避けたいし、開栓した状態で残していると味が悪くなってしまうので、あまり家で日本酒は飲まない。そんなことはどうでもよくて、とにかくこの奈良漬が人生で一番のレベルで美味しかった。アルコール感はきつくないが、しっかりと漬かっていて口の中にわっと風味が拡がるようだった。お酒のほうは癖のない純米酒で、すいすい飲めた。あのお婆様はいったい何を喋っていたのだろうと思いがよぎりながら、小躍りをして、睡りについた。









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JET

大阪市在住。成人式終わりの同窓会会場だったカラオケ屋から徒歩で帰宅したことがある。

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