凹凸など無かったように処理する

  • 更新日: 2022/01/04

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描ききる勇気

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一般的に、モノを描くのには平面が都合が良いと思います。
しかし現実には、凹凸のある壁面になんか描く、みたいなことがよくあります。

ときにアルタミラ洞窟壁画には、洞窟の凹凸を利用して描かれた動物があるらしい。
偶然の立体をも創作に取り込む先史時代の人類の想像力に感嘆するばかりですが、現代において凹凸はただの邪魔者であることが多い。

そんなとき、障害物など初めから無かったかのように、平然と描き切る現象があります。
例えばこういうことです。



基本的には、正面から見たときに正しく見えるように最適化されています。



だから、ちょっと違う角度から見ると絵が途切れてしまいます。



まあ、見慣れた光景ですが、ふと、こんなものに慣れてはいけないのでは? と思った。
正面からしか成立しない絵なんて、不完全にも程がないか?
三次元世界の最弱はこれじゃないか。

でもその弱さが、ちょっと好きかもしれないと思い始めた次第です。




そういえば前に行った東京証券取引所が近づくと何言ってんのかバグってて良いな! と思ったのでした。
経済の中心でこれよ。ARとかでなんとかしなさいよ。



正面から見ると読めなくも無い。遠くから眺めたらきっと成立してるんでしょう。
近づくほど読めない。ミクロよりマクロ、木ではなく森を見る目を試されるのが証券取引の世界、という意味でも込められているんでしょうか。




後日、それとそっくりのローソンを見つけて笑っちゃった。
えっ証券取引所のパクリ!?



近づけば近づくほど成立しなくなるのがこいつらの特徴です。でも、それがいいんですよ。たぶん。



人が分断されても描ききる勇気。作業者は、完成したらかならず見えるはず、という信念が試される気がします。




その帰り、全く同じ構造の落書きを見かけました。



なんも考えないでシューって描けばこうなるっていうだけかもしれません。
無頓着は凹凸を軽々と飛び越える。






こちらは壁に直接描いちゃうタイプの広告、それ自体すばらしいことで興味深いですが、よく見ると雨樋が「おつまみ」の「み」を縦断しています。
そのわりにうまいこと読める。



近づいて分かった。なるほどこういう構造か。



障害物が円筒の場合、塗りが一周いってしまうの、すごくいいですね。
最上部も塗っていて素敵。
いや、これは「み」に塗らされているのか。

それにしても、素敵な縞模様の雨樋に仕上がっていると思いませんか。
この雨樋だけを抜き出したとき「み」と重ねるための塗りだとは思わないでしょう。




こちらも雨樋が看板を縦断していて、小細工の跡が見えます。




看板の「看」、広告の「広」の一部を円柱の面に半周伸ばして展開していました。
さっきの「み」といい、雨樋の曲面に余裕を持って文字を展開するのが主流のようです。

電話番号は、ちょうどハイフンの部分がすべて雨樋と重なるようで、ハイフンは普通に書かれていました。





広告を出したい場所に、太い柱がある。それなのに読めている。




これは予想外の構造でした。
柱の「ン」は壁の「ン」に比べて扁平に見えますが、壁の「ン」を柱面に三次元展開するとこうなるんでしょう。
なんとなく、高度な数学が使われている気がしてきました。

ところで、壁の「ン」は柱の「ン」によって殺されているのかと思いきや、実はちゃんと仕事をしています。



改めて正面から見ると、柱の「ン」と壁の「ン」が重なってひとつの「ン」を作っているんですね。
これが本当の2.5次元だと思いませんか。






凹凸を超えることは、次元を超えること。きっとね。







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ヤスノリ

サンポー主宰。最近おちつきがある。

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