落とし物・ごみを撮り続けた2020年、その「地面」からコロナ禍を読み解く

  • 更新日: 2021/02/23

落とし物・ごみを撮り続けた2020年、その「地面」からコロナ禍を読み解くのアイキャッチ画像

「地面」は無口だが、時に世相を表している。

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コロナ禍と「地面」

さて、毎度書いていますが初めて記事を読まれる方もいらっしゃると思うので簡単な紹介を。この連載「地面のマガジン」は、フチダフチコが運営する落とし物・ごみ写真投稿コミュニティ「地面のファン」の活動報告です。2020年7月に立ち上げられたコミュニティは現時点で150人。みんな、前向きに下を向いています。

前回の記事の終わりに、こう書きました。『知り合いと「地面のファン」散歩をしよう。「サンポー」だから、やっぱり散歩をしなくちゃね』、と。残念ながら、それは叶いません。新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言が発出され、流石に複数人での散歩は難しい状況に。ですから、新年最初の記事は敢えて昨年を振り返る記事にしたいと思います。今回は、「地面のファン」の活動報告というより、フチダフチコが昨年取り集めた物を振り返る場に。コロナ禍の中、地面をどう捉えていたのか。いえ、そんな大袈裟な話じゃないけど。

2020年。どこもかしこも、この言葉でした。


●新宿駅に現れた「ソーシャルディスタンス」の筆文字



新宿駅、筆文字で大きく書かれた「ソーシャルディスタンス」の文字。写真を見れば分かる通り、この文字の周りに人の気配はない。新宿駅から、人が消えていた。

人の動きが変わると地面も変わる。きっと、誰もが目にしたマスクの死骸。加えて、栄養ドリンクのごみを頻繁に見掛けた。みんな、疲れている。


●コロナ禍を象徴するマスクの死骸



最寄りの中野駅も、このウイルスの一件を受けて変化を強いられた。人の流れを整えるための、「地面」の在り方。


●中野駅の地面に人々の流れを整理する印が現れた





地面は世相を表している。

春先に何度も耳にした言葉を覚えているでしょうか。忘れないか。「新しい生活様式」「ニューノーマル」といった言葉。これもまた、地面を変えた。家から出るのが憚られて、食事をUberEatsで。燃えるごみの日には、玄関先に宅配ピザのごみが出る。


●地面が人々の生活の変化を語る



このごみを回収する人がいる。その人たちは、このウイルスが蔓延する中で身を危険に晒して仕事をしている。彼等・彼女等への感謝を示す地面も、現れ始める。


●ごみ袋に入れられた「THANK YOU」の言葉



「THANK YOU」の文字と一緒に、地面の上に。人の姿はないけど、人の気配がある。これは私が地面の写真を撮り始めたそもそもの理由に繋がる話。落とし物やごみから、人の気持ちが読み取れる瞬間があって、それを楽しみに地面の写真を撮り続けている。落としてしまって寂しい、という持ち主の気持ち。落とされてしまって寂しいという物の気持ち。ごみ袋に込められた、「THANK YOU」の気持ち。緊急事態宣言を受けて、この街から人の気配が消えても、地面には人の気配が残っている。

その気配・気持ちは、穏やかな心に限らない。


●ATMに残された「荒ぶり」



時々、こんな荒ぶる地面もある(これは地面の写真じゃないけど)。

「密です」と言われる距離。絡み合う、重なり合う。


●地面は「密」を許されている







落とし物やごみ、地面にはソーシャルディスタンスの決まりはない。

そして、地面に残るメッセージ。


●ある日、何かが書かれた紙切れを見付ける



「PEACE AND LOVE」。平和と愛が帰るまで、もう少し。

以上、コロナ禍を「地面」で読み解く遊びでした。


フチダフチコの2020年を振り返る

さて、コロナ禍・緊急事態宣言を受けて街から人が消え、それに伴って落とし物やごみの数も減った。そんな逆境(?)の中、落とし物・ごみ写真の第一人者(?)であるフチダフチコが集めた写真から、2020年の思い出深いヤツを紹介したいと思う(1000枚以上あって、正直選定に悩んだ)。

●赤おまる



色鮮やかだから気付かない。
多分、おまる。


●小さなスケボー



この近隣にきっと、
元気なヤツが住んでいる。


●大久保の不法投棄



一気に捨てるにしては、
家電のバリエーションが少ない。


●書き立ての「止まれ」



「止」の字の下書き、
「と」って書いてあった。


●アレ



新宿駅のホームにて。
使用済みだった。


●裏向きのオバQ



「オバQが落ちている」で既にヤバイのに、
「裏向きのオバQ」はじわじわ来る。


●捨てられた少年マガジン



「少年を捨てて大人へ」、
そのメタファーか。


●コンビニの「地面」



コンビニの場合は、
「地面」じゃなくて「床」か。

そして、2020年いちばん思い出に残っている地面。


●金魚鉢、電池、彼岸花



偶然の集まり、にしては整然と並んでいる。
それぞれの関係性を想像しても何も見えない。分からない。
美しい、最高の「地面」。
2020年は、この写真を撮るために毎日撮り続けていたのかもしれない。
と、友人に熱弁したが、あんまり伝わらなかった。

2020年、撮りすぎたかもしれない。と言いながらも、2021年も毎日写真を撮っている。懲りない。というわけで、2020年のサイコーの一枚は「金魚鉢、電池、彼岸花」でした。めでたしめでたし(?)。


言い忘れていた「今年もよろしくお願いします」

緊急事態宣言を受けて、当初予定していた「地面のファン」オフ会を断念せざるを得ない状況に。そのおかげでこうして2020年の写真たちを振り返れたのだが、やっぱりオフ会は諦められない。近い内、世界に平和が訪れた頃にまた会いましょう。それまでは、それぞれの地面を見下ろし、時々変な看板を見ながら。あ、そういえば前回記事で紹介した「チーム・見上げ損」を発足してから、私も少し上を見ながら歩く日が増えました。

●ゴムのニーチャン



こんな顔だったっけ。
てか、この広告(?)何だ?

地面以外を撮るのも悪くないね。さて、次回こそオフ会が実現すれば、と思っているが正直難しいと思います。現時点で緊急事態宣言は3月まで延長が決まっていますので、次回もまたフチダの一人語りでしょう。いえ、ご心配なく。また面白い話題を仕入れますよ。それでは、皆様もサイコーの地面観察を。以上、フチダフチコでした。あけましておめでとう、今年もよろしくお願いします。


落とし物・ごみ写真を楽しくコミュニテイ「地面のファン」への参加はコチラから
https://discord.gg/dWQH2eG







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フチダフチコ

どたばたハッピーがん患者。自身の血液がんについて曝け出す「地獄」、奇怪な日常を書き溜める「此岸」など、ぐだぐだ執筆中。落とし物とごみの写真を撮り集めるコミュニティ「地面のファン」を立ち上げるなど、とっても元気です。

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