行き止まり散歩 ~西池袋・上り屋敷の廃駅~

  • 更新日: 2020/05/14
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この散歩は、緊急事態宣言以前に行ったものです。




行き止まり看板の9割は嘘だと思っている。
もっとも、殆どが車に向けられた看板であるから、歩行者が通り抜けられることは多い。
あまり車や人が入り込まない行き止まり看板の先には、手つかずの何かがある気がしてならないから。

行ってみよう。
行き止まりから始まる、行き止まり散歩。

ここは西池袋。線路沿いの行き止まり看板です。



あ、やっぱり行き止まりだった。




今回はJR池袋のとなり駅、目白から歩き始めました。



ここから池袋方面へ歩くと、西池袋エリアに入ります。

西武、東武、丸井などの百貨店。戦後の闇市をルーツとした繁華街。この地に来てから100年の歴史を刻む立教大学。巨大なコンサートホールから芸術文化を発信し続ける東京芸術劇場。池袋警察に池袋消防署。なんもかんもあって、あれやこれやの大賑わいを見せる西池袋。
さぞここに住む人たちはお祭り騒ぎが大好きなんじゃないかと勝手な偏見を胸に散歩開始です。

▼『あがりやしき』

1万分1地形図/1928-36

山手線、埼京線などのJR線、西武池袋線、東武東上線といった複数の鉄道路線が走る西池袋エリア。
聞いた話によると、むかし西武線の池袋と椎名町のあいだに、たった16年間だけ「上り屋敷」という駅があったらしく。
武蔵野鉄道(西武鉄道の前身)のころの古い地図を見ると、「あがりやしき」の文字が見つかる。
この駅跡が今どうなっているのかも見てみたいと思います。

まずは目白エリアを歩きます。



線路沿いを歩くと、電柱と戯れる緑が出迎えてくれます。



低すぎるゴミ出し看板



VS 低すぎる蛇口

ただ今の勝負、低さ5㎝で低すぎる蛇口の勝ち。




ダルマとダルマの間にネズミ。
特に何のストーリーも思い浮かばない。



金属板に文字が彫ってあるから50年以上経過してもハッキリと読めます。これはすごい。
おかげ様で堂々と歩くことができます。皆様ありがとうございます。これでいいですかね。



「絶対に乗り越えるなよ~。おれは痛いぞ~。」
光り輝くトゲトゲ(ステンレスアムレット)より。
アムレットの訳を調べてみたら、お守り、魔よけとか書いてありました。




地図を見ると「F.L.ライトの小路」と呼ばれているこの線路脇の道。
アメリカの建築家・フランクロイドライトにちなんで名付けられたのだそうです。
ライトはこの先にある自由学園の設計のほか、帝国ホテルなども手掛けた「近代建築の三大巨匠」のひとりです。




『 けたに注意 制限高3.0M 』
飛び上がって頭ぶつけたら痛そうだから、この階段を昇って線路の向こう側へ行ってみよう。
あ、ジャイアント馬場(209cm)でも頭ぶつけないか。



ひょーっ。見晴らし最高。伸びる線路の先にある新宿を眺めている。
足元をどんどん列車が往来する。



こっちは黄色い西武線が走り抜けていくところ。
この跨線橋は「花のはし」と呼ばれています。地元の方々が名付けられたそうです。



自転車ごとエレベーターに乗り込めるし便利ですね。
次々と自転車で利用する人がいて稼働率は高い。



事務所入り口に緑。



建物を覆いつくそうとする緑。
ここは緑がいっぱい夢の町でした。



桜が見ごろを迎える公園です。
でも今年のお花見は自粛ですよね。



この遊具でちょっとした胎内くぐり体験できる。



街かど消化ハリアー。
「ハリアー」と聞くと、セガのゲーム「スペースハリアー」を思い出してしまうファミコン世代。


音楽がまたカッコ良かったんだよな~、このゲーム。
始まるとき英語で「Get Ready!」って言うんだけど、判らなくて「ギャッパリ!」とか「ヤッパリ!」とか言ってたな。
ひどい子は「ヤクワリ!」とか言ってたな。もうぜんぜん違うもんな。



この窪みにタイム風呂敷をかけると、昔の共同ゴミ箱が出てくると予想。



ちょっとスリルを感じながら上りたい露出型の螺旋階段。





トンネルを抜けると、手打そば教室だった。



このでかいタンクからそば粉がドサーっと出てくるのだろうか。
「北東製粉」は大正14年に池袋で創業。こちらでは、予約制のそば打ち体験教室を開催しているそうです。ホームページを見ますと「そば粉レシピ」が40種以上もあったりして、それはもう無限の可能性を秘めるそば粉が大好きになります。



この奥は行き止まりの線路だった。
親子が電車を見に来ていた。チビッ子は不動のまま列車を見つめていました。
走り去る列車の風と音。足元に伝わる振動。どこまでも伸びている線路。鉄道路線を抱えるエリアの変化に富んだ散歩は楽しいです。

そうだ、「上り屋敷」に向かうんだった。



音読したくなる略称サトコン



露出階段を這いまわる室外機のダクト



送水口のサンバルカン。
戦隊もの「太陽戦隊サンバルカン」では、黄色のバルパンサーがカッコ良かったな。

豹 朝夫(ひょう あさお) / バルパンサー
明朗な性格の持ち主で、驚いた時などには「ひょひょーっ」と奇声をあげる。細身の体に似合わず、大食漢で、スナックサファリのカレーライスを食べる場面が劇中では頻出した。(Wikipediaより)




とびだせ!マンホール



降りてる途中で足がすくんで動けなくなりそう。



巨大な建物が現れた。
最上階には、SeibuGroupの文字。
表面にダイヤグラム(列車運行図表)の意匠を大胆にあしらったこの建物は、「ダイヤゲート池袋」。2019年に新しく出来た西武グループのオフィスビルで、今年から一般のテナント階にも入居が始まるらしい。
線路の上に浮かぶように建っていて、見ていると列車が吐き出されたり吸い込まれたりしているようだ。建物に近づくと、大きなトラス構造の躯体が建物の足元を支えているのがわかる。
なお、出入り自由な2階部分の「ダイヤデッキ」は絶好の撮影スポットなのだそう。
集え!撮り鉄。




ここは、「びっくりガード」だ。
荷馬車の通行が多かった時代に、馬が頭上をはしる列車の音にびっくりしたから、その名がついたって聞いたけど本当かな。



ガードをくぐって行こう。



右側通行にご協力お願いします。



また線路沿いを選んで歩こう。



ぜったい入るなよ。という意思が伝わってくる。



別にまあ入られてもいいかな。という感じが伝わってくる。



なんども言ったろ、おれんち右だって。




そして冒頭の行き止まり看板。
この看板に近づくと、右にあった小さな奴に「通り抜けできません。」と念を押された。
もしこのまま進んだら何か痛い目にあって、「ほうら、言わんこっちゃない。」と小さな奴に笑われそうな気がしたので進むのを止めにして引き返した。
今日ぼくは、念押し看板には一定の効果があるのだと思いました。おわり。

終わっちゃいけない。「上り屋敷駅」に向かうんだ。




二軒長屋。どちらもきっと居心地が良さそうなお店。
左はおでん居酒屋で、右はスナック&コーヒーと書いてある。
中でつながってたら、コーヒー片手におでん食べるかね。



もう少しこっち向いてください。



ピソは、スペインのシェアハウスってことらしいです。



「く」と「ぐ」のあいだに「す」を入れるなよ。
くすぐるなよ。あぶないから。




もうすぐ「上り屋敷駅」だけど、ちょっと寄り道。
この門をくぐると見事な日本庭園が広がっていました。
ここ目白庭園(入園無料)を年代別に地図で見てみると、65年前「ベルギー大使館(空襲で焼けたため臨時の大使館だったそう)」、90年前「徳川邸」、100年前「戸田邸(紀州徳川家の姻戚なのだそう)」となっています。



ちょうど和装の花嫁と花婿が撮影の最中でした。
ハレの日を迎えた若いお二人に、「おめでとう!」と拍手を(心の中で)送りながら目白庭園を後にしました。



この辺り歩いてみて判りましたが、ほのぼの家族が多い閑静な住宅街です。
お祭り騒ぎが大好きっぽい人は見当たりませんでした。



もうこの辺りが「上り屋敷駅」のはずだが。



あれだ。
線路右に見える盛土のスペースが「上り屋敷駅跡」だ。
特に駅の遺物が残ることもなく、盛土がかつての駅であったことを静かに伝えてくれた。

「上り屋敷駅」は、武蔵野鉄道(西武鉄道の前身)により昭和4年に設置されたが、終戦間際の昭和20年に戦況悪化を理由に営業は中止。そのまま営業再開されることはなく、昭和28年に正式廃止となった。
当時は、目白駅へと歩いて乗り換えるサラリーマンの姿も見られたという。
わずか16年の営業となった「上り屋敷駅」。
なお上り屋敷とは、江戸時代の狩場に設けられた休憩所のこと。むかし狩りにやって来た殿様たちが休む施設がこの付近にあったようだ。

旧町名でもあった「上り屋敷」。
その名を残す公園がある。



ここ「上り屋敷公園」のハトは人懐っこかった。
クルックーとか言って葉っぱか何かをついばんでいた。
近づいてもぜんぜん逃げなかった。



こういうところで一人暮らししてみたかった、「上り屋敷コーポ」。



二階の角部屋に住んで、出かける時は颯爽とハシゴで地上に降り立つ。
それが憧れの出勤スタイル。



むかし川が流れていたっぽい極細道を進んで池袋駅西口方面へ歩きます。



サケの遡上ってこんな感じだろうか。



いってきまーす! で、いきなりズッコケる出口。


▼『マリとシェリー』


このブロンズ像の作品名は、『永遠の立ち話し』……、ではありませんよ!彫刻家・朝倉響子の『マリとシェリー』という作品です。
見ていると、「二人の間に入り込む余地はなさそうだな」と感じました。
そういえば茗荷谷の教育の森公園にも似た作品がありまして、そちらは微妙な距離感でベンチに腰掛けている二人の女性なのですが、調べてみるとやはり『フィオーナとアリアン』という同作家の作品なのでした。

▼『フィオーナとアリアン』


また、府中の森公園の『アンとミッシェル』、横浜市民文化会館関内ホールの『ニケとニコラ』など、多くの公共スペースに朝倉響子の作品があるようです。同じ作家の作品を見て回ると何か新しい発見があるかも知れませんね。
さて、ここは東京芸術劇場がそびえ立つ池袋西口公園です。この公園の裏あたりでソトノミします。



パッと見は缶ジュース、でも中身はスパークリングワイン。しかもコンビニ調達可。
それが「プティモンテリア」のいいところ。今日はロゼを選んでみました。
唐辛子が練りこんである「ピリピリチーかま」は、万能のおつまみ。
はじめます。
スクリューキャップをプシュッと開けてラッパ飲み。お行儀悪くてすいません。
缶入りだから見えないけれど綺麗なピンク色の液体が、シュワッと果実の香りと一緒にノドを流れていった。辛口で美味しい。
すかさずチーかまにかぶりつく。つるんとしてプリっとした食感で、ほどほどの辛さがやってくる。
いつも優しい味をありがとう。安定のチーかまくん。




それではおまた、いや、またいつか。

いつになるのか。
パンデミック後の世界はどうなるのか。
グローバルが行き止まりだったら、ローカルへ引き返すのか。

とにかく皆でまた行きましょう。
行き止まりから始まる、行き止まり散歩。






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ソトノミスト

特技:素早く紙を数える
好きな乗り物:フォークリフト

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