行き止まり散歩 ~四谷三丁目・荒木町の思い出~
- 更新日: 2024/08/29
行き止まり看板の9割は嘘だと思っている。
もっとも、殆どが車に向けられた看板であるから、歩行者が通り抜けられることは多い。
あまり車や人が入り込まない行き止まり看板の先には、手つかずの何かがある気がしてならないから。
行ってみよう。
行き止まりから始まる、行き止まり散歩。
すごいやつが現れた。
丸くて白い行き止まり看板だ。
一切の無駄は排除されており、気持ちの良い潔さが感じられる作品。
あのー、「まんまる四谷ホワイト」 って呼んでもいいですか?
◆
パリオリンピックの開会式すごかったねー、選手たちセーヌ川を船で下ってたよー、ところでブレイキンってなに ?
とか言っていた、次の日ぐらいの日曜の早朝。僕はトイレに行きたくて目が覚めた。
AM 4:25
いつもの如く二度寝するのはもったいない。
そう思ったから、そのまま身支度して何かに導かれるように始発電車に乗り込んだ。
もったいないと思ったのには3つ理由があって、
おいおい、理由が3つもねえと動かねえのかよオッサン!
という声が聞こえてきそうだけど、はい、そうなんです。かなりの高頻度で早朝トイレで目が覚めるオッサンなんです。近頃こっそり風呂場で白髪染めし始めたオッサンなんです。あと、腰痛持ち。
そんな訳で、丸ノ内線 荻窪行きの始発電車に乗って、四谷三丁目で降りました。
駅構内とってもキレイになったよね。
何年振りだろうこの駅で降りるの。
そうだ、こんな感じだ。
四谷三丁目の交差点に、でんとそびえる四谷消防署。
でかい。
こんなにでかかったっけ?
ちょっと調べると、この建物はそんじょそこらの消防署とは違っていた。
なんと、消防博物館(入館無料)が併設されているのだ。
ここで歴代の消防車や救急車、消防ポンプ、防火衣、消防活動資器材なんかの展示を見て、消防の歴史とか災害発生時に取るべき行動などが学べるらしい。
なお、マスコットキャラクターは 「ファイアーくん」。
出典: 東京消防庁 広報とうきょう消防(第11号)
夏休みの自由研究にもおすすめです。
へー、東京消防庁マスコット「キュータ」は知ってるけど、「ファイアーくん」は知らなかったなあ。
ファイアーくん待ってろよー。
こんど会いにいくからね。
ところで、四谷消防署のとなりの交番がひときわ小っちゃくてかわいかった。
これは、交番の中でもminiという部類でね。交番miniの役割は道案内と迷子の保護だけなんです。すいませんウソです。
そういえば昔、まだチビだった息子が街で迷子になってしまって。泣きべその息子を肩車で探してくれていたお巡りさん。その節はありがとうございました。
◆
久しぶりに、この辺りを自分の足で歩いているのが嬉しい。
看板とかお店が変わっていたりするのは、たまに車で通過していたからなんとなく知っているけれど、徒歩なら細かい発見があるから楽しい。
それに、若いころは駅を降りたら脇目も振らずに友だちがやっているバーに直行していたから、ほとんど周囲に注意を払っていない。見ていないから知らない看板なんかがたくさんある。
それに、だいたいが夜で暗い時間帯だったからなおさらだ。
おはよう。
二人そろって、ラジオ体操いくの?
早朝の散歩はいい。
だって、ランニングでいい汗かいてる人とか、ちっこいワンちゃんの散歩してる人がいるし、公園でみんな集まってラジオ体操が始まったりするから。何となく、さあ、あたらしい一日が始まるぞって感じがするから。チリンチリン、あ、新聞配達ごくろうさまです。
知らない人と、にっこり 「おはようございます」 とか挨拶を交わしてもおかしくない時間帯が早朝。
でも、もうちょっと後の出勤のバタバタした時間帯になろうものならもうダメ。足早に会社や学校に向かう人たちが多くなるから。「おはようございます」 だって、早口で 「おはざます」 みたいな感じになってくるから。
お店と自宅が一体になってる家って憧れる。
あばれはっちゃくは、自宅が理容店だったと思うんだけど、はっちゃくは 「かあちゃんただいま!」 とか叫んで、ランドセルぶん投げて2秒で外遊びに出かけてたな。だいたい髪カット中のお母さんがランドセルをナイスキャッチするんだよね。これ、けっこう危険な演出だったよね。
この写真は、やなせたかしのアンパンマンショップです。
賃貸物件のアパマンショップじゃないよ。
ここで、唐突なのですが。
ちょっと、先程の (散歩理由:3) について補足しておきたいんです…
ここからすぐのところに、荒木町の飲食店街があります。
かつての花街風情をのこす荒木町の路地裏の一角で、僕と同い年の友だちズッキーは、小さなバーを経営していました。
ひょんなことから高校時代に知り合ったズッキー。
学校は違うけど、気が合って、家も近所だったから、しょっちゅう遊んだり酒を飲んでは語り合ったりする仲になりました。
高校を卒業したズッキーは役者志望で、劇団に入って舞台活動したり、テレビドラマのちょい役で出演したり、ある大物役者の付き人をしていた時期もありました。
でも最終的には、夜の店の仕事に生きがいを見つけたのでした。
はじめは、荒木町で出会った師匠のバーで修行の日々でした。
師匠は元シンガーで、お客たちを歌とギターで楽しませるエンタメのプロでした。
写真のお店 「PINE FIELD」 が師匠のお店です。なお、四角い木製看板はズッキー作。確か、師匠の誕生日か何かで贈ったもの(看板裏には日付とか、みんなの寄せ書きが記されている)。
とにかくズッキーは、その師匠の元で修行して自分の夢に向かっていました。
自分の店を持つという夢に向かって。
何年目だったか。お金もなんとかかんとか工面して、ついにズッキーは自分の小さな店を出したのです。まあまだ、ギターの腕前は今一歩だったけど。
それにもちろん、こういう歴史あるエリアで出店するというのは一筋縄ではいかないわけで。
そんな、苦労話を聞いたりしながら、僕は自然とズッキーのお店に通うようになっていました。
お互い二十代だもんな。若かったよ。
◆
お嬢さんには、オラたちが指一本触れさせねえだよ!
というわけで、ここ荒木町の力車門通りから飲食店街を通り抜けていきます。
メイン通りを歩きながら、枝分かれする左右の路地にもお店がいっぱい並んでいます。
透かしブロックがいっぱいのお店もおもしろい。
沖縄の花ブロックのイメージなのかなあ。台風が多いエリアならではの文化。
ハイボール、安っ!
グッ!と くるね。
この石畳の奥に吸い込まれそうになる。
コインパーキングの奥のレンタルボックスに吸い込まれそうになる。
向こうの階段もいい佇まいだよねえ。
こちらは、荒木町商店会の中央に鎮座する金丸稲荷大神です。
天和3年(1683)の創建より、江戸の大火でも関東大震災でも災禍を免れたと伝わっています。
残念ながら東京大空襲では焦土となってしまったけれど、町民に死者は一人もなかったそうです。まさに荒木町の守り神ですね。
いい感じにくねっておわすな。
川っぽい。
おれんち右だよ。
階段のぼって二階の右だから。
右って、お箸もつ方の手だよ。
いい感じの路地を何度も通り抜けたりしていると、
ディープダンジョンに迷い込んでしまった気がしてくる。
ダンジョンのモンスターに出会ってしまいそうだ。
エレキギター だ
ゆうしゃ は エレキギター を てにいれた
とにかくダンジョンを進もう。
あそこに番犬がいるけど
近寄らなければ大丈夫だ。
無事にダンジョンを抜けた。
柳新道通り というダンジョン名だったのか…
と思ったら! ラスボスが上にいた!
特大エリマキトカゲだ!
「エリマキを攻撃するんだ… ヤツの弱点はエリマキだ… いいな… ぐふっ!……」
ヒョウシキ は いきたえた
さらに、巨大な の があらわれた!
の は、のんきの の だった!
透明の提灯って珍しいですね。
夜に光ってるところも見てみたいなあ。
白い BOSS って珍しいかな?
おや?
あのお寺さんの門前にある看板は…
「この先行止まり」
見つけた! 一枚目!
よく見ると、看板上部に右向きの矢印が記されていた。
右を見ると、確かに行き止まりのようだった。
あの電柱にも念押しの 「この先行き止まり」 お札が貼られているし、奥で女性が掃除されていたからこれ以上は進めなかった。
正直言えば、前回あの時みたいに、「看板があったでしょう?」
と言われるのが怖かったから進めなかったのです。
四谷三丁目に戻ると、さっきまでは朝早すぎて閉まっていたシャッターが開いていて、
すでに、キュータは消火活動を始めていた。
キュータ! 頼もしいぞ!
通りの向こうに、
→ だいますのすまいだ ←
っていう、回文好きな不動産屋さんがいます。
私負けましたわ。
あぶさん ?
あぶさん !!
居酒屋 あぶさん、入ってみたいなあ。
行ったことある人と行きたいなあ。水島漫画は大好きだけど、それほど野球詳しくないから。
ナマステ~
テイクアウトデキマステ~
この路地。
なんか気になるぞ。
本日一枚目の 行き止まり看板 も、お寺さんのとこだったし……
やっぱり!
本日二枚目の行き止まり看板ゲット!
これは嬉しかった。
[写]
[真]
おしゃれだと思います。
そして、ここ。
四谷四丁目の交差点。
信号の向こうに新宿御苑トンネルが口をぽっかり開けています。
自動車専用の道路だから、車でバーッと行けば新宿駅南口の バスタ新宿 にすぐ行けるよ。
あれこれ調べていて知ったのですが、
三島由紀夫は、四谷四丁目生まれなのだそうです。
三島由紀夫の生誕地……
それを知った今、
今っていうのは、この記事を書いている今なんですけれど、
背筋に冷たいものが走りました。
それは、さっき途中になっていた僕の友だちズッキーの話に戻るのですが、実はズッキーはこの辺りのアパートに住んでいた当時、そこのバスタブで亡くなっていたのです。
ズッキー自ら店を畳んだ数か月後のことでした。
その、亡くなった日というのが三島由紀夫の自決した日と同じ11月25日だったのです。
もう、12年も前のことなのですが。なんだか急に色々と思い出されてきました。
◆
気を取り直して、散歩に戻ります。
あの奥に見えるのが、冒頭にご覧いただいた行き止まり看板。
名付けて、「まんまる四谷ホワイト」 です。
存在は知っていましたが、実際に見るのは初めて。
手前には、DADA があります。
おー、ようやく会えた。
会いたかったよ。
しかもツインズ!!
どっちがお兄さんなの??
しかも奥は、正真正銘の行き止まり。
完璧だ。
これは無理だ。
行き止まりの向こうは新宿御苑の森が広がっているはずです。
ふと、隣のビルに目をやると僕はカンドーしました!
なんてことをやっておりましたら、後ろから来ていた、緑のランニングシャツのおじさんに声を掛けられました。
「おい、ここでなにしてんだ?」
振り返ると、たったいま蓬萊山から下りてきた仙人のような髭の風貌の人が立っていました。
洗濯物やらいろんな荷物が詰め込まれたベビーカーを携えています。
これは下手に嘘をつくと神通力でやられると思って、正直に答えました、
「実は、行き止まりの写真を撮ってまして」
すると仙人は僕のカメラをジーと見て言いました、
「オレもそういうカメラ欲しかったんだよな」
「いや、これはちょっと差し上げるわけには」
すると、仙人は思い出したように自分の肘の辺りを指さして突然…
「これ見ろよ!」 と、言うのです。
その部分を見るとケガをしていました。10円玉くらいに擦りむけています。
「血が出てますよ?! ケンカでもしたんですか?」
僕がそう言うと、
「オレはしねえよ、ケンカ弱いから。でも心は強いぞ! お前も強く生きろよ! あばよ!」
と叫ぶと、行き止まりの方向へ進んで行ってしまいました。
しばし呆気に取られていましたが、不老不死の仙人だからケガなんてへっちゃらなんだろう、と思いました。
そしてまた、「まんまる四谷ホワイト」 の写真を撮ったりしてから、もう一度行き止まりの方を見ると、仙人の姿が消えていました。
行き止まりなのに、どこに消えてしまったんだろう。
仙人が消えた、旧玉川上水の辺りを捜索してみましたが見つかりません。
見つけたのは、
古ぼけたカセットテープだけでした。
そうだ。何年経っても、古いカセットテープが捨てられない人間だっているんだ。
さっきの仙人の、 お前も強く生きろよ の言葉が去来する。
消えた仙人は、空を飛んで蓬莱山へ帰ったのかも知れません。
衣類の入ったベビーカーと共に…
もっとも、殆どが車に向けられた看板であるから、歩行者が通り抜けられることは多い。
あまり車や人が入り込まない行き止まり看板の先には、手つかずの何かがある気がしてならないから。
行ってみよう。
行き止まりから始まる、行き止まり散歩。
すごいやつが現れた。
丸くて白い行き止まり看板だ。
一切の無駄は排除されており、気持ちの良い潔さが感じられる作品。
あのー、「まんまる四谷ホワイト」 って呼んでもいいですか?
パリオリンピックの開会式すごかったねー、選手たちセーヌ川を船で下ってたよー、ところでブレイキンってなに ?
とか言っていた、次の日ぐらいの日曜の早朝。僕はトイレに行きたくて目が覚めた。
AM 4:25
いつもの如く二度寝するのはもったいない。
そう思ったから、そのまま身支度して何かに導かれるように始発電車に乗り込んだ。
もったいないと思ったのには3つ理由があって、
(理由:1) 最近散歩してないなーと思っていた
(理由:2) 仕事中に見かけた行き止まり看板を確認したかった
(理由:3) 若いころ通っていた荒木町のバーが今どうなっているか見たかった
おいおい、理由が3つもねえと動かねえのかよオッサン!
という声が聞こえてきそうだけど、はい、そうなんです。かなりの高頻度で早朝トイレで目が覚めるオッサンなんです。近頃こっそり風呂場で白髪染めし始めたオッサンなんです。あと、腰痛持ち。
そんな訳で、丸ノ内線 荻窪行きの始発電車に乗って、四谷三丁目で降りました。
駅構内とってもキレイになったよね。
何年振りだろうこの駅で降りるの。
そうだ、こんな感じだ。
四谷三丁目の交差点に、でんとそびえる四谷消防署。
でかい。
こんなにでかかったっけ?
ちょっと調べると、この建物はそんじょそこらの消防署とは違っていた。
なんと、消防博物館(入館無料)が併設されているのだ。
ここで歴代の消防車や救急車、消防ポンプ、防火衣、消防活動資器材なんかの展示を見て、消防の歴史とか災害発生時に取るべき行動などが学べるらしい。
なお、マスコットキャラクターは 「ファイアーくん」。
出典: 東京消防庁 広報とうきょう消防(第11号)
夏休みの自由研究にもおすすめです。
へー、東京消防庁マスコット「キュータ」は知ってるけど、「ファイアーくん」は知らなかったなあ。
ファイアーくん待ってろよー。
こんど会いにいくからね。
ところで、四谷消防署のとなりの交番がひときわ小っちゃくてかわいかった。
これは、交番の中でもminiという部類でね。交番miniの役割は道案内と迷子の保護だけなんです。すいませんウソです。
そういえば昔、まだチビだった息子が街で迷子になってしまって。泣きべその息子を肩車で探してくれていたお巡りさん。その節はありがとうございました。
久しぶりに、この辺りを自分の足で歩いているのが嬉しい。
看板とかお店が変わっていたりするのは、たまに車で通過していたからなんとなく知っているけれど、徒歩なら細かい発見があるから楽しい。
それに、若いころは駅を降りたら脇目も振らずに友だちがやっているバーに直行していたから、ほとんど周囲に注意を払っていない。見ていないから知らない看板なんかがたくさんある。
それに、だいたいが夜で暗い時間帯だったからなおさらだ。
おはよう。
二人そろって、ラジオ体操いくの?
早朝の散歩はいい。
だって、ランニングでいい汗かいてる人とか、ちっこいワンちゃんの散歩してる人がいるし、公園でみんな集まってラジオ体操が始まったりするから。何となく、さあ、あたらしい一日が始まるぞって感じがするから。チリンチリン、あ、新聞配達ごくろうさまです。
知らない人と、にっこり 「おはようございます」 とか挨拶を交わしてもおかしくない時間帯が早朝。
でも、もうちょっと後の出勤のバタバタした時間帯になろうものならもうダメ。足早に会社や学校に向かう人たちが多くなるから。「おはようございます」 だって、早口で 「おはざます」 みたいな感じになってくるから。
お店と自宅が一体になってる家って憧れる。
あばれはっちゃくは、自宅が理容店だったと思うんだけど、はっちゃくは 「かあちゃんただいま!」 とか叫んで、ランドセルぶん投げて2秒で外遊びに出かけてたな。だいたい髪カット中のお母さんがランドセルをナイスキャッチするんだよね。これ、けっこう危険な演出だったよね。
この写真は、やなせたかしのアンパンマンショップです。
賃貸物件のアパマンショップじゃないよ。
ここで、唐突なのですが。
ちょっと、先程の (散歩理由:3) について補足しておきたいんです…
ここからすぐのところに、荒木町の飲食店街があります。
かつての花街風情をのこす荒木町の路地裏の一角で、僕と同い年の友だちズッキーは、小さなバーを経営していました。
ひょんなことから高校時代に知り合ったズッキー。
学校は違うけど、気が合って、家も近所だったから、しょっちゅう遊んだり酒を飲んでは語り合ったりする仲になりました。
高校を卒業したズッキーは役者志望で、劇団に入って舞台活動したり、テレビドラマのちょい役で出演したり、ある大物役者の付き人をしていた時期もありました。
でも最終的には、夜の店の仕事に生きがいを見つけたのでした。
はじめは、荒木町で出会った師匠のバーで修行の日々でした。
師匠は元シンガーで、お客たちを歌とギターで楽しませるエンタメのプロでした。
写真のお店 「PINE FIELD」 が師匠のお店です。なお、四角い木製看板はズッキー作。確か、師匠の誕生日か何かで贈ったもの(看板裏には日付とか、みんなの寄せ書きが記されている)。
とにかくズッキーは、その師匠の元で修行して自分の夢に向かっていました。
自分の店を持つという夢に向かって。
何年目だったか。お金もなんとかかんとか工面して、ついにズッキーは自分の小さな店を出したのです。まあまだ、ギターの腕前は今一歩だったけど。
それにもちろん、こういう歴史あるエリアで出店するというのは一筋縄ではいかないわけで。
そんな、苦労話を聞いたりしながら、僕は自然とズッキーのお店に通うようになっていました。
お互い二十代だもんな。若かったよ。
お嬢さんには、オラたちが指一本触れさせねえだよ!
というわけで、ここ荒木町の力車門通りから飲食店街を通り抜けていきます。
メイン通りを歩きながら、枝分かれする左右の路地にもお店がいっぱい並んでいます。
透かしブロックがいっぱいのお店もおもしろい。
沖縄の花ブロックのイメージなのかなあ。台風が多いエリアならではの文化。
ハイボール、安っ!
グッ!と くるね。
この石畳の奥に吸い込まれそうになる。
コインパーキングの奥のレンタルボックスに吸い込まれそうになる。
向こうの階段もいい佇まいだよねえ。
こちらは、荒木町商店会の中央に鎮座する金丸稲荷大神です。
天和3年(1683)の創建より、江戸の大火でも関東大震災でも災禍を免れたと伝わっています。
残念ながら東京大空襲では焦土となってしまったけれど、町民に死者は一人もなかったそうです。まさに荒木町の守り神ですね。
いい感じにくねっておわすな。
川っぽい。
おれんち右だよ。
階段のぼって二階の右だから。
右って、お箸もつ方の手だよ。
いい感じの路地を何度も通り抜けたりしていると、
ディープダンジョンに迷い込んでしまった気がしてくる。
ダンジョンのモンスターに出会ってしまいそうだ。
エレキギター だ
ゆうしゃ は エレキギター を てにいれた
とにかくダンジョンを進もう。
あそこに番犬がいるけど
近寄らなければ大丈夫だ。
無事にダンジョンを抜けた。
柳新道通り というダンジョン名だったのか…
と思ったら! ラスボスが上にいた!
特大エリマキトカゲだ!
「エリマキを攻撃するんだ… ヤツの弱点はエリマキだ… いいな… ぐふっ!……」
ヒョウシキ は いきたえた
さらに、巨大な の があらわれた!
の は、のんきの の だった!
透明の提灯って珍しいですね。
夜に光ってるところも見てみたいなあ。
白い BOSS って珍しいかな?
おや?
あのお寺さんの門前にある看板は…
「この先行止まり」
見つけた! 一枚目!
よく見ると、看板上部に右向きの矢印が記されていた。
右を見ると、確かに行き止まりのようだった。
あの電柱にも念押しの 「この先行き止まり」 お札が貼られているし、奥で女性が掃除されていたからこれ以上は進めなかった。
正直言えば、前回あの時みたいに、「看板があったでしょう?」
と言われるのが怖かったから進めなかったのです。
行き止まり散歩 ~大久保から東中野へ~|誰かの散歩マガジン サンポー
行き止まり看板の9割は嘘だと思っている。もっとも、殆どが車に向けられた看板であるから、歩行者が通り抜けられることは多い。あまり車や人が入り込まない行き止まり看板の先には、手つかずの何か…
四谷三丁目に戻ると、さっきまでは朝早すぎて閉まっていたシャッターが開いていて、
すでに、キュータは消火活動を始めていた。
キュータ! 頼もしいぞ!
通りの向こうに、
→ だいますのすまいだ ←
っていう、回文好きな不動産屋さんがいます。
私負けましたわ。
あぶさん ?
あぶさん !!
【あぶさん】(ウィキペディアより)
水島新司の日本の野球漫画作品。1973年5号から2014年4号まで『ビッグコミックオリジナル』(小学館)にて連載された。酒豪の強打者・「あぶさん」こと景浦安武(かげうら やすたけ)を主人公とする。2014年2月の終了時点では、日本で最も長く連載が続いたスポーツ漫画でもあった。
居酒屋 あぶさん、入ってみたいなあ。
行ったことある人と行きたいなあ。水島漫画は大好きだけど、それほど野球詳しくないから。
ナマステ~
テイクアウトデキマステ~
この路地。
なんか気になるぞ。
本日一枚目の 行き止まり看板 も、お寺さんのとこだったし……
やっぱり!
本日二枚目の行き止まり看板ゲット!
これは嬉しかった。
[写]
[真]
おしゃれだと思います。
そして、ここ。
四谷四丁目の交差点。
信号の向こうに新宿御苑トンネルが口をぽっかり開けています。
自動車専用の道路だから、車でバーッと行けば新宿駅南口の バスタ新宿 にすぐ行けるよ。
あれこれ調べていて知ったのですが、
三島由紀夫は、四谷四丁目生まれなのだそうです。
三島由紀夫の生誕地……
それを知った今、
今っていうのは、この記事を書いている今なんですけれど、
背筋に冷たいものが走りました。
それは、さっき途中になっていた僕の友だちズッキーの話に戻るのですが、実はズッキーはこの辺りのアパートに住んでいた当時、そこのバスタブで亡くなっていたのです。
ズッキー自ら店を畳んだ数か月後のことでした。
その、亡くなった日というのが三島由紀夫の自決した日と同じ11月25日だったのです。
もう、12年も前のことなのですが。なんだか急に色々と思い出されてきました。
気を取り直して、散歩に戻ります。
あの奥に見えるのが、冒頭にご覧いただいた行き止まり看板。
名付けて、「まんまる四谷ホワイト」 です。
存在は知っていましたが、実際に見るのは初めて。
手前には、DADA があります。
おー、ようやく会えた。
会いたかったよ。
しかもツインズ!!
どっちがお兄さんなの??
しかも奥は、正真正銘の行き止まり。
完璧だ。
これは無理だ。
行き止まりの向こうは新宿御苑の森が広がっているはずです。
ふと、隣のビルに目をやると僕はカンドーしました!
なんてことをやっておりましたら、後ろから来ていた、緑のランニングシャツのおじさんに声を掛けられました。
「おい、ここでなにしてんだ?」
振り返ると、たったいま蓬萊山から下りてきた仙人のような髭の風貌の人が立っていました。
洗濯物やらいろんな荷物が詰め込まれたベビーカーを携えています。
これは下手に嘘をつくと神通力でやられると思って、正直に答えました、
「実は、行き止まりの写真を撮ってまして」
すると仙人は僕のカメラをジーと見て言いました、
「オレもそういうカメラ欲しかったんだよな」
「いや、これはちょっと差し上げるわけには」
すると、仙人は思い出したように自分の肘の辺りを指さして突然…
「これ見ろよ!」 と、言うのです。
その部分を見るとケガをしていました。10円玉くらいに擦りむけています。
「血が出てますよ?! ケンカでもしたんですか?」
僕がそう言うと、
「オレはしねえよ、ケンカ弱いから。でも心は強いぞ! お前も強く生きろよ! あばよ!」
と叫ぶと、行き止まりの方向へ進んで行ってしまいました。
しばし呆気に取られていましたが、不老不死の仙人だからケガなんてへっちゃらなんだろう、と思いました。
そしてまた、「まんまる四谷ホワイト」 の写真を撮ったりしてから、もう一度行き止まりの方を見ると、仙人の姿が消えていました。
行き止まりなのに、どこに消えてしまったんだろう。
仙人が消えた、旧玉川上水の辺りを捜索してみましたが見つかりません。
見つけたのは、
古ぼけたカセットテープだけでした。
そうだ。何年経っても、古いカセットテープが捨てられない人間だっているんだ。
さっきの仙人の、 お前も強く生きろよ の言葉が去来する。
消えた仙人は、空を飛んで蓬莱山へ帰ったのかも知れません。
衣類の入ったベビーカーと共に…