僕の好きなA4横断幕
- 更新日: 2018/01/25
紹介します。
A4で作られた横断幕。
A4用紙に1文字ずつ印刷して、横もしくは縦(縦だと垂れ幕だけど)に並べたやつ、ありますでしょう? 街を歩いていれば、必ずといっていいほど目に入ってきます。
結論から申し上げますと、僕はこれが好きで、みんなにも好きになってもらいたいと思っています。
そこで今日は、A4横断幕の魅力について、広く浅く紹介させてください。
この現象の理由として様々な要因が重なっていると考えられますが、お店の視点から解説を試みます。
週替わりの店舗スペース。これは、僕がA4横断幕のすべてを表していると考える象徴的な一枚です。
見てください。メイン看板、サイドを固めるディスプレイ、目立つ文字はすべてA4横断幕で構成されています。週替わりであれば、看板にお金をかけるわけにはいきません。A4の出番です。
ところで、A4横断幕のトーンには全くケーキ感がなく、デザイナーがこれを見たら発狂するかもしれません。しかし現実には、通行人は立ち止まり、賑わっています。低コストで実績が出てしまうのが、A4横断幕の魅力ではないでしょうか。
A4横断幕を作るコストは高々数十円です。思い立ったらすぐにプリントできてしまいます。
カジュアルに制作されたA4横断幕は、通常の看板に比べてよりエモーショナルであり、刹那的であると思います。
さて、次項からは僕が好きなA4横断幕を見ながら解説していきましょう。
「無くなりました!」という報告。
悲しい! と思いました。実際には「昼休みなく営業していますからぜひ来てくださいね!」という善意の発信だと思いますが、誤解されることを考慮していない点ふくめて刹那的であると考え、紹介させていただきました。
ドリンクバー導入決定の報告。
「はじまりました」とかで良いところを「導入決定!」とする点に店側の感情が見えて素晴らしいと思います。
えっドリンクバーって導入を検討する余地があったんだ、という知見も得られるA4です。
情熱的な先生なのでしょう。慢性的な熱い感情をA4に表出させているという点において素晴らしいものです。
おそらく、継ぎ足し継ぎ足しで作られたのではないでしょうか。A4横断幕は増殖しがちです。
「アンパンマンコーナーあるよ」という告知のために数万円の横断幕は作らないでしょう。でも、数十円で出来るならどうでしょう。言ってもいいかな、という気になる。
A4横断幕の包容力を示す事例です。A4横断幕は、わりとどうでもいいことを言っていることが多いです。
「検索」と最後にあるのですが、検索ワード長いな……。
おそらく2行目あたりのワードで検索してくれ、ということだと思うので十分伝わるのですが、もしこれが布製の横断幕だったらちょっと残念ですし、先方も、もうちょっと見え方などを研究すると思います。A4だから許されるユルさが出ていて、僕はとても良いと思います。
この項では、とにかく長いA4横断幕を見ていきましょう。
お部屋暗くないでしょうか。
ところで、このA4横断幕はカッチリと数を合わせてきており、考えて貼った跡が見られます。もしかすると、外から見えないようにする、という意図を含んだかしこいA4横断幕かもしれません。34枚。
病院の中が全然見えません。
「インフルエンザ」が改行されているところなどに、時節ごとに継ぎ足していった跡が伺えます。当初は真ん中の窓だけだったのでしょう。45枚。
立川のイオンで、吹き抜けのフードコートから見えたA4横断幕です。
フードコートの客に一生懸命訴求しています。僕が持っている中で一番枚数の多いA4横断幕です。55枚。
あなたはどうですか?
気になりませんか?
ちなみにこのお店おいしかったです。
たけのこ。
バクテン教室。
ピアス。
冒頭で紹介したやつの再掲ですが、息継ぎ無くてすごいなって。予告、からはじまるのがそうさせるのか、犯罪の香りがちょっとする。
ネイルサロン ジェル ネイルサロン
A4はよく復唱します。
色とフォントがちょっとおばあちゃんの感じがして、製作者はワンピースを知らない可能性あるなって思いました。オーナーからワンピースを宣伝しろといわれたパートのおばあちゃんが「???」と思いながら作ったのではないでしょうか。
なんなら、婦人用のワンピースが出てきそうです。
いろいろおかしい。
もともと横書きで印刷したものを縦にしたので「ー」がおかしくなっているのですが、これ、よく見ると白い模造紙にいちいち裁断して貼っているので、その手間のなかで「ー」を縦にすればよかったのでは? と思う。
ちなみに、縦書きに変更、しかも左から書き始める仕様にしたのは、左側にメイン通路があるために「武蔵野線」から目に入れたかったのではないかと推測します。
A4横断幕は日本だけのものではありません。とかいってこれは秋葉原で見つけたものなのですが、中華圏の観光客にアピールするA4です。
最後の1文字だけちょっと傾ける手法は他では見たことがありません。「●●してネ?」みたいな感じの表現なのか、はたまた中国式なのか。
今までのA4横断幕はビジネスオーナーからの発信でしたが、これは地元民から、近所の飲食店に対しての警告のように読めます。
さらに飲食店がA4横断幕で応戦すれば、A4横断幕カルチャーはさらに複雑で厚いものになっていくでしょう。
◆
ところで、A4横断幕作成にあたり、フリーの専用ソフトなどもありますが、一番簡単なのはPowerPointです。
Wordなどのワープロソフトを使うと、調整しているうちに改行などが入ってしまうことがありますが、PowerPointならば1シートずつ独立しているため、それがありません。
一気に印刷できるのも魅力です。
改行がおかしくても誰も気にしません。ルールはひとつ、横に貼れるだけ貼る。
通りすがりの皆様に、新年のご挨拶も簡単にできます。
ちなみに、A4横断幕を貼った窓を開けるととても残念なことになるので、いかなる場合も換気は許されません。
そのうち、通りすがらない人にも見てもらいたくなったので年賀状にしました。本末転倒です。
みなさんも楽しいA4を見つけたらTwitterとかで教えてください。
最後に、これ書きながら見つけてしまったのですが、僕よりもっと強い興味を持ってA4を蒐集している方がいらっしゃったので、物足りなかったらA4タイポグラフィをどうぞ。
(おしまい)
A4用紙に1文字ずつ印刷して、横もしくは縦(縦だと垂れ幕だけど)に並べたやつ、ありますでしょう? 街を歩いていれば、必ずといっていいほど目に入ってきます。
結論から申し上げますと、僕はこれが好きで、みんなにも好きになってもらいたいと思っています。
そこで今日は、A4横断幕の魅力について、広く浅く紹介させてください。
なぜ街にA4横断幕は多いのか
2018年現在、街中はデジタルサイネージでもARでもなく、A4横断幕のカンブリア紀を迎えています。この現象の理由として様々な要因が重なっていると考えられますが、お店の視点から解説を試みます。
週替わりの店舗スペース。これは、僕がA4横断幕のすべてを表していると考える象徴的な一枚です。
見てください。メイン看板、サイドを固めるディスプレイ、目立つ文字はすべてA4横断幕で構成されています。週替わりであれば、看板にお金をかけるわけにはいきません。A4の出番です。
ところで、A4横断幕のトーンには全くケーキ感がなく、デザイナーがこれを見たら発狂するかもしれません。しかし現実には、通行人は立ち止まり、賑わっています。低コストで実績が出てしまうのが、A4横断幕の魅力ではないでしょうか。
A4横断幕鑑賞のポイント
A4横断幕を作るコストは高々数十円です。思い立ったらすぐにプリントできてしまいます。
カジュアルに制作されたA4横断幕は、通常の看板に比べてよりエモーショナルであり、刹那的であると思います。
さて、次項からは僕が好きなA4横断幕を見ながら解説していきましょう。
感情的・刹那的
一瞬の激情をA4に託して。すぐに作れるA4横断幕ならではの感情の乗り方を楽しみましょう。「無くなりました!」という報告。
悲しい! と思いました。実際には「昼休みなく営業していますからぜひ来てくださいね!」という善意の発信だと思いますが、誤解されることを考慮していない点ふくめて刹那的であると考え、紹介させていただきました。
ドリンクバー導入決定の報告。
「はじまりました」とかで良いところを「導入決定!」とする点に店側の感情が見えて素晴らしいと思います。
えっドリンクバーって導入を検討する余地があったんだ、という知見も得られるA4です。
情熱的な先生なのでしょう。慢性的な熱い感情をA4に表出させているという点において素晴らしいものです。
おそらく、継ぎ足し継ぎ足しで作られたのではないでしょうか。A4横断幕は増殖しがちです。
低コストならでは
「アンパンマンコーナーあるよ」という告知のために数万円の横断幕は作らないでしょう。でも、数十円で出来るならどうでしょう。言ってもいいかな、という気になる。
A4横断幕の包容力を示す事例です。A4横断幕は、わりとどうでもいいことを言っていることが多いです。
「検索」と最後にあるのですが、検索ワード長いな……。
おそらく2行目あたりのワードで検索してくれ、ということだと思うので十分伝わるのですが、もしこれが布製の横断幕だったらちょっと残念ですし、先方も、もうちょっと見え方などを研究すると思います。A4だから許されるユルさが出ていて、僕はとても良いと思います。
部屋が暗くなるほど
言いたいことがたくさんあるとき、往々にして窓の採光機能が失われます。この項では、とにかく長いA4横断幕を見ていきましょう。
お部屋暗くないでしょうか。
ところで、このA4横断幕はカッチリと数を合わせてきており、考えて貼った跡が見られます。もしかすると、外から見えないようにする、という意図を含んだかしこいA4横断幕かもしれません。34枚。
病院の中が全然見えません。
「インフルエンザ」が改行されているところなどに、時節ごとに継ぎ足していった跡が伺えます。当初は真ん中の窓だけだったのでしょう。45枚。
立川のイオンで、吹き抜けのフードコートから見えたA4横断幕です。
フードコートの客に一生懸命訴求しています。僕が持っている中で一番枚数の多いA4横断幕です。55枚。
ときに語りかける
A4はときに、通行者に語りかけます。あなたはどうですか?
気になりませんか?
ちなみにこのお店おいしかったです。
単語
推敲が甘いため長くなりがちなA4横断幕ですが、単語タイプも多く存在します。取り急ぎ存在をアピールするときにも、A4は大活躍です。たけのこ。
バクテン教室。
ピアス。
その他気になるもの
分類できなかったのですが楽しいA4横断幕を紹介します。冒頭で紹介したやつの再掲ですが、息継ぎ無くてすごいなって。予告、からはじまるのがそうさせるのか、犯罪の香りがちょっとする。
ネイルサロン ジェル ネイルサロン
A4はよく復唱します。
色とフォントがちょっとおばあちゃんの感じがして、製作者はワンピースを知らない可能性あるなって思いました。オーナーからワンピースを宣伝しろといわれたパートのおばあちゃんが「???」と思いながら作ったのではないでしょうか。
なんなら、婦人用のワンピースが出てきそうです。
いろいろおかしい。
もともと横書きで印刷したものを縦にしたので「ー」がおかしくなっているのですが、これ、よく見ると白い模造紙にいちいち裁断して貼っているので、その手間のなかで「ー」を縦にすればよかったのでは? と思う。
ちなみに、縦書きに変更、しかも左から書き始める仕様にしたのは、左側にメイン通路があるために「武蔵野線」から目に入れたかったのではないかと推測します。
A4横断幕は日本だけのものではありません。とかいってこれは秋葉原で見つけたものなのですが、中華圏の観光客にアピールするA4です。
最後の1文字だけちょっと傾ける手法は他では見たことがありません。「●●してネ?」みたいな感じの表現なのか、はたまた中国式なのか。
今までのA4横断幕はビジネスオーナーからの発信でしたが、これは地元民から、近所の飲食店に対しての警告のように読めます。
さらに飲食店がA4横断幕で応戦すれば、A4横断幕カルチャーはさらに複雑で厚いものになっていくでしょう。
ところで、A4横断幕作成にあたり、フリーの専用ソフトなどもありますが、一番簡単なのはPowerPointです。
Wordなどのワープロソフトを使うと、調整しているうちに改行などが入ってしまうことがありますが、PowerPointならば1シートずつ独立しているため、それがありません。
一気に印刷できるのも魅力です。
改行がおかしくても誰も気にしません。ルールはひとつ、横に貼れるだけ貼る。
通りすがりの皆様に、新年のご挨拶も簡単にできます。
ちなみに、A4横断幕を貼った窓を開けるととても残念なことになるので、いかなる場合も換気は許されません。
そのうち、通りすがらない人にも見てもらいたくなったので年賀状にしました。本末転倒です。
みなさんも楽しいA4を見つけたらTwitterとかで教えてください。
最後に、これ書きながら見つけてしまったのですが、僕よりもっと強い興味を持ってA4を蒐集している方がいらっしゃったので、物足りなかったらA4タイポグラフィをどうぞ。
(おしまい)