ずっと味のするガム 2024年1月号

  • 更新日: 2024/01/30
  • hatebu
  • feedly
  • rss

こんばんは、サンポー編集部です。

サンポーでは月に10本前後の散歩の読みものを出しています。
ところで、散歩における街の解釈に正解はありません。
誰かの散歩のいちシーンについて、別の誰かは全く別のことを思うでしょう。
散歩の読み物とは、ずっと味のするガムなのかもしれません。

そこで、過去に行われた散歩のシーンを採りあげて、別の角度から噛んでみるのを試みにやってみようと思います。
それもまた散歩なのではないでしょうか。散歩の読み物の散歩みたいなことです。

今回は 2023年12月に公開した散歩の読み物のうち、もっと噛んでみたいシーンを採りあげます。


独立系ベーカリーショップ


自由律俳句と尼崎中央商店街のあたり より
(散歩者:パスカさん)


パスカさんの読み物にあった、ベーカリーショップの写真が気になりました。
ブランド名や社名であったのか、ベーカリーショップの「前」を消していますが、「ベーカリーショップ」という文字は残っています。
左側の商品写真はまだ新しく、現役のようにも見えます。これは、やってる……?

もしやっているならですが、この写真は「あの牛丼屋」を思い出させてくれます。

倒産「牛丼太郎」元社員、「丼太郎」で挑む復活

「牛丼太郎」が復活する可能性が出てきました。


みんなに愛されていた牛丼太郎というチェーンが倒産したとき、茗荷谷の店舗が「牛」の字を消して「丼太郎」という名前で独立して経営を続けたんですよね。
このベーカリーショップも「○○ベーカリーショップ」という何かの庇護を離れ、心機一転「ベーカリーショップ」としてやっていたらいいな、と思いました。


お賽銭を置く心理


知らない土地を散歩したくて、苫小牧に来ていた より
(散歩者:ぼっちのazumiさん)


お賽銭がすごいな、と思って採りあげました。
お賽銭が勝手に置かれる現象はとてもいいですよね。
ここでは、置き場所の「新天地」を求める人たちの行動に注目してみようと思います。

・ほっき地蔵の腕の上に置いてバランス感覚を試す
・カエルの下に積んで笑点でうまいこと言ったみたいにする
・「寿」の石の腹巻き的なものに10円を挿していくショーパブスタイル

俺たちゃふつうの場所には置かないぞ? という気概が感じられてとてもいいですね。

あと、ほっき地蔵の横におわしますガチャガチャから出てきたような大黒天やカエルは、誰かが勝手に置いた可能性があるな、と思いました。神っぽいものは捨てるわけにもいかず、なあなあの合祀をされがちです。うちの近所の地蔵の脇にも自作の埴輪みたいなのが置かれているのですが、片付けられずに数年が経ちました。最近はちゃっかりお水をもらい始めています。

ところでこの写真の左上に写っている古いインスタアイコン、なつかしすぎる。この陰影の感じ、初代iPhoneの頃じゃない?

編集部員のサトーさんからもこの写真にコメントいただきました。

横に書いてある「頭を撫ぜて下さい」いいですね、ご利益を抜きにしてもすなおに撫ぜてあげたくなります。

撫ぜてください。バウリンガルの訳語に出てきそうな言葉でいいですね。


ちゃんぽん屋の名前


行き止まり散歩 ~ 三鷹・井の頭公園のジブリ探し~ より
(散歩者:ソトノミストさん)


ちゃんぽんのグラバー亭って、スコットランドの貿易商人グラバーの長崎にある邸宅「グラバー邸」から来ているのでは、と思いました。
ちなみにちゃんぽん大手のリンガーハットもフレデリックリンガーという英国商人の小屋(ハット)、という意味だそうです。
ちゃんぽん業界の、外国商人の建物を名前につける風潮、なんかあるんでしょうか。

ちなみに当のリンガー氏は独立前はグラバー商会で働いていたそうです。
それならば……リンガーハットがグラバー亭からのれん分けしてたらアツい!と社史を調べたところ、リンガーハットの創業時の社名は「とんかつ浜勝」でした。リンガーハットの祖業、とんかつでした。ちゃんぽん。(とっぺんぱらりのぷう的な音)



好き


新所沢から所沢まで歩くと個性に満ちあふれてる より
(散歩者:高梨タカシさん)


僕も好きだなと思ったので採りあげました。
編集部員のサトーさんからもこの写真にコメントいただきました。

私も好き。

そうですね。

これは、具体的に何がいいんでしょうか。あれだ。体に悪そうなハムの色って食欲そそりますよね。
クリーム色はパンなのかチーズなのか辛子マヨなのかちょっと判断つかないんですけど、いずれにしろなんか不健康で旨そうです。

あとひとつ、僕はこの写真で「チハームズ」という食べ物を連想します。
Eテレでやっているピタゴラスイッチに「ひとつとびぶったいパタトクカシー」というコーナーがあります。「パトカー」と「タクシー」をひとつとびに合成した車を「パタトクカシー」と呼んだり、二つの物体をひとつとびに合成させて遊ぶものです。
そこに出てくる物体「チハームズ」は、チーズとハムをひとつとびに重ねた食べ物で、本当にちょうどこんな感じです。
息子が「チハームズ作ってえ」と言って以来、我が家ではたまに朝のおかずとして登場します。


目、そこなんだ


夢で見た街を散歩する より
(散歩者:伊原さん)


これはサトーさんが採りあげていました。

じぶんの想像の限界を感じました。ヘッドライト部分を目としない発想が、この広い世界にはあるのですね。その間を口として利用し、しかも食いしばって頬が赤くなっているようにも見えてきました。あれ、よく考えたら『カーズ』全部そうじゃん。


車の目は「ヘッドライト派」と「窓派」があるんですね。まったく意識していませんでした。
伊坂幸太郎の小説「ガソリン生活」に出てくる車(車が主人公)はまわりのできごとを把握していそうでしたが、どこが目という描写は無かったような気がします(あったっけ)。あれは「心眼派」でしょうか。


ふつうとは何か


宇治にあった「垣間見」ミュージアム より
(散歩者:谷頭和希さん)


宇治のファミマが観光地仕様の落ち着いた色であることを示すために、参考資料として示された「普通のファミマ」の写真ですが、これについて、FTDさんが採りあげていました。

歌舞伎町交番前のファミマは普通なんでしょうか。


普通とは、という普遍的な問いですね。歌舞伎町交番前、確かに最近取り締まりなどでザワザワしている付近のファミマは、普通かといわれると普通ではないかもしれません。
でも逆に、普通のファミマって何ですかね。そう考えるととても難しい気がします。
僕は地方出身なので、駐車場のない都市型のファミマは全部変なファミマだなと思います。
次回「ふつうのファミマコンテスト」を開きたいですね。みんなの普通を知りたい。


照れについて


ダナンでプリクラを撮る より
(散歩者:寺内真実さん)


プリクラのカウント中が恥ずかしい、というシーンです。
これもサトーさんが採りあげていました。

スマホでも同じ状況になると思うのですが、写真・動画SNSネイティブ世代(10~20代)はこれをどう処理してるんだろう。盛れてるとかビジュ最高とかを言いあう文化もあるから、時代がすでに照れを克服しているのかもしれません。


娘を観察しますと、スマホで撮られるときの照れはないようです。最高で撮られるのが礼儀みたいに思っているふしがあります。逆に、素の写真を撮ったりすると「消して!」と言います。僕は後者の写真のほうがいいと思うのですが、自分でハンドリングできているかどうかが重要なのかもしれません。
あと、個人的には「プリクラ独特の気まずさ」ってあるのでは、と思ったりします。スマホだと撮影者は自分か友達で、撮るタイミングもこっちで管理できるのですが、間のようなものを機械に任せるとろくなことがない気がしたり。


雑居ビルチェック


二子玉川の按田餃子 より
(散歩者:サトーカンナさん)


雑居ビルの看板があったので採りあげました。
雑居ビルに入っている店舗一覧を見るの、みなさんもお好きでしょう? ここは最近二子玉川にできたビルで、まだ埋まりきっていないようです。
古い雑居ビルも面白いのですが、このような新しい雑居ビルの感じも味わいがありますよね。早速見ていきましょう。

1Fに「博多濃麻呂」とあります。こってりした公家の表札かなと思ったのですが、本場博多のとんこつラーメン店のようです。1Fは飲食店としてはぜひ押さえておきたいですよね。「LoungeRange」はインドアゴルフのお店でした。多摩川が近いのだから河川敷でやればよくない? なんて思うのですが、とんこつラーメン食べたあとゴルフできるからいいんですよ。雑居ビルは偶然のモール。知らんけど。
2Fの「コリアンキッチン ぶたこたまがわ」もいいですね。コリアンの地名を店名にしそうなところ、現地の地名をつける。ニューヨークでニ゛ューヨークっていう名前の和食店を開く感じです。調べたらめちゃくちゃお洒落な韓国料理屋さんです。
3Fは歯医者・歯医者・美容室で出来ています。雑居ビルの3Fっぽさ、ここに極まる。とても好きな階です。
4Fは調べるとシーシャバーでした。僕はシーシャバーについて何の知識も持っていないので何も言えません。
ちなみに最上階は眉毛サロンでした。見晴らしの良い眉毛サロンだと思います。
とんこつラーメンから眉毛サロンまで、雑居率が素晴らしい雑居ビル、ごちそうさまでした。

まだ空いている1Fには空手道場が入ってほしいです。


それでは、また来月、僕たちが飽きていなければお会いしましょう。







このサイトの最新記事を読もう

twitterでフォローFacebookでフォロー
  • hatebu
  • feedly
  • rss

ヤスノリ

街の歪み研究家。1年に100駅以上降りる。駅を制覇する系のアプリは本気出せば結構なとこまでいくと思うのだけど、毎回起動を忘れる。

関連する散歩

フォローすると最新の散歩を見逃しません。

facebook      twitter      instagram      feedly

TOPへ戻る