本牧の馬、裏通りの牛

  • 更新日: 2018/08/02

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本牧とはどこにあるのか?

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陸の孤島へ、本牧へ



灼熱の太陽に溶かされて、物や事や人から意味が剥離して地面に落ちた。
アスファルトの上で一匹のミミズが死んだ、死んだミミズにアリたちが這い寄った、その上に意味が落ちた。



「本牧に牛はいるのだろうか」。
天の声がささやいた。
牧だからといって牛がいていいわけないだろう。だったら印西牧の原にも牛がいるってことになる。おれは印西牧の原がどこにあるのかもしらないが。
そして、若い怒りに狂ったおれは部屋を飛び出した。



飛び出して後悔した。暑いのである。
暑さは人間性を奪う。怒りを奪う。人を人たらしめているものを奪う。
失望が欠落している。
だからおれは本牧に行かねばならんのだ。

しかし、本牧とはどこにあるのだろうか?



ラヂオの声がささやいた。
「おまえが思う本牧を行け」と。
生粋の横浜人間ではないおれが。しかし、山手駅と石川町駅のはざまに漂着して20年。あるていどの土地鑑はある。
いや、おれにはおれの地図がある。
ユーミンがどう考えても「根岸」にあるドルフィンを「山手」と歌ったように。





おれの思う本牧は、山手隧道からはじまる。
おれ、おれってだれだ? おれは黄金頭というしがない底辺の労働者。
名前はポルトガルの詩人、フェルナンド・ペソアの『不穏の書』の一節からとった。

 生きることに向いていないということが、私の天才の徴かもしれないし、私の臆病さが洗練さの徴かもしれない。
私は――偽の黄金の金ぴかの神として――大理石柄の彩色紙でできた祭壇に自分を据えた。


しかしまあ、この由来を決めたのは今しがたである。


いざ本牧



山手隧道、こっち側。おれはこのトンネルのあっちとこっちを行き来して生きている。
生と死を行き来している。どちらが生の世界かしらないが。



はるか向こうに、あっち側。あっち側にはなにがある? 元町がある、石川町がある。その先に寿町があり、関内がある。
ちなみに、こっち側からあっち側の横浜中華街に通っていると思しき中国人たちもいる。



そして、トンネルの上には山手がある。立体的都市構造。別世界が上にはある。山手本通り。しかしそれはまたべつの話。



カベバトですら立体を利用している。このカベバト、位置する高さによって彼らのハイアラーキーを知ることができる。
天はハトの上にハトを作った。
アダムがイブを耕したとき、だれがそれを見ていたというのか?
子供が見てはいけないと思うのだが。



かつて本牧には市電が走っていた。それゆえに道が広い。ここには車庫があった。今は記念碑がある。記念碑は映り込みでよく読めない。艶消し加工にするべきだった。すべては手遅れだ。



威厳のあるドライブスルー・クリーニング店。
おれにはカーがないので利用したことはない。カー……。カーがほしい。カーがあれば、こうやって、ずったらずったら地を這わずに済んだ。魂の駆動体がそのしなやかな四輪でおれを天の国まで運んだというのに。天の国までのガソリン代を払えるかどうかしらないが。



なぜ交番を撮るのか。国家権力とはいかなるものか? という問いかけか?
いや、「このごろ、ポリスはスクーターに乗るね」と言いたかっただけかもしれない。
それだったら、もっとスクーターを撮れ。



「いったいおまえはいつまで本牧の入り口をウロウロしているのか?」。
天の声がささやいた。
あるいは、ただの幻聴。
無期限閉店中の銭湯。



「え、中区中が土木事務所に?」



地理を知るものよ、ようやく奇珍かということなかれ。そこそこは名のしれた中華料理店。おもえば、一度も入ったことがない。いや、入ったことはある。「今、満席です」、「あ、はい」。あれは女とその息子さんに引っ越しを手伝ってもらったときのことだった。べつの洋食屋で飯を食った。その味まで覚えているわけなかろう。

裏路地エレジー



というわけで、いきなり奇珍の横をすり抜けて裏路地に入る。奇珍のキッチンからは給食室の香りがする。そして、おれはこの裏路地が好きだ。



「おれはこの裏路地が好きだ」。
……なんて気取ったところで太陽は照りつける、気温は高い。ヒマワリすら日焼けする。この日は今年一番の暑さ。翌日と翌々日に更新されたが。



三角コーンすら地面に潜り込もうとしているではないか。それなのに道を這う大馬鹿もの。



さてこの横に奇妙なボコボコのある道は「旧千代崎川に蓋をして整備したもので……」ふむふむ。
「 空 白 」なんだよ、なに事故? なに事故って書いてあったの? そんなに連名で、なに書いたの? そして、消したの? 横浜の闇!



まあ落ち着け。双頭の蛙を見て落ち着け。



もしかしたら川が流れていたころに橋の一部だったかもしれない構造物を見て落ち着け。



そして、昼から歌うがいい。おまえの好きな「歩兵の本領」でも「メーデー歌」でも歌うがいい。
右に行く? それとも左? 行き着く先は同じ……。
おれは川の死骸の上をコンクリートで塗り固めたものの上を歩む。
今も、その下に川は流れているのか。
暗渠。



だから……、だから、何事故? この裏路地はなにを隠しているの……?



落ち着くのだ。ここは健康はらっぱ。



橋の一部だったかもしれない構造物を見て落ち着くのだ(なぜ橋の一部だったかもしれない構造物で落ち着くのだ?)



しかし、「はらっぱ」とは一体。草一本生えていないではないか。どこが「はらっぱ」なのか……。
いや、ここには葉っぱが生えていた。そうだ、それを放牧されていた牛が食った。食い尽くした。そして、草がなくなり、牛は立ち去った。立ち去った牛はどこへ行ったのか? さらに本牧の奥深く……。



右に行く? それとも左? 行き着く先は同じ……。



北方を統べる大神宮が見守る土地。



人々は祭りに浮かれる。祭太鼓、サイダー、花火、かき氷、ほんとうによいこととは何なのです?



Gas-yamaでなく、Gasuyama!


そして本牧



そして、本牧。ようやく、本牧。



お神輿だからといって店を閉めていいのか? いいのだ。この世に祭ること以上にたいせつなことなどなにがあろう。
汝の神を祭れ、汝の卑猥なる神を祭れ。汝の卑猥なる神の像を祭れ。



HONMOKU BASE。いよいよ、おれは本牧の中心地に足を踏み入れたといっていい。
この通りには不動産屋と理髪店が多い。おれの今のアパートを紹介してくれた不動産屋の女性は言った。
「このあたりに住むと、次の引っ越しもこのあたりという人が多いんですよ」。
抜け出られない街。
「ジュリーが住んでいて、たまにご夫婦でお買い物をしているのを見かけますよ」。
おれはまだジュリーを見たことがない。



抜け出られない街、リボンファンストリート!



マヤノリボンファン。



そして、本牧らしいってのはこういうことだろう? ……そう思ったおれは冷えたビールを求めて階段をのぼった。
……わけがあるまい。だいたい真っ昼間だ。モエもぬるくなる。おれは自販機で買った麦茶をちびちびと飲みながら歩いていた。喉が渇くと感じる前の、ちょっとした兆しを感じて、ほんの少しずつ水分を補給すること。喉が渇いてからでは遅い。ごくごく飲むくらいになったら、それはもう手遅れなのだ。それが、一時期サイクリングに夢中になったおれの経験則。



そして、ゴールデンカップ。語られるべきことが多い場所なのだろう。しかし、真夏の太陽に照らされて、意味は削ぎ落ちてしまった。真っ昼間、モエもぬるくなる。ゴールデンカップの輝きも失われる。黄金頭は黄金杯の前を素通りする。



もしもおれがおれのすばらしいCOLNAGO ACEに乗っていたのであれば、本牧ふ頭を目指したかもしれない。しかし今のおれはずったらずったら地を這う身。そして、本牧を目指す身。本牧の牛を探す身。直進。



……そして、はらっぱから去った牛たちの末路。押せよ、押すなよ。ガダラの牛たちは次々に焼ける金網に飛び込んでいった。本牧の牛の物語はここで終わる。
しかしおれ、もう何年、焼き肉を食っていないのだろうか。



いろいろなものが詰め込まれた古いビル。ここの扉を開けて、本牧観光の道をたずねるべきだったのか。いや、光には満ち溢れている。おれは日焼け止めを塗り直そうとした。ない。バッグのどこにも日焼け止めがない。出てくるときに、置いてきてしまったのだ。ああ、上の空。美空ひばりに罪はない。



なんの変哲もないゲオ。でも、おれはこのゲオにてすばらしいストライクウィッチーズと出会い、ローゼンメイデンと出会った。そのあと、利用してないけど。



そして本牧の権力、おれが免許の更新にくるところ山手警察署。おれの感覚では本牧警察署。ここを中心に本牧があるように思える。
正しいことしか記されていないWikipediaにはこうある。

土地柄、庁舎は県下各署に比べ洒落たデザインとなった。


土地柄、とはなんなのです?



HONMOKU FRONT。以前はイトーヨカドーだった。イトーヨカドーは撤退した。あまりに見事な撤退戦だったので、いつ撤退したのかわからないほどだった。深追いは禁物、いつだって孔明の罠。



そして、本牧には馬がいた。



HONMOKU FRONTを出たおれは再び本牧のメーン・ストリートに戻る。左折、磯子、根岸方面へ。



パトのカー。もはやおれも暑さにやられて意味を失っている。



バイクラックも炎上している……ウッ、頭が!



いや、気を取り直せ。本牧らしいっていうのはこういうことなんだろ? こういうカーで満足しちゃえよ。



おれがピザを頼むとピザを持ってきてくれる基地もある。携帯端末で注文する。注文が終わるとくじが引ける。くじが当たる。810円のクーポン。クーポンの繰り返しから抜け出られない。これも地獄か、天国か。



いま、この場所は地獄なのだろう、遊ぶ子供一人いない。というか、熱中症になる。遊具に触ればやけどする。君、やけどするのは恋だけで充分だ。そういうものだろう。



ところで、ここ本牧は「陸の孤島」とも言われる。グイッと東の海側に突き出て、電車が通っていない。かつては市電が走っていた。今、LRTというものを走らせようという人たちもいるが、実現するのかどうかわからぬ。バスは多く走っている。バスでは、いけないのか。バスに頼った生活をしたことがないからわからない。



あるいは、自転車では。いや、やはり不便なのだろう。たとえカーがあったとしても。カーでどこかへ出かけたら、カーをどこかに停めねばならぬ。勤め先に充分なカー置き場があるとは限らない。そして、自転車は雨に弱い、暑さに弱い。鉄道というものの偉大さがそこにはある。



それにしても、一気に自転車屋増えたな。山手警察署近くの古い個人店を除けば、ここだけだと思っていたのだが。やはり自転車需要はあるのだ。

マイカルより先に



そしておれはイオン本牧に入った。かつてここは「マイカル本牧」と呼ばれていた。おれがまだ鎌倉にいるころから、「マイカル本牧」という名は聞こえていた。なにか、マイケル・ジャクソンと結びついていた。バブルの夢、栄光の横浜。それが今ではイオン本牧。おれはグンゼが発売をはじめた男性用切りっぱなしのパンツじゃないから恥ずかしくないもんを買い求めてイオンに入った。イオンでは、イオンのトップバリュパンツじゃないから恥ずかしくないもんを売るばかりで、おれの求める切りっぱなしのパンツじゃないから恥ずかしくないもんは見当たらなかった。昔日の栄光。



ところでお前はなんの生き物なのか? 牛か? 馬か? 犬か? おれが決めてやろう、お前はヤブイヌだ。この世の終わりまで水を吐き続けろ。



この世の終わりまでイオンであり続けろ。



そして馬は流される。牛は食われ、馬は流される。あとに残るはヤブイヌばかり。



さらば、イオン。おれはもうちょっと東に行く。



EspañaではなくIsupania……というのはガス山から読めていたよ。




中図書館。告白すると、おれはここに本を返しにきた。中央図書館で借りた(横浜市内ならどこでも返却できるのです)梅崎春生の『狂い凧』を返しにきた。
おれは、目的なしに外出することに抵抗がある。なにかのきっかけが必要なのだ。引きこもっていた影響なのか、そういうところがある。だからおれには正確な意味で散歩というものができない。なにか用事を作ってしまう。図書館に本を返す。コンビニに東スポを買いに行く。夕暮れの写真を撮りに行く。いつか本当にあてのない散歩に出ることができるのだろうか。



カラスはその頭脳の優秀なるがゆえに、ほかの鳥どもとは違って必要な食事をすぐに済ませてしまうという。余った時間を遊ぶという。カラスですら遊ぶというのに、おれに遊びはない。



それにしたってメタセコイア、カラスの巣はどこにある?



食べて応援、絶滅キャンペーン。汝の滅びゆく神を祭れ。



そして、バス路線の上での本牧・イズ・ヒア。



ここが、本牧。ゴールデンカップの見た夢、マイカルの見た夢。



ただ、舗装された道があるだけ。



ハトもデニーズで一休み。
それなのにおれは這いつづける。これまでがそうであったように。これからもそうであるように。
おれはカラスどころかハトより愚かだ。



そこのけ、そこのけ、お馬が通る、おれが通る。コンビニで日焼け止めをしぶしぶ買ったおれが通る。朝から何も食べていないおれが通る。ドーナツ一個ついでに買いました。麦茶にはまだまだ余裕がある。



見ろ、豚が雲を引いた! おれは地を這う、横たわりはしない。



そして本牧は新しくなった。



水に飛び込みたくなった。しかし分別のある大人は飛び込まない。しかし、無分別の分別という境地に達したらどうなるかわからない。水がおれに飛び込んでくるのかもしれない。



自転車にすら乗っていない。ひたすら歩く。ムーンウォークで歩く。いや、ムーンウォークでは歩かない。ここは月面ではない。



オーケー? おれはオーケーが藤沢にある、あの一店舗くらいのものだと思っていた。いくらかのチェーンとは思わなかった。とはいえ、今はオーケーに用はない。オーケー?



Amerikazaka……もう驚きはないよね。このパターン、飽きられていることに気づけ。そしてこの記事も(※残念なことに、まだ折り返しです)。



サルスベリだって漢字の書きようによっては百日紅、暑いあいだ咲きつづけるのだ。



ケーヨーデイツー。あ、ここにグンゼの(以下略)。



あ、分岐が、やけに大雑把な方向と、やけに細かい施設に分かれた。そうだ、おれはその分岐を目指して歩いているのだ。



ミツバチにはやさしい行政。



宅地造成。陸の孤島の果て。

間門



草に飲まれる自転車。おれは打ち捨てられた自転車も好きだ。
(自転車を放置しないでください。盗まないでください)



あそこに見ゆるは……。



ついに、間門。




おれにとっての本牧は、山手隧道の出口から、ここ間門の丁字路までの長い道。



本牧市民プールは営業休止中。水着で家から飛び出して、この看板を見て泣いて帰る人間を5分間の間に342人くらい見た。



それにしたって、なんかいいよな、大きな構造物というのは。



それにしたって、なんかいいよな、タンクというのは。



産業道路を走ってはるか彼方(新山下のドンキあたり)まで行くがいいさ。



金網の向こうに憧れがある。昔の本牧人は金網の向こうにアメリカを見たのかもしれない。おれは魅惑の工場を見る。



神奈川臨海鉄道本牧線を見る!



見ただけで、引き返す!(おれは貨物ではないので神奈川臨海鉄道に乗せてもらうことはできない。貨物でないことが悔しい)



と、なにか手書きの碑を見つける。大衆文豪とは……典? いや、点がないぞ、曲軒先生、山本周五郎。調べてみれば、山本周五郎はこのあたりに住んでいた。おれは山本周五郎の本を読んだことがない。ここから富士山が見えた? 見えたのかもしれない。



失われた権力。無法地帯。



しかし、権力はなくとも家は建つのや。人はそこに生きる、生きるからそこにいる。大衆いうものの本質、そこにあるんや。わかるか、若いの、おれにはわからんが。


さて、帰るか



さあ、引き返そう(ここまで読んでいる人間が何人いるのか?)



そう、こここそが本牧。こここそが本牧通り。本牧は通り。通り過ぎるもの。立ち止まってはいけない。



地元の古老の記憶に留まっていてはならない。



市電はもう走らない。LRTも走らない。もっと未来的ななにかが走る。おれは銀色のつなぎを着て、星型の腕時計に命令する。未来的ななにかよ飛んでこい!



なにも飛んできませんでした。



ここに水が流れているのは知っていたさ。



ムクドリくらいしかいない公園を突っ切るのさ。



例の騒動で有名な本牧神社。おれは伊勢山皇大神宮に行き横浜に祈り、本牧神社で本牧に祈る。おれは無神論者のアナーキストですが。



あまりの暑さに本も歪む。



何も願わない。ただ手を合わせる……前に右手で柄杓を持ち左手を洗ぎ、左手で柄杓を持ち右手を洗ぎ、また右手で柄杓を持ち水を左手に注ぎ口を清めるふりをして、また左手を洗ぎ、柄杓を置き、賽銭を入れ、鈴を鳴らし、二礼し、二拍手し、一礼して、あれ、手を合わせるヒマねえし。



さて、おれの予感ではもうそろそろ日が落ちてくるころなのだけれど。
(ちなみにおれはサングラスをしていたので、これら写真すべてに橙色のフィルターをかけたなかを歩いていた)



この茅で馬たちの尻を叩き、海へ追いやる。103頭の馬が追いやられる。補陀落渡海!(※妄想です)



莫妄想!(※ここは神社です)



神社の裏手に回り、階段を登ればストーン・ヘンジ。



はるか向こうにガントリー・クレーン。
……エースコンバットしたくなるよな。



正気なのか走る人も少なくないここは本牧山頂公園。
山頂があるということは本牧山があるのか。いや、本牧山という山があるとは聞いたことがない。山頂のみある幻の山。管理するのは横浜植木。



ヒマを持て余したカラスが一羽。口を半開きにして木々のキョロキョロと。狙いはなにか。セミだろう。



謎の宗教儀式。あるいは、柱にされた人の名残、気配。
名残と気配、記憶の残骸、カラスの眼。



柱にされた人の柱にセミも登るよ。



いたるところ、孔明の罠(違うかも知れない)。
罠だ、罠だらけだ。
「こんなところにいられるか!」。
おれは雪山の山荘出て、一人吹雪く山道を下った!(※頭がおかしくなってます)



ここはどこだというのだ。



だから、そのパターンは……もう、やめてくれ。



しかし、おれは志の低い人間が好きだ。高みになにがあるというのか。甘いぶどうがあるというのか。そんなものはないのだ。せいぜいカラスの巣があるくらいだろう。地べたを這え。疲れた寝っ転がれ、零度の地点から空を見上げろ。



そう思ったら……。



さらに低いやつがいる。下には下がいる。だから人の世というのは面白い(※セミです)。



いずれにせよ、外界に降りてきた。配達されてきばかりと思しい東スポをコンビニで買う。東スポが店に届くタイミングというのには気を配らねばいけない。このあたりで一番早いのは桜木町駅のNEWDAYSかと思う。そこから放射状に展開している……のかどうか。
上原浩治は100勝、100ホールド、100セーブを達成した。しかし、試合は広島カープが勝った。この巨人3連戦のカープは神がかっていた。緒戦の下水流のサヨナラホームラン、おれは両手だけでなく、両足まで叩いたものだ。
そして驚きのニュース。美間優槻がトレードに出され、曽根海成という選手が来くるのだ。カープの三塁、天才・西川がレギュラー定着しつつあり、安部の復調という可能性を考えたら、なるほど美間の出番は少ない。一方で、二遊間のバックアップは薄い。
え、ここでカープの話をするなというの。
じゃあ競馬の話をするよ。おれは中京記念も函館2歳ステークスも外した。とくに函館2歳は痛恨で、人気薄の馬連を獲ったと思ったら、大外からなにか突っ込んできてすべて台無しにしてしまった。



え、ここで未来の話をしてはいけないの?



なんだか、ずいぶんと眠くなってきたよ。そして、少し悲しくなってきた。



空有がここに有るということは空に空はなく、いったい空とはなんなのですか? 有るというのはどういうことなのですか?



夕涼みにはまだ早い。おれの見積もりが間違っていた。こういうのは夕焼けで〆るべきだろうに、まだ明るい。まだ太陽がのぼっている。



自転車のシートだって保護されているほどなのさ。



100円ローソンで安い缶チューハイを買ったおれは、いつか来た道をもどる。



灼熱の太陽に溶かされて、物や事や人から意味が剥離して地面に落ちた。
アスファルトの上で一匹のミミズが死んだ、死んだミミズにアリたちが這い寄った、その上に意味が落ちた。
さらにアリを踏み潰しながらおれの言葉がずったらずったら歩きまわった。




16,868歩もな!



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黄金頭

横浜市中区在住の労働者。「関内関外日記」というブログを書いています。

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