スマホあるから絶対大丈夫だし、深夜に道に迷いたい

  • 更新日: 2020/07/14

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できれば記憶もなくしたい

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大人になってから、できるようになった事も、逆にできなくなってしまった事も増えた。

17時を過ぎても外に出歩けるようになったし、そのまま朝まで帰らなくたって誰にも怒られない。好きなときにお菓子を食べられる。酒と煙草をやれる。好きなテレビを見られるし、わざわざ草むらで拾わなくたってエロ本を手に入れられる。ピーマンを食べなくても怒られないどころか、ピーマンが食べたいと思うようになった。

そしてできなくなってしまった事。あんなに格好いいと思っていたデュエルディスクがもう装着できなくなってしまったという事も大きいのだけど、一番に残念なのは迷子になれなくなった事だ。

俺は文明に生きる常識人だ。日本国内で、まず迷子になることはない。山や森に入っていった場合は別だけど、子供の頃みたいにただ大きい道路を目指して泣きそうになりながら住宅街を歩く、なんて経験をすることは今後一切ないと言えるだろう。だってスマホがあるもの。

それならばせめて、少しだけでも迷子の気分を味わいたい。




ということで、まったく使わない路線に乗って、まったく知らない駅に来た。西武柳沢駅。『沢駅』の部分で、同じ「尺」というつくりが連続しているのが何とも気味が悪い。迷子になるなら、きっと駅名の長い場所だと思うのでこの場所を選んだ。

本当はここからさらにバスに乗って町の奥深くまで潜っていきたかったのだけど、どのバスにも『吉祥寺駅北口行』と表示されていて、シティボーイの俺が吉祥寺で迷子になれるはずもなく断念。徒歩で迷子になるため、人通りの少ないほうを進んでいく。




駅から30秒ほど歩いただけでこの体たらくである。素晴らしいですね。




こうして見ると、東京でも地元と変わらないような場所がたくさんある。
フィリピンパブから、(おそらく)フィリピン語のバラードが聞こえてきた。日本でいえばMISIAの『Everything』にあたるような曲なのだと思う。




3分ほど歩くと、すっかり住宅街に突入した。快速が通過していく場所にも、人々の住居がこんなにも立ち並んでいるのである。




新聞の自販機があった。初めて見た。まだまだ現役で動いているらしい。




迷子になりたいので、暗い道を選んで進んでいくことにする。




俺は暗い道で不安になりたいというのに、大企業の看板を見ると安心してしまう。頭をひっこめてほしい。




大きめの道に出てきてしまった。しかしまだ歩き始めて15分程度。なんとかここから訳のわからない場所に辿り着きたい。コンビニがあったら寄りたいな、と考えているのだけど、未だコンビニの見つかる気配がない。




ババイーン




とりあえず手をかざしておいた。




地元で車を運転していた頃は、こういうちょっと難しい交差点に遭遇すると「アーーーーーーーーーー」と叫んでいた。咄嗟に右や左がわからなくなって、なぜだかワイパーが踊ってしまうのである。助手席に座る友人に舌打ちされる過去を思い出す。




暗すぎる道を発見したものの、さすがに怖いので進むのはやめておく。暗すぎる道はさすがに怖いのである。




西武新宿線沿いにも、無人で野菜を売っている場所があるとはね。

しばらく歩いていると、やたらと人懐こい猫が寄ってきた。









猫を撮るのは難しい。




Superflyが被ってるやつを発見




住宅街を歩いていると、とても心の踊る暗い道を発見。怖い話のサムネイルに使われていてもおかしくない。意を決して歩いてみる。




iPhone11のカメラが非常に高性能であるがゆえに、肉眼での暗さをお伝えできないのが悔しいところ。この道はとにかく暗く、踏むと大きい音の鳴るタイルが点在していてとても緊張感があった。近隣住民の方に迷惑をかけないよう、細心の注意を払いながら忍び足で進んでいく。




チェックポイントのように、街灯が等間隔で配置されている。この道はもうしばらく続くようだ。




曇った夜空に被さる真っ黒な影が緊張感を演出する。




暗い道とはいえ、綺麗な民家に囲まれているので適度の安心感がある。




そろそろ終わりが見えてきた。




無事に狭い道を抜け、また住宅街に。しばらく道なりに進んでいくことにする。




どうやらここは西東京市の泉町という場所らしい。泉町という地名は、日本国内に果たして何か所あるだろう。




きっと天井の角にテレビが設置されているに違いない。炒飯とビールを頼みたい…




西武柳沢駅を出発して2時間ほどが経過しようかというところ。やっと1件目のコンビニを発見。

この散歩を実施する前に、西武柳沢について軽くリサーチしてみたところ、「コンビニが少ない」という意見を多く目にした。まったく東京の人間というのはコンビニの数に厳しく駅までの距離に厳しいので話半分に受け止めていたのだけど、どうやら本当のようだ。住宅街の人たちはどうしているのだろう。そもそもここがまだ西武柳沢なのかどうかすらわからないが…




おにぎり2個と麦茶を買い、改めて歩き始める。始発まであと4時間以上あることに、このあたりで絶望し始める。




この道は土の匂いに包まれていた。




深夜1時頃。公園を見つけたので休憩します。この辺りは緑が多いこともあってか、とにかく蚊が多かった。

ベンチに座りながら、田舎のおばあちゃんとかって蚊に刺されることを「蚊に噛まれる」って言うけど、あれ、方言とかじゃなくて本当に噛まれてるんだとしたらかわいそうだな、と、そういうことを思いました。行きましょう。




ドコモの本社がこれだったらどうしよう




かなり大きい道に出てしまい、しばらく歩いてみたのだけどコンビニがひとつも無い。ここまでコンビニの有無を意識してしまうなんて、俺もつまらない人間になってしまったと思う反面、実際マジで無いので言わずにはいられない。

さらに、この辺りから小雨が降りだした。梅雨って何であるんだ




結局さっきの大通りを突き当たりまで歩いてみたがコンビニは無かった。そのまま脇道に逸れ、さらに住宅街の中を進んでいくことにする。




ついさっきまで東京都知事選のポスターがズラリと並んでいたのに、気が付けば新座市長選挙の掲示場に変わっていた。どうやら埼玉県まで歩いてしまったらしい。深夜2時に新座市にいて電車もタクシーも無い住宅街を歩いている状況を、迷子と言わずして何と言うだろう。胸が躍る。




一瞬帰れるかどうか不安になったものの、俺はスマートフォンを持っていて充電も70%ある。絶対に帰れるので、恐れずにどんどん暗い道を進んでいく。





迷子っぽい景色の続く素晴らしい道。




迷子のときは、何となく高い場所を目指してしまうような気がする。山で遭難した場合も、やみくもに下山するよりは頂上を目指して進んだほうがよいと聞く。なのでこの階段を上り、町を見下ろしてみたいと思う。




階段を上ってからちょっと歩いただけで、なぜかまた階段に戻ってきてしまった。人生はこういうことが本当に多い。高円寺を出て高円寺に到着したり、新宿から電車に乗って新宿に到着したりしてしまう。






とうもろこし畑がありました。東京でとうもろこしが育つのか?




寂しそうなポストがある。




知らない街の掲示板っていいなあ




青空駐車という言葉を初めて聞いたのだが、そんな素敵な駐車をしてはいけないなんて。

意味を調べてみても路上駐車と何が違うのかよくわからなかった。屋根のない駐車場のことを『青空駐車場』と呼ぶこともあるらしい。要するに、車庫代わりに路上に車を止めておくことが青空駐車なのかしら。車持ってないしいいや別に




なんだかあの鉄塔がずっと着いてきてる気がする…




不吉な花があった。こういう花がモテるんだろうね。




まったく自覚が無いのだけど、いつの間にか高い場所を歩いていたらしい。

このあたりですれ違った寝間着のカップルが、アリサとショウタの話をしていた。このカップルも、アリサとショウタもうまくいくと良い。




西武柳沢駅から10キロ歩いた謎の地点で、2ヵ所目のコンビニを発見。最寄りのコンビニが100円ローソンの人が本当にうらやましい。次に引っ越すときは絶対に100円ローソンの近くにすると決めている。たまにスーパーより安い時がある。本当に好き。




100円ローソンを出て歩いていると、『東久留米市』の表記が。いつの間にか埼玉から東京へと戻っていたらしい。疲れすぎてもうここがどこかなんて事はどうでもよくなってきた。




缶コーヒーを購入し、この広場で休憩をすることに。歩き始めて4時間半ほど、さすがに疲れが出てきたので30分ほど座っていた。このあたりはまさしく静寂そのものであり、原付や車、深夜に大声を出す大学生とすれ違うことも無かった。エメラルドマウンテンが一番おいしい。




休憩を済ませ、また歩き始める。そろそろ駅の方面に向かいたいところだが、大きい通りに出られそうな気配も無い。迷子である。この住宅街に特別な静寂を感じるのは、交通の音がまったくしない点が起因しているのだと思う。それにしても、毎日のように電車やバスを使うくせに、その音をうるさいものだと認識しているなんて、俺は何て浅はかなのだろう。深夜の散歩は、自分のエゴを再認識させてくれる。




将来はああいう家に住みたい。鉄塔がずっとこちらを睨んでいる。




この下で、アリたちがコロナを予防していたらかわいい




アリぐらいのスピードで歩いていると、何やら商店街に辿り着いた。これは駅前の感じがするぞ、と時計を見ると3時半。始発まで最低でも1時間はある。今が4時半であれば、始発に乗ってとっとと帰れたのだけど、こうなったらまた歩き始めるしかない。ここで始発を待てばいいだろと書きながら思った。




というわけで、辿り着いたひばりが丘駅を通過してさらに歩き始めることに。




どうも西武柳沢駅からこういうルートで歩いてきたようだ。こう見ると、埼玉ってやたらに近いのですね。(※散歩中はまだ地図を見ていません。地図を見ていないというプライドがあるので注釈を入れます)




へ~ ここなんだ




ずっとまっすぐ歩いていると、広めの住宅街に出た。時刻は3時20分ほど。もうそろそろ空が白んでくる時間である。団地のそばにベンチを見つけたので、そこに座って休憩することにした。




外も明るくなり、迎え撃つは高級住宅地。なんだあ、これは!ここからしばらく、自分には一生縁のないような道が続く。




似たような外観の家が立ち並んでいる。間違えて隣の家に帰っちゃうんじゃないか。




自分がここに住んでいたら、朝の4時に意味もなく寝間着で外をうろつくに違いない。寝間着で高級住宅街を出歩くことに強い憧れがある。




これが小学校!?この敷地内で九九が行われているとは到底思えない。




自転車で新聞配達をしたい。




発音が素晴らしい。




しばらく歩くと、見慣れた風景に戻ってきた。そろそろ始発の動く時間なので、ここからグーグルマップを活用し、ここから一番近い駅、田無に向かって歩く。




喧嘩をして、ポストがぷいとそっぽを向いているようでかわいい。




やっぱり東京でも歩けばまだまだ緑がありますね。今回の散歩は土の匂いをたくさん嗅げたので良かった。




こういうお店でVHSのB級ホラー借りたいなあ!




さて、すっかり駅前の風景が戻って来ました。




というわけで、無事田無駅に到着。睡魔が勝手にヒザのほうまで移動してワーワーと騒いでいて痛い。さっさと家に帰ってシャワーを浴びよう。ちなみにこの駅は、『田無駅』の表記より『Denny’s』の表記のほうが目立っていて、実質デニーズ駅だった。




西武柳沢駅から出発した散歩は、ゆるりとしたカーブを描いて隣駅に到着することで幕を閉じた。この放物線が愛おしい。せっかくなら、西武柳沢駅に到着して輪を作りたかったな。


結果としては、いくら暗い道を進もうと、地図を見まいと、やはり本当の迷子になることはできなかった。しかし、迷子になるつもりで見知らぬ町をずんずん歩くことに確かな高揚感を覚えたのは事実である。仕事があったり、生活があったり、特にこのご時世とあっては、なかなか旅に出ることは難しいかもしれない。しかし、知らない路線にほんの数十分揺られ、適当に下車した町を彷徨うというのも、立派な旅であるということが分かった。非常に良い散歩でした。




田無駅前の松屋にて、ねぎ玉牛丼の特盛を注文。大変なごちそうであった。



じゃあな田無。そして、アルビノの松屋。






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城戸

電車代をケチって何駅分か歩くことを散歩と呼んでいます。杉並区が大好きな日と大嫌いな日があります。

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