Googleマップでクチコミ0件の神社にひたすら1件目のコメントをつける散歩
- 更新日: 2023/08/17
あなたの街にもきっとある
きっかけは、会社近くの鳥居だった。
たまたま昼休憩で通りかかったビル。その奥に、鳥居がある。なんだここは。
ビルの色に合わせてか、黒と赤のシックな鳥居だった。東京都心のスタイリッシュさを醸し出している。
奥に進むと小さな社があり、新しいお供物が置かれていた。ひっそりとその身を隠す都会の神さまに、私は思わず手を合わせた。
なんとなくGoogleマップを開き、この場所を調べた。だれがどんな経緯で建てたとか、どこどこの神さまが祀られているとか、そんなクチコミを見たかったからだ。Googleマップではよく、そういう詳しい情報がクチコミに載っている。
しかし……
クチコミはなかった。一件も……。
無性にゾッとした。こんなにも都会的で個性的な鳥居が、だれにも見つかっていないというのか。いや、実際にはお供物もあったから、誰かが管理しているし、見つけているのだけれど。少なくともGoogleマップ上では、だれも言及していない。
「見つけた私がコメントしなければ」となぜか強迫観念のようなものに駆られた。ググればなんでも見つかるネット社会において、「見つからないものを見つけて」怖くなったのかもしれない。
お昼ご飯を食べながら、初めてGoogleマップでクチコミというものを投稿してみた。意外と簡単にできた。
【投稿した実際のクチコミ】
このときからだ、クチコミ0件の神社を探すようになったのは。
ちなみに、これはだれでも探せるのでぜひあなたのGoogleマップでも試してみて欲しい。
そんな具合で調べていくと……
めちゃくちゃある。
会社近くのあの神社はなんら珍しいものではなかったかもしれない。
でも、やっぱり気になる。なんでも見つかるインターネットで「クチコミはありません」と言われるのは、怖いし悲しい。
義務感か好奇心か、「私が1件目を埋めに行かなくては」と思った。
■公園のなかにある疱瘡稲荷大明神
「疱瘡(かさもり)」とは、天然痘から身を守るという意味を持つのだそう。クチコミ0件神社の調査をしなければなかなか出会わなそうな言葉だ。
私たちはコロナで大変だったけど、江戸時代の人たちは天然痘で大変だったんだろう。疱瘡稲荷が全国に数千社もあると知ってそう思った。
そんな疱瘡稲荷は公園のど真ん中にある。
自転車がたくさん置いてあるのが分かるだろうか。日曜日の昼下がり、少年たちが鬼ごっこで駆け回っていた。
神社の境内であり公園でもあるこの場所で、子どもたちが遊び回る姿は、大田区らしい地域の温かさを感じた。
【投稿した実際のクチコミ】
■羽田神社内の稲荷のひとつ、増田稲荷神社
クチコミ0件神社は、大きくて有名な神社内にも存在する。大きい神社の境内に小さな社があるのを見かけたことはないだろうか。小さな社は「摂社」や「末社」と呼ばれるらしい。
そういった社は、クチコミを忘れられがち。900件以上のクチコミがつく羽田神社内にも、クチコミ0件の増田稲荷神社があった。真っ赤な神額(鳥居の表札のようなもの)がトレードマークだ。
詳細に説明が書いてあった。戦後にこの場所に移されたらしい。
「古老の話として、祠の中は子供達が遊ぶ事が出来た親しみのあるお稲荷さんだったとの事です。」だそう。
神社の説明で「古老」が語ってくれるのはあんまり見たことがない。伝説には〜とか、江戸時代には〜とかではなくて、近所の古老が体験談を伝えてくれている。古い話のはずなのに、新しさと親しみを感じた。
【投稿した実際のクチコミ】
■こういうのが見たかった!平張稲荷神社
クチコミ0件神社探しの醍醐味はコレだ!と思えた、満足度の高い隠れ神社。
住宅街の隙間にあるこの神社、実は奥まで続いている。
ぜひ動画で見てほしい。
鳥居をくぐると突っ張り棒と竿竹で仕切られたあまりに庭感の強い通路があり、ヤシの木の下の矢印に沿って、右に曲がる。
すると…
あった!完全に住居の裏にある。普通に歩いていたら絶対見えない。
よーく見ると、白いひらひら(紙垂)は手作り感があり、雨風を防げるようにラミネート加工してある。ここの家の人が手作りでつけたのだろうか。
賽銭箱は祠の中にある。この小窓からお賽銭を入れるシステムだ。小窓から内側を覗くと、まだ新しい線香の香りがした。今朝も線香を焚いたのだろうか。
【投稿した実際のクチコミ】
■番外編:Googleマップにはない神社を登録してクチコミする
クチコミ0件神社散歩をするなかで、なんだか気になる神社に出会った。多摩川の下流にある「水神社」だ。
クチコミは20件以上ついている。「1件目のクチコミ投稿活動」をしている私がコメントを残す必要もない。そのはずなのに、川沿いにポツンと立つ、境内が広いわりになんの説明もない、蒼い屋根の神社に惹かれた。
境内を見渡すと、一番端に置かれた祠が目に止まった。
戸を開いて、お参りすることができる。
赤ちゃんを抱いた、不思議な像だ。
ここはさすがにクチコミが少なそうだと、Googleマップで検索する。
……ない!?
クチコミがないんじゃない。そもそもこの場所は登録さえされていない。
そうか、Googleマップは投稿者みんなで作る地図。マイナーすぎる場所は、クチコミはおろか地図にも載っていないんだ。
初めての経験にドキドキしながら、この場所をGoogleマップに登録し、1件目のクチコミを投稿した。
【投稿した実際のクチコミ】
ここまで紹介してきた場所はぜんぶ家から徒歩圏内なのに、知らない道、知らない街、知らない川、知らない建物、そして知らない神社にたくさん出会うことができた。
2年ほど住んだこの街の散歩も、ちょっと飽きてきたと思っていたのに。
私はまだまだ、大田区を知らなかった。
駅や店舗を目指して歩くのとは違う。ゴールを「知らないクチコミ0件神社」にするだけで、こんなに見えなかったものが見えるなんて。
コメントしてもしても終わらないクチコミ0件神社のおかげで、これからも私の散歩ライフはちょっと楽しくなるし、ちょっと大田区に詳しくなるのだろう。
たまたま昼休憩で通りかかったビル。その奥に、鳥居がある。なんだここは。
ビルの色に合わせてか、黒と赤のシックな鳥居だった。東京都心のスタイリッシュさを醸し出している。
奥に進むと小さな社があり、新しいお供物が置かれていた。ひっそりとその身を隠す都会の神さまに、私は思わず手を合わせた。
なんとなくGoogleマップを開き、この場所を調べた。だれがどんな経緯で建てたとか、どこどこの神さまが祀られているとか、そんなクチコミを見たかったからだ。Googleマップではよく、そういう詳しい情報がクチコミに載っている。
しかし……
クチコミはなかった。一件も……。
無性にゾッとした。こんなにも都会的で個性的な鳥居が、だれにも見つかっていないというのか。いや、実際にはお供物もあったから、誰かが管理しているし、見つけているのだけれど。少なくともGoogleマップ上では、だれも言及していない。
「見つけた私がコメントしなければ」となぜか強迫観念のようなものに駆られた。ググればなんでも見つかるネット社会において、「見つからないものを見つけて」怖くなったのかもしれない。
お昼ご飯を食べながら、初めてGoogleマップでクチコミというものを投稿してみた。意外と簡単にできた。
【投稿した実際のクチコミ】
閑静で綺麗なビルに同化するように建っている鳥居を見つけ、気になって訪問。鳥居を抜けた奥には小さな社があり、お供物で飴が添えてあった。奥に抜けるとそのまま道路に面するが、こちら側に鳥居はなかった。https://maps.app.goo.gl/q2Ri3L4wc6PmifWb8
このときからだ、クチコミ0件の神社を探すようになったのは。
クチコミ0件の神社探し
会社から帰ってきて、自分の家の近所でもクチコミ0件の神社があるのか探してみた。ちなみに、これはだれでも探せるのでぜひあなたのGoogleマップでも試してみて欲しい。
【クチコミ0件神社の探し方】
①Googleマップを開き、「稲荷」と検索
※稲荷神社に限る必要はないが、稲荷神社の方が小規模でクチコミがついてない確率が高いため
②検索し出てきた稲荷神社から、ひたすら「クチコミがありません」表示を手作業で探す
※「クチコミが低い順」なんて絞り込みができるわけもなく……手作業じゃないやり方があるなら教えて欲しい
③「保存」ボタンでマップ上にピン留めしておく
そんな具合で調べていくと……
めちゃくちゃある。
会社近くのあの神社はなんら珍しいものではなかったかもしれない。
でも、やっぱり気になる。なんでも見つかるインターネットで「クチコミはありません」と言われるのは、怖いし悲しい。
義務感か好奇心か、「私が1件目を埋めに行かなくては」と思った。
ご近所クチコミ0件神社3選
なんて誰の役にも立たなそうな3選だ……。ここからは私の住む東京都大田区で見つけた、クチコミ0件神社の一部を紹介しよう(私が1件目のコメントをつけたので、正確にはもう0件ではない)。■公園のなかにある疱瘡稲荷大明神
「疱瘡(かさもり)」とは、天然痘から身を守るという意味を持つのだそう。クチコミ0件神社の調査をしなければなかなか出会わなそうな言葉だ。
私たちはコロナで大変だったけど、江戸時代の人たちは天然痘で大変だったんだろう。疱瘡稲荷が全国に数千社もあると知ってそう思った。
そんな疱瘡稲荷は公園のど真ん中にある。
自転車がたくさん置いてあるのが分かるだろうか。日曜日の昼下がり、少年たちが鬼ごっこで駆け回っていた。
神社の境内であり公園でもあるこの場所で、子どもたちが遊び回る姿は、大田区らしい地域の温かさを感じた。
【投稿した実際のクチコミ】
西仲天祖神社の境内内にある瘡守(かさもり)の稲荷。瘡守とは天然痘から身を守るという意味。天祖神社の境内には遊具や広場があり、児童遊園になっている。10人くらいの子どもが鬼ごっこで駆け回っていた。https://goo.gl/maps/VoTvTqtoni4sHdqU6
■羽田神社内の稲荷のひとつ、増田稲荷神社
クチコミ0件神社は、大きくて有名な神社内にも存在する。大きい神社の境内に小さな社があるのを見かけたことはないだろうか。小さな社は「摂社」や「末社」と呼ばれるらしい。
そういった社は、クチコミを忘れられがち。900件以上のクチコミがつく羽田神社内にも、クチコミ0件の増田稲荷神社があった。真っ赤な神額(鳥居の表札のようなもの)がトレードマークだ。
詳細に説明が書いてあった。戦後にこの場所に移されたらしい。
「古老の話として、祠の中は子供達が遊ぶ事が出来た親しみのあるお稲荷さんだったとの事です。」だそう。
神社の説明で「古老」が語ってくれるのはあんまり見たことがない。伝説には〜とか、江戸時代には〜とかではなくて、近所の古老が体験談を伝えてくれている。古い話のはずなのに、新しさと親しみを感じた。
【投稿した実際のクチコミ】
羽田神社内にある稲荷の一つ。かつては高速上り線羽田出口付近にあった神社が移されたもの。昔は祠の中で子どもたちが遊べたほど、親しみのある稲荷だったらしいと、「古老の話」が案内板に書いてある。https://goo.gl/maps/YkQt71u8LwmMiRXN6
■こういうのが見たかった!平張稲荷神社
クチコミ0件神社探しの醍醐味はコレだ!と思えた、満足度の高い隠れ神社。
住宅街の隙間にあるこの神社、実は奥まで続いている。
ぜひ動画で見てほしい。
こういうのですよ pic.twitter.com/cbZlAwaeHN
— ぼっちのazumiさん (@azumi_bocchi) July 22, 2023
鳥居をくぐると突っ張り棒と竿竹で仕切られたあまりに庭感の強い通路があり、ヤシの木の下の矢印に沿って、右に曲がる。
すると…
あった!完全に住居の裏にある。普通に歩いていたら絶対見えない。
よーく見ると、白いひらひら(紙垂)は手作り感があり、雨風を防げるようにラミネート加工してある。ここの家の人が手作りでつけたのだろうか。
賽銭箱は祠の中にある。この小窓からお賽銭を入れるシステムだ。小窓から内側を覗くと、まだ新しい線香の香りがした。今朝も線香を焚いたのだろうか。
【投稿した実際のクチコミ】
住宅の敷地内を間借りしたかのような神社。実際私有地なのかどうか微妙な線引きなんじゃないだろうか。お参り目的なら、誰でも入れるようにはなっている。紙垂(しで)は手作り感のあるラミネート加工がされていた。お賽銭は小窓から入れる。小窓から社殿を少し覗くと、ふわっとお線香の香りがした。※Googleマップ上では現在非表示になっています
■番外編:Googleマップにはない神社を登録してクチコミする
クチコミ0件神社散歩をするなかで、なんだか気になる神社に出会った。多摩川の下流にある「水神社」だ。
クチコミは20件以上ついている。「1件目のクチコミ投稿活動」をしている私がコメントを残す必要もない。そのはずなのに、川沿いにポツンと立つ、境内が広いわりになんの説明もない、蒼い屋根の神社に惹かれた。
境内を見渡すと、一番端に置かれた祠が目に止まった。
戸を開いて、お参りすることができる。
赤ちゃんを抱いた、不思議な像だ。
ここはさすがにクチコミが少なそうだと、Googleマップで検索する。
……ない!?
クチコミがないんじゃない。そもそもこの場所は登録さえされていない。
そうか、Googleマップは投稿者みんなで作る地図。マイナーすぎる場所は、クチコミはおろか地図にも載っていないんだ。
初めての経験にドキドキしながら、この場所をGoogleマップに登録し、1件目のクチコミを投稿した。
【投稿した実際のクチコミ】
水神社の境内に入って右手奥にある小さな社。なんの案内もないが、「かわさき区の宝物シート」という川崎市の資料を見ると、子育ての神として地域信仰を集めているらしい。聖母マリアを思わせる珍しい造りなんだとか。鍵のかかっていない扉を開ければ、小さな鈴とお賽銭箱があるので、いつでもお参りすることができる(開けたら必ず閉めましょう)。https://goo.gl/maps/gMaBzhGgYcGxruxt7
「クチコミ0件神社」という新しい散歩の視点
クチコミ0件神社探しは、私にとって散歩の革命だ。ここまで紹介してきた場所はぜんぶ家から徒歩圏内なのに、知らない道、知らない街、知らない川、知らない建物、そして知らない神社にたくさん出会うことができた。
2年ほど住んだこの街の散歩も、ちょっと飽きてきたと思っていたのに。
私はまだまだ、大田区を知らなかった。
駅や店舗を目指して歩くのとは違う。ゴールを「知らないクチコミ0件神社」にするだけで、こんなに見えなかったものが見えるなんて。
コメントしてもしても終わらないクチコミ0件神社のおかげで、これからも私の散歩ライフはちょっと楽しくなるし、ちょっと大田区に詳しくなるのだろう。