オールドレンズが写す街:大磯

  • 更新日: 2025/11/13

オールドレンズが写す街:大磯のアイキャッチ画像

体が浮くタイプの坂道

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オールドレンズという言葉を耳にした事があるだろうか。かつてフィルムカメラで使われていたレンズをそう呼び、アダプタを介せば現代のデジタルカメラで取り付けて使う事が出来るのだ。
当然ピント合わせや絞りは全て手動で行うので慣れるまでは大変だが、まるでタイムスリップしたかのようなノスタルジー溢れる画が作れるのが魅力だ。



このたび迎え入れたのは、旧東ドイツの光学メーカー Meyer-Optik Görlitz が1960年代に開発したOreston 50mmの後期型。標準域の単焦点として設計され、柔らかい描写と滑らかなボケ味が特徴。これぞオールドレンズというような世界観たっぷりの1本だ。

風景に対してはいかほどだろうか。今日はその力量のほどを測りつつ、レンズ越しに見る街の景色の新鮮さを楽しめたらと思う。




大磯に到着し、カレー屋さんで昼食を嗜み店を出る午後3時。降りはしないがぼんやりとした空模様。赤茶に錆びた歩道橋が早速海の気配を匂わせている。



ちょうど夕刊の配達でバイクが出入りしているところに遭遇。この姿で残り、その上で今も変わらず稼働している事からしてもきっと素敵な街なんだろうなと思う。






5分ばかり歩いたところで港への案内板が現れた。観光スポット的な立ち位置なのだろうか。防潮扉をくぐり北浜海岸へ。






西湘バイパスの支柱にびっしりと描かれた絵画。劇画調のタッチや日本画っぽい絵などバラエティに富んだギャラリーとなっている。中でも一番好きなのはこの絵。




津波避難タワーとおぼしき建造物。周りに人目がないことを確認し、ひとり上まで登ってみる。




展望台から見渡した港。どこまで続いているのかわからないくらい広い。バイパスの上でぼんやりと日暮れを迎える空が綺麗だ。




このレンズの醍醐味が出た一枚。重なり合いながらしゅわしゅわと滲むタッチを界隈ではバブルボケと呼ぶそうだ。








砂浜を後にして港を横目に進んでいく。飲食施設は一応あるものの、観光スポットらしくはないどころか荒々しいほどに港湾施設然とした景色。自分も使ったものをしまわず出しっぱなしにする癖があるのでこうなってしまう気持ちはとても分かる。






橋の上から見えた謎のモニュメントは「結蛸(むすびたこ)」という恋愛成就のスポット。東京藝術大学デザイン科の学生さんが制作したものらしい。手前に立つ石碑の存在感に食われ、かなり肩身が狭そうにしている。




ここでひとつ発見があった。真ん中付近に白いモヤがあるこのレンズ、ビネットがかった風景を写すと中央がより強調されてキレのあるコントラスト感が出る。本来製品の状態としてはマイナス要素なのだが、使いようによっては武器になる。この特性を意識しながら撮ってみようと思う。




海街独特のナチュラルな流木使い。






まるで渓谷のような出で立ちの沢が続く先を辿っていくと古風な建物に行き着いた。ここは鴫立庵(しぎたつあん)といい、日本三大俳諧道場の一つとして遺される史跡だそうだ。




ざっくり駅方面を目指して再び別の小路へ入る。家一棟分の敷地いっぱいにひまわりが群生していた。向いの家でR&Bを熱唱する青年の声が聞こえる。




古いながらも立派な和風家屋が立ち並ぶ。道の真ん中まで思い切り枝を伸ばすみかん。レンズが表面の艶めきをキレ良く写し出す。




竹垣がちらほらと見え始めると「旧島崎藤村邸こちら」の案内板を見つけた。彼の人を名前以外まったく存じ上げないが、せっかくなので立ち寄りたい。




人生史上最もキレのある直角の曲がり角。






線路駐輪場のような謎の建物。中を覗き込むと地下道の入り口になっていた。深く沈み込む傾斜は自転車用スロープのようだ。






これが旧島崎藤村邸。営業時間外だった。




ちらほらと見かける空き地では、伸び盛った茂みが街路の木々と顔を合わせる。レンズの端に寄るほど甘く柔らかい描写になる特性が回想のような懐かしい雰囲気を醸し出している。




お庭にポツンと咲いていた白い彼岸花。背景のボケがぐるっと流れる独特な描写。




線路に沿って延々と続く細い道。譲り合わないとすれ違えない幅員のなか、通りすがる人々は体を捩ったりバッグを躱したりしながら道を空ける。




画になるワイルド資源ゴミ。




道沿いの飲食店に心を乱されながらも無事到着。午後5時、往来の流れに逆らってひとり駅へ向かう。




駅前の直売所でモカロールと大長茄子を買って帰る。
この頃は港町にばかり出向いているが、どこも異なる景色を見せてくれるし見応えがある。
レンズの本領を見がてら、次は晴天の風景を写してみたい。









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ISLD

フォトグラファー/パン屋Digger

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