宮城のクラフトジン「欅」を求めて
- 更新日: 2022/08/11
アーケード街に救われた雨の仙台散歩
新幹線に乗ったある日、各座席に置いてある「トランヴェール」(JR東日本が発行する車内サービス誌)を何気なく手に取りました。南東北のクラフト酒特集。
ここで紹介されていた宮城のクラフトジンが、んま〜おいしそうで!
実はこれまで「雑誌やテレビで見たスポットに実際に行く」みたいな経験がほとんどありませんでした。忘れてしまうとか人混みが嫌とかもあるけれど、なんでしょう、メディアの提案に食いつくことに抵抗があったのです。
“流行り”の形式をなぞって無邪気に盛り上がる自分が猛烈に恥ずかしい。「アド街を見た」なんて絶対言えない。自意識が強すぎるんですね。まったくピンとこない方は、すみません。そういう人間もいるんだと思ってください。
いつもなら「へーいいな」で流してしまうことに、ちゃんと乗っかったら楽しいかもしれない!というわけで今回は宮城のクラフトジン「欅」を現地で飲むべく仙台を歩きます。
サントリー「翠(SUI)」は美味しいジンです。
ただ今日は、あー、すみません!このあと「欅(KEYAKI)」でして!失礼します!とさわやかに新幹線へ乗り込みます。
サンドイッチとコーヒーを手に車窓を眺めたり、本や最新号の「トランヴェール」をめくったりしていたら思いのほかすぐに仙台に着いてしまいました。仙台は近い。
新幹線改札を出てすぐ、引力の強いストリートが!
「ずんだ小径 牛たん通り すし通り」
おいしそうな句。
牛たんの有名店はすべてここにあるし、気取らない感じのすし屋が何店舗も。仮に仙台駅から出られない事態になっても3日くらい問題なく楽しめそう。
通りの途中には「仙台弁かるた」をあしらったロッカーがあって、ひとつひとつ読んでいくのが楽しい。「パヤパヤ」って方言によっていろんな意味があるけれど、仙台では「酔っ払う」なんですね。
「ずんだ小径」にはあからさまに競合関係にあるずんだ屋が2店並んでいました。どちらのずんだ餅も買い、ホテルの部屋に持ち帰って食べ比べてみたのでレポートします。
左が「喜久水庵」、右が「ずんだ茶寮」のずんだ餅。それぞれ餅3つ入り。
喜久水庵のずんだ餅は、枝豆のつぶ感がわりと残っていて、今、豆を食べてます!という風情です。味はさっぱりめ。
ずんだ茶寮の方は、もっとすりつぶされていて枝豆の味がより濃厚。口当たりがなめらかでスイーツ然としています。
どちらも甘すぎずうまい!うまいうまい!ずんだサイコー!!!
枝豆っておつまみにもおにぎりにもおやつにもなってすごい……豆界最強なのでは……と、にわかに枝豆信者にさせられる力がずんだにはあります。
さて、話を仙台駅に戻しましょう。
仙台駅2Fでは、東北のお酒とおつまみが大集合したかなり心惹かれるフェアを開催中。15分ほどぐるぐる見入ってしまいました。
……が、すみません!今日だけはどうしても「欅」でして!!
仙台駅は空港みたいにでかい。
それよりさらにロータリーがでーっかい!
写真で伝えきれないのが悔しい。陸上競技ができそうなくらいでかいんです。国内にこれより大きいロータリーを有する駅はあるだろうか?
駅前ロータリーは、車を運転する友人に言わせれば地獄だそう。タクシー乗り場と一般車両の分かれ道なんかが全然わからず、アワアワしていると後ろの車に焦らされるとか。
しかし上の歩道をぐるぐる歩いている分にはかなり楽しい。
なにが、と聞かれると難しいけれど「超でかい歩道」というだけで楽しいじゃあないですか。車が来ないし空間に余裕があって、ほぼ自由広場といっていい。別にダンス経験はないけど踊りだしたくなります。
映画『偶然と想像』に出てくるエスカレーター!
わかる人にしかわからないんですが、聖地巡礼ってやはり気分が上がるものですね。
ならば、ここぞとばかりに仙台のアーケード街を歩こうではないか。
ワープできそうな面構えの「ハピナ名掛丁(なかけちょう)」をゆく。
お気遣いいただきありがとうございます。
お得を実現するための店の苦労が・・・・に表れているな。
「無」の看板づくしの建物があるよ!
向かいの建物はめちゃくちゃ「有」です。
が!!!
仙台で有名な和菓子屋「白松がモナカ本舗」です。
「我が家」「君が代」と同じ「が」の使い方ですが、声に出して読むとどうしても「が」を強調したくなりますね。看板のフォントかわいくてたまらん。
大通りを挟んで、ハピナ名掛丁はつづきます。
横断歩道を渡って次のアーケードに入ると
あ、桃太郎さん!お疲れ様です!
金太郎さん!今日雨すごいっすねー
浦島太郎さん!いやー亀お似合いです!
えっと……一休さん?で間違いないでしょうか?
この調子で昔ばなしの主人公たちが次々登場するも、説明が見当たりません。近辺の店の方に聞いてみると「あれなんなんでしょうね?」と地元民もよくわかっていないようす。インターネットで調べれば一発なんだろうけど、おもしろいから知らないままでいいか。
歩いて歩いてアーケードの果てまで来ると、今度は左右にアーケードが伸びています。
左には「サンモール一番町」
右には「ぶらんど~む一番町」
アーケード街がとにかく充実していて雨でも快適に街歩きできました。ちょっと引き返して、今度は違う通りから駅に戻ってみましょう。
と意を決してアーケードから出てみるも、いやちょ待っ、雨がすごすぎる
写真じゃイマイチだけど、バチバチなんです。
いいところに地下道発見!ホッ
降りていくと広場があり、懇切丁寧な掲示まであります。JR仙台駅方面は1番に進めばいいんですね。
よーし地下道で仙台駅まで戻ろ!と歩きだしたら、あれ?
一瞬で地上に出てしまった。
どうやら大きな交差点を渡るためだけにある地下道らしかったのです。期待させやがる!
仕方なく地上のバチバチ雨のなかを歩いていくと、今度は「JRあおば通駅」と「地下自由通路」の入口が登場しました。
君は信じていいよね?
おそるおそる下りる。そこ左に曲がって、また上りの階段出てきたらやだな。
おお、これは……行ける!行ける行ける!
この自由通路は、東急リバブルの提供でお送りしています。
ちなみに逆サイドから歩くとピタットハウスの提供です。
無事に仙台駅に戻ってきました!地下道サイコー!!
お待たせしました。夜です!
夜の面構えもいいですね。雨も止んだ。
サンポーで書くからには「欅」を飲める店も歩いて探したかったのですが、雨のなか2軒も3軒もハズす怖さと、金曜夜の混雑への恐れに打ち勝てず、事前に調べてお店に電話で確認しておきました。大人ですね。
雑居ビルに飲食店がぎっしり詰まっていますが、本日伺うのは「BAR GREYHOUND」というバーです。
エレベーター内に店の案内を発見。これは大人の洒落たバーだぞ。
着きました!ドキドキ……入りますよ。
わー!これはもう、バーとしか言いようがないバーです!
18時過ぎだったので他のお客様はまだ居ませんでした。こういうバーは21時過ぎたあたりからが本番ですかね。
カウンター席のはしっこを陣取って、さっそく「欅」を飲みましょう。散歩してきたのでのどが渇いています。バーテンダーの方におすすめの飲み方を伺うと「欅はジントニックのために作られたジンみたいですね」とのことで、ジントニックを注文。
これが「欅」のジントニックだ!
ごくり。ああ、うまい。
「トランヴェール」には宮城県産のボタニカルが……とか、柚子の香りが……とか「欅」に関するいろいろな説明があった(そして、そういう情報がおいしさを増幅してくれる)けれども、複雑で繊細な味わいを脳で理解していなくても今感じているおいしさは本物です。
店内にはバーテンダーの方と私だけで、ジントニックを飲むことに集中する。ハハ、私はこれを飲むために仙台まで来たのだなあ。
コースターは店名のカタカナ表記でかわいい。
バーテンダーである結城さんが話しかけてくださったので「欅」はボトルも素敵ですねと伝えると、「こんなのもありますよ」と出してくれたのが
一升瓶に入った、ジン!
「欅」の蒸留所であるMCG(Miyagi Craft Gin)は、150年つづく酒蔵「新澤醸造」が2018年に設立した会社。もともと日本酒づくりをしているということで一升瓶バージョンがあるのでしょう。
後から公式サイトを見ると「2020年5月にクラフトジン『欅』が誕生」とのこと。冒頭にも出したサントリー「翠」が日本中でヒットしはじめたところに、新たに登場した本当においしい国産クラフトジン。これからド流行りするかもしれません。
ジントニックを飲み干し「何かもう一杯、宮城のものを飲めますか」と聞くと、結城さんは宮城の蒸留酒を並べてくれました。
新たに出してくれたのは宮城のウイスキー「宮城峡」と「伊達」。
「宮城峡」は見たことがあるけれど「伊達」はたぶん初めてだと言うと「今はインターネットで買えてしまうのですが、基本的に県外の飲食店には卸していないはずです」と教えてくれたので、もうこれでしょう。
ニッカウヰスキー「伊達」の水割りです。
かなり飲みやすいブレンデッドウイスキー。結城さんに、蒸留器の違いによるウイスキーの種類分けについて詳しく説明してもらいながらごくごくいただきました。
やさしい結城さん、お願いすると一緒に写ってくださいました。
この後「欅」を他の飲み方で飲んでみたくなり、ジンソーダも1杯いただきました。見た目はジントニックと変わりませんが、トニックウォーターの甘みと苦味がなくなってよりすっきりとした味わい!はー、おいしかった……。
「BAR GREYHOUND」はオーセンティックなバーの趣きで入るまでは緊張しましたが、ちょうどいい距離感で話せて女性ひとりでも楽しめるお店でした。駅からもかなり近いので新幹線前後の立ち寄りにもおすすめです。
先ほどの「BAR GREYHOUND」から徒歩5分ちょっとのところにある居酒屋「おかん 分店」へ。
こちらも「食べログ」で「欅」が飲めるとあったので事前予約を試みると「金曜の夜は予約をとっていないんです」とのこと。20時すぎくらいに突撃してみたところ、雨のせいかそれほど混んでいませんでした。
ちゃんとあります「欅」が!ここではジントニックのみでの提供です。
お通しと「欅」ジントニックです。
ビールグラスで飲むのも居酒屋って感じがしていいですね。夏野菜を使ったお通しもおいしく、ジントニックとの相性もよかった!
ジントニックのお供は、アジフライに決めました。
アジとサクサク衣のじゅわっとした油、そしてタルタルソースのまったり感がおいしい。それらを柑橘感のあるジントニックがさっぱりさせてくれてお手本のような組み合わせではないですか。普段ジントニックを食事と一緒に飲むことはないのですが、これはうまかった!
大変言いにくいのですが、散歩中に写真を撮りすぎてここでスマートフォンのバッテリーが切れてしまいました。
この後にお刺身やだし巻き玉子なども注文しジントニックもおかわりしましたが、アジフライとのペアリングが一番よかったと思います。
最高の「欅」ナイトとなりました。
このままそういう「ベタな楽しさ」を素通りしつづけると、私はこの先自分の気分を上げるのにどんどん苦労するようになっていくんではないか。そもそも与えられたベタではない“本当の”楽しさってなんなのよ、と思いはじめてこの旅を決めました。
雑誌で見た場所へ話題のお酒を飲むために来たけれど、実際に着いてみるとずんだ食べ比べをしたり駅前をぐるぐるしたり、予想外の大雨を避けるようにアーケード街や地下道を歩いたり、初めて見たウイスキーを飲んだり食事とジントニックの組み合わせを考えたり、当たり前なんですが、雑誌には書いていない自分だけに生きられた時間ばかりなのでした。
みんながこうやって「自分だけのベタ」を楽しんできたのかと今さら気がついたわけです。これまでメディアやSNSを見て何かわかったような気になっていたことが恥ずかしい。これからはベタなものを自分だけの経験として楽しんでいきたいです。
翌日、帰りに仙台駅2Fを通ると前日の「夏のお酒とおつまみフェア」から「動物フェア」というひたすらかわいい祭りに替わっていました。時は流れる。
また仙台に行きたいです!
ここで紹介されていた宮城のクラフトジンが、んま〜おいしそうで!
実はこれまで「雑誌やテレビで見たスポットに実際に行く」みたいな経験がほとんどありませんでした。忘れてしまうとか人混みが嫌とかもあるけれど、なんでしょう、メディアの提案に食いつくことに抵抗があったのです。
“流行り”の形式をなぞって無邪気に盛り上がる自分が猛烈に恥ずかしい。「アド街を見た」なんて絶対言えない。自意識が強すぎるんですね。まったくピンとこない方は、すみません。そういう人間もいるんだと思ってください。
いつもなら「へーいいな」で流してしまうことに、ちゃんと乗っかったら楽しいかもしれない!というわけで今回は宮城のクラフトジン「欅」を現地で飲むべく仙台を歩きます。
着いて即楽しい仙台駅
出発地の東京駅でタイムリーな広告。サントリー「翠(SUI)」は美味しいジンです。
ただ今日は、あー、すみません!このあと「欅(KEYAKI)」でして!失礼します!とさわやかに新幹線へ乗り込みます。
サンドイッチとコーヒーを手に車窓を眺めたり、本や最新号の「トランヴェール」をめくったりしていたら思いのほかすぐに仙台に着いてしまいました。仙台は近い。
新幹線改札を出てすぐ、引力の強いストリートが!
「ずんだ小径 牛たん通り すし通り」
おいしそうな句。
牛たんの有名店はすべてここにあるし、気取らない感じのすし屋が何店舗も。仮に仙台駅から出られない事態になっても3日くらい問題なく楽しめそう。
通りの途中には「仙台弁かるた」をあしらったロッカーがあって、ひとつひとつ読んでいくのが楽しい。「パヤパヤ」って方言によっていろんな意味があるけれど、仙台では「酔っ払う」なんですね。
「ずんだ小径」にはあからさまに競合関係にあるずんだ屋が2店並んでいました。どちらのずんだ餅も買い、ホテルの部屋に持ち帰って食べ比べてみたのでレポートします。
左が「喜久水庵」、右が「ずんだ茶寮」のずんだ餅。それぞれ餅3つ入り。
喜久水庵のずんだ餅は、枝豆のつぶ感がわりと残っていて、今、豆を食べてます!という風情です。味はさっぱりめ。
ずんだ茶寮の方は、もっとすりつぶされていて枝豆の味がより濃厚。口当たりがなめらかでスイーツ然としています。
どちらも甘すぎずうまい!うまいうまい!ずんだサイコー!!!
枝豆っておつまみにもおにぎりにもおやつにもなってすごい……豆界最強なのでは……と、にわかに枝豆信者にさせられる力がずんだにはあります。
さて、話を仙台駅に戻しましょう。
仙台駅2Fでは、東北のお酒とおつまみが大集合したかなり心惹かれるフェアを開催中。15分ほどぐるぐる見入ってしまいました。
……が、すみません!今日だけはどうしても「欅」でして!!
仙台駅は空港みたいにでかい。
それよりさらにロータリーがでーっかい!
写真で伝えきれないのが悔しい。陸上競技ができそうなくらいでかいんです。国内にこれより大きいロータリーを有する駅はあるだろうか?
駅前ロータリーは、車を運転する友人に言わせれば地獄だそう。タクシー乗り場と一般車両の分かれ道なんかが全然わからず、アワアワしていると後ろの車に焦らされるとか。
しかし上の歩道をぐるぐる歩いている分にはかなり楽しい。
なにが、と聞かれると難しいけれど「超でかい歩道」というだけで楽しいじゃあないですか。車が来ないし空間に余裕があって、ほぼ自由広場といっていい。別にダンス経験はないけど踊りだしたくなります。
映画『偶然と想像』に出てくるエスカレーター!
わかる人にしかわからないんですが、聖地巡礼ってやはり気分が上がるものですね。
アーケード街「ハピナ名掛丁」
そろそろ駅を出ましょう。腰を据えて酒を飲むには少し早い時間なので街を散歩したい。しかし結構しんどいくらいに雨……。ならば、ここぞとばかりに仙台のアーケード街を歩こうではないか。
ワープできそうな面構えの「ハピナ名掛丁(なかけちょう)」をゆく。
お気遣いいただきありがとうございます。
お得を実現するための店の苦労が・・・・に表れているな。
「無」の看板づくしの建物があるよ!
向かいの建物はめちゃくちゃ「有」です。
が!!!
仙台で有名な和菓子屋「白松がモナカ本舗」です。
「我が家」「君が代」と同じ「が」の使い方ですが、声に出して読むとどうしても「が」を強調したくなりますね。看板のフォントかわいくてたまらん。
大通りを挟んで、ハピナ名掛丁はつづきます。
横断歩道を渡って次のアーケードに入ると
あ、桃太郎さん!お疲れ様です!
金太郎さん!今日雨すごいっすねー
浦島太郎さん!いやー亀お似合いです!
えっと……一休さん?で間違いないでしょうか?
この調子で昔ばなしの主人公たちが次々登場するも、説明が見当たりません。近辺の店の方に聞いてみると「あれなんなんでしょうね?」と地元民もよくわかっていないようす。インターネットで調べれば一発なんだろうけど、おもしろいから知らないままでいいか。
歩いて歩いてアーケードの果てまで来ると、今度は左右にアーケードが伸びています。
左には「サンモール一番町」
右には「ぶらんど~む一番町」
アーケード街がとにかく充実していて雨でも快適に街歩きできました。ちょっと引き返して、今度は違う通りから駅に戻ってみましょう。
と意を決してアーケードから出てみるも、いやちょ待っ、雨がすごすぎる
写真じゃイマイチだけど、バチバチなんです。
いいところに地下道発見!ホッ
降りていくと広場があり、懇切丁寧な掲示まであります。JR仙台駅方面は1番に進めばいいんですね。
よーし地下道で仙台駅まで戻ろ!と歩きだしたら、あれ?
一瞬で地上に出てしまった。
どうやら大きな交差点を渡るためだけにある地下道らしかったのです。期待させやがる!
仕方なく地上のバチバチ雨のなかを歩いていくと、今度は「JRあおば通駅」と「地下自由通路」の入口が登場しました。
君は信じていいよね?
おそるおそる下りる。そこ左に曲がって、また上りの階段出てきたらやだな。
おお、これは……行ける!行ける行ける!
この自由通路は、東急リバブルの提供でお送りしています。
ちなみに逆サイドから歩くとピタットハウスの提供です。
無事に仙台駅に戻ってきました!地下道サイコー!!
ついに「欅」を飲める店へ
ここまでお読みの方、さすがに「いやクラフトジンは?欅は?」ってなってますよね。お待たせしました。夜です!
夜の面構えもいいですね。雨も止んだ。
サンポーで書くからには「欅」を飲める店も歩いて探したかったのですが、雨のなか2軒も3軒もハズす怖さと、金曜夜の混雑への恐れに打ち勝てず、事前に調べてお店に電話で確認しておきました。大人ですね。
雑居ビルに飲食店がぎっしり詰まっていますが、本日伺うのは「BAR GREYHOUND」というバーです。
エレベーター内に店の案内を発見。これは大人の洒落たバーだぞ。
着きました!ドキドキ……入りますよ。
わー!これはもう、バーとしか言いようがないバーです!
18時過ぎだったので他のお客様はまだ居ませんでした。こういうバーは21時過ぎたあたりからが本番ですかね。
カウンター席のはしっこを陣取って、さっそく「欅」を飲みましょう。散歩してきたのでのどが渇いています。バーテンダーの方におすすめの飲み方を伺うと「欅はジントニックのために作られたジンみたいですね」とのことで、ジントニックを注文。
これが「欅」のジントニックだ!
ごくり。ああ、うまい。
「トランヴェール」には宮城県産のボタニカルが……とか、柚子の香りが……とか「欅」に関するいろいろな説明があった(そして、そういう情報がおいしさを増幅してくれる)けれども、複雑で繊細な味わいを脳で理解していなくても今感じているおいしさは本物です。
店内にはバーテンダーの方と私だけで、ジントニックを飲むことに集中する。ハハ、私はこれを飲むために仙台まで来たのだなあ。
コースターは店名のカタカナ表記でかわいい。
バーテンダーである結城さんが話しかけてくださったので「欅」はボトルも素敵ですねと伝えると、「こんなのもありますよ」と出してくれたのが
一升瓶に入った、ジン!
「欅」の蒸留所であるMCG(Miyagi Craft Gin)は、150年つづく酒蔵「新澤醸造」が2018年に設立した会社。もともと日本酒づくりをしているということで一升瓶バージョンがあるのでしょう。
後から公式サイトを見ると「2020年5月にクラフトジン『欅』が誕生」とのこと。冒頭にも出したサントリー「翠」が日本中でヒットしはじめたところに、新たに登場した本当においしい国産クラフトジン。これからド流行りするかもしれません。
世界最高峰のクラフトジンをここ宮城の地から。2020年5月にクラフトジン「欅」が誕生。
ジントニックを飲み干し「何かもう一杯、宮城のものを飲めますか」と聞くと、結城さんは宮城の蒸留酒を並べてくれました。
新たに出してくれたのは宮城のウイスキー「宮城峡」と「伊達」。
「宮城峡」は見たことがあるけれど「伊達」はたぶん初めてだと言うと「今はインターネットで買えてしまうのですが、基本的に県外の飲食店には卸していないはずです」と教えてくれたので、もうこれでしょう。
ニッカウヰスキー「伊達」の水割りです。
かなり飲みやすいブレンデッドウイスキー。結城さんに、蒸留器の違いによるウイスキーの種類分けについて詳しく説明してもらいながらごくごくいただきました。
やさしい結城さん、お願いすると一緒に写ってくださいました。
この後「欅」を他の飲み方で飲んでみたくなり、ジンソーダも1杯いただきました。見た目はジントニックと変わりませんが、トニックウォーターの甘みと苦味がなくなってよりすっきりとした味わい!はー、おいしかった……。
「BAR GREYHOUND」はオーセンティックなバーの趣きで入るまでは緊張しましたが、ちょうどいい距離感で話せて女性ひとりでも楽しめるお店でした。駅からもかなり近いので新幹線前後の立ち寄りにもおすすめです。
居酒屋でも「欅」ジントニック
さて仙台には「欅」を飲める店が他にもあります。小腹がすいたのでもう一軒いきますよ!先ほどの「BAR GREYHOUND」から徒歩5分ちょっとのところにある居酒屋「おかん 分店」へ。
こちらも「食べログ」で「欅」が飲めるとあったので事前予約を試みると「金曜の夜は予約をとっていないんです」とのこと。20時すぎくらいに突撃してみたところ、雨のせいかそれほど混んでいませんでした。
ちゃんとあります「欅」が!ここではジントニックのみでの提供です。
お通しと「欅」ジントニックです。
ビールグラスで飲むのも居酒屋って感じがしていいですね。夏野菜を使ったお通しもおいしく、ジントニックとの相性もよかった!
ジントニックのお供は、アジフライに決めました。
アジとサクサク衣のじゅわっとした油、そしてタルタルソースのまったり感がおいしい。それらを柑橘感のあるジントニックがさっぱりさせてくれてお手本のような組み合わせではないですか。普段ジントニックを食事と一緒に飲むことはないのですが、これはうまかった!
大変言いにくいのですが、散歩中に写真を撮りすぎてここでスマートフォンのバッテリーが切れてしまいました。
この後にお刺身やだし巻き玉子なども注文しジントニックもおかわりしましたが、アジフライとのペアリングが一番よかったと思います。
最高の「欅」ナイトとなりました。
ベタに乗っかるよろこび
定番レジャースポットや話題のグルメを受け流してきた我が人生。このままそういう「ベタな楽しさ」を素通りしつづけると、私はこの先自分の気分を上げるのにどんどん苦労するようになっていくんではないか。そもそも与えられたベタではない“本当の”楽しさってなんなのよ、と思いはじめてこの旅を決めました。
雑誌で見た場所へ話題のお酒を飲むために来たけれど、実際に着いてみるとずんだ食べ比べをしたり駅前をぐるぐるしたり、予想外の大雨を避けるようにアーケード街や地下道を歩いたり、初めて見たウイスキーを飲んだり食事とジントニックの組み合わせを考えたり、当たり前なんですが、雑誌には書いていない自分だけに生きられた時間ばかりなのでした。
みんながこうやって「自分だけのベタ」を楽しんできたのかと今さら気がついたわけです。これまでメディアやSNSを見て何かわかったような気になっていたことが恥ずかしい。これからはベタなものを自分だけの経験として楽しんでいきたいです。
翌日、帰りに仙台駅2Fを通ると前日の「夏のお酒とおつまみフェア」から「動物フェア」というひたすらかわいい祭りに替わっていました。時は流れる。
また仙台に行きたいです!