散歩ついでに適当なライブハウスに入ってみる
- 更新日: 2022/07/05
下北沢ライブハウス看板コレクション
在宅時間が長くなると腰が痛くてどうしようもない。iPhoneアプリの歩数計によれば、今日の仕事中はトータル16歩しか移動していないそうだ。
午後の2歩は一体何をしたのか
さて金曜の夕方って実質祝日だからあてもなく町を歩きたい。散歩は無目的の美学。今日は三軒茶屋駅まで行ってにぎやかな茶沢通りでもぶらつくか。
そういえばこの前友だちと一緒に歩いてたら、この通りで野良のエビチリに遭遇してつい写真撮ったんだよな。
それで、今日はひとりで夕暮れどきの活気のある茶沢通りを歩いている。腰痛解消のためにちょっと大股とか早足で歩いてみたりして……
あっ
エビチリだ
エビチリだ!!
意志を感じる筆圧に「チ」と「リ」の独特なハネ、律儀に打たれるピリオド。これは紛れもなくあの野良エビチリである。こういうのは一度認識すると次々と目に飛び込んでくるもので、実は茶沢通りに立つ電灯にいくつも生息していることを知った。
エビチリばかりじゃ胸も焼けるし、たまにはね
しばらく行くと茶沢通りを横断する遊歩道が現れる。この道は「北沢川緑道」という名で、小さな川と季節折々の草花が楽しめる。いつでも気持ちのいい通りだ。
なんとなく人の住むところにはどんなに小さくても水の流れがあってほしいと思う。そこらで川とか風が動いているのを見ると、人間が別に何もしていなくたって大丈夫な気がするというか。
多!
地図に表示された場所に加え、私の知るライブハウスを含めると少なくとも20店舗はあるだろう。
ベースメントバーというライブハウスのマップ上の説明に「ライブハウス というより、私達のリビングです」とある(散歩当時)。誰が書いたのか知らないが、下北沢におけるライブハウスのあり方そのものを説明しているようだ。
下北沢のライブハウスには数え切れないほど出演したり遊びにいったりしたが、それは自分が関わる目的があってのこと、まさに「そこで生きる(=リビング)者」としてだ。しかし今日は散歩者としてここにいる。
冒頭でも宣言した通り、散歩は無目的の美学。仲間のライブを見にだとか、自主企画の会場を下見するとかそういう目的なしにライブハウスに寄ってみるのはどうだろう。
そんなことを考えながら歩いていると、“私達のリビング”こと「BASEMENTBAR(ベースメントバー)」そして併設された「THREE(スリー)」というライブハウスの前まで来た。
この2会場は私自身何度もお世話になっている。今日はどんなイベントをするのかな。
地下に向かう階段の途中にイベント内容が掲示されている。
今これを読んでいる方々には完全に「はて?」だが、このイベントは主催も出演者も知っている人ばかりでちょっと私自身とは関わりが強めだ。これではなにか目的を持ってしまいそう……
もう少し歩いて他のイベント看板も見てみるか。
こちらは「ニュー風知空知(ふうちくうち)」という店。「ニュー」になる前に一度来たことがあるが、変わっていなければ着席スタイルのアコースティック系ライブハウスだ。
「ホタルライトヒルズバンド」の企画で計2組が出演するらしい。蛍の光の丘……絶対にやさしい音楽が聴けるぞこれは。悪い夜にはならなそうな気がする。
「mona records(モナレコード)」。ここには何度来たかわからない。やわらかな内装の店内で、繊細なポップスから骨太なロックまで幅広い音楽が楽しめるライブハウス。
写真では見にくいが、出演者として3名の女性らしき名前が書いてある。たぶん今日はソロ活動をするシンガーソングライターばかり出演する日だな。
下北沢最大キャパの「Shangri-La(シャングリラ)」では、ワンマンライブが行われるそう。
当日券¥0?無目的の私にはかなりヒキのある誘い文句ではないか。バンド名が読めない。ザ……ザンヴァラ……かな……?重たいロックでメイクが濃そうだと私の第六感が囁く。縄張り意識の強いファンがいたらどうしよう、漫画みたいにドアから放り出されないだろうか。
もちろん誰かにとっては好きなバンドの大事なワンマンであって、だからこそ私のようにテキトーなヤツがふらりと参加するものではない。タダには惹かれるが。
「CLUB Que(クラブキュー)」もワンマン。
会場内に充満するであろうバンドへの愛と一体感の中、明らかに場違いだった場合のいたたまれなさがもう嫌ってほどに想像されて恐ろしくなってくる。エビチリだ!とか言ってた頃はあんなに楽しかったのに……
というか、今まで私がやってきたバンドのワンマンに来てくれた音楽ファン以外の方々もきっとこういう気持ちだったのだ。知り合いに呼ばれたから来たけど急に暗い地下室だし、誰のことも知らないし。これまで足を運んでくれたみなさんに改めて心から感謝した。
「SHELTER(シェルター)」。これは……もうどれがバンド名でどれがイベント名かもわからない。人間はわからないものが怖い。
次!
「ろくでもない夜」。
「終活」を冠するクラブがいる時点でろくでもなさそうでいい。「まちぶせ」もすきだな。「俺こそがウエムラ」は名前こそふざけているが暗い人であってほしい。看板の字も出演者名のテイストに合ってるし、ろくでもない夜に賭けてもいいような気もするが……
俺達の音楽を聴け!!の思いを受け取って一旦保留。
「LIVE HOLIC(ライブホリック)」からはなにか若いオーラを感知
「Daisy Bar(デイジーバー)」もシンガーソングライター縛りかな
「Laguna(ラグーナ)」もシンガーソングライター縛りだ
下北沢をあちこち歩いてすっかり疲れてしまった。これでも客が行列をなしていた店や駅の反対方面の店は除いたのだが、それでも10店回って看板散歩としてはまあまあ撮れ高を稼いだはずである。そろそろどこかに入ろう。
ワンマンは怖すぎて無理、シンガーソングライター縛りは3つもあって選べない。終活クラブは見てみたかったけど立ち見で2時間以上ライブを楽しむ元気がもうない……今の気分は絶対に、座れるとこだ!
それで恐る恐る入った「ニュー風知空知」は、雑居ビル4階にあるライブのできるカフェ・バー。
当日券+ドリンク代で4,100円。この出費を後悔しないことを祈りながらジントニックを注文し、カウンター席に着いて棚に並ぶ本やレコードを眺めたりする。
十数名の観客がそれぞれソファー席に座っている。落ち着いた客層、常連だけで盛り上がるようなノリもなく、完全なよそ者でも疎外感なしに居られそう。あーワンマンやめといてよかった……
※店内やライブの写真撮影は許可をいただいています
ライブは「DEW(デュー)」というユニットからはじまった。
当たり前みたいに歌もピアノもめちゃくちゃうまいのだが、まず急に知らない人の全力を見せられているというか、生命体からものすごい総量のエネルギーが発されているのを一方的に受け取る体験に身体がびっくりしている。
すきな音楽家や友人のライブに自ら行くと期待や記憶が先行するし、ストリートライブはひらけた空間に音が散ってしまう。この感覚を味わうことって実はあまりないんじゃないか。
2006年に活動開始、2008年メジャーデビューという経歴も納得の安定感あるステージ。おふたりからはかなり練成されたオーラが放たれているんだな。
散歩のついでに偶然立ち寄っただけだから、なにか「もらった」ような気になる。まあお金は払ってるんだけど。普段「行くぞ」で足を運ぶライブでは逆にどこか元を取らなきゃいけない気になってるんだろうかと、自分のいやしい内面と向き合うこととなった。
本日の企画者「ホタルライトヒルズバンド」。通常はバンドで今回はアコースティック編成らしい。こちらも活動10周年とのことでスムーズで穏やかなステージ。歌も楽器も押し付けのない軽さがいい。
パーカッションの人がステージで自然にコーラを飲んでいてなんか笑ってしまった。家かよ。
ベースにもアコースティックってあるんだ!
鍵盤もギターも歌もできる人にはもう資格手当みたいなの出さない?
MCでボーカルの方が「衣装が暑い」と言うもメンバーからまったく同意を得られず、ご本人は「代謝だな」と結論付けていたが、たぶん歌ってるからだよ。
ところで生演奏を聴いていると関係ない考えごとが捗りがちだ。刺激で脳が活性化するのかあれこれ頭に浮かび、自分の内側に宇宙がブワーと広がってまたシュウーとこの場に帰ってくるような。この現象に名前がついていいくらいよく起こるんだけどみんなどうですか。
最後はDEWのおふたりが入って大団円
隣席のサラリーマン風男性が何度もうなずきながらライブを楽しんでいる様子で、偶然入っただけのくせに「来てよかったですね!」みたいなことを思った。
帰り際、店主の斉藤さんに少しお話を伺った。
▼「ニュー風知空知」のTwitter公式アカウント
腰痛解消の散歩ついでに適当なライブハウスに入ることにしたら「知らない場所で知らない人たちしかいないイベントに入るのは、かなり怖い」と当たり前のことがわかった。でも入ってみるといい時間になった。
「もっと気楽に立ち寄れる空間に」と公共への広がりや町とのつながりを指向するライブハウスが増えつつあるなか、ストイックにいい音楽を聴ける場を目指す「ニュー風知空知」のスタイルは説得力がある。
ライブハウスを「私達のリビング」と思えるのは内側にいる者の感覚で、よそ者としてはまさに「人様のリビングにわざわざお邪魔する」ようなもんだ。だからこそ居心地よりもそこで鳴る音楽に焦点を当てるのは、ひとつの正しい道という気がした。
でも誰かにとって「自分の場所」と思える場があるっていうのもいいことではないか。公共性を獲得することと、いつもいる人にとって居心地のいい空間にすることって両立が難しいよな……とか一丁前に考えながら、また三軒茶屋まで歩いた。
ちなみにワンマンの2つを調べたら、ヴィジュアル系とヘヴィーメタルバンドだった。それらと弾き語り音楽が100m圏内で同時に鳴る下北沢という町の深淵を覗いた夜でした。
午後の2歩は一体何をしたのか
さて金曜の夕方って実質祝日だからあてもなく町を歩きたい。散歩は無目的の美学。今日は三軒茶屋駅まで行ってにぎやかな茶沢通りでもぶらつくか。
エビチリと茶沢通り
茶沢通りは、名の通り三軒茶屋と下北沢をつなぐ道。居酒屋や古着屋、本屋などたくさんの店が軒を連ねて歩くだけで楽しい。そういえばこの前友だちと一緒に歩いてたら、この通りで野良のエビチリに遭遇してつい写真撮ったんだよな。
それで、今日はひとりで夕暮れどきの活気のある茶沢通りを歩いている。腰痛解消のためにちょっと大股とか早足で歩いてみたりして……
あっ
エビチリだ
エビチリだ!!
意志を感じる筆圧に「チ」と「リ」の独特なハネ、律儀に打たれるピリオド。これは紛れもなくあの野良エビチリである。こういうのは一度認識すると次々と目に飛び込んでくるもので、実は茶沢通りに立つ電灯にいくつも生息していることを知った。
エビチリばかりじゃ胸も焼けるし、たまにはね
しばらく行くと茶沢通りを横断する遊歩道が現れる。この道は「北沢川緑道」という名で、小さな川と季節折々の草花が楽しめる。いつでも気持ちのいい通りだ。
なんとなく人の住むところにはどんなに小さくても水の流れがあってほしいと思う。そこらで川とか風が動いているのを見ると、人間が別に何もしていなくたって大丈夫な気がするというか。
下北沢にライブハウスはいくつあるのか
コロナ前までバンドで月4-5回ほどライブをするような生活を送っていた私にとって、下北沢はライブハウスの町。歩きながらふとグーグルマップを開き、現在地で「ライブハウス」と検索してみる。多!
地図に表示された場所に加え、私の知るライブハウスを含めると少なくとも20店舗はあるだろう。
ベースメントバーというライブハウスのマップ上の説明に「ライブハウス というより、私達のリビングです」とある(散歩当時)。誰が書いたのか知らないが、下北沢におけるライブハウスのあり方そのものを説明しているようだ。
下北沢のライブハウスには数え切れないほど出演したり遊びにいったりしたが、それは自分が関わる目的があってのこと、まさに「そこで生きる(=リビング)者」としてだ。しかし今日は散歩者としてここにいる。
冒頭でも宣言した通り、散歩は無目的の美学。仲間のライブを見にだとか、自主企画の会場を下見するとかそういう目的なしにライブハウスに寄ってみるのはどうだろう。
そんなことを考えながら歩いていると、“私達のリビング”こと「BASEMENTBAR(ベースメントバー)」そして併設された「THREE(スリー)」というライブハウスの前まで来た。
この2会場は私自身何度もお世話になっている。今日はどんなイベントをするのかな。
地下に向かう階段の途中にイベント内容が掲示されている。
今これを読んでいる方々には完全に「はて?」だが、このイベントは主催も出演者も知っている人ばかりでちょっと私自身とは関わりが強めだ。これではなにか目的を持ってしまいそう……
もう少し歩いて他のイベント看板も見てみるか。
ライブハウス10店舗看板めぐり
こちらは「ニュー風知空知(ふうちくうち)」という店。「ニュー」になる前に一度来たことがあるが、変わっていなければ着席スタイルのアコースティック系ライブハウスだ。
「ホタルライトヒルズバンド」の企画で計2組が出演するらしい。蛍の光の丘……絶対にやさしい音楽が聴けるぞこれは。悪い夜にはならなそうな気がする。
「mona records(モナレコード)」。ここには何度来たかわからない。やわらかな内装の店内で、繊細なポップスから骨太なロックまで幅広い音楽が楽しめるライブハウス。
写真では見にくいが、出演者として3名の女性らしき名前が書いてある。たぶん今日はソロ活動をするシンガーソングライターばかり出演する日だな。
下北沢最大キャパの「Shangri-La(シャングリラ)」では、ワンマンライブが行われるそう。
当日券¥0?無目的の私にはかなりヒキのある誘い文句ではないか。バンド名が読めない。ザ……ザンヴァラ……かな……?重たいロックでメイクが濃そうだと私の第六感が囁く。縄張り意識の強いファンがいたらどうしよう、漫画みたいにドアから放り出されないだろうか。
もちろん誰かにとっては好きなバンドの大事なワンマンであって、だからこそ私のようにテキトーなヤツがふらりと参加するものではない。タダには惹かれるが。
「CLUB Que(クラブキュー)」もワンマン。
会場内に充満するであろうバンドへの愛と一体感の中、明らかに場違いだった場合のいたたまれなさがもう嫌ってほどに想像されて恐ろしくなってくる。エビチリだ!とか言ってた頃はあんなに楽しかったのに……
というか、今まで私がやってきたバンドのワンマンに来てくれた音楽ファン以外の方々もきっとこういう気持ちだったのだ。知り合いに呼ばれたから来たけど急に暗い地下室だし、誰のことも知らないし。これまで足を運んでくれたみなさんに改めて心から感謝した。
「SHELTER(シェルター)」。これは……もうどれがバンド名でどれがイベント名かもわからない。人間はわからないものが怖い。
次!
「ろくでもない夜」。
「終活」を冠するクラブがいる時点でろくでもなさそうでいい。「まちぶせ」もすきだな。「俺こそがウエムラ」は名前こそふざけているが暗い人であってほしい。看板の字も出演者名のテイストに合ってるし、ろくでもない夜に賭けてもいいような気もするが……
俺達の音楽を聴け!!の思いを受け取って一旦保留。
「LIVE HOLIC(ライブホリック)」からはなにか若いオーラを感知
「Daisy Bar(デイジーバー)」もシンガーソングライター縛りかな
「Laguna(ラグーナ)」もシンガーソングライター縛りだ
下北沢をあちこち歩いてすっかり疲れてしまった。これでも客が行列をなしていた店や駅の反対方面の店は除いたのだが、それでも10店回って看板散歩としてはまあまあ撮れ高を稼いだはずである。そろそろどこかに入ろう。
ワンマンは怖すぎて無理、シンガーソングライター縛りは3つもあって選べない。終活クラブは見てみたかったけど立ち見で2時間以上ライブを楽しむ元気がもうない……今の気分は絶対に、座れるとこだ!
「ニュー風知空知」へ戻る
それで恐る恐る入った「ニュー風知空知」は、雑居ビル4階にあるライブのできるカフェ・バー。
当日券+ドリンク代で4,100円。この出費を後悔しないことを祈りながらジントニックを注文し、カウンター席に着いて棚に並ぶ本やレコードを眺めたりする。
十数名の観客がそれぞれソファー席に座っている。落ち着いた客層、常連だけで盛り上がるようなノリもなく、完全なよそ者でも疎外感なしに居られそう。あーワンマンやめといてよかった……
※店内やライブの写真撮影は許可をいただいています
ライブは「DEW(デュー)」というユニットからはじまった。
当たり前みたいに歌もピアノもめちゃくちゃうまいのだが、まず急に知らない人の全力を見せられているというか、生命体からものすごい総量のエネルギーが発されているのを一方的に受け取る体験に身体がびっくりしている。
すきな音楽家や友人のライブに自ら行くと期待や記憶が先行するし、ストリートライブはひらけた空間に音が散ってしまう。この感覚を味わうことって実はあまりないんじゃないか。
2006年に活動開始、2008年メジャーデビューという経歴も納得の安定感あるステージ。おふたりからはかなり練成されたオーラが放たれているんだな。
散歩のついでに偶然立ち寄っただけだから、なにか「もらった」ような気になる。まあお金は払ってるんだけど。普段「行くぞ」で足を運ぶライブでは逆にどこか元を取らなきゃいけない気になってるんだろうかと、自分のいやしい内面と向き合うこととなった。
本日の企画者「ホタルライトヒルズバンド」。通常はバンドで今回はアコースティック編成らしい。こちらも活動10周年とのことでスムーズで穏やかなステージ。歌も楽器も押し付けのない軽さがいい。
パーカッションの人がステージで自然にコーラを飲んでいてなんか笑ってしまった。家かよ。
ベースにもアコースティックってあるんだ!
鍵盤もギターも歌もできる人にはもう資格手当みたいなの出さない?
MCでボーカルの方が「衣装が暑い」と言うもメンバーからまったく同意を得られず、ご本人は「代謝だな」と結論付けていたが、たぶん歌ってるからだよ。
ところで生演奏を聴いていると関係ない考えごとが捗りがちだ。刺激で脳が活性化するのかあれこれ頭に浮かび、自分の内側に宇宙がブワーと広がってまたシュウーとこの場に帰ってくるような。この現象に名前がついていいくらいよく起こるんだけどみんなどうですか。
最後はDEWのおふたりが入って大団円
隣席のサラリーマン風男性が何度もうなずきながらライブを楽しんでいる様子で、偶然入っただけのくせに「来てよかったですね!」みたいなことを思った。
帰り際、店主の斉藤さんに少しお話を伺った。
ライブにふらっと立ち寄る方っていますか?
いないですね、そういうもんかなと思います。ライブ後は酒を飲む店になってるんで、そっちで来る方はいますね。
なるほど、ソファーもあってゆっくりできそうです。それにしても下北沢はライブハウスが本当に多いですよね。町全体を使ったフェスとかもやってますし。
そうですね。他店はわからないですが、うちは別に下北沢を盛り上げたいとかはないんですよ。ただ「しっかりいい音楽やってる」って店にしたい。寄せ集めのブッキングライブとかもやらないようにしてます。
たしかに、前からそういうことを大事にされている印象がありました。妥協がないというか。
ありがとうございます。まあでも、2軒目3軒目で気軽に飲みに来てください!
フードメニューも気になるし、ライブ以外でも来てみます。ありがとうございました!
▼「ニュー風知空知」のTwitter公式アカウント
live&cafe bar BAR営業18:00~ 月曜定休日 ライブの日はライブ終了後にBAR営業となります。ライブスケジュールをご確認ください。
さー帰ろ
腰痛解消の散歩ついでに適当なライブハウスに入ることにしたら「知らない場所で知らない人たちしかいないイベントに入るのは、かなり怖い」と当たり前のことがわかった。でも入ってみるといい時間になった。
「もっと気楽に立ち寄れる空間に」と公共への広がりや町とのつながりを指向するライブハウスが増えつつあるなか、ストイックにいい音楽を聴ける場を目指す「ニュー風知空知」のスタイルは説得力がある。
ライブハウスを「私達のリビング」と思えるのは内側にいる者の感覚で、よそ者としてはまさに「人様のリビングにわざわざお邪魔する」ようなもんだ。だからこそ居心地よりもそこで鳴る音楽に焦点を当てるのは、ひとつの正しい道という気がした。
でも誰かにとって「自分の場所」と思える場があるっていうのもいいことではないか。公共性を獲得することと、いつもいる人にとって居心地のいい空間にすることって両立が難しいよな……とか一丁前に考えながら、また三軒茶屋まで歩いた。
ちなみにワンマンの2つを調べたら、ヴィジュアル系とヘヴィーメタルバンドだった。それらと弾き語り音楽が100m圏内で同時に鳴る下北沢という町の深淵を覗いた夜でした。