花巻が良かった
- 更新日: 2018/09/06
何が出るんでしょうね。
ひょんなことから岩手県、花巻市に来ている。
ひょんなこと、というのは、「まきまき花巻」という花巻市がやっているサイトの企画で、散歩の講師としてお声がけいただいたのでした。
岩手への移動を舐めていた。当日8/11下りというのは帰省ラッシュのピークで、直前に指定席など取れるわけもなく、しかも自由席のあるやまびこでかつイベントに間に合う便が始発しかなく、さらに悪いことにこの情報は一緒に講師をする井上さんから2日前に聞いた情報であって、僕はまだ調べてすらいなかった。
そして、その始発とは東京駅を6:04に発車する。これは横浜の自宅からは間に合わない。完全に詰んだ。
詰んだというか、なにもしてこなかっただけだ。餌をあげなかったら死んだ、みたいな話だ。それを詰んだと言わない。安易に将棋に例えるな。お前は、なにもしなかったのだ。見ると、歩(ふ)が喋っていた。歩は続ける。お前は盤上に、勝負に生きていない。将棋に例えるな。
僕は歩を中指で思いっきり弾く。パン! と音がして、薄い磨りガラスに鋭角の穴があいた。
何の話でしたっけ。そう、それで、その始発に乗るため、前日は東京駅近辺の安宿にでも泊まるか、と思って夜のうちに東京まで出たのですが。
そのときひらめいてしまって、ああそうだ、どうせ一晩泊まるなら、行けるところまで行って宿を探したほうが安いし明日遅く出られるし最高だな、と。
それで最終のやまびこで仙台まで駒を進め、駒? と絡んできた歩を僕は中指で思いっきり弾く。カンコンカン! と、こんどは溜めたカン類に乱反射した。
とにかく、12時集合の花巻に、僕は9時に着いた。
東北本線は初めて乗ったけれど、乗車駅証明書の機械が車内にあって、全然分からんので、まわりの所作を見ていたんだけど、使っている人は居なかった。あれは何だったんだろうな。とにかく、9時に花巻に着いた。
9時に歓迎された。
へえ、と思ったのは、宮沢賢治より、温泉のほうが先なんだな。僕は知らなかったけど花巻は温泉街で、井上さんも家族で来たことがあるって言ってた。
そうだ、それで、こんかいのお話は、散歩イベントの前に勝手に散歩した記録です。
ちょっと駅のまわりをうろうろしてみようと思ったんだけど、気がついたらわりと本格的に歩いていて、12時の集合に1分ほど遅刻した。
結果この日は、2時間くらいの散歩を同じエリアで2セット行った。
お散歩おじさんって名乗っていいエピソードだと思いません?
こんにちは、お散歩おじさんです!!!
ところで駅に着いたときにこの飾りが目に入ってきて、早速イーハトーブを1つ捕獲しました。
花巻はイーハトーブってめっちゃ言ってるイメージがあって、多分豆腐屋はイーハトーフを作っているだろうし、そういう、さまざまなイーハトーブを乱獲しようと意気込んでいたのですが、意外にも、イーハトーブの字面は殆ど見かけませんでした。
見つけたのが、居食屋? のこれと、
これは帰りの新花巻駅なんだけど、そば屋。
少なかったし、あと、ぜんぶ、僕の考えるイーハトーブの感じとは違うもので使われていたのが興味深い。
代わりに、花巻は銀河とつけがち、という話を聞いた。
いずれにせよ、宮沢賢治の影響下にあります。
街の至るところに、宮沢賢治の何かがある。
花巻は、宮沢賢治の雰囲気で街を統一する意識がある、と市役所の方から教えていただいた。
ところで宮沢賢治っぽさとはどう定義されるのだろう、とふと思った。
フリーハンドで動物を描く感じなのか。
これは宮沢賢治ではない菊だ。
これは宮沢賢治なカエルだ。
これは宮沢賢治ではないパーマだ。
利便性、合理性からの圧力がない形状だろうか。
よく分からないけれど、
なんとなく分かるのは何だ。
ただまあ、昼でも夜でもない時間が存在するように、境界線上に居るものもたまに見かける。
いろいろなものが疑わしくなってくる。
これは、フクロウなのではないか。
これは確実に公式。かわいいですもん。ほっぺ赤いですもん。
そんな感じの街です。
で、まあ、僕はといえば、何も考えずにぶらぶら歩きますので、前置きがめっちゃ長くなったな。花巻散歩、スタートです。はじまってなかったのかよ。
花巻の名前の由来は定かではないけど、北上川の花のうずまきという説があるらしい。何それ。美しすぎじゃない?
そう言われると駅前もなんか花溜まりができてくるくる回転しそうな形をしています。
ずっとドアが開いてた。エアコン壊れたのかしら。
ずっと開いてたから、文字がずっとグチャッてなってたけど観光案内所ですね。
花巻駅の隣は意外にもスポーツ用品店。
あ、でも花巻って野球のイメージあるか。あるな。
なはんって何。
だから、なはんって何。
あとで聞いたけど方言だそうです。
そういえば、小説「銀河鉄道の父」で、賢治の妹トシが東京の病院に入院したとき、大きさに驚いた母が
というシーンがあった。あれか。
聞いたところによるとこの前の週まで花巻は23度くらいだったらしいけど、今日は夏を感じる。
東京が40度になった頃の暑さに比べたら、だいぶましだけど。あれは何だったんだろう。
蜘蛛にとってすごくいい距離だったんだろうな。
花巻駅前商業協同組合だって。なるほど、商店街あるんだ。
あれえ?
花巻駅前商店街の佇まいが、完全に想像と違った。
外国みたいだなハン。
かわいいサイズ。
アリクイの郵便やさんが回収しにきてほしい。
花巻ならそのくらいできる。
良い平面の作り方。
平面を作って無理矢理置く。こういうのは東京と変わらないんだな。比較路上園芸観察学。
おっ、地上式消火栓だ。かっこいいな。
花巻の旧市章がついてる。つっても、現行の市章は2006年かららしいので、そんなにめずらしくもなく、旧市章はよく見た。
一方で、これは花巻のマークじゃない。くるくるちゃん?
名前のとこ貼った形跡あるけど、名前変えたの? やっぱりあなた、ほんとは花巻の市章なんじゃないの?
広い道に出た。
大通だって。
お茶屋さんがあった。
ちょっと離れたところにだんご屋さんがあった。協業したらどうだろう。
毎週木曜セール、なんのお店だったんだろう。
ときわ旅館という旅館の入口。
天板が木造なのか。支柱は鉄。アーチ状のポールどうやったんだと思ったら、ところどころ拉げていて、力業で曲げたように見える。
しかし、全体的には素晴らしくいい造形だな。
横から見ると、絶妙な角度になっている。多分、お客さんや店の前に雪を落とさないためだと思う。
どこにも繋がってない階段。
透かしブロックにゴムを巻いている。これなんだろうな、と思ったら、
チェーンを、
あっち側の壁にかけるためのチェーンを固定してるのか。
変なものにはだいたい理由がある。
国生協様? 花巻では生協が国の生協様と敬われ、桁違いの権力を持ってるのかしら。
と思ったら、国有林材生産協同組合の略だった。
変なものにはだいたい理由がある。
また旅館だ。旅館が多いな。
同じ家が4つあった。
しかもこれ、看板になってるから、なんかの店舗だった?
もうー。絶対わざとじゃないですか。
顔に見える、とかじゃなくて、顔を作ってるじゃないですか。
ちょっとしか出さないパイプと、じゃんじゃん出す気のあるパイプ。
かつて花巻軽便鉄道というのが通っていて、この道がそうらしい。
軽便鉄道は東北本線の花巻駅にも乗り入れていて、賢治の童話「シグナルとシグナレス」は、東北本線の信号機シグナルと、軽便鉄道の腕木式信号機シグナレスのお話です。
眼下に、もと商店街と思われる道。
車窓から見える景色は、賑やかだったかしら。
居抜きで違う業種のお店が入ってるのいいですよね。
かっぱ飯店だって。
あとで聞いたら、このあたりで有名なボリューミーな飯屋らしい。
このときは知らずに、入ろうと思って近づいた。でもやってなかった。
仕方ないから、手書きの雷文でも見るか。
うむ。
カトリック花巻教会ですって。
最初、へえーってスルーしたんですけど、なんとなく、ちょっと戻って行ってみた。
これが、良かった。
まず、「カトリック教会」という表札が良かった。
飾り気のない鐘も良かった。
僕の思う、村の教会で良かった。
窓もいい。行ってみるもんだな。
住んでるんでしょうか。これが。
このあたりに駅があったらしい。
なんかありますね。吹張町(ふっぱりちょう)の文字が見える。
花巻まつりに向けて、各町内が山車小屋というものを作って、中で秘密裏に山車を作るんだって。
花巻まつりは神輿の数でギネスを持っているんだそう。同一会場で、114基という記録。
これは別の場所だけど、ほかにも山車小屋をたくさん見かけました。
大きな蛹みたいだなと思った。もうこの形容は何度もされていそうだけど。
花川橋。
おいー。圧倒的岩手じゃんかー。
このあたりは大堰川のプロムナードとして整備されている。
突然、ドット絵があった。
ドット絵には、花とウサギの二種類があった。
なんか、こういう、ゴムみたいな固まるやつで埋めて作ってるみたい。
わざわざ作ったんだろうか。
数字での管理からアルファベットでの管理に変えたのなんでだろうな。
あと、この区画の複雑さは何だろう。
一度来て、戻る。
急に煮凝りみたいな路地が出てきた。
おお。夜はやってそう。
路地を抜けると、広い商店街に出た。さっき軽便鉄道の道から見た、下の道っすね。
さきほどは「もと商店街」と表現したけれど、このあたりは賑やか。
左のほう、人がいっぱいだったから写真とってないけど、わんこそばのお店があって、めちゃくちゃ並んでいた。
一説にはわんこそばの発祥は花巻なんだそう。
まあそれでも、正直、シャッターが多い、んだけど、建物見てよ。このひとつひとつが、首都圏だと見つけた瞬間ワーってなるやつですよ。
レトロ商店街建築のインターハイ感ある。
これもいい。鹿踊りモチーフ説を唱えたい。
おっけー。
商店街の脇に神社がある。
金比羅神社らしいんだけど、
由緒の看板で「♪」を使うの初めて見た。
お上手だった。
パリパリパーク。声に出して読みたい日本語。
パリパリパーク、ここのこと?
パリパリパークから一転、時空間の扉とか言ってきましたけど。
蛇口から、何が出るんだろうな。
トイレのマークも宮沢賢治的な。
ふつうのもねんのためついてた。伝わらない人のために。
銀河橋だって。
さっきの大堰川にかかってるのか。
川は大きく曲がっている。
それに沿って吹張町のストリートも曲がっている。
忘れものがこんなになるまで忘れられることってある?
と思ったら、これすらも宮沢賢治の何かだった。銀河鉄道の夜だった。
ここから上町の商店街に入る。
のどかです。
建物がいちいち良い。どうやったらこの形を作ろうと思うの?
この建物もいい。形から察するに靴屋だろうか。
服屋だった。
賢治の広場だって。
その2階はビリヤード……?
ここもビリヤード……
花巻ビリヤード盛んなの?
上町の商店街、広いし音楽もかかっているんだけど、午前中だからかそれほど人は多くない。
あとから現地の方に聞いたら、そんなもんだと言ってた。
上町もやっとるね。秘密の山車小屋。
ちょっと脇道へ逸れて双葉町。飲み屋街。夜には人が多いそう。
ちょうちんの保護に余念がなかった。
出場者の答えを一斉に開いたときのやつみたいだった。
これは、意外と「④アテネ」が正解で総取りな気がする。
ぜんぶ人名っぽかった。
横町の中はこうなっていた。かえでへ行くには、みどりの前を通らないといけない。浮気ができにくいシステム。
文化タクシー。9人乗りのタクシーをやっているので有名らしい。
こういうやつ。宮沢賢治的なタクシー。そう、宮沢賢治的な。
これ乗ってみたかったなあ。
そのとなりに文化パーラーという食堂がある。文化タクシーの系列かしら。
ぽ°ら
「ふ」を付近で探したけど無かった。
暑さで文字も溶ける。
上町の商店街に、マルカンデパートというのがかつてあったそう。
1957年に創業した昭和なデパートは、2016年に閉館したのですが、その中でも人気だった最上階のマルカン大食堂の閉店を惜しむ声が多く、地元の人たちで運営を引き継ぎ、クラウドファンディングでお金を集めたりして、なんと再開にこぎ着け、今やってる。
この経緯は本になっている。読んだ。良かった。
閉館のニュースの直後から高校生が瞬発力で署名活動を始め、エリアリノベーションを実践していた人たちが花巻に居て、そこからたくさん人が集まっていって、なんか人の一生くらいの話を読んだ気がするんだけど、これ1年の出来事か。そうか。すごいな。でもまあ、こういうのって走り出したらこんな感じで濃密な時間が過ぎていくんだろうな。
今回のイベントの主催である「まきまき花巻」のサイトに、再オープンの詳細なレポがある。本読んでからこれ読み直すとまたグッとくるものがある。
本で紹介されていた、復活の立役者たちの、再オープン当日の顔が見られるからだ。
実は今回、イベントが終わってから、まきまき花巻の運営の方たちとマルカン大食堂へ行った。18:00閉店で、ギリギリであった。
マルカン本の著者であり編集者の北山さんもいらっしゃった。
やってる。
これ、ちょっとわたしが既にオフモードだったんで写真殆どないんですけど、メニューが死ぬほどある。あと寿司が600円くらいである。
これがマルカン名物の10段ソフト。箸で分け合って食べるのが正しい食べ方なのだそう。
8割くらい自分で食べましたけど。
マルカンラーメン。ちょっと辛いあんかけラーメン。
花巻三大麺の3番目に数えたり、数えられなかったりするらしい。
最上階の広い窓からは低い花巻の街と、遠くに山々が広がっている。岩手の街はだいたい東西を山に挟まれていて、周囲からは見えない隠れ里の感じがある。
みんな帰省してきたのか、デパート1フロアを使ったスペースは満席でした。
もはや有名スポットなので観光客も多いのだけど、地元の人は、行くと誰かしら知り合いが居るものらしい。ご一緒してくださった内田さんは、5回くらい話しかけられていた。あと、年季の入った蛇腹カーテンで一部が仕切られており、何だろうと思ったら、どこかのラグビー部の同窓会が開かれていた。デパートの食堂でそんなのある?
僕が今まで住んできたエリアに、これに相当する施設は無くて、形容に困る。
黄昏、上町のアーケード街は相変わらずのんびりと伸びていたのだけど、マルカンの駐車場だけが満車で、みんなここを目指して登ってくる。
いま、人口の偏りすごいんじゃないかしら。
ソフトクリームを箸でつまみながら、ここが無い間、この人達はどこへ行ってたんだろう、と思った。
マルカン大食堂、行ってよかったし、話を聞けてよかった。マルカン大食堂の復活は街の都合ではなく、これが無いと困る、ユーザ側の、正しい都合だと思った。
ユーザ側の都合が、そもまま、街のメリットにも(建前でなく本当に)なっているのも、希有なところで、これがある街と無い街、印象が確実に違う。僕はここに寄って、ちょっとやられてしまった。なんか楽しい。
花巻良かった。祭りがもうすぐある。
ひょんなこと、というのは、「まきまき花巻」という花巻市がやっているサイトの企画で、散歩の講師としてお声がけいただいたのでした。
花巻市でワークショップ講師をやります|ジモトぶらぶらマガジン サンポー
花巻へ行ってくる。【8月11日開催!】まち歩きのプロとまち探検!「高校生ライター×花巻の魅力発信」 | まきまき花巻花巻の魅力を発信する、高校生ライター募集! 花巻市では、2017年3月に花巻…
岩手への移動を舐めていた。当日8/11下りというのは帰省ラッシュのピークで、直前に指定席など取れるわけもなく、しかも自由席のあるやまびこでかつイベントに間に合う便が始発しかなく、さらに悪いことにこの情報は一緒に講師をする井上さんから2日前に聞いた情報であって、僕はまだ調べてすらいなかった。
そして、その始発とは東京駅を6:04に発車する。これは横浜の自宅からは間に合わない。完全に詰んだ。
詰んだというか、なにもしてこなかっただけだ。餌をあげなかったら死んだ、みたいな話だ。それを詰んだと言わない。安易に将棋に例えるな。お前は、なにもしなかったのだ。見ると、歩(ふ)が喋っていた。歩は続ける。お前は盤上に、勝負に生きていない。将棋に例えるな。
僕は歩を中指で思いっきり弾く。パン! と音がして、薄い磨りガラスに鋭角の穴があいた。
何の話でしたっけ。そう、それで、その始発に乗るため、前日は東京駅近辺の安宿にでも泊まるか、と思って夜のうちに東京まで出たのですが。
そのときひらめいてしまって、ああそうだ、どうせ一晩泊まるなら、行けるところまで行って宿を探したほうが安いし明日遅く出られるし最高だな、と。
それで最終のやまびこで仙台まで駒を進め、駒? と絡んできた歩を僕は中指で思いっきり弾く。カンコンカン! と、こんどは溜めたカン類に乱反射した。
とにかく、12時集合の花巻に、僕は9時に着いた。
東北本線は初めて乗ったけれど、乗車駅証明書の機械が車内にあって、全然分からんので、まわりの所作を見ていたんだけど、使っている人は居なかった。あれは何だったんだろうな。とにかく、9時に花巻に着いた。
9時に歓迎された。
へえ、と思ったのは、宮沢賢治より、温泉のほうが先なんだな。僕は知らなかったけど花巻は温泉街で、井上さんも家族で来たことがあるって言ってた。
そうだ、それで、こんかいのお話は、散歩イベントの前に勝手に散歩した記録です。
ちょっと駅のまわりをうろうろしてみようと思ったんだけど、気がついたらわりと本格的に歩いていて、12時の集合に1分ほど遅刻した。
結果この日は、2時間くらいの散歩を同じエリアで2セット行った。
お散歩おじさんって名乗っていいエピソードだと思いません?
こんにちは、お散歩おじさんです!!!
花巻を捕まえたい
ところで駅に着いたときにこの飾りが目に入ってきて、早速イーハトーブを1つ捕獲しました。
花巻はイーハトーブってめっちゃ言ってるイメージがあって、多分豆腐屋はイーハトーフを作っているだろうし、そういう、さまざまなイーハトーブを乱獲しようと意気込んでいたのですが、意外にも、イーハトーブの字面は殆ど見かけませんでした。
見つけたのが、居食屋? のこれと、
これは帰りの新花巻駅なんだけど、そば屋。
少なかったし、あと、ぜんぶ、僕の考えるイーハトーブの感じとは違うもので使われていたのが興味深い。
代わりに、花巻は銀河とつけがち、という話を聞いた。
いずれにせよ、宮沢賢治の影響下にあります。
街の至るところに、宮沢賢治の何かがある。
花巻は、宮沢賢治の雰囲気で街を統一する意識がある、と市役所の方から教えていただいた。
ところで宮沢賢治っぽさとはどう定義されるのだろう、とふと思った。
フリーハンドで動物を描く感じなのか。
これは宮沢賢治ではない菊だ。
これは宮沢賢治なカエルだ。
これは宮沢賢治ではないパーマだ。
利便性、合理性からの圧力がない形状だろうか。
よく分からないけれど、
なんとなく分かるのは何だ。
ただまあ、昼でも夜でもない時間が存在するように、境界線上に居るものもたまに見かける。
いろいろなものが疑わしくなってくる。
これは、フクロウなのではないか。
これは確実に公式。かわいいですもん。ほっぺ赤いですもん。
そんな感じの街です。
で、まあ、僕はといえば、何も考えずにぶらぶら歩きますので、前置きがめっちゃ長くなったな。花巻散歩、スタートです。はじまってなかったのかよ。
花巻駅前
花巻の名前の由来は定かではないけど、北上川の花のうずまきという説があるらしい。何それ。美しすぎじゃない?
そう言われると駅前もなんか花溜まりができてくるくる回転しそうな形をしています。
ずっとドアが開いてた。エアコン壊れたのかしら。
ずっと開いてたから、文字がずっとグチャッてなってたけど観光案内所ですね。
花巻駅の隣は意外にもスポーツ用品店。
あ、でも花巻って野球のイメージあるか。あるな。
なはんって何。
だから、なはんって何。
あとで聞いたけど方言だそうです。
そういえば、小説「銀河鉄道の父」で、賢治の妹トシが東京の病院に入院したとき、大きさに驚いた母が
「外国みたいだなハン」
というシーンがあった。あれか。
聞いたところによるとこの前の週まで花巻は23度くらいだったらしいけど、今日は夏を感じる。
東京が40度になった頃の暑さに比べたら、だいぶましだけど。あれは何だったんだろう。
蜘蛛にとってすごくいい距離だったんだろうな。
花巻駅前商業協同組合だって。なるほど、商店街あるんだ。
あれえ?
花巻駅前商店街の佇まいが、完全に想像と違った。
外国みたいだなハン。
かわいいサイズ。
アリクイの郵便やさんが回収しにきてほしい。
花巻ならそのくらいできる。
良い平面の作り方。
平面を作って無理矢理置く。こういうのは東京と変わらないんだな。比較路上園芸観察学。
おっ、地上式消火栓だ。かっこいいな。
花巻の旧市章がついてる。つっても、現行の市章は2006年かららしいので、そんなにめずらしくもなく、旧市章はよく見た。
一方で、これは花巻のマークじゃない。くるくるちゃん?
名前のとこ貼った形跡あるけど、名前変えたの? やっぱりあなた、ほんとは花巻の市章なんじゃないの?
大通り
広い道に出た。
大通だって。
お茶屋さんがあった。
ちょっと離れたところにだんご屋さんがあった。協業したらどうだろう。
毎週木曜セール、なんのお店だったんだろう。
どっかの路地
ときわ旅館という旅館の入口。
天板が木造なのか。支柱は鉄。アーチ状のポールどうやったんだと思ったら、ところどころ拉げていて、力業で曲げたように見える。
しかし、全体的には素晴らしくいい造形だな。
横から見ると、絶妙な角度になっている。多分、お客さんや店の前に雪を落とさないためだと思う。
どこにも繋がってない階段。
透かしブロックにゴムを巻いている。これなんだろうな、と思ったら、
チェーンを、
あっち側の壁にかけるためのチェーンを固定してるのか。
変なものにはだいたい理由がある。
国生協様? 花巻では生協が国の生協様と敬われ、桁違いの権力を持ってるのかしら。
と思ったら、国有林材生産協同組合の略だった。
変なものにはだいたい理由がある。
また旅館だ。旅館が多いな。
同じ家が4つあった。
しかもこれ、看板になってるから、なんかの店舗だった?
もうー。絶対わざとじゃないですか。
顔に見える、とかじゃなくて、顔を作ってるじゃないですか。
ちょっとしか出さないパイプと、じゃんじゃん出す気のあるパイプ。
花巻軽便鉄道
かつて花巻軽便鉄道というのが通っていて、この道がそうらしい。
軽便鉄道は東北本線の花巻駅にも乗り入れていて、賢治の童話「シグナルとシグナレス」は、東北本線の信号機シグナルと、軽便鉄道の腕木式信号機シグナレスのお話です。
眼下に、もと商店街と思われる道。
車窓から見える景色は、賑やかだったかしら。
居抜きで違う業種のお店が入ってるのいいですよね。
かっぱ飯店だって。
あとで聞いたら、このあたりで有名なボリューミーな飯屋らしい。
このときは知らずに、入ろうと思って近づいた。でもやってなかった。
仕方ないから、手書きの雷文でも見るか。
うむ。
カトリック花巻教会ですって。
最初、へえーってスルーしたんですけど、なんとなく、ちょっと戻って行ってみた。
これが、良かった。
まず、「カトリック教会」という表札が良かった。
飾り気のない鐘も良かった。
僕の思う、村の教会で良かった。
窓もいい。行ってみるもんだな。
住んでるんでしょうか。これが。
このあたりに駅があったらしい。
なんかありますね。吹張町(ふっぱりちょう)の文字が見える。
花巻まつりに向けて、各町内が山車小屋というものを作って、中で秘密裏に山車を作るんだって。
花巻まつりは神輿の数でギネスを持っているんだそう。同一会場で、114基という記録。
これは別の場所だけど、ほかにも山車小屋をたくさん見かけました。
大きな蛹みたいだなと思った。もうこの形容は何度もされていそうだけど。
花川橋。
おいー。圧倒的岩手じゃんかー。
このあたりは大堰川のプロムナードとして整備されている。
突然、ドット絵があった。
ドット絵には、花とウサギの二種類があった。
なんか、こういう、ゴムみたいな固まるやつで埋めて作ってるみたい。
わざわざ作ったんだろうか。
数字での管理からアルファベットでの管理に変えたのなんでだろうな。
あと、この区画の複雑さは何だろう。
一度来て、戻る。
吹張町のストリート
急に煮凝りみたいな路地が出てきた。
おお。夜はやってそう。
路地を抜けると、広い商店街に出た。さっき軽便鉄道の道から見た、下の道っすね。
さきほどは「もと商店街」と表現したけれど、このあたりは賑やか。
左のほう、人がいっぱいだったから写真とってないけど、わんこそばのお店があって、めちゃくちゃ並んでいた。
一説にはわんこそばの発祥は花巻なんだそう。
まあそれでも、正直、シャッターが多い、んだけど、建物見てよ。このひとつひとつが、首都圏だと見つけた瞬間ワーってなるやつですよ。
レトロ商店街建築のインターハイ感ある。
これもいい。鹿踊りモチーフ説を唱えたい。
おっけー。
商店街の脇に神社がある。
金比羅神社らしいんだけど、
由緒の看板で「♪」を使うの初めて見た。
お上手だった。
パリパリパーク。声に出して読みたい日本語。
パリパリパーク、ここのこと?
パリパリパークから一転、時空間の扉とか言ってきましたけど。
蛇口から、何が出るんだろうな。
トイレのマークも宮沢賢治的な。
ふつうのもねんのためついてた。伝わらない人のために。
銀河橋だって。
さっきの大堰川にかかってるのか。
川は大きく曲がっている。
それに沿って吹張町のストリートも曲がっている。
忘れものがこんなになるまで忘れられることってある?
と思ったら、これすらも宮沢賢治の何かだった。銀河鉄道の夜だった。
上町の商店街
ここから上町の商店街に入る。
のどかです。
建物がいちいち良い。どうやったらこの形を作ろうと思うの?
この建物もいい。形から察するに靴屋だろうか。
服屋だった。
賢治の広場だって。
その2階はビリヤード……?
ここもビリヤード……
花巻ビリヤード盛んなの?
上町の商店街、広いし音楽もかかっているんだけど、午前中だからかそれほど人は多くない。
あとから現地の方に聞いたら、そんなもんだと言ってた。
上町もやっとるね。秘密の山車小屋。
双葉町
ちょっと脇道へ逸れて双葉町。飲み屋街。夜には人が多いそう。
ちょうちんの保護に余念がなかった。
出場者の答えを一斉に開いたときのやつみたいだった。
これは、意外と「④アテネ」が正解で総取りな気がする。
ぜんぶ人名っぽかった。
横町の中はこうなっていた。かえでへ行くには、みどりの前を通らないといけない。浮気ができにくいシステム。
文化タクシー。9人乗りのタクシーをやっているので有名らしい。
こういうやつ。宮沢賢治的なタクシー。そう、宮沢賢治的な。
これ乗ってみたかったなあ。
そのとなりに文化パーラーという食堂がある。文化タクシーの系列かしら。
ぽ°ら
「ふ」を付近で探したけど無かった。
暑さで文字も溶ける。
マルカンのこと
上町の商店街に、マルカンデパートというのがかつてあったそう。
1957年に創業した昭和なデパートは、2016年に閉館したのですが、その中でも人気だった最上階のマルカン大食堂の閉店を惜しむ声が多く、地元の人たちで運営を引き継ぎ、クラウドファンディングでお金を集めたりして、なんと再開にこぎ着け、今やってる。
この経緯は本になっている。読んだ。良かった。
閉館のニュースの直後から高校生が瞬発力で署名活動を始め、エリアリノベーションを実践していた人たちが花巻に居て、そこからたくさん人が集まっていって、なんか人の一生くらいの話を読んだ気がするんだけど、これ1年の出来事か。そうか。すごいな。でもまあ、こういうのって走り出したらこんな感じで濃密な時間が過ぎていくんだろうな。
今回のイベントの主催である「まきまき花巻」のサイトに、再オープンの詳細なレポがある。本読んでからこれ読み直すとまたグッとくるものがある。
本で紹介されていた、復活の立役者たちの、再オープン当日の顔が見られるからだ。
新生・マルカンビル大食堂の再出発!待ち望んだ再オープン日レポート【前編】 | まきまき花巻
2016年6月7日、花巻のランドマークであり市民の憩いの場であったマルカン百貨店は43年の歴史に幕を降ろしました。その後の高校生による署名活動を皮切りに、若手経営者による存続プロジェクトが立ち上がり、
実は今回、イベントが終わってから、まきまき花巻の運営の方たちとマルカン大食堂へ行った。18:00閉店で、ギリギリであった。
マルカン本の著者であり編集者の北山さんもいらっしゃった。
やってる。
これ、ちょっとわたしが既にオフモードだったんで写真殆どないんですけど、メニューが死ぬほどある。あと寿司が600円くらいである。
これがマルカン名物の10段ソフト。箸で分け合って食べるのが正しい食べ方なのだそう。
8割くらい自分で食べましたけど。
マルカンラーメン。ちょっと辛いあんかけラーメン。
花巻三大麺の3番目に数えたり、数えられなかったりするらしい。
最上階の広い窓からは低い花巻の街と、遠くに山々が広がっている。岩手の街はだいたい東西を山に挟まれていて、周囲からは見えない隠れ里の感じがある。
みんな帰省してきたのか、デパート1フロアを使ったスペースは満席でした。
もはや有名スポットなので観光客も多いのだけど、地元の人は、行くと誰かしら知り合いが居るものらしい。ご一緒してくださった内田さんは、5回くらい話しかけられていた。あと、年季の入った蛇腹カーテンで一部が仕切られており、何だろうと思ったら、どこかのラグビー部の同窓会が開かれていた。デパートの食堂でそんなのある?
僕が今まで住んできたエリアに、これに相当する施設は無くて、形容に困る。
黄昏、上町のアーケード街は相変わらずのんびりと伸びていたのだけど、マルカンの駐車場だけが満車で、みんなここを目指して登ってくる。
いま、人口の偏りすごいんじゃないかしら。
ソフトクリームを箸でつまみながら、ここが無い間、この人達はどこへ行ってたんだろう、と思った。
マルカン大食堂、行ってよかったし、話を聞けてよかった。マルカン大食堂の復活は街の都合ではなく、これが無いと困る、ユーザ側の、正しい都合だと思った。
ユーザ側の都合が、そもまま、街のメリットにも(建前でなく本当に)なっているのも、希有なところで、これがある街と無い街、印象が確実に違う。僕はここに寄って、ちょっとやられてしまった。なんか楽しい。
花巻良かった。祭りがもうすぐある。