広電と並び街を縫う

  • 更新日: 2024/08/27

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寝静まる飲み屋街にて

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バンド合宿のため広島に向かった時のこと。
東京・神奈川・山口とそれぞれが離れた場所に居しながらリモートワークを基本に活動する我々は、年に1度だけ集まって音を出しそれを映像に記録する。
今回はベースとビデオグラファーを務めるためカメラを持参していた。この日集合は13時だったが、日頃ノープランで降車駅からの物見遊山に興じている身として遠く知らない土地に赴くとあれば街を歩かない訳にはいかないと思い横浜を始発で発った。




スタジオがある胡町のほうへ向かうため南口を出る。何の事前情報も無しに降り立った広島、立ち並ぶ巨大な高層ビルにまず圧倒される。東京のそれに見慣れていても尚驚くほどの高さ。反り返ったまま唖然としていた。




JR出口からすぐ、目の前には路面電車の発着駅がある。段差ほどの低いホームに車両がきゅっと収まり、バスでも電車でもない鳴き声を発しながら行き交っている。面白いのはいかにも今らしいデザインの車両と昔ながらのそれが双方使われていることだ。よく見るとそれぞれに個性があり、世代間でバトンを繋いでいるような感じがある。是非とも車窓から街を眺めてみたかったが、今日は歩かなければ見れない景色を撮りたいので泣く泣く諦めた。せめて写真だけでもと思い延々とシャッターを切った。




おしゃれタウンのランドマークこと蔦屋家電がここにもある。




高架下には粉もんの看板が立ち並ぶ。広島県民にとってはこれが居酒屋のスタンダードだったりするのだろうか。駅の案内で見かけた駅前大橋なるスポットを見に行きたいが、折角なので地下道を経由して向かってみる。ここにも見慣れない景色が広がっていた。





イベントスペースがあったりとただの通路としてだけでない空間利用がされていて面白い。少し離れた場所には地下商店街もあるらしく、またもや異文化を感じた。




地上へ戻ると駅前大橋の前に出る。画角に収めきれないほどに大きい。下には大きな川が流れていて、ここを渡った先に市街が続いている。




なんとなく市ヶ谷あたりの大通り沿いに似た景色だが、大きく異なるのは路面電車が横断していることとそれゆえに幅員がかなり広く取られているところだ。そわそわしながら横断する。ちょうど通りかかった電車もまた他と違うタイプのルックスだが、一体どれだけ種類があるんだ...。





このように信号待ちの時間は車線のど真ん中に収まり、駅は所謂中央分離帯の位置にある。要は駅へ辿り着くためには信号を待たないといけないことになり、いつも時間ギリギリで動きがちの私は目の前で逃す気しかしない。知らない町の知らない交通網を目にして、ここにしかない生活と時間の流れがあることを実感する。




階段を登るミニ千本鳥居とビルのルーフトップに鎮座する神社。ここで後から向かってきたメンバーから電話があり、もう先に着いて散策しているよと伝えると「雨降ってきてるけど大丈夫?」と心配される。全然気づいていなかったし大丈夫ではない。被っていたハットの中にカメラを収め小走りで移動する。




川沿いの通りも何となく幅員が広い。もうだいぶ雨が本降りの様相で、このまま歩き続けるべきか不安になってきた。撮影をしながら歩いてはいるが、実は片手にキャリーを引いているので傘も差しようがないのだ。




足元に歪な栓のようなものが点在している。少し出っ張りがあって歩くのには危なそうだが、何かの跡として残されているものなのだろうか。大通りから逸れて路地の中へ入っていく。




この辺りには古き良き街角の景色が沢山あってワクワクする。経年変化が描くシックな色彩美に見惚れる。今日の翳りがちな空が街の輪郭を際立てているような気がして、悪天も悪いことばかりではないなと思った。




軒先で雨宿りしながら見つけた、星の数ほどありそうなカープ◯◯。地元球団を標榜する文化もまた新鮮に感じる。逆に他球団推しの方は肩身が狭かったりするんだろうか。




一本向こうに入るとほのかに昭和感漂う中新地通りに出た。急にすれ違う人々の目線が気になり始める。しかしよく考えればこんな寝静まった飲み屋街でキャリーを引きながら撮り歩く旅行者なんかが居たら目を引くのも当然なのである。




建物の間にひっそりと佇む路地裏稲荷。端には普通にホースが置かれていてあんまり敬われているようには見えない。




コンビニの前を通ると、たむろする年配者たちが煙を吐きながらこちらを訝しげに見つめている。佇まいや彼らの目線に少しひりついた空気を感じて、ここがどういう場所なのかを何となく悟った。角を1つ曲がり流川通りに入る。この辺りともなるとアーケードの看板は店の屋号ではなく酒ブランドを冠する。




大通りを渡ってえびす通りへ。この中に本日向かうスタジオがある。昼食を各自で取る流れだったのでSNSでフォロワーさんにおすすめしていただいたおむすび屋さんに入る。中は世代もまばらな老若男女で賑わい、昨日のカープの試合についてああだこうだと言い合う声が聞こえる。




スタジオに到着。入る前になんとなく名残惜しさから胡町の停留所を撮る。やっぱり車窓からの景色を眺めてみたかったな。中学の朧げな記憶以来ほぼ初めての広島、何の下調べもないまま来たので期待も先入観も無いゆえに新鮮さに溢れていてとても楽しかった。風景の随所にかつてからある文化やしくみを大切に守ってきたことを伺い知れて、それを歩いて感じることにもまた意味があったんだろうなと思う。改めて散歩の醍醐味を実感する時間だった。







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ISLD

フォトグラファー/パン屋Digger

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