「段ボールピッカー」にジョブチェンジを試みる

  • 更新日: 2018/11/27

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映画『旅するダンボール』ワークショップ会場にあった手づくり段ボール座布団


エオルゼアにある紅玉海でギャザリングの旅

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 『FINAL FANTASY XIV』の世界であるエオルゼアにログインするのが90分/dayと、ライトプレイヤーなわたしだが、疲れている。さほどあそんでないのに目も腰も足もイタい。まるで、ID「監獄廃墟トトラクの千獄」のヘヴィ床でずっとぐるぐるしてるようなダルさだ。離席時間ばかりがふえる。

 こうなったのには、わけがある。

 リアルで『段ボールピッカー』という職業のクエストを受注してクラス(Class)を解放した気になったはいいが、いざ経験値を獲得するためアイテム拾いをはじめてみたら、おもっていたよりもずいぶん大変でまったくレベルが上がらず、スキルも身につかないありさまなのだ。


映画『旅するダンボール』試写会場<THINK OF THINGS>


■説明しよう! 『段ボールピッカー』とは?

 リアルフィールドにある段ボールを自力で見つけて収集する、ギャザラー・クラス(Class)のこと。段ボールを使って、財布や名刺入れなどのアイテムをつくる『段ボール作家』というクラフター・クラス(Class)のレベルを同時に上げることで、究極魔法「アップサイクル」を覚える。唱えると、不要だったはずのモノが自分にとって大切なモノにうまれ変わる。

 この道一筋で個展をひらく、生計をたてる、デザイナーになる、世界から知られる、映画にでるといった熟練者になるとジョブ(Job)として認められる。アディショナルスキルとして「リサイクル 」「サスティナブル・デザイン」を習得。できあがりの精度が上がるほど壊れにくく地球にやさしい。ある程度の地形を利用するという意味では、「風水士(ふうすいし)」の血筋かもしれない。なお、日本に、これらの該当者はたった一人しかいない。

段ボールで作った座布団。映画チケットを添えて。


 2018年10月13日(土)、島津冬樹さんというアーティストを3年間ずっと追尾し、その生態をあらわにしたというドキュメンタリー映画『旅するダンボール/From All Corners』のワークショップ付き試写会が行われた。わたしは掲示板にそのクエストが流れているのをみてすぐ受注し、イベントの発生日が記されたジャーナルをときどき眺めては、コンテンツに突入申請する日を待ちわびていた。

 凄腕クラフターを一目見るため同志が集まったギルドは、JR原宿駅竹下口から徒歩3分の『THINK OF THINGS』。映画監督の岡島龍介さんいわく、

 「島津さんって、どういう人なのか。ずっと一緒に旅をしたぼくでも、それが分かるまで正直すごく時間がかかったんです。実は、ぼくが監督として呼ばれたのは、彼自身にカメラを持たせても段ボール集めに夢中になりすぎて肝心の映像がまったく撮れていないからで(笑)、プロデューサーがこれじゃまずい、と」

島津冬樹さんのワークショップで作った段ボール製の名刺入れ


 わたしを「段ボールピッカー」の道に進ませた(勝手にそうしたんだけど)映画『旅するダンボール』は、12月7日より、東京・YEBISU GARDEN CINEMA、新宿ピカデリーなど、全国で順次ロードショー予定だ。

 注目してほしい。

 入手困難なレア素材におもわず恋しちゃうようなギャザラー勢ならきっと分かってくれるはずだ。純粋な発想で動く島津さんのすごさを。というわけで、

 ヒカセンのわたしが「段ボールピッカー」というジョブに転職したら、街がどうみえるか? を、まったくの興味本位から迫ってみたい。

新宿『THE NORTH FACE』店頭、朝9時前。


ようやく見つけて安堵すらした段ボール群のズーム。


 段ボール収集で手っ取りばやい方法としては、地元のコンビニ・スーパー・薬局・ホームセンターなど毎日資源ごみが出ているであろうお店にかけあい「不要な段ボールをください」とお願いすることだとおもう。

 だが、映画を観ている限りどうやら島津さんはそれをせず、あくまで街角で拾い集めている。目利きのひとだ。と、思いきや、さまざまな商品を扱う大きな工場まで追跡することもある。大量の素材から好みのデザインだけを抽出して、自分にとって必要なアイテムを入手するためだ。「いっぱいモノがあるところにいく」といってもその域に達すると惰性じゃない。本気だ。プロだ。

新宿『山陰海鮮 炉端かば』店頭、朝9時前。


玄関に2箱、ちょこんと積み上げられた段ボール。


 JR新宿駅のまわりなら、あるんじゃないか? 繁華街と歓楽街はモノの運搬が毎日ありそうだし……、なんて軽く考えての街歩きスタートだったけれど、はっきりいって、「段ボールピッカー」をナメていた。店の集まる区画を適当にうろうろすれば、じゃんじゃんエンカウントするものとおもっていたのだ。まったくそんなことはない。誤算だった。

 街の美化対策や放火対策があるためか、都心部ほど、発火性の高い可燃物である段ボールを放置する習慣がないようす。おもいのほか苦戦してしまう。でも、それもそうかと思いなおす。

 新宿駅の西口や東口、東南口の周辺を午前・午後に分けて、ひたすら歩く。何日か通ってみて、分かったのは1点。

 開店前の準備段階でアイテムの搬入をするタイミングなら、段ボールがポップアップする区域があるッ……!


 ……いやいや、いやいやいや、もっと雑に見つかるところはないのか。

トラックから無造作に出された段ボール群。


新宿『ダイコクドラッグ』店頭、朝9時頃。


 『FINAL FANTASY XIV』では、制作品の元になる素材を自力で採集するギャザラーと、それをもとにアイテムをつくるクラフターというジョブの大分類がある。素材収集をするギャザラーには、園芸師・採掘師・漁師の3種類いるが、「段ボールピッカー」は木や草や枝を刈りとる園芸師のような気分だ。

 そして実際、新宿を歩いてみて思った。

 自分の感性にひびく、デザイン性の高い、お気に入りの段ボールを探す旅っていうのは、エオルゼアでのギャザリング活動と似ているんじゃないか、と。例えば、こちら。すべてギャザラーの経験値を積んでレベルが上がらないと、獲得できないスキルや感性だ。

 カッコ内はリアルギャザラーだったらこんなかんじかな、というコメント。

「未知の採集場所」 
ふつうでは見ることさえできない採集ポイント。
特定スキルの獲得・発動により、定時になると探知できる。
(→ かなり足しげく現場に通うことで身につく勘と経験則)

「伝説の採集場所」 
極めて特殊なアイテムとの交換で”伝承禄”を入手し、読み込むことで習得。
定時になると探知できる。
(→ 自分の名刺、創作物、お土産との交換でレア収集箇所が聞けるとか)

「刻限の採集場所」
ある特定ポイントにごくごく短時間だけ出現する。
独特な採取方法で入手、精選して利用する。
(→ よっぽど搬入時間やルートを熟知していないと分からない系)

「古ぼけた地図」「隠された地図」
特定レベル以上の収集箇所から まれに出現。
いったん採取すると一定時間あらわれなくなる。
(→ 段ボールのある場所で別の採取地区が分かるような何か)



海の都<リムサ・ロミンサ>近くの<コスタ・デル・ソル>

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きらきらと光っているところが素材のとれる採掘ポイント

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 先述の「〇〇の採集場所」、よく考えるとけっこう「段ボールピッカー」の行動や出来具合などにあてはまる気がするのだ。

 本当にいろんなところを歩きまくってみないと、この辺ならあるという確信は得られないし、ありそうという見立てもできない。だから、なるべくいつもギャザラーの心を忘れずにいたい。デザイン性の高い、ぐっとくるものはあるか? という視点をもって探索しているほうがいい。

 なぜなら、仮に「未知の採集場所」が視界に入っていたり通りがかっていても、リアルではきらきらしてみえず、スルーしてしまうからだ。

 もはやわたしの目には、アーティストの島津冬樹さんは、完全に地でギャザクラ活動をしている特殊人物にしかみえない。エオルゼアでごく日常的にやっていることが、リアルゼアでやろうとするとこんなに難しいなんて。

 ……つ、疲れた。

 だいぶ歩きまわったわりに、「これだ!」というものに出会えない。

 腹ごしらえをしながらぼんやりTwitterを眺めていると、あるリツイートに目が留まった。どうやら東京メトロ新宿御苑前の駅近くに、光の戦士たちが集う『整体ケアルラ』という店があるらしい。しかも、リアルヒーラーが回復施術をかけてくれる……、と。

 えっ、なにそれ。

 行くしか……行くしかなくないですか!? ……行こう。癒されたい。


ゲームのしすぎで疲れた身体を癒してくれる『整体ケアルラ』


 人間の身体は、もともと自然治癒力があるためリジェネがかかっている状態だと、『整体ケアルラ』の店主は言う。今のわたしは、「段ボールピッカー」としてもがいているため、消耗が激しい。見当違いなフィールドを歩きまわっているせいだが、まったく回復が追いついていない。リアルヒーラーの施術により右手からケアル、左手からヘイストをかけてもらう。

 わたし自身がケアルを覚えるほどの余裕はなかったので、テーピングの方法を学びリジェネ効果のきれにくい冒険者になった。


 よし、引き下がるわけにはいかない。別の地域をまわろう。

 とはいえ、採取ポイントがみえていないわたしには、どこかしら歩きまわってコツをつかむしか方法が見当たらない。下町の商店街ならあるんじゃないか? 八百屋と惣菜屋がひしめき合ってそうな区画なら、きっと……。

 またもや、新宿のときと同じくらいゆるいイメージで亀有駅へと向かった。


JR常磐線・亀有駅南口。出てすぐ両津勘吉さんが出迎える。


 週刊少年ジャンプで長年連載していた有名なマンガ『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の舞台となった土地である。主人公の両津勘吉さんがFF14をプレイしていたら、「光の警察官」という肩書でTwitterを運営していたにちがいない。鶴のツイートでめちゃくちゃ段ボール情報が集まりそうなアカウントだ。

駅南口の風景。商店街のある道を進む


亀有「ゆうろーど」商店街、平日の12時頃。


 「両津さんって、本当にいるんですか?」

 国内外から訪れる観光客の質問に、地元民はYESと答えるのが暗黙のルールとなっている、と、むかし耳にしたことがある。どこの誰が彼の行方を知っているかを具体的に教えられるので、本当に気になるならそこまで足を運ぶ。そのあとは……、ここではひみつにしておこう。

開店準備をする炭火焼き鳥店。ポップアップしている!


 実は、はじめに亀有駅の北口をまわってみたのだが、めぼしい採取ポイントは見当たらず……。

 くじけず南口までまわってきたところ、これから開店予定のお店が、オープン準備のため店頭に段ボールを積んでいるのを発見。これはラッキーなエンカウントだが、荷ほどきするだけで忙しいのときに「ください」とは言えないし、なにより、ごくスタンダードな茶色いものばかりだ。レア素材ではない。

 商店街「ゆうろーど」。おいしそうな惣菜屋の棚をスライドしながら見ていると、そこ全体が「亀有食品市場」のなかであることに気づいた。

惣菜・弁当・たい焼き・お好み焼きの亀有「バンビ」。


奥に、「亀有食品市場」という一角があるのを発見。


 エオルゼアでギャザラーにジョブチェンジしていると、素材の採取ポイントはきらきら光ってみえる。リアルでは、それがない。スマホからGoogleマップに印をつけておくなどして、自分の手元できらきらさせるしかないのだ。

 初心者のわたしは、段ボール1~2箱もらえるだけで十分だが、ハマるとストックしておきたくなりそうだ。読みたい小説や漫画を「積ん読」しておくのと似た感覚で、いつか創作に使いたい段ボールを「積ん作」しておく。

 いかにも素材がありそうなロケーションのなかを進むと……、



 「あったー!」


 きっと、ご近所のかたにとっては当然すぎる光景かもしれないが、
 わたしには<宝の山>にみえた。


奥までズンズン進むと八百屋・果物屋がぎっしり。


「段ボールピッカー」として初のお気に入り発見!


 アーケード付きの商店街を進んでいくと、すべて段ボールで入り口をふさがれた商品倉庫らしき一帯が。ふむふむ、中身がまだあるものばかりだ。少し先を行くと地元スーパーがある。棚に並べる前のものが置かれているのだろう。採取ポイントを1ヶ所、マップに記せただけでものすごい安堵感だ。

 ああ、よかった。探せばあるんだなあ……。


ご近所スーパー専用の商品倉庫、立ち入り禁止。


段ボールを「棚」にしている八百屋・果物屋。


かわいい!発色がきれい!こういうのを探していた!


 新宿をわりとしつこく歩きまわったあとの、突然の亀有。ひらめきも大事だなあ。「段ボールピッカー」、慣れないとアタリすらつけられないジョブだが、わたしにとっては街歩きがさらに楽しくなるきっかけになった。


 余談だけども、

 素材を入れるためのリュックが限界なので、「段ボールを持ち運んでも怪しくみえず、かつ軽くて丈夫なカバン」探しも必要だなとおもった……。







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Cooley Gee

ヒカセン(光の戦士)の皮をかぶった栗。
『FINAL FANTASY XIV』プレイヤー。
雑多な「すき」を追うひと。
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