謎めいたメーター「謎メーター」の鑑賞方法

  • 更新日: 2019/02/28

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トリッキーな傘置き場

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2年前、鎌倉へ遊びに行った際、こんなものを見つけた。



メーターのまわりに、人工的な観葉植物が巻きつけられている。果たしてこれはどういう意図なんだろうか。鎌倉という土地柄、メーターさえもオシャレに着飾っているのか。日除け的な効果を狙っているのか。

思えば、メーターという存在は家の裏側にひっそりとたたずみ、ふだん意識されることはほとんどない。今回はそんなメーターにスポットを当て、鑑賞方法を提案しようと思う。


ガスメーターが顔に見える現象について

メーターといってもさまざまな種類がある。住居に関係するものでいえば、水道、電気、ガスの3つが主なメーターとして挙げられるが、水道のメーターはほぼ地中に埋まっているため、目にすることは無い。したがって、今回ピックアップするのは電気とガスのメーターだ。

そのうち最も目にすることの多いメーターが「ガスメーター」だろう。そして、たびたび言及されることは「ガスメーターが顔に見える現象」だ。

ガスメーターが顔に見える要素として考えられるのは、「2つの目」と「1つの口」である。



左上のゴム栓、そして右上のシールが目に該当し、数字の窓部分が口である。しかもご丁寧に(?)舌まで出ている。

まったく同じメーターにもかかわらず、ゴム栓の向きが違うだけで、左側からは「怒り」、右側からは「悲しみ」を感じる。人は勝手に、相手の表情から“感情”を読み取っているのだ。その対象がメーターという無機質なものであっても。



同じような顔が並ぶことにより、どこか奇妙で滑稽な姿に見える。さながら軍隊か、チープなSF映画に出てくる宇宙人か。

しかし、これもよく見るとゴム栓の位置が微妙に違う。また、舌が出ているものと出ていないものがある。隠しきれない個性だ。


同じように見えるガスメーターも、よく見るとさまざまな種類がある。おもな違いは、その大きさと色だ。



階段の下にひっそりと並ぶメーターは、さながら家族のようでもある。一番右がお母さんで、その左はお父さん。背の高い息子(左から2番目)は社会人1年目で、とっくの昔に父親の身長を超えてしまった。妹は大学生、さらに下の妹は高校生で多感なお年頃。

日当たりは悪く狭いながらも、楽しい我が家である。



「なぜこんな仕打ちに……」と思いながら、鍵付きの牢屋に閉じ込められるメーター。「メーターが顔に見える」が進行すると、やがて「人に見える」という現象にたどりつく。

メーターは、いわゆる業者以外に使われることはほぼない。そのため、ひっそりとした「すき間」に置かれることも多いのだ。

実際には外部からメーターを守っているのだろう。しかし、いったん擬人化の脳で見ると、捕まってしまった犯罪者のようにも見えてしまう。


電気のメーターにはカバーがある

いっぽう、電気のメーターについてはどうだろうか。調べてみて分かったことは、「電気のメーターにはカバーが付いている」ということだ。



左側はむきだしだが、右側には簡易的なカバーが付いている。この差って何ですか? と思わずテレビ番組のタイトルになってしまったが、やはり謎ではある。出ているケーブルの数で見ると、右が6本、左は2本。右側の方がより重要な、守らなければならないメーターなのだろう。ケーブルの色が赤、白、黒と色分けされているのも何らかの謎が感じられる。時限爆弾風に言えば、どれか1本切ったらアウトなやつだ。

カバーの有無は、まるで格差社会を表しているようでもある。あえて吹き出しをつけるとしたら、「お兄ちゃんだけズルいよ」というセリフだろうか。

筆者には3歳上の兄がいる。思えば兄との違いが、人生で「格差」を感じる最初の経験だったのかもしれない。



「格差社会を是正しろ」と「みんな違ってみんないい」の議論は、ずっと平行線のままで、交わることはない。


ボックスがキャンバスになる現象について

カバーといってもいろんな種類がある。街を歩いていると、オーソドックスなものから外観を意識したものまで、いろいろなカバーに出くわす。が、今回はその種類は問わない。



これは新宿で撮影したメーターボックス。落書きやステッカーが貼ってある。若者が無断で貼ったものだろう。



都心部のメーターは、かなり頑丈なボックスの中に入っている。もちろん住居用と企業用では、その保護方法も異なる。ここで分かることは、このボックスカバーが“若者の自己主張の場”になってしまっているということだ。



電気メーターのボックスにステッカーを貼り、落書きを書く。いったいその行為にどれほどの意味があるのか。しかし逆の目線で考えれば、電気メーターのボックスが、いわば若者たちの「キャンバス」になっているとも言える。


カバーに色を付ける



とある店舗の壁にあった電気メーターボックス。右側は壁に合わせてボックスも赤に塗られている。しかし、左側は白のままだ。それゆえ「キャンバス」としての落書きが残っている。なぜ左側は黄色に塗らなかったのだろうか。



ちなみに“引き”で撮ると、左下にガスメーターが見える。電気はボックス入り、ガスは裸。ガスメーターは風雨にも強く、たくましい。電気メーターはその性質ゆえ、過保護だ。

よく見ると赤側にも、かつてはガスメーターが存在していたような形跡がある。ガスをやめてオール電化にしたのだろうか。




ぱっと見、メーターと何の関係があるのか? と思う水玉模様。しかし、近づいてよく見るとわかる。





そう、一つひとつの穴からメーターが見えるようになっているのだ。これが設置されていたアパートは意外と古めだった(外観を撮り忘れた)が、きっと大家さんの趣味だろう。このカバーには賞賛の意味も込めて「カラー・ミー・ポップ」と名付けたい。


メーター以外の用途で使う

家の裏や側面に設置されるメーター。それゆえメーター周りは物置き場となっていることも多い。



子どもの竹馬をメーターに立てかけている。

人はメーターなしでは生きていけない。それは、この竹馬も同じだ。もたれかかる竹馬と、受け止めるメーター。そこにあるのは、愛。



竹ぼうきがメーターのすき間にずっぽり入っている。期せずして、ちょうどよい「掃除道具置き場」と化しているのが面白い。その横にはデッキブラシもある。

「もっと中まで入って、あたしの衝動を突き動かしてよ」と歌ったのは椎名林檎だったか。竹ぼうきが入っても衝動は動かないが、メーターは変わらず回り続ける。


メーターの配管を利用する



ガスメーターのまわりには、時に奇妙な配管が設置されている。その配管を別の用途に利用しているケースも多かった。



ちょっと遠目で分かりにくいが、真ん中の部分にタオル(ぞうきん?)を引っかけてある。



今回メーター写真を集めた中で、最も気に入っているのがこれだ。配管の美しさもさることながら、ポイントはやはりビニール傘だろう。クイっと曲がった、ちょうど「ここしかない」という場所に傘が引っかけられている。白と黒の色調もまわりの配管とマッチしており、さながら床の間に飾られた一輪の花のような佇まいだ。

もし自分がここのオーナーなら、日替わりで赤や青などカラフルな傘を引っかけて、酒を飲みながらぼんやり眺めたい。(僕はお酒が飲めない)



「メーターと傘のマッチング」という意味では、この写真も趣深い。長い水道ホースをぐるぐる巻きにし、その中間に傘をぶら下げている。メーターを利用することで、「ホースの収納」と「傘置き場」の2WAYを実現しているのだ。高度なテクである。

あえてタイトルを付けるとしたら「トリックアート」か「中国雑技団」か。人間の持つ武器、それはたゆまぬK.U.F.U.(工夫)である。


謎のタイヤ



最も謎だったメーターがこれである。廃タイヤが部分的にくくり付けられている。果たしてこれはどういう意図なのだろうか?

なんとなく推測した理由としては、「犬、猫のおしっこよけ」「引っかき傷の防止」「クルマの衝突防止(クッション)」あたりか。この謎がわかる人は教えて欲しい。


謎めいたメーター「謎メーター」から分かること

冒頭にも書いたとおり、メーターというものは家の裏側や目立たないところにひっそりと佇み、いわゆる業者以外、注目することはない。

しかし、そこにもやはり人間の営みがある。調査の結果、本来メーターとして果たす役割とは別の「何か」として存在しているケースが多かったように思う。

謎めいたメーター「謎メーター」は、人間の営みそのものだった。という強引な締めで終わりにしよう。



まるで「水引」のように美しい結び方を愛でるのもまた一興。




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村中貴士

編集&ライター。大阪生まれ。「大阪人っぽくないよね」とよく言われるが、人を笑わせたいという吉本的アイデンティティーが自分の血には確実に流れている、と思う。

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