いまふたたびの新世界へ

  • 更新日: 2026/06/09

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思ってたフォントと違った入口

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出張で大阪に訪れた日。今季は2度目の関西。毎度行き帰りの新幹線でも編集に追われ、過ぎていく街を横目に足早に去るばかりだったがきょうはどうしても居座りたかった。
幼いころに訪れかすかに記憶に残る「新世界」を今の自分が歩いたらどう映るのか確かめたかった、というだけだ。それ以外に特に目的も目指す場所も無かった。

天王寺駅のロッカーにキャリーを預け、身軽な体にカメラだけを抱えて街へ出た。






あべのハルカスを背に歩き路地へ入ると途端に世界観が変わった。さっきまで高層ビルに囲まれていただけに、一本入ったらこれかというインパクトがある。看板が入り乱れすぎてどこが何の店か逆に分からないまである。




阪和商店街を抜けて大通りへ。収まりきらないほど大きいあのビルが多分あべのハルカス。
関東は緑、中部はオレンジのイメージだけど関西の「JR」は青なんだろうか。






駅を背に新世界を目指してまっすぐ歩いていくと進路は美しい緑道になっていた。景色の移り変わりようが目まぐるしい。






横目にお堀のようなものが続いているので何かと思えば大きな庭園があるようだ。寄り道したい気持ちを堪え後に。




ほどなく歩くと天王寺動物園の入り口があった。かつて家族で旅行に訪れた際立ち寄った記憶がある。平日だからなのか意外と閉館が早いようだ。




目的地のメルクマール、通天閣が顔を出していた。意外に大きく感じないのは自分が大人になったからだろうか。






美術館を横切り大きな陸橋を渡る。橋の上は皇居前を想起するような広けた場所になっている。自転車を停めて談笑する外国人や鳩の群れを従えるおじさん。市民の憩いがここにあるようだった。




レンズを通して向こうの日差しを覗いた瞬間、この時間に来て良かったと確信した。レトロな街並みが美しく映えるのは陽が傾き出す今だろうと期待していた。




視界を翳めるハレーションをありのまま捉えたくて前後にステップしながらレンズを捻り続ける。こちとら観光客、たまの遠出くらいそわついていてもいいだろう。








遊戯、串かつ、たこ焼きの無限ループ。ぎらついた赤とからし色に囲まれる。異様な活気に気圧されて逆に近寄れない。




この景観保護もへったくれもない色彩の暴力。ねぶたを思い起こすような巨大な立体看板が向かい合う通りを通天閣が割る。力の掛けどころというか、東京の商売感覚とまるで違うんだなと思う。




飲食店と並ぶくらい遊技場なる施設が目につく。外国人とかデート客にウケてるんだろうか。よく見ると「弓道場」とあるがこの狂った情緒の中で成立するんだろうか。




2階の窓から睨みを利かせるおじ。






細い小路に入ると昔ながらの劇場があった。上映ラインナップには「アバター」のポスター
が貼られており、わりかし最近まで営業していたであろうことが伺える。こう賑やかに去っていく感じがまさに大阪という感じがするし、挨拶代わりの下世話な短歌は妙に物悲しい。






通天閣に辿り着く。真下を通り初めて気付いた事、裏側には絵付けが施されていてしかも何かの広告を兼ねているらしい。搭乗口には十数人の観光客が列を成していた。
幼い頃に登ったことがあるが、高所恐怖症のためパニックに陥り展望台をぐるぐる走り回って気を落ち着かせんとしていたのを覚えている。端から見ればはしゃいでいるようにしか見えなかっただろう。






足元に何か雰囲気の良さそうな喫茶店がある。表通りの喧騒に疲れていたのでゆっくり出来そうな場所を探していた。夕飯がてら入ってみるとしよう。




店内もかなりいい雰囲気。一人で本を読みに来ている人がいるのを見てなんとなく愛されている店なんだろうなと思った。




カレーを注文すると「生卵は大丈夫ですか」と聞かれる。初めての食べ合わせだ。軽く混ぜながら食べてみるとルーにちょうど合う。




窓の外を眺めながら、さっきまでの賑やかさを忘れ落ち着きを取り戻していく。結局閉店まで居座り、重い腰を上げてまた新世界へ。




破格。西成とかにある感じのセーフティネット的な役割なんだろうか。




裏から覗く通天閣にはメカメカしいダクトが生き物のごとく巻きついている。横の「美味い飯あり↓」がまた良い位置に看板を出しているなと思う。




そろそろ午後6時になろうという頃、日暮前落ちかけの陽がきょういちばん輝いていた。夢中でシャッターを切り続ける。



天王寺の駅へ戻る。不思議なことに来た道を戻る頃にはマップも開かずにすいすいと進み出していた。どのみちあの大きな目印が見えるうちは迷うこともないだろう。








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ISLD

フォトグラファー/パン屋Digger

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