三度笠が良さそう。
- 更新日: 2018/06/12
三度笠の良さを言いたい言いたい。
梅雨の季節、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
ところで、梅雨の必需品といえば傘ですが、みなさん、傘に満足してますか?
傘がいっこうに進化しないのを苦々しく思っている人は、実は多いのではないでしょうか。
何百年も生き続けているわりに抜本的な進化も無い。
あれが完成形だから、と納得ができればいいのだけど、かさばるし、風で裏返るし、カバン濡れるし、置き忘れるし、全く完成してないからな。三合目くらいだからな。
何より、片手が塞がるのが全く納得いかない。雨の日は手が一本になるんですよ? 雨の日は手が一本になるとか、21世紀にそれやってていいの?
そんなことを考えていたら、先日、ドローン傘という商品を見かけまして。
ネットでは完全にお笑い枠のニュースで、音うるさいとか、強風で使い物にならんだろとか、否定的な意見も多かったのだけど、傘を手で持つ、というあのダサさをなんとかしようとしている。心底尊敬する。
僕もエンジニアのはしくれであるので、技術を使って「傘2.0」を作る、というのはとても興味ある。
ただですね、僕は思うのですよ。ちょっと待ってくれ、と。傘の不満点のいくつかを解消できるアイテムが、ここ日本にあったじゃないか、と。
それが三度笠。
ときに、歴史参考書で有名な山川出版社が出している「レンズが撮らえたシリーズ」というのがあって、好きでたまに買い足しているのですが、これの「幕末明治日本の風景」に三度笠を被った侍の写真があります。撮影はF・ペアド。幕末のいい写真はペアドの作品が多い。
(レンズが撮らえた幕末明治 日本の風景 山川出版社 P21)
あれ、これめちゃくちゃ便利なんじゃないか? と思ったのです。
なにしろ手が空いているのは、傘に勝ってる。
三度笠という名前は「三度飛脚」から来ているんだそう。江戸・京都・大坂間を月に三度往復する飛脚が使っていた笠。
雨の日も走る仕事だった人たちが進化させてきた笠というわけです。
ちょっと調べると、三度笠は楽天で普通に売っていることが分かりました。楽天なんでもあるな!
で、今日、ここに箱がある。
梱包はシンプルで、Appleのそれを彷彿させる。
説明書も無い。
もしかすると、電灯のカバーかもしれないとちょっと思ってきた。
楽天の商品ページの説明によると、生産地はベトナムで、素材はパームリーフ。
本来の三度笠は、イグサやスゲなどが使われていたらしい。
あと、頭の固定するわっかは五徳(ごとく)という。ガスコンロや火鉢でやかんを置くところの五徳に似てるからだと思う。
前提知識はこんなもん。これで三度笠通を気取れる。
こんな感じでしょ? ちょいとごめんよ。
全くの偶然だけど、和風のTシャツを着てたので俄然それっぽくなった。
さて。
新しいガジェットは触ってみないと分からない、というわけで、いじってみたんだけど、結論から言うと、とにかく三度笠は素晴らしい、ということで落ち着きました。
これから、何が素晴らしいかをひとつひとつ説明します。
直径47センチある。
小さめの折りたたみ傘くらい。肩はギリ入っています。
片手を犠牲にして折りたたみ傘を持つくらいなら、これを被ってたほうが100億倍ましだな!
ちなみに、江戸時代は首に巻くタイプの合羽も併用していたのは付け加えておきます。
そういう意味では、折りたたみ傘を使う現代人よりも、昔の人のほうが雨に濡れていなかった可能性が高いです。
両手が空くから、雨の中タブレットも触れちゃう。
スワイプでござる。
花笠祭りの写真を見ているでござる。
正直三度笠の唯一の欠点はかわいくないことであると思っていて、花とかつければ女性も被るのだろうか。
あと、今日写真を撮ってくれているタクシードライバーのぜつ氏に、「杖と傘を両方持つのがつらいから、雨の日に出かけないと決めてるお年寄りが多い」という話を聞きました。三度笠は、こういう社会問題も解決する可能性があります。
傘というのは棒です。
棒だから、何もしなければ倒れます。
だからといって足に挟むと、ちょっとはしたない感じがします。
膝の外側に立てかけると、ふとした拍子に倒れます。棒の本能で、倒れます。
もし端に座ったらラッキー、手すりに掛けることができます。
その後、高確率で置き忘れます。
傘というクソアイテムは、この問題に何十年も解答を出せずにいます。
一方で、300年前に生まれた三度笠はどうでしょう。
あら~ん。
はんなり~ん。
なんともお上品に電車に乗ることができるのです。電車の無かった時代に生まれたものが、電車に完全対応している奇跡よ。
これは自分の努力だけでは解決できない、大変やっかいな問題です。
これだけ、階段×傘は危ない、という話が広まっても未だに「階段で危なかった」というエピソードを聞くので、人類に傘は早すぎたんじゃないかという気もしてきます。
一方、三度笠はどうだろう。
曲線~
R(アール)~
刺さりようがない~
優しさの体現、それが三度笠なのでした。
人類は頑張って頑張って、折りたたみ傘というのものを発明しました。
小さくする、それも結構。しかし三度笠は、そもそもそういう方向で勝負をしていないのです。
そのまま背負える。しかも超コンパクトに。
これが、飛脚に鍛えられた三度笠なのです。
三度笠に恐れをなして。
三度笠に恐れをなして雨振りませんでした。
そこで後日、雨が降ったときに三度笠だけで外出してみました。
待望の雨。関東は今日から梅雨入り。
では、行ってくるでござる。
あの、前回と偶然まったく同じ服着ていて、別の日ってのが全く伝わらないのですが、別の日です。
それはそうとして、えっとですねえ。楽しい。
雨の日に両手が自由なこと。これだけで雨の日の憂鬱さが30%くらい軽減されている。体が軽い~! ぐんぐん行けちゃう。
ただ、何か気になるのは、顔に、わりと大きめの雨粒がたまに降ってくる。腕にも。
あれ? 三度笠濡れる?
なんか濡れてる? を確かめるために、重要しょryいを用意しました。
重要書類って書こうとしたらこうなってしまったのですが、まあそれはそれで、と思ったのでそのまま印刷しました。
雨の日、歩きながら重要しょryいを読むシーンってあるじゃないですか。
重要しょryいは重要なので、濡れるのは御法度です。
・・・・・
・・・
・
町内を1週してきたら重要しょryいがズブズブのゴミになっていてびっくりした。
あの、まあ、半径が小さいのは分かってたので、肩が濡れるのは良しとしよう。
なんかしらんけど、たまに傘の中で雨が降るんすよ。傘の中で雨が降ってはいけないです。
光に透かしてみると、わりと穴が空いている。
これは、こういうものなんだろうか。昔の人は、たくさん濡れなければOK、みたいな価値観だったんだろか。
なんてことを思ってたら、たまたま事務所に入ってきたビルの管理人であるところのおばあさんに「あら懐かしい、三度笠」なんつって話しかけられたのですが、疎開先でまさに三度笠を作ってたらしい。それは、主に農家が日よけで使ってたと。日よけ……。
三度笠は、ガチの雨具としては落第なのか……。
帽子傘と言うらしい。釣りの人がよく被るから釣傘とも呼ばれるそれは、まさに思ってたやつ。
キャンプや野外音楽イベントでも使ってる人居るらしいんだけど全然知らなかった。そういうのと対極で生きてきたから。
感心したのは、ビニール製の帽子で蒸れることを考慮し、てっぺんに通気口が空いていて、さらにその通気口を塞ぐミニ傘がついているところ。
これ、けっこう野心的な進化じゃないですか。傘の上にミニ傘ですよ?
種類もいくつかある。例えば、雨合羽の遺伝子が入ってるものとかある。
そもそもニッチだからすごい冒険ができる。
どゆこと?
何だお前。
とにかくいろいろいる。
傘のカンブリア期は、頭の上に訪れていた。
手に持つ傘が変わらない間、三度笠改め帽子傘は細々と挑戦を続けていたのでした。
もしかすると、今、帽子傘は我慢の時なのかもしれません。あと2,3個大進化して、手に持つ傘よりも優位に立ったとき。
こういうのって学問の世界とかでもたまにあって、メインストリームから外れた研究を細々とやっていて、突然大発見をしてしまって、一気に勢力図が塗り変わるような。
10年後、傘は被るものかもしれない。
そんなことを思いました。やっぱり三度笠、期待しかない。
でも今年の梅雨には間に合いそうにないので、おとなしく、手に持つことにします。
(おしまい)
ところで、梅雨の必需品といえば傘ですが、みなさん、傘に満足してますか?
傘がいっこうに進化しないのを苦々しく思っている人は、実は多いのではないでしょうか。
何百年も生き続けているわりに抜本的な進化も無い。
あれが完成形だから、と納得ができればいいのだけど、かさばるし、風で裏返るし、カバン濡れるし、置き忘れるし、全く完成してないからな。三合目くらいだからな。
何より、片手が塞がるのが全く納得いかない。雨の日は手が一本になるんですよ? 雨の日は手が一本になるとか、21世紀にそれやってていいの?
そんなことを考えていたら、先日、ドローン傘という商品を見かけまして。
ネットでは完全にお笑い枠のニュースで、音うるさいとか、強風で使い物にならんだろとか、否定的な意見も多かったのだけど、傘を手で持つ、というあのダサさをなんとかしようとしている。心底尊敬する。
僕もエンジニアのはしくれであるので、技術を使って「傘2.0」を作る、というのはとても興味ある。
ただですね、僕は思うのですよ。ちょっと待ってくれ、と。傘の不満点のいくつかを解消できるアイテムが、ここ日本にあったじゃないか、と。
それが三度笠。
ときに、歴史参考書で有名な山川出版社が出している「レンズが撮らえたシリーズ」というのがあって、好きでたまに買い足しているのですが、これの「幕末明治日本の風景」に三度笠を被った侍の写真があります。撮影はF・ペアド。幕末のいい写真はペアドの作品が多い。
(レンズが撮らえた幕末明治 日本の風景 山川出版社 P21)
あれ、これめちゃくちゃ便利なんじゃないか? と思ったのです。
なにしろ手が空いているのは、傘に勝ってる。
三度笠という名前は「三度飛脚」から来ているんだそう。江戸・京都・大坂間を月に三度往復する飛脚が使っていた笠。
雨の日も走る仕事だった人たちが進化させてきた笠というわけです。
ちょっと調べると、三度笠は楽天で普通に売っていることが分かりました。楽天なんでもあるな!
で、今日、ここに箱がある。
開封の儀
梱包はシンプルで、Appleのそれを彷彿させる。
説明書も無い。
もしかすると、電灯のカバーかもしれないとちょっと思ってきた。
楽天の商品ページの説明によると、生産地はベトナムで、素材はパームリーフ。
本来の三度笠は、イグサやスゲなどが使われていたらしい。
あと、頭の固定するわっかは五徳(ごとく)という。ガスコンロや火鉢でやかんを置くところの五徳に似てるからだと思う。
前提知識はこんなもん。これで三度笠通を気取れる。
こんな感じでしょ? ちょいとごめんよ。
全くの偶然だけど、和風のTシャツを着てたので俄然それっぽくなった。
さて。
新しいガジェットは触ってみないと分からない、というわけで、いじってみたんだけど、結論から言うと、とにかく三度笠は素晴らしい、ということで落ち着きました。
これから、何が素晴らしいかをひとつひとつ説明します。
確実に濡れないから素晴らしい
まず、雨具であるので、濡れないことが重要です。直径47センチある。
小さめの折りたたみ傘くらい。肩はギリ入っています。
片手を犠牲にして折りたたみ傘を持つくらいなら、これを被ってたほうが100億倍ましだな!
ちなみに、江戸時代は首に巻くタイプの合羽も併用していたのは付け加えておきます。
そういう意味では、折りたたみ傘を使う現代人よりも、昔の人のほうが雨に濡れていなかった可能性が高いです。
両手が空くから素晴らしい
しつこいですが、三度笠は両手が空きます。両手が空くから、雨の中タブレットも触れちゃう。
スワイプでござる。
花笠祭りの写真を見ているでござる。
正直三度笠の唯一の欠点はかわいくないことであると思っていて、花とかつければ女性も被るのだろうか。
あと、今日写真を撮ってくれているタクシードライバーのぜつ氏に、「杖と傘を両方持つのがつらいから、雨の日に出かけないと決めてるお年寄りが多い」という話を聞きました。三度笠は、こういう社会問題も解決する可能性があります。
電車内で傘どうすれば正解なの問題に終止符を打つ
「電車内で傘どうすれば正解なの問題」というのがあります。傘というのは棒です。
棒だから、何もしなければ倒れます。
だからといって足に挟むと、ちょっとはしたない感じがします。
膝の外側に立てかけると、ふとした拍子に倒れます。棒の本能で、倒れます。
もし端に座ったらラッキー、手すりに掛けることができます。
その後、高確率で置き忘れます。
傘というクソアイテムは、この問題に何十年も解答を出せずにいます。
一方で、300年前に生まれた三度笠はどうでしょう。
あら~ん。
はんなり~ん。
なんともお上品に電車に乗ることができるのです。電車の無かった時代に生まれたものが、電車に完全対応している奇跡よ。
階段で危なくないから素晴らしい
階段を上るとき、前の人の傘の先が顔に刺さりそうになる問題があります。これは自分の努力だけでは解決できない、大変やっかいな問題です。
これだけ、階段×傘は危ない、という話が広まっても未だに「階段で危なかった」というエピソードを聞くので、人類に傘は早すぎたんじゃないかという気もしてきます。
一方、三度笠はどうだろう。
曲線~
R(アール)~
刺さりようがない~
優しさの体現、それが三度笠なのでした。
持ち運びに便利だから素晴らしい
雨が上がったあと、もしくは雨が降りそうなとき、どうするか。人類は頑張って頑張って、折りたたみ傘というのものを発明しました。
小さくする、それも結構。しかし三度笠は、そもそもそういう方向で勝負をしていないのです。
そのまま背負える。しかも超コンパクトに。
これが、飛脚に鍛えられた三度笠なのです。
実際に使ってみる
さて、あとは実戦投入あるのみ。実はこの日、雨が降るという天気予報だったから箱を開けたのだけど、全く降りませんでした。三度笠に恐れをなして。
三度笠に恐れをなして雨振りませんでした。
そこで後日、雨が降ったときに三度笠だけで外出してみました。
待望の雨。関東は今日から梅雨入り。
では、行ってくるでござる。
あの、前回と偶然まったく同じ服着ていて、別の日ってのが全く伝わらないのですが、別の日です。
それはそうとして、えっとですねえ。楽しい。
雨の日に両手が自由なこと。これだけで雨の日の憂鬱さが30%くらい軽減されている。体が軽い~! ぐんぐん行けちゃう。
ただ、何か気になるのは、顔に、わりと大きめの雨粒がたまに降ってくる。腕にも。
あれ? 三度笠濡れる?
なんか濡れてる? を確かめるために、重要しょryいを用意しました。
重要書類って書こうとしたらこうなってしまったのですが、まあそれはそれで、と思ったのでそのまま印刷しました。
雨の日、歩きながら重要しょryいを読むシーンってあるじゃないですか。
重要しょryいは重要なので、濡れるのは御法度です。
・・・
・
町内を1週してきたら重要しょryいがズブズブのゴミになっていてびっくりした。
あの、まあ、半径が小さいのは分かってたので、肩が濡れるのは良しとしよう。
なんかしらんけど、たまに傘の中で雨が降るんすよ。傘の中で雨が降ってはいけないです。
光に透かしてみると、わりと穴が空いている。
これは、こういうものなんだろうか。昔の人は、たくさん濡れなければOK、みたいな価値観だったんだろか。
なんてことを思ってたら、たまたま事務所に入ってきたビルの管理人であるところのおばあさんに「あら懐かしい、三度笠」なんつって話しかけられたのですが、疎開先でまさに三度笠を作ってたらしい。それは、主に農家が日よけで使ってたと。日よけ……。
三度笠は、ガチの雨具としては落第なのか……。
実は現代版三度笠がある
そんな話を友達にしていたら、普通に現代版三度笠がある、というのを教えてもらいました。帽子傘と言うらしい。釣りの人がよく被るから釣傘とも呼ばれるそれは、まさに思ってたやつ。
キャンプや野外音楽イベントでも使ってる人居るらしいんだけど全然知らなかった。そういうのと対極で生きてきたから。
感心したのは、ビニール製の帽子で蒸れることを考慮し、てっぺんに通気口が空いていて、さらにその通気口を塞ぐミニ傘がついているところ。
これ、けっこう野心的な進化じゃないですか。傘の上にミニ傘ですよ?
種類もいくつかある。例えば、雨合羽の遺伝子が入ってるものとかある。
そもそもニッチだからすごい冒険ができる。
どゆこと?
何だお前。
とにかくいろいろいる。
傘のカンブリア期は、頭の上に訪れていた。
手に持つ傘が変わらない間、三度笠改め帽子傘は細々と挑戦を続けていたのでした。
もしかすると、今、帽子傘は我慢の時なのかもしれません。あと2,3個大進化して、手に持つ傘よりも優位に立ったとき。
こういうのって学問の世界とかでもたまにあって、メインストリームから外れた研究を細々とやっていて、突然大発見をしてしまって、一気に勢力図が塗り変わるような。
10年後、傘は被るものかもしれない。
そんなことを思いました。やっぱり三度笠、期待しかない。
でも今年の梅雨には間に合いそうにないので、おとなしく、手に持つことにします。
(おしまい)