東京・お台場には「Googleマップに載っていない廃墟」がある

  • 更新日: 2023/06/01

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廃墟は自分が思うよりずっと身近にあるもの

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「地図にない場所」。

まるでホラーで聞くようなフレーズだ。カーナビがバグを起こして変な場所へいざなわれ、斧をもった謎の村人が追いかけて来そうな、恐ろしい響き。

そんな場所が東京の、しかも、開発された埋め立て地であるお台場に存在するのだろうか?その噂を聞いたとき、私はまだ半信半疑だった。

ここで皆さん、Googleマップを開いて「青海橋」と検索してほしい。お台場に実在する橋の名前だ。





あっただろうか?

似たような名前の施設や、お台場周辺の他の橋は検索結果に出てくる。しかし、「青海橋」のキーワードでどんぴしゃの施設は見つけることができない。Googleマップ上では、たしかに存在が抹消されている。

今回はそんな、地図上での存在はないことにされている、だけど、現実ではまだそこに掛かっている廃橋「青海橋」を散策した。


廃橋のまま29年たった青海橋



「廃橋」というくらいだから、使われていた歴史がある。

調べてみると、青海橋が使われるようになったのは1991年のことらしい。しかしその後、青海橋と並行するようにいくつもの橋が周辺にかかり、需要がなくなっていった。結局、1994年には利用中止となったため、まともに使われたのはたった3年のみ。なんと29年ものあいだ使われないままだ。

29年というと、私の年齢と同じ。自分の人生と同じくらいのあいだ、人に放置され続けたのだと思うと、なんだか途方もなく長い時間に感じる。私が青海橋だったら発狂している。

撤去するにも費用がかかるものだから、そのまま放置され続けたこの橋。2021年に東京都の予算が固まり、ついに撤去に向けて動き出すらしい。やっと青海橋が成仏できるというわけか。

しかし、人はなくなると分かると急いで見に行きたくなるものだ。私が生きてきた時間と同じだけ、眠っているこの橋を見に行こう。


青海橋周辺を散策する

いつもならGoogleマップでルートを検索してから目的地に向かうが、今回は「Googleマップにない場所」へ行くので役に立たない。

インターネットで調べて出てくる、個人ブログのレポート記事などを読ませてもらって、「青海橋の最寄りは東京テレポート駅」だということが分かった。この時点で新鮮な散歩だ。

個人ブログを信じて、りんかい線東京テレポート駅に上陸。



良く晴れた青空に、お台場のシンボルの1つ、フジテレビのビルがそびえ立つ。




お台場らしい、場所を持て余したかのようなロータリーの敷地に、「TOKYO」のモニュメントがあった。TOKYOの名のつく駅だから、観光しに来る外国人もいるのだろうか。




ひとまず、川の方面へ。最寄りの大きな橋、「夢の大橋」に向かう。




「ほんとうに橋?」と思うほど、とにかく広い。最大幅は約60メートルもあるという。公園の広場のように見えるが、これは「橋」だ。

ここではイベントを開催することもできるらしい。まさに「夢」を乗せた「大きな橋」だ。

夢の大橋から川沿いの景色を見渡すと……



ん?



おや??



あるーーーーーーーー!!!

少し川の景色を眺めただけで、かんたんに見つけてしまった。

私が夢の大橋を渡ったのは人生で初めてではないはず。こんなに視界に入る位置に存在しているのに、これまでなぜ気付かなかったのだろう。

それにしても、「夢」という名を冠した、明るくひらけた橋のとなりにあるのが、3年で役目を終え、29年も眠り続けている廃橋だなんて、あまりにも残酷じゃないか。平成のお台場開発の光と影を見ているような気持ちだ。

いや、ゴールデンウイーク中の撮影にもかかわらず、写真に人が誰も映りこまなかった夢の大橋も、いつかは青海橋と同じ運命を辿るのかもしれない。

ある意味お台場らしい、無機質で殺風景な空気を味わいながら、橋を渡っていく。



どうやら青海橋のたもとは公園の芝生になっていそうだ。行ってみよう。




芝生の正体は、「水の科学館」のとなりにある「水の広場公園」。絶賛工事中だが、公園内の芝生エリアには入れる。




整備された静かな公園だった。青海橋自体は封鎖されているものの、かなり近くまで寄れそうだ。




近寄ってみた。ツタがものすごいことになっている。




新緑の5月。だれも渡らない橋に、草木はいくらでも生え放題だ。

こんどは正面から覗いてみよう。



こちらが橋の入口。見事につつじでブロックされている。橋の入口をふさぐようにして植えられたつつじ、ほかで見たことがない。

つつじブロックのないところから、できるだけ近寄ってみよう。



青海橋最前線。170cmくらいのフェンスが張られ、しっかりと施錠されている。もちろん一般人がなかに入ることはできない。




少しだけ手を伸ばしてフェンス越しに撮影。夢の大橋ほどではないが、こうやって見るとけっこう横幅が広い2車線の立派な橋だ。

しかし、車道にも雑草がもこもこと生えてきている様子は、もうここが「終わった」施設であることを思わせる。

また、ここはとんでもなく静かだった。いわゆる「お台場」の、人であふれたレジャー施設も、トラックがびゅんびゅん通る高速道路も、この空間にはない。もちろん、青海橋を見に来る観光客もいない。ただ雑草が風に吹かれて、さやさやと鳴るだけだ。

ぴたっと時が止まったようなこの場所は、お台場のなかでやけに浮いていて、近未来SFの舞台のようだった。このままずっと見ていたら向こうからゾンビや未来人が走ってきそうな予感までしてしまう。

……向こうから?

そういえば対岸の橋の入口はどんな風になっているんだろう。反対側からも見てみることにした。


青海橋のとなりにかかるもう一つの橋、「有明橋」を渡って対岸に来た。青海橋は夢の大橋と有明橋に挟まれているというわけだ。

ちなみに有明橋と夢の大橋の間隔は200mほど。そう考えるとたしかに、こんな狭い間隔で橋はいらないのかもしれない。




有明橋のたもとには遊歩道があった。ここにもつつじが咲いている。おそらくこの道を通れば青海橋のなにかが見えそうだ。進んでみよう。




数十メートル進むと。フェンスで抑えられた雑木林が見えた。ずいぶん生え散らかしてるなあと、通り過ぎそうになったが、

……あれ??



これ、青海橋だ!!!

公園側と比べて、ほんとうになんの整備もされていなかったので、あっという間に通り過ぎそうになっていた。あぶない。




フェンス越しに見るとこんな感じ。奥に少し見える歩道は荒れていないものの、手前の草木は好き放題生えてしまっている。たとえ渡れるとしても、ちょっと入りたくはないかな。




背の低いフェンスもあった。




もちろん、その先にあるのも雑木林だ。人工物が森に還ろうとしているようだった。

夏にはもっと草木が生い茂り、冬には枯れて見通しがよくなるのだろうか。29回訪れたであろう廃橋の春夏秋冬を、私はまったく知らない。これから見ようにも、季節が一周する前に取り壊されてしまうのかもしれない。だが、その儚さもいい。


地図上にあったりなかったりする青海橋

青海橋をリサーチするなかで、また、周辺を散策するなかで、いくつかの地図を見た。

面白いのは、地図によって青海橋の姿があったりなかったりすること。これは「地図上にその名が存在しない」青海橋ならではの特徴と言えるだろう。実際に見ていこう。

■Googleマップ(夢の大橋)



冒頭で紹介の通り、Googleマップに「青海橋」の名前はない。しかし、Googleマップ上で夢の大橋と有明橋のあいだをよーく見てほしい(場合によっては拡大して見てほしい)。細長く白い線が表示される。これが青海橋だ!

調べれば何でも出てくるようなGoogleマップにおいて、こんな都心部の地図に「表示されるけど名前はついていない建築物」があるなんて。現地がどうなっているか知らない人が見たら、ひたすら謎の線に見えるのではないだろうか。


■オープンストリートマップ


©OpenStreetMap

え!?ある!!!表示も、名称もある!!!まさか地図上で出会えるなんて!!!!

正直、オープンストリートマップの表示粒度はGoogleマップとそんなに変わらないだろうと思っていたから驚いた。ちがうんだ。

もし数年後に完全に青海橋がなくなったら、この表示も、名称も跡形もなく消えるんだろうか。せっかく見つけたのに、すでにとてもさみしい。


■夢の大橋のたもとにある地図

夢の大橋の東京テレポート駅側入口には、周辺の地図が設置されていた。



ここにも表示はある(赤線内)!

Googleマップ同様、細長い謎の白線だけあって、名前はついていないパターンだ。

これ、お台場観光に来た人が見たら、地図のど真ん中に白い棒が横たわっていて、ひたすら謎すぎないか?いや、よく見ると名称がついているのは夢の大橋だけで、青海橋のとなりの有明橋も名前がついていない。それでバランスをとってるってわけか。

でも、それなら現役橋と廃橋との区別がつかなくて、「夢の大橋のとなりにも大きな橋があるな!」と、渡れないのに向かってしまいそうだ。

この地図表示で無駄足を踏んでしまう観光客がいないことを願う。


■水の広場公園にある地図

散策で見つけた地図をもう一つ。水の広場公園の工事中フェンスには、こんな地図が貼られていた。



これは……ない!!!ついに表示さえも省略された地図を見つけた。




ちなみに、もし青海橋の表示を描き加えるなら上記の赤線部分になる。

ただ、この現在地の位置からして、もし奥に橋があるような描き方をしたら、迷って来てしまう人が増えそうだし、これが最良の表記なのかもしれない。


以上がここまでで見つけた「地図上での青海橋の扱い」だったが、このほかにもあちこちの地図で、描いたり描かれなかったりしていそうだ。

廃墟は廃墟でも閉園した遊園地など、「廃墟スポット」として有名な、地図上でよく調べられるような施設なのであれば、きっとこんなことは起きないはず。

青海橋は廃墟だけど有名スポットでもないし、すぐ取り壊されるわけでもなかった。中途半端な立ち位置だからこそ、宙に浮いたような存在になってしまっていたのだと思う。

これから撤去工事が始まればもう、あとは「無」になるだけだ。

青海橋がなくなることによって、夢の大橋から見える景観がもっとよくなるかもしれない。水の広場公園周辺の遊歩道がもっと遊びやすくなるかもしれない。新しく便利な橋がかかるかもしれない……。期待半分、さみしさ半分だ。

平成から令和へ、新陳代謝を繰り返していくお台場の街。平成の残り香が消えきらないうちに、もうちょっと散歩を続けよう。










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ぼっちのazumiさん

ひとりでふらふらと歩いたり自転車に乗ったり電車に乗ったりします。埋め立て地の隅っこや、休日のオフィス街、ディズニーの木陰や、だれもいない海岸などが好きです。東海道ウォーカーです。

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