ディズニーの「ファストパス発券機」という遺跡〜シー編〜
- 更新日: 2023/05/18
第三弾はありません。
消えゆくディズニーリゾートの「遺跡」、ファストパス発券機を知っているだろうか?
ファストパスとは、ディズニーリゾート園内における優先案内のチケットだ。それを発券する発券機は、各アトラクション付近に設置されている。
私は学生時代、友人とディズニーに来ては、「いかにファストパスを駆使して効率よく園内を周るか」を計画したものだ。「何から取るか」「どういう順序で攻めるか」……楽しむというより「攻略」するディズニーは、お金はないけど体力はある、中高生ならではの遊び方だった。
ファストパスには、私の「ディズニーでの青春」が詰まっている。
しかし、そんなファストパスは、コロナ禍に公式アプリで新しい仕組みが導入されたことによって、なくなってしまった。公式サイトには「当面の間休止」と表記されているが、公式アプリで優先チケットを発券することが当たり前になったいま、復活は絶望的に思われる。
役目を終えたファストパス発券機は、ディズニーから消え始めている。完全に消えるまえに、私の青春をインターネットに残したい。
……ということでファストパス発券機探訪、第二弾。ランド&シーをやってしまったら残念ながら第三弾はもうない。さみしい。
前回(ランド)はこちら。なぜファストパスがお役御免の遺跡と化したのか詳しく知りたい人はランド編からどうぞ。
ランドでは、ファストパス発券所がベビーカー置き場に変わっていたり、何も使われないひたすら虚無なスペースとなっていたりした。シーではどんな風景が見れるのだろうか。
絶叫系アトラクションが苦手な私にとってはディズニー史上最狂のアトラクション。怖すぎるゆえに「乗らなきゃいけないなら最初に済ませたい」と友だちに言って、朝イチで乗ることが多かった。ゆえに、意外とファストパスの思い出はない。
あくまでそれは個人的な話で、大人気アトラクションであるタワー・オブ・テラーでファストパスを発券した思い出のある人も多いだろう。
そんなタワー・オブ・テラーのファストパス発券所は現在、すさまじい「虚無」スポットになっている。
「がらんどう」という言葉がしっくりきた。広々とした発券所は誰でも入れるのに、誰も入らない。アトラクションの雰囲気に合わせたホラーテイストのBGMが掛かっているのも相まって、ジメジメと湿度の高い陰の空気が流れている。
右を見ればタワー・オブ・テラーに乗ったあとのテンション高めな若者が楽しそうにはしゃいでいて、左を見れば裏口から登場したばかりのドナルド&デイジーが歓声を浴びていた。
間に挟まれた発券所は何もない、何も起こらない。ディズニーに来て早々、あまりにも対照的な光景を目にしてしまいセンチメンタルな気分になる。
気を取り直して、せっかく近くに寄れるのだから発券機の周りを観察してみよう。
この色のカバーは土埃が目立つなぁ。他の発券機は茶色やツルツルした素材のカバーが多いけど、実は同じくらい汚れてるかもしれない。
発券機の足元には、なんらかの魔物が潜んでいた。タワー・オブ・テラーに登場する呪いの人形「シリキウトゥンドゥ」の足ではなさそう。こわい。
屋根や柱はアメリカというより東洋の香りを感じる。バリやインドっぽく、このエリアのテイストとは明らかに違う異様な雰囲気を放っていた。
私が高校3年生のときにできたアトラクション。もうできて11年経っているわけだけど、まだまだ「新しいアトラクション」という感覚は抜けない。
今も大人気だけど、できたばかりのころの混雑っぷりはほんとうにすごかった。ファストパスを取ることでさえ一苦労。並んで乗る「スタンバイ」列と同じくらい、ファストパス待ちの列が伸びていて、「どっちがファストパスの列!?」と友人と慌てた記憶がある。
そんな大人気アトラクションのファストパス発券機はいま、スタンバイ列に埋もれていた。
びっちりとファストパス発券機に沿うように列ができている。
アトラクションによっては、ファストパス発券機に一般人が触れないように、けっこうな空間をとって規制のロープが張ってあるのを見てきたが、トイ・ストーリー・マニア!には、いっさいそういった気を感じない。
カバーがブルーなのも相まって、「ブルーシートに覆われたなにかの機材」のようだった。実際これがなんだか分かっていないで並んでいる子どもや若者もたくさんいるのではないだろうか。
発券所が別の施設になるのも、放っておかれるのも悲しいけど、このように単なる「物体」として、ただあるだけの状態が一番悲しいかもしれない。
待ち時間5分もザラなアトラクション。「実はファストパスを発券している」という事実は知っていたけれど、実際に取ったことはなかった。
販売からもうかなり経っているのでネタバレを許してほしいが、前回ランド編で購入したファストパス発券機フィギュアの「シークレット」として登場している。シークレット扱いにするくらい、ディズニー公式としてもレア感のある存在なのかもしれない。
ファストパスを取ったことがないからこそ、どこに発券機があるのか認識していなかった。アトラクション周辺を見渡すと、真向かいにドアがある。
これだ!使ってないくせになぜか開かれたドアの先には、「←ファストパス発券所」と書いてあり、通路が伸びている。
でも、発券機自体は見えない。勝手に入るわけにも行かないし、諦めるしかないか……と思っていたら、十数メートル先の同じようなドアに見覚えのあるフォルムが。
こっちか!どうやらさっきの入口から渡り廊下を通って、こちらに来て発券するっぽい。そんなに混雑するファストパスでもないのに、ちゃんとした導線設計。
ファストパスのためだけの使っていない通路なら入口、出口ともに閉めておいてもいいのに。いや、私みたいな発券機マニアにとってはありがたいんだけども。
2017年に施設のリニューアルによって新しくできた新アトラクション。だが、思い入れはリニューアル前の「ストームライダー」にある。
ファストパスを取らなくても乗れるアトラクションだったから、ジェットコースターの合間に40分くらい待って乗ることが多かった。キャラではなくて実写の人間が活躍するタイプのストーリーが、「オトナの国」のシーらしいと感じて結構好きだった。
ストームライダー時代も今も、あまり発券することのなかったファストパスだったけれど、見通しがよく分かりやすい場所にあるので、迷わず見つけることができた。
全機斜め前を向いて整列していてかわいい。ぶっとい円柱に海苔巻きのようなカバーが巻きつけてある。直径50cm以上はあるんじゃないだろうか?
サイズ感を表したくて手持ちのぬいぐるみ(オルメル)を使ったらちょっとバイオレンスな雰囲気になってしまった。やめとこう。
東京ディズニーリゾート内で最も速度の速いジェットコースター。アトラクション入口もファストパス発券機も火山内の洞窟の中にある。洞窟内は暗いので正確な場所があやふやで、いつも取りに行くときは、とりあえず火山を目指し、なんとなく火山内をウロウロして見つけていた。
この日もウロウロし、発見。
残念ながらロープが張られていて、これ以上前には進めない。アトラクション入口付近にあるファストパス発券機でも、スタンバイ列との間隔ゼロだったトイ・ストーリー・マニア!とは大きく違う、十分過ぎるスペース。逆に空間が広すぎでは?
細かな観察は叶わないか……と思いきや、
え?あれ??よく見たらカバー掛かってなくない!?!?
ランド、シーと見てきてはじめてカバーが掛かっていないタイプのファストパス発券機に遭遇できた。うれしい。
シーのトゥーンタウンとも言えるマーメイドラグーン。屋内にあるこの施設は子どもに人気の海底王国であり、学生の避難場所でもあった。灼熱の夏、極寒の冬、何度この身を屋内施設が守ってくれたことか。
そんなマーメイドラグーンのメインアトラクションが、このマーメイドラグーンシアター。ワイヤーで吊るされたアリエルがぐるんぐるん回って舞い踊るショーは、どう見てもハードそうなのに、ノンストップでお客さんを入れ続けていた。
子どもながらにそのタフさに感動していたけれど、そのショーはコロナ禍に入ってからずっと休止中。
そういうわけなので、ファストパスの案内時間も、スタンバイ待ち時間も非表示。どっちもないパターンは初めて見た。再開がほんとうに待ち遠しい……。
ファストパス発券所はディズニーランドのプーさんのハニーハント同様、立派なベビーカー置き場になっていた。
もうベビーカー置き場という看板もあり、ファストパス発券所ではないことを宣言している。
発券機はえーっと、シンプルに木箱にしまってあるパターンか。
......いや?違うぞ!?木箱にしまわれているのではない。発券機がそのまま置いてある!
センター・オブ・ジ・アースに続き、「そのまま放置」パターンにもう一つ出会えた。もしかして、屋内の発券機は保護する必要がなくてカバーを掛けていないのかも。
ファストパスが出てくる発券口の部分、懐かしいなあ。かわいく舌を出しているように見えてきて、新しいフェチの扉を開きそうになる。
ここもまた、取った覚えのないファストパス。そう考えるとシーには案外、取らずじまいで終わってしまったファストパスが多い。なくなるのなら、記念に取っておけばよかった。
マジックランプシアターの入口は見ての通り巨大なモスクのよう。気づいてなかったけれど、すぐ隣にファストパス発券所らしき時間表示の看板がある。
近づいてみると、カレー屋さんのテラスと壁を一枚挟んで発券機が置かれていた。
発券機の上には食器や食材が置いてある!シーの発券機はとにかくシンプルなものが多いし、そもそも基本的にカバーが掛かって見えないので、こうやってカバーの外に見えている小道具があるだけでとても嬉しくなる。
ジェットコースターから「落下」だけを削ぎ落としたようなアトラクション。落ちるのだけが怖い私にとっては好都合すぎる。ひとりで来たときは朝イチでファストパスを取りつつ、そのままスタンバイ列にも並んで1回目に乗るというくらい、何周もしたくなるアトラクションだった。
ファストパス発券機はスタンバイ列のなか。大好きなアトラクションだからこそ近くで撮りたいけど、これでは遠いので……
わざわざ並んで撮った。もちろん、このあとちゃっかりアトラクションも楽しんでいる。
発券機は高さがバラバラの木箱のようなデザイン。しかも、カバーはちょうどいいサイズがないのか、発券口の部分が覆いきれていない。そこ守んなくていいのか。
あえての粗雑さでアイデンティティを発揮していた。
東京ディズニーリゾート唯一の一回転するジェットコースター。しかし、個人的にはタワー・オブ・テラーよりはマシ。
そしてここは、入口から1番遠い位置にある最果てのファストパス。ランドでの「スプラッシュ・マウンテン」同様、ディズニー内の地理がわかる私は、朝から果てまで歩いてみんなのファストパスを取る係をやっていた。
そんなレイジングスピリッツ、入口周辺を見渡してもファストパス発券機を見つけられない。行っていたはずなのに思い出せない。
すぐ隣のエリアは工事中。「もしかして取り壊されてしまったか!?」と焦ったが、近くを通ったカップルの声が聞こえてきた。
「あれファストパスじゃね?」
「あーファストパス。あったね、そんなの(笑)」
レイジングスピリッツの向かいの茂み、これか、あった。
「そんなの」と鼻で笑ったカップルは許せないが、発券機の場所を教えてくれたことには感謝しなくてはならない。
レイジングスピリッツの発券機はひっそりとジャングルに佇む秘密基地のよう。ぽつりとベンチが設置されていた。
もともとボロボロな演出がされている看板や麻袋、縄や木箱は、時が経って人々に忘れられてから、さらにもう一味、秘境感が出てきているのではないだろうか。
ここから見える水辺は静かで、とても美しかった。
ここまで紹介したなかで最も新しいアトラクション。2019年なのでギリギリコロナ前だった。しかし、「発券機でファストパスを取った」記憶がない。なぜだろう。
調べてみたら、こちらのニュースに答えがあった。
ソアリンがオープンしたのは2019年7月23日。公式アプリでのファストパス取得が可能になったのも2019年7月23日。奇しくも、いや必然にして同日。
まるで運営から「ソアリンのファストパスはアプリで取ってくださいね」と言われているようだ。私はまんまと術中にはまりアプリでファストパスを取っていた。
ここまでランドとシー、あわせて19個の発券機を見ながら、「コロナさえなければ今も稼働しているのに」とか考えていたけれど、違う。
転換点は完全に「ソアリン」だ。新しいアトラクション、新しいアプリ、新しいファストパス取得方法。みんながそれにワクワクしていた。コロナがなくても、アプリで発券していた。ファストパス発券機がなくなることは、すでにこの時点で必然だったんだ。
そんな「アプリで取得」の先駆けアトラクション、ソアリンのファストパス発券エリアは、今後使われないことを想定してか、気持ち小さめだ。
そして、インフォメーションセンターと化していた。
若い学生から車椅子の人まで、あらゆる人が相談しにきて、ソアリンのキャストが丁寧に応対していた。激混みのソアリンの隣に、バリアフリーで和やかな空間ができていた。
円グラフにしてみた。
こんな感じになった。
印象深かったベビーカー置き場や休憩所などの「再活用系」は意外にも26%。一方で、実に63%がどうにもならず、とりあえずカバーを掛けて放置されている。半分以上かあ。
良い言い方をすれば、半分以上が姿を残し、復活の可能性を秘めている。悪い言い方をすれば、半分以上がそのまま放っておかれている。
ほんとうに今が過渡期なのかもしれない。どっちにも振り切れていない。
あと数年後、この円グラフはどう変わるだろう。すっかりベビーカー置き場に変わっているのかもしれないし、ただの道路になっているのかもしれないし、なにも変わらないのかもしれない。
こんなに調べておいて私は、ファストパス発券機がどう変わってもディズニーに行くのだろう。いちファンにはどうすることもできないし、ただ少しずつ変わっていくディズニーを見ることしかできないから。
これまでもこれからも、時代にあわせて変わってきたディズニーリゾート。そうだな、変わったらまた、インターネットに記録を残そう。
ファストパスとは、ディズニーリゾート園内における優先案内のチケットだ。それを発券する発券機は、各アトラクション付近に設置されている。
私は学生時代、友人とディズニーに来ては、「いかにファストパスを駆使して効率よく園内を周るか」を計画したものだ。「何から取るか」「どういう順序で攻めるか」……楽しむというより「攻略」するディズニーは、お金はないけど体力はある、中高生ならではの遊び方だった。
ファストパスには、私の「ディズニーでの青春」が詰まっている。
しかし、そんなファストパスは、コロナ禍に公式アプリで新しい仕組みが導入されたことによって、なくなってしまった。公式サイトには「当面の間休止」と表記されているが、公式アプリで優先チケットを発券することが当たり前になったいま、復活は絶望的に思われる。
役目を終えたファストパス発券機は、ディズニーから消え始めている。完全に消えるまえに、私の青春をインターネットに残したい。
……ということでファストパス発券機探訪、第二弾。ランド&シーをやってしまったら残念ながら第三弾はもうない。さみしい。
前回(ランド)はこちら。なぜファストパスがお役御免の遺跡と化したのか詳しく知りたい人はランド編からどうぞ。
ディズニーの「ファストパス発券機」という遺跡〜ランド編〜|ジモトぶらぶらマガジン サンポー
「ファストパス」と聞いて何を思い浮かべるだろうか。「ディズニーのアレだよね!」と思う人、「そんな昔の話をいまさら」と思う人、いろんな人がいるだろう。私にとっては「ディズニーでの青春」が詰まった…
ランドでは、ファストパス発券所がベビーカー置き場に変わっていたり、何も使われないひたすら虚無なスペースとなっていたりした。シーではどんな風景が見れるのだろうか。
タワー・オブ・テラー
絶叫系アトラクションが苦手な私にとってはディズニー史上最狂のアトラクション。怖すぎるゆえに「乗らなきゃいけないなら最初に済ませたい」と友だちに言って、朝イチで乗ることが多かった。ゆえに、意外とファストパスの思い出はない。
あくまでそれは個人的な話で、大人気アトラクションであるタワー・オブ・テラーでファストパスを発券した思い出のある人も多いだろう。
そんなタワー・オブ・テラーのファストパス発券所は現在、すさまじい「虚無」スポットになっている。
「がらんどう」という言葉がしっくりきた。広々とした発券所は誰でも入れるのに、誰も入らない。アトラクションの雰囲気に合わせたホラーテイストのBGMが掛かっているのも相まって、ジメジメと湿度の高い陰の空気が流れている。
右を見ればタワー・オブ・テラーに乗ったあとのテンション高めな若者が楽しそうにはしゃいでいて、左を見れば裏口から登場したばかりのドナルド&デイジーが歓声を浴びていた。
間に挟まれた発券所は何もない、何も起こらない。ディズニーに来て早々、あまりにも対照的な光景を目にしてしまいセンチメンタルな気分になる。
気を取り直して、せっかく近くに寄れるのだから発券機の周りを観察してみよう。
この色のカバーは土埃が目立つなぁ。他の発券機は茶色やツルツルした素材のカバーが多いけど、実は同じくらい汚れてるかもしれない。
発券機の足元には、なんらかの魔物が潜んでいた。タワー・オブ・テラーに登場する呪いの人形「シリキウトゥンドゥ」の足ではなさそう。こわい。
屋根や柱はアメリカというより東洋の香りを感じる。バリやインドっぽく、このエリアのテイストとは明らかに違う異様な雰囲気を放っていた。
トイ・ストーリー・マニア!
私が高校3年生のときにできたアトラクション。もうできて11年経っているわけだけど、まだまだ「新しいアトラクション」という感覚は抜けない。
今も大人気だけど、できたばかりのころの混雑っぷりはほんとうにすごかった。ファストパスを取ることでさえ一苦労。並んで乗る「スタンバイ」列と同じくらい、ファストパス待ちの列が伸びていて、「どっちがファストパスの列!?」と友人と慌てた記憶がある。
そんな大人気アトラクションのファストパス発券機はいま、スタンバイ列に埋もれていた。
びっちりとファストパス発券機に沿うように列ができている。
アトラクションによっては、ファストパス発券機に一般人が触れないように、けっこうな空間をとって規制のロープが張ってあるのを見てきたが、トイ・ストーリー・マニア!には、いっさいそういった気を感じない。
カバーがブルーなのも相まって、「ブルーシートに覆われたなにかの機材」のようだった。実際これがなんだか分かっていないで並んでいる子どもや若者もたくさんいるのではないだろうか。
発券所が別の施設になるのも、放っておかれるのも悲しいけど、このように単なる「物体」として、ただあるだけの状態が一番悲しいかもしれない。
海底2万マイル
待ち時間5分もザラなアトラクション。「実はファストパスを発券している」という事実は知っていたけれど、実際に取ったことはなかった。
販売からもうかなり経っているのでネタバレを許してほしいが、前回ランド編で購入したファストパス発券機フィギュアの「シークレット」として登場している。シークレット扱いにするくらい、ディズニー公式としてもレア感のある存在なのかもしれない。
ファストパスを取ったことがないからこそ、どこに発券機があるのか認識していなかった。アトラクション周辺を見渡すと、真向かいにドアがある。
これだ!使ってないくせになぜか開かれたドアの先には、「←ファストパス発券所」と書いてあり、通路が伸びている。
でも、発券機自体は見えない。勝手に入るわけにも行かないし、諦めるしかないか……と思っていたら、十数メートル先の同じようなドアに見覚えのあるフォルムが。
こっちか!どうやらさっきの入口から渡り廊下を通って、こちらに来て発券するっぽい。そんなに混雑するファストパスでもないのに、ちゃんとした導線設計。
ファストパスのためだけの使っていない通路なら入口、出口ともに閉めておいてもいいのに。いや、私みたいな発券機マニアにとってはありがたいんだけども。
ニモ&フレンズ・シーライダー
2017年に施設のリニューアルによって新しくできた新アトラクション。だが、思い入れはリニューアル前の「ストームライダー」にある。
ファストパスを取らなくても乗れるアトラクションだったから、ジェットコースターの合間に40分くらい待って乗ることが多かった。キャラではなくて実写の人間が活躍するタイプのストーリーが、「オトナの国」のシーらしいと感じて結構好きだった。
ストームライダー時代も今も、あまり発券することのなかったファストパスだったけれど、見通しがよく分かりやすい場所にあるので、迷わず見つけることができた。
全機斜め前を向いて整列していてかわいい。ぶっとい円柱に海苔巻きのようなカバーが巻きつけてある。直径50cm以上はあるんじゃないだろうか?
サイズ感を表したくて手持ちのぬいぐるみ(オルメル)を使ったらちょっとバイオレンスな雰囲気になってしまった。やめとこう。
センター・オブ・ジ・アース
東京ディズニーリゾート内で最も速度の速いジェットコースター。アトラクション入口もファストパス発券機も火山内の洞窟の中にある。洞窟内は暗いので正確な場所があやふやで、いつも取りに行くときは、とりあえず火山を目指し、なんとなく火山内をウロウロして見つけていた。
この日もウロウロし、発見。
残念ながらロープが張られていて、これ以上前には進めない。アトラクション入口付近にあるファストパス発券機でも、スタンバイ列との間隔ゼロだったトイ・ストーリー・マニア!とは大きく違う、十分過ぎるスペース。逆に空間が広すぎでは?
細かな観察は叶わないか……と思いきや、
え?あれ??よく見たらカバー掛かってなくない!?!?
ランド、シーと見てきてはじめてカバーが掛かっていないタイプのファストパス発券機に遭遇できた。うれしい。
マーメイドラグーンシアター
シーのトゥーンタウンとも言えるマーメイドラグーン。屋内にあるこの施設は子どもに人気の海底王国であり、学生の避難場所でもあった。灼熱の夏、極寒の冬、何度この身を屋内施設が守ってくれたことか。
そんなマーメイドラグーンのメインアトラクションが、このマーメイドラグーンシアター。ワイヤーで吊るされたアリエルがぐるんぐるん回って舞い踊るショーは、どう見てもハードそうなのに、ノンストップでお客さんを入れ続けていた。
子どもながらにそのタフさに感動していたけれど、そのショーはコロナ禍に入ってからずっと休止中。
そういうわけなので、ファストパスの案内時間も、スタンバイ待ち時間も非表示。どっちもないパターンは初めて見た。再開がほんとうに待ち遠しい……。
ファストパス発券所はディズニーランドのプーさんのハニーハント同様、立派なベビーカー置き場になっていた。
もうベビーカー置き場という看板もあり、ファストパス発券所ではないことを宣言している。
発券機はえーっと、シンプルに木箱にしまってあるパターンか。
......いや?違うぞ!?木箱にしまわれているのではない。発券機がそのまま置いてある!
センター・オブ・ジ・アースに続き、「そのまま放置」パターンにもう一つ出会えた。もしかして、屋内の発券機は保護する必要がなくてカバーを掛けていないのかも。
ファストパスが出てくる発券口の部分、懐かしいなあ。かわいく舌を出しているように見えてきて、新しいフェチの扉を開きそうになる。
マジックランプシアター
ここもまた、取った覚えのないファストパス。そう考えるとシーには案外、取らずじまいで終わってしまったファストパスが多い。なくなるのなら、記念に取っておけばよかった。
マジックランプシアターの入口は見ての通り巨大なモスクのよう。気づいてなかったけれど、すぐ隣にファストパス発券所らしき時間表示の看板がある。
近づいてみると、カレー屋さんのテラスと壁を一枚挟んで発券機が置かれていた。
発券機の上には食器や食材が置いてある!シーの発券機はとにかくシンプルなものが多いし、そもそも基本的にカバーが掛かって見えないので、こうやってカバーの外に見えている小道具があるだけでとても嬉しくなる。
インディ・ジョーンズ®️・アドベンチャー:クリスタルスカルの魔宮
ジェットコースターから「落下」だけを削ぎ落としたようなアトラクション。落ちるのだけが怖い私にとっては好都合すぎる。ひとりで来たときは朝イチでファストパスを取りつつ、そのままスタンバイ列にも並んで1回目に乗るというくらい、何周もしたくなるアトラクションだった。
ファストパス発券機はスタンバイ列のなか。大好きなアトラクションだからこそ近くで撮りたいけど、これでは遠いので……
わざわざ並んで撮った。もちろん、このあとちゃっかりアトラクションも楽しんでいる。
発券機は高さがバラバラの木箱のようなデザイン。しかも、カバーはちょうどいいサイズがないのか、発券口の部分が覆いきれていない。そこ守んなくていいのか。
あえての粗雑さでアイデンティティを発揮していた。
レイジングスピリッツ
東京ディズニーリゾート唯一の一回転するジェットコースター。しかし、個人的にはタワー・オブ・テラーよりはマシ。
そしてここは、入口から1番遠い位置にある最果てのファストパス。ランドでの「スプラッシュ・マウンテン」同様、ディズニー内の地理がわかる私は、朝から果てまで歩いてみんなのファストパスを取る係をやっていた。
そんなレイジングスピリッツ、入口周辺を見渡してもファストパス発券機を見つけられない。行っていたはずなのに思い出せない。
すぐ隣のエリアは工事中。「もしかして取り壊されてしまったか!?」と焦ったが、近くを通ったカップルの声が聞こえてきた。
「あれファストパスじゃね?」
「あーファストパス。あったね、そんなの(笑)」
レイジングスピリッツの向かいの茂み、これか、あった。
「そんなの」と鼻で笑ったカップルは許せないが、発券機の場所を教えてくれたことには感謝しなくてはならない。
レイジングスピリッツの発券機はひっそりとジャングルに佇む秘密基地のよう。ぽつりとベンチが設置されていた。
もともとボロボロな演出がされている看板や麻袋、縄や木箱は、時が経って人々に忘れられてから、さらにもう一味、秘境感が出てきているのではないだろうか。
ここから見える水辺は静かで、とても美しかった。
ソアリン:ファンタスティック・フライト
ここまで紹介したなかで最も新しいアトラクション。2019年なのでギリギリコロナ前だった。しかし、「発券機でファストパスを取った」記憶がない。なぜだろう。
調べてみたら、こちらのニュースに答えがあった。
ソアリンがオープンしたのは2019年7月23日。公式アプリでのファストパス取得が可能になったのも2019年7月23日。奇しくも、いや必然にして同日。
まるで運営から「ソアリンのファストパスはアプリで取ってくださいね」と言われているようだ。私はまんまと術中にはまりアプリでファストパスを取っていた。
ここまでランドとシー、あわせて19個の発券機を見ながら、「コロナさえなければ今も稼働しているのに」とか考えていたけれど、違う。
転換点は完全に「ソアリン」だ。新しいアトラクション、新しいアプリ、新しいファストパス取得方法。みんながそれにワクワクしていた。コロナがなくても、アプリで発券していた。ファストパス発券機がなくなることは、すでにこの時点で必然だったんだ。
そんな「アプリで取得」の先駆けアトラクション、ソアリンのファストパス発券エリアは、今後使われないことを想定してか、気持ち小さめだ。
そして、インフォメーションセンターと化していた。
若い学生から車椅子の人まで、あらゆる人が相談しにきて、ソアリンのキャストが丁寧に応対していた。激混みのソアリンの隣に、バリアフリーで和やかな空間ができていた。
ランド/シー全19種のファストパス発券機を比べてみた
ここまで19個も見てきたファストパス発券機。なんとなく傾向が見えてきた。たとえば、ベビーカー置き場になっていたり、スタンバイ列に埋もれていたりする。円グラフにしてみた。
こんな感じになった。
印象深かったベビーカー置き場や休憩所などの「再活用系」は意外にも26%。一方で、実に63%がどうにもならず、とりあえずカバーを掛けて放置されている。半分以上かあ。
良い言い方をすれば、半分以上が姿を残し、復活の可能性を秘めている。悪い言い方をすれば、半分以上がそのまま放っておかれている。
ほんとうに今が過渡期なのかもしれない。どっちにも振り切れていない。
あと数年後、この円グラフはどう変わるだろう。すっかりベビーカー置き場に変わっているのかもしれないし、ただの道路になっているのかもしれないし、なにも変わらないのかもしれない。
こんなに調べておいて私は、ファストパス発券機がどう変わってもディズニーに行くのだろう。いちファンにはどうすることもできないし、ただ少しずつ変わっていくディズニーを見ることしかできないから。
これまでもこれからも、時代にあわせて変わってきたディズニーリゾート。そうだな、変わったらまた、インターネットに記録を残そう。