野良庭散歩1

  • 更新日: 2021/06/15

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野良庭を求めて


ねっとりとした湿気が肌にまとわりつき、ぬるい強風が髪を乱す。まるで台風が近づいているような気候だが、これで梅雨入り前である。私は散歩に出ることにした。

早速住宅地に入っていく。この時期、あちこちの庭でバラを見かける。バラは栽培が難しいとよく聞くから、立派に咲いているのを見ると感心してしまう。赤・ピンク・薄紫・ブラウン・黄色・白、ゴージャスな八重咲きに可憐な一重咲き、大小様々なバラたちが競い合うようにして咲いている。




地面にらっきょうのようなものがたくさん落ちている。長く尖った葉で構成されたロゼットが凛々しい、幅1メートル級リュウゼツランが花をつけていた。花芽は上へ上へと伸び、私の背丈も越えている。白い大振りな花が鈴なりに咲く。庭からはみ出し道路まで葉を広げていた。




これは私の大好物、壁や石垣の穴・割れ目から芽吹く植物シリーズ。今回はミント。密集しすぎて、もはやどこから生えているのかもわからない。その生命力の強さから決して地植えにしてはいけないと言われているハーブである。見た目でそうとわかるが少しちぎって嗅いでみる。香りも間違いなくミント。




ドクダミの群生地を発見。みっしり茂っている。葉の形も花も可愛いが薄暗いところにびっしりと集まり、抜いても抜いても生えてくるからあまり好かれてはいなさそう。ちぎると強烈な匂いがする。子どもの頃はよく友達をだまして匂いを嗅がせていたものだけど、それなりに薬効があるらしい。ドクダミ茶や、ドクダミ化粧水作りに少しだけ興味がある。




生産緑地に植えられたカルミアが盛りを過ぎようとしている。ごく薄いピンクの愛らしい花だが、私はなんとなくタコの吸盤を想起する。




振り向くと完全にツタに覆われた建物があって驚く。アイビーだろうか。時々、建物や庭がアイビーで埋め尽くされているのを見かけるがこれは家なのだろうか。物置だろうか。入り口なども見えないので判断がつかない。




突き当たりまで来たので戻って少し歩き、別の住宅地ブロックに入る。白とピンク、二色のツツジが可愛らしい生垣を過ぎ、ブロック塀を背景に伸びる植物を撮る。これはオカトラノオだろうか?花のつき方が、ネコ科の動物の尻尾のよう。




公園にはアベリアの生垣。赤い新芽がぴょんぴょん伸びている。夏前にトリミングされるのだろう。今だけ見れる姿だと思うとなんだか愛おしい。アベリアは以前苔玉で育てていた。白くて小さな星型の花がたくさんついて嬉しかったことを思い出す。




大きな通りに出てみると、雑多な植物が茂り放題な花壇を通りかかった。企業の入り口にある花壇で、以前は手入れされていたことがうかがえる。園芸種と雑草が入り乱れて面白い。やたらと背の高いマーガレットや、何かの葉に目隠しされるダリア。




アスファルトから当然のように伸びるタンポポを発見。地面から目玉がふたつ生えているよう。




これも私の好物。石垣の穴から伸び上がるハルジオン。凛々しい姿。下にびっしり生える小さな葉も良い。

思えば私は、幼い頃から植物を見ながら歩き回るのが好きだった。寒さの厳しい地域に生まれ育ち、春が来るのは殊更嬉かった。積もった雪を溶かしながら生えてくるフキノトウや、まだ雪の残る庭に顔を出すクロッカスやスイセンの芽を宝物のように感じて、時期がくるたび探し歩いた。
散歩の習慣は途切れながらも続いていたが、目線が再び下がったのは娘が生まれてからだ。よちよち歩きの娘の手を引いて毎日歩いた。急にしゃがみこむ彼女と一緒に、小さな雑草に咲くさらに小さな花やそこに集まる虫を見た。娘の足取りがしっかりしてきた頃私は植え込みの植物の接写や、石垣の際に生える花の写真を撮り始めた。撮っているうちに『庭からはみ出た花や観葉植物、道路に生えた野草など生命力を感じさせつつもどこか均整のとれた植物』が好きだということに気が付いた。そしてそういう植物がある場所を『野良庭』と呼ぶことにした。娘は小学生になり少しずつ私の手を離れていく。私は娘を連れず、野良庭を求め宛てのない散歩を続ける。




道路沿いの緑地にシックな花束のような部分を見つけた。最後まで読んで下さったあなたに贈ります。ありがとうございました。







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#歩く #あたらしい散歩 

末埼鳩

少し奇妙な物語やエッセイを書きます。庭を逃れた野良植物の写真を撮るのが好きです。

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