父のiPhoneを小田原に取りに行くまでの10日間

  • 更新日: 2023/04/20

父のiPhoneを小田原に取りに行くまでの10日間のアイキャッチ画像

不本意から始まる散歩、結構アリかもしれない。

  • hatebu
  • feedly
  • rss

3/22日、私は小田原にいた。

話の始まりは、私が小田原に行く10日前まで遡る。


3月12日、下戸の父が酒に酔い、iPhoneを失くした。

呂律が回らない様子で帰宅した父は、イライラした様子でカバンを床に置いた。
「iPhone失くした。もう何もする気が起きねぇ」


この日は、昔からお世話になっている人に呼ばれ、調子に乗ってたくさん飲んだらしい。



横浜駅の居酒屋で酒を飲んだ後、ベロベロの状態で電車に乗り、実家最寄駅の戸塚を通過。
起きたら国府津におり、手に持っていたはずのiPhoneが失くなっていたと言うのだ。

十数万円の塊を手に持ったまま眠りこける警戒心の無さに若干イラつきつつ、経緯を説明してもらった。



横浜駅の居酒屋で知人と飲み、JR東海道線で戸塚駅を通過して国府津で目が覚める。
そこから横浜駅の居酒屋に引き返し、忘れ物がないか聞くも見つからず。
横浜駅で遺失物届を出して帰ってきた来たとのこと。

ちなみに、遺失物届には「無色のクリアケースをつけたiPhone11 Pro 、ホーム画像はカワセミの写真。」と記入した。


父は呂律が回っておらず話にならないので、私ができるだけのことをするしかない。


①父のiPhoneに電話をかける
誰かが拾ってくれていたり、どこかに届けられていたら、電話に出てくれるかもしれない。
ヤベェ奴に電話番号と名前を知られると困るので、非通知でかける。

……出た。

なんかガヤガヤしたところで笑っている声がする。そしてすぐに切られた。
二度目の発信は、応答の前に拒否された。
三度目に至っては、「おかけになった番号は現在電源が入っていないか、電波が届かない場所にあります。」と音声案内が流れた。おそらく、iPhoneの電源が切られたのだ。

本当に、ヤベェ奴の手元に渡ってしまった。


②「iPhoneを探す」を使う
iPhoneにデフォルトで入っているこの機能を使えば、私のiPhoneで父のiPhoneの位置情報を拾い、今ある場所を調べることができる。……はずだったのだが、電源が切られてしまったため、場所がわからず。
父のiPhoneを「紛失モード」に切り替え、ホーム画面にメッセージを表示させる機能を使って、ヤベェ奴をちょっとビビらせるような文言を打ち込んだ。


③SIMカードを利用停止する
通信会社のページからSIMカード利用停止を行った。これで、Wi-Fiに繋がない限りネットに繋がらなくなる。



このようにひとまずできるだけのことをし、不正利用されないことを願うばかりだった。ちなみに端末のパスコードは「000000」に設定しているとのこと。

完全に終わった。

「ま、いっか!」じゃねぇんだわ。アンタのiPhoneにはワシらの個人情報も入ってんの。寝るな!!!


3月17日、小田原警察署から家電に着信

私が実家にひとりでいると、知らない電話番号から家電に着信があった。

「小田原警察署です。先日遺失物届を出していただいたiPhoneですが、こちらでお預かりしております。」

安心したと同時に、3700円でSIMカードを再発行したことを思い出し、少しテンションが下がる。

本人確認のためパスコードを伝えなければならなかったのだが、ガバガバの文字列を伝えるのはあまりにも屈辱的で、「000000です……すみません……すみません……」と何度も謝ってしまった。

「平日の9時〜16時に取りに行かねばならない」というのはフルタイムで働いている人間には不可能なので、神奈川県警のホームページから委任状をダウンロードし、ノータイムで働いている私が取りに行くことになった。


3月22日、小田原警察署へ行く

小田原警察署から着信のあった3月17日は金曜日だった。次の平日である月曜日は都合がつかず、火曜日は祝日であったため、取りに行くのは5日後の3月22日水曜日に。

この日は夕方から恵比寿で用事があるため、昼に家を出た。



気温が高かったので春らしい格好をして出かけようと思ったら、ピクニックおばさんが完成してしまった。


JR東海道線で、戸塚駅を出発したのは12:14。




私は「東京で一人暮らしがしたい」といつも言っていたが、
渋谷や新宿など東京方面の主要駅だけでなく、鎌倉や箱根、熱海まで、短時間で乗り換えせずに行けてしまうのはすごく贅沢なことだったのではないだろうか?


……なんて考えながら、しばらく経った12:57、予定通り小田原駅に到着。意外と近い。




「駅キャラクター かまちょ」
かまってちょうだいの略以外にあるか?と思ったが、「小田原名産のかまぼこ+小田原ちょうちん」で「かまちょ」らしい。


小田原駅から小田原警察署まではバスに乗る手もあるが、歩いても15分ほどなので歩くことに。なんなら初めからそのつもりで時間を逆算してきた。

小田原駅の東口側は、小田原城やショッピングモール、ドンキホーテなどがあるため観光客で栄えている。




小田原駅は階段の側面に絵を描きがち。

一方、小田原警察署のある西口側は人通りも少なく静かな雰囲気だ。





西口を出ると、伊豆箱根バスが目に入った。カラーリングとライオンのキャラクターが可愛くて思わず写真を撮る。
後で調べたところ、伊豆箱根バスは西武グループのバス会社であり、バスのデザインはライオンズカラーとマスコットキャラクターのレオであることが判明。
野球に疎いので、あまりにも知識が無くて申し訳ない。少し賢くなった。




すぐ横に北条早雲公像があったことを後から知った。バスに気を取られて全く気づかなかった……。






バス停を通り過ぎると、大きな垂れ幕が視界にねじこんでくる。
「〇〇高校野球部優勝!」みたいなやつかと思いきや、不動産会社の広告だった。真ん中二つの色褪せ具合が良い。
建物ではなく、擁壁に設置された垂れ幕というのも珍しい気がする。




横にある本店の建物もレトロだ。


この辺りから、なぜかGoogle Mapのコンパスが狂い始めたが、自らの方向感覚を信じて向かう。




しばらく歩くと、大稲荷神社という神社がある。
「おおいなり」ではなく、「だいいなり」と読むらしい。




道が狭く、鳥居の端が見切れてしまった。




入り口にいた黒猫ちゃんと目が合う。

長い階段を上り、本殿へ。
帰りに御朱印をいただこうかと思ったが、社務所にどなたもいなかった。またの機会に来よう。
境内は撮影禁止とのことだったので、静かにお参りし、大稲荷神社をあとにした。


鳥居を抜けて外に出ると、方向感覚が完全に失われてしまった。Google Mapと、自分の空間認識能力を照らし合わせて頑張ろう。




めっっっちゃ坂




旅館の看板が良い味を出している。




Google Mapの通りに進んでいるが、本当にこの道で合っているのか不安になってきた。不法侵入とかしてないよね?
腰がおかしくなりそうな急斜面をゆっくり下り、やっとひらけた道に出た。ホッ。

小田原警察署まであともう少しだ。


着いた!



小田原警察署デケェ〜!!!と思ったら、こちらは小田原合同庁舎だった。地域の合同庁舎には年に数回用があると思うが、駅から遠いと住民は大変なのではないだろうか。
とはいえ、戸塚合同庁舎が駅直結である方がイレギュラーか。




小田原警察署は横の建物だった。暑い。目に光がなさすぎる。


窓口で委任状を渡し、父のiPhoneが手渡される。10日ぶりの再会だ。
ちなみに、いつどこで見つかったのか聞いてみた。
「湘南新宿ラインの座席にあったとJRさんからお伝えいただきました。」

……おかしい。電車に乗った時間や、父の話を聞く限り、確かに失くなったのは東海道線だったはずだ。それに、日数が経ちすぎではないだろうか?

私の推測だが、東海道線で父のiPhoneを拾った(奪った?)人が、私が「iPhoneを探す」の機能でホーム画面に表示させたメッセージを見て、後日湘南新宿ラインの座席に置いたのではないかと思う。
父のiPhoneには、駅周辺にあるカフェなどのフリーWi-Fiに繋いだ履歴があるので、なんらかの拍子にインターネットに繋がってメッセージが表示された可能性は十分にある。わかんないけど。




とりあえず目的は達成。




それにしても、ケース、黄ばみすぎではないだろうか?警察署の人、これを「クリアケース」として認識してくれたの奇跡だろ。


私もこの後お酒を飲む予定がある。父にあれだけ言っておいて自分が失くしたら終わりなので、大切にチャック付きのポーチに入れた。



行きとは別のルートで小田原駅に戻ろう。



室外機まで青く塗られている。

右上に四角い跡がある。
「おりじなるTシャツ作成!」の看板は、もともとそこに貼ってあったのだろうか。
はたまた違う看板があったのだろうか。だとしたらなんて書いてあったんだろう?




あのちゃんが学習塾の広告をやる時代になるなんて、数年前は思いつきもしなかった。なんだか不思議な世界線に来てしまった気分。




シナモンチュロスとシュガーチュロス、5個入りの抹茶クロワッサンを、途中にあったマックスバリュで購入。この後空き時間ができたら食べよう。
「小田原まで来てなぜマックスバリュ?」と思われるかもしれないが、私には全く馴染みがないのだ。許してください。
ここのマックスバリュにあったパンはどれも好きなタイプのものだったので、この後直帰の予定ならもっと買いたかった。




恐怖の看板店。
なぜこのフォントを選んだのか聞きたかったが、店に入ったら私が看板にされてしまうかもしれないのでやめておいた。

(※冗談です。)




ゾウのマダムが手を振っている。
カラフルでかわいい。




タイルに描かれた道案内がおしゃれ。

でも、右が怖すぎる。もともとあった建物がなくなったのだろうか。ここに描くほどだからそこそこ重要な施設なのだろう。

文字の消し方も砂嵐みたいで不気味。なぜ文字だけ消したのか?名前が変わっただけなら、新しい名前を書くのではないだろうか?
この施設が先ほどの「看板店」だったらアツい展開。




電柱が擁壁にとらわれている。




こちらも。




進むほど沈んでいく。




小田原駅に到着。この後は恵比寿へ行くので、小田急線に乗る。新宿まで乗り換えなしで行ける。便利になったものだ。

「箱根登山線」の表示が目立っており、小田急線も同じ改札であることに気づかず、一度スルーしてしまった。


1時間半同じ電車に乗り続けるため、カバンを枕にして爆睡。



恵比寿に着く頃には、5個のクロワッサンが一つの塊になっていた。


帰宅

iPhoneを失くすことなく、無事帰宅。
電源を入れてみると、充電は3%残っていた。



「iPhoneを探す」のメッセージも出ていた。


今回は西口の方しか行けなかったので、次回は東口の方もじっくり歩きたい。

ハプニングがきっかけで出向いた土地でも、楽しく歩けば良い思い出になる。









このサイトの最新記事を読もう

twitterでフォローFacebookでフォロー
  • hatebu
  • feedly
  • rss

脳乃あメ

2000年生まれのWebライター。千葉で生まれ、東京の学校に通っていた神奈川県民。父は福岡、母は北海道出身。世の全てに興味がある。

関連する散歩

フォローすると最新の散歩を見逃しません。

facebook      twitter      instagram      feedly

TOPへ戻る