荻窪を去ることになったので、もう一度愛しておきたい

  • 更新日: 2021/01/21

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さらば、荻窪

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荻窪を去ることになった。


2年半ほど前、中央線沿いに住みたいという一心で、間取りなんか度外視した物件選びを無理やり敢行した結果、荻窪・天沼2丁目のワンルームアパートが見つかり、俺のような昆虫でも審査を通してくれるとあって、晴れて念願の杉並区民となった。

最初の半年くらいは、最寄りの駅にルミネがあるという嬉しさ、歩いて阿佐ヶ谷にも高円寺にも行けるという嬉しさ、何より杉並区民を名乗れる嬉しさで、部屋のことなど気にならなかった。中央線沿いの街で”東京をする”、その事で精いっぱいだったのだ。

しかし、東京を始めてから1年近くの月日が経ったあたりから、徐々に部屋への不満が募っていった。狭すぎる。でもそれは俺が整理整頓ができないことが主な原因だ。5畳のワンルームだって、工夫次第で快適な暮らしを送れる。

ただ、ユニットバスの狭さだけはどうにもならなかった。風呂とトイレが近すぎる。冗談ではなく、2センチほどしか離れていない。こう書くと特に大した問題には感じられないけど、住んでみるとその小さな不満がゆっくりと蓄積していった。

せめて、セパレートなんて贅沢は言わないから、ここより広いユニットバスの部屋に住みたい。贅沢は言わないから、洗濯機を室内に置きたい。贅沢は言わないから、20平米以上の部屋に住みたい。贅沢は言わないから、1LDKに住みたい。贅沢は言わないから、広いベランダで最上階でオートロックで収納たっぷりの部屋に住みたい…あとキッチンに窓が欲しい…

そんなささいな希望を胸に、半ば衝動的に部屋の退去の手続きをした。




部屋を去るということは、町を去るということだ。2年間で慣れ親しんだ天沼2丁目、日大二高通りは、去ると決めた今でも愛している。

最後に、自分の住んだ町を愛しておきたい。どうかお付き合いください。




この道を”日大二高通り”たらしめている、日大二高。何やら有名な高校らしい。俺の母校の3倍は広そうで、10倍は綺麗である。




よくこの道で生徒らとすれ違い、青春をふわりと感じては”殺してくれ”と願ったものだ。




日大二高通りで、印象深かったかわいい家。何度チャイムを鳴らし、「住みたいのですが」と言おうと思ったことか。




コミュニケーションサイクルショップ、シクロ オオノだ。自転車を持っていないのでお世話になることは無かったけど、「コミュニケーションサイクルショップ」という名前に強く興味をひかれていた。




このコンクリートのアパートに住みたくて、家賃を調べたことがある。いくらだったかは忘れてしまった。忘れてしまったということは、記憶に残らないくらい高かったに違いない。基本的に、8万円以上の値段は脳が認識を拒否してしまう。




幾度となく通った、最寄りのコンビニ。店員の態度がみんな良かった。家から少し離れたコンビニは、店員の態度が本当に最悪で怖い思いをしたので、ここが最寄りでよかった、と思っていた。もう行くこともない。




あの宝湯の煙突が、俺の東京暮らしを見守ってくれた。ちなみに、この煙突が写り込んだ写真から、自宅を特定されてしまったことがある。




いつも通った駅までの道。静かで落ち着いていて、夕方なんかは子供が駆け回っている良い住宅街だった。




いつも見ていたはずなのに、こんなにでかかったっけ、と驚いてしまった。何歳だろう。




しかし曇っている。晴れているときに見せたかった。なんだか、いつもはもっと可愛いんだけどなあ、と写りの悪い好きな子の写真を見ているような歯がゆさを感じる。




三よし会の掲示板だ。三よし会って何だろう。



たぬきが居たらしい。見たかったなー




工事の始まりから、人が住み始めるまでを見送った都営住宅。一度はこういう団地に住んでみたい。



都営住宅だからそりゃそうなんだけど、「申請者 小池百合子」と書かれているのが面白かった。




ここを左に曲がって、駅へ向かう。まっすぐ進むとでかめの車道に出て、よくそこで道に迷っていた。2年住んでも、ぜんぜん道には迷う。




なぜだか分からないが、この道にはよくゲロが落ちていた。荻窪駅から酔っ払いが歩くと、この地点が限界なのかもしれない。




この家にはずっとフラワーボックスに赤い花が咲いていて、よく助けられた。バラだと思ってたけど、自信が無いので”赤い花”とする。




アーこういう建物住みてー




何度通ったかわからない、交通量のえぐい道。特に16時くらいに差し掛かると、学ランとセーラー服と主婦と車と自転車が入り混じって交通地獄になる。しかし、その波に俺が加わることはもう無い。




夕方以降や朝早くに来たりすると、サンドイッチや菓子パンが半額になっているミニピアゴ。ピアゴを離れるのが何より寂しいかもしれない。今までありがとう。




本当に個人的な思い出になるんだけど、引っ越してきた当初、店頭に僕の友人の写真が貼られていてビックリしたのがこの美容室くるみだ。もう写真は変わってしまった。




なないろこみちへと入っていく。この小道はかなり杉並っぽいのでオススメです。実際、何の思い出もない。そもそもここを通ったことすら数回程度だ。せっかくだから、最後に通っておきたい。




何もかもうまくいっていそうな豚である。なないろこみちのシンボルらしい。




ことぶきホコランド。ネーミングがいちいち耳に残る。魔法のiらんどみたいだ。




劣化の影響か、どういう感情の目なのかいまいちわからない。そして、このガチャガチャに今もカプセルを補充している業者がいると思うと何だか感慨深い。




切り株の上に立った豚って史上初じゃない?




さて、なないろこみちを抜けると荻窪駅前の大きな通りに出る。このまま右に行けば荻窪駅に着くのだが、さすがに歩き足りない。ここからは左側の阿佐ヶ谷方面へと歩いてみたいと思う。荻窪駅前で食いたいメシが無く、阿佐ヶ谷まで散歩がてら移動するという、俺の定番の散歩を再現してみたいと思う。




非常に歩きたくなる道。ズイズイ進んでいく。




好きだったな~この道。特に予定は無いけど晴れてるから外に出たいという日は、意味もなくここを散歩した。なんで曇りなんだ




別に何がってわけじゃありませんがこの写真よくないすか




いい道でしょう。この沿いに住みたい




ここを下ると、また天沼の住宅街へと入っていく。非常に下りたくなる魅力的な階段ではあるが、今回は無視をする。散歩というものは、無視が非常に重要になってきます。




さて、この天沼橋には、ちょっとした楽しみがある。



天沼橋から何とか身体を乗り出して向こうの景色を見てみると…



何とスカイツリーが見えるのです。ちょっともう写真だとどうしようもありませんが、肉眼だとよく見えます。なんで晴れてないんだよ




まあスカイツリーが見えるから何なんだよというところなので、先へ進んでいきましょう。




アーーーー住みてーーーーー



アーーー住みてーーーーーー住んで生活してーーーーーー




荷物がいっぱい積まれてる窓を見つけると写真を撮ってしまう。




そろそろ物件や店舗が阿佐ヶ谷を名乗り始めるころ。




本当に良い道だな~と書いたところで気が付いた。俺はすき家のある道を”良い道”と呼んでいるだけだ。




さて、阿佐ヶ谷に着いてしまってもアレなので、また天沼方面を目指して脇道に入っていくことにする。




部屋を退去してからというもの、良い家を見つけるとすぐに写真を撮ってしまうようになった。ああいう、屋上とベランダのある一軒家に住みたい。植物なんか置いて。




学校と住宅地の風景を、中央線が横切っていく。




いや、住みてえよ?




騙されない。礼金敷金仲介料0なんて、そんな話があるわけがない。自販機を2つも使って、噓を言っている。




高架下に到着。輪廻に繋がっているような道である。ここは夜になると不気味で、少しカッコいいので、よく歩きに来る。一度、ここで自転車に乗ったおばさんにすれ違いざま急に写真を撮られたことがある。写りが良ければLINEで送ってほしい。




半分くらい歩きましたが、まだこんな感じです。




高架下から覗く家は、常にかわいい。




やっと出口へ…




ここからは、阿佐ヶ谷の飲み屋街を通り抜け、荻窪に帰っていこうと思う。完全にこの時思い出したのだが、病院の予約を入れているのを忘れていた。あと30分ほどで荻窪の病院に行かなくてはならない。俺は東京で一人暮らしを始めてから5年以上病院に行ってなかったので、病院の予約が入っているという状態にひどく慣れない。




なんだか、玉袋筋太郎がロケで歩いてそうな通り。この一帯はよく通るものの、店に入ったことは一度も無い。あと10年くらいして少し腹が出てきたら入ってみたい。




いや住みてえよ 住みてえけどなんだよ藪から棒にさあ 言わせたいだけだろ




正直この辺の道はよくわかんなかった。先週とかにできたんだと思う。




とりあえず、ここがスターロードであることが分かった。




住みたいから何だよ




家々しい道だな




おや?鳩だ…



そこなんか濡れてるぞ 乾いてるとこいきなよ



とりあえず鳩についていきます



今のところ人間と同じルートを歩いている。



なんか変なとこ入っちゃった…



人通りも多い中、鳩を追いかけていたら警察に通報されてしまうかもしれない、と思い、ここで断念。鳩のビビらなさはすごい。車が向かってきても、ぶつかる直前に最低限の動きだけでひょいと避けていてかっこいい。さらに、歩き方が面白い。首がペコペコ動いている。俺かなり鳩好きかもしれない。




住みたいけどいま鳩のこと考えてるから




住みたいとかじゃないけどすごいね




さあ、荻窪まであと15分程度。この散歩もそろそろ終わりが近づいてきました。




この辺りには特に何の思い入れも無いのだけど、やはり言いようのない安心感がある。




ていうかもう知らない場所だな どこなんだよここは




知らない場所と知らないトラック




杉並区医師会カッケー




なんか奥の家、写真で見るとびんぼっちゃまくんの家みたいになってません?




道の緩やかなカーブと共に家たちの並びも少し弧を描いて、それで”家々しい”が生まれるんだなあ。家々しいという言葉は無い。




そろそろ、見覚えのある道へと戻ってきた。




はあ、荻窪ともお別れか…




自分にとって東京の思い出は、すべてこの荻窪に詰まっている。嬉しきも悲しきも、荻窪、天沼と過ごしてきた。毎日ポケットに手を入れてセカセカと歩いているだけだったけど、それでも荻窪の小さな景色の数々は見過ごさなかった。




いや、住みたいけど今いい感じに締めてるところだから




しかし、俺は次の街に行く。荻窪で過ごした2年半の残り香を嗅ぎに、また必ず戻ってくると誓って…




この横断歩道を渡れば最後だ。このまま電車に乗って、新しい場所へ…




さようなら、荻窪。最後まで、北口の写真を撮るのが下手でごめんな…



新天地へ

無事、荻窪と別れを告げることができました。

これでもう、離れても大丈夫。

ただの私的な思い出にここまでお付き合いいただき、ありがとうございます。


最後に、次に住む街を紹介したいと思います。










阿佐ヶ谷です。よろしくお願いします。










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城戸

電車代をケチって何駅分か歩くことを散歩と呼んでいます。杉並区が大好きな日と大嫌いな日があります。

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