マチノネ#3 永福町、紅葉とデフォルメ像
- 更新日: 2022/12/13
像たちの頭上に望む秋景色
【本企画について】
到着駅から目的地へと向かう道中で景色が変わるごとにハンディレコーダーをかざしてフィールドレコーディング=自然音・環境音の採集を行い、その成果物として録音物を使いイメージに沿う音を足しながら楽曲を制作する。制作した楽曲は採集風景の映像とともに動画として公開する。
この日は昼過ぎから下北沢へライブを観に行く予定があった。折角なら井の頭線沿いをどこか歩いてみようと思い立ち、紅葉が綺麗らしい善福寺川を眺めに永福町で降りてみることにした。
川の方へ向かう前に大きな踏切を覗いていく。真ん中に立って何処までも伸びるなだらかなカーブを眺めるのが好きだ。
広い通りを避け、瀬田貫井線なる閑静な路地をまっすぐ進む。ピシッと直線に仕切られた区画よりこうして適度にカクカクしてくれていた方がなんだか落ち着く。
誰かが道端で落としたイアフォン。家主さんの思いやり。
大宮の鳥居をくぐると何やら奥が賑わっている。なるほど七五三らしい。はれの日と呼ぶに相応しい陽気だった。
和田堀公園が見えた頃、ランナーと度々すれ違うようになる。こんな景色の中ならさぞ気持ち良いことだろう。
公園には背高な木が生い茂り美しい木漏れ日が射している。ちょうど散歩時だったからかワンちゃんと頻繁にすれ違う。黄色い絨毯の上をざしざしと踏み鳴らして歩く。
和田堀池。紅葉を綺麗に写し取り、まるで絵画のような色彩を堪能させてくれる。
側に立つオレンジの建物は古着屋らしい。傘の下で所在なさげなゴリラが気になる。
足元に目をやると色とりどりの落葉に紛れてどんぐりがちらばっている。時たまコツンと音がしていたのはこれのせいだったらしい。
染まり始めた黄緑から今にも落ちそうな茶色まで、同じ枝から伸びているのに色付きに差が付くのは何故なんだろう。伸びた枝葉は頭上を覆い、跳ね返す光が暖かい色を降らしている。
公園を抜けるとそのまま善福寺川に出る。道沿いには遊具が並び子供の憩いの場になっている。それもあってか、この辺りはどこも和やかなムードに満ちていて余所者の自分にすら安心感を与えてくれる。
本日のお目当て、「かえる」の像。言われてみればまあ確かに、とは思うがヤスリを掛けられたが如くディテールが削られ、モチーフを拾えるギリギリのビジュアルに仕上がっている。
さるのこしかけならぬヒトのこしかけ。
池の跡地みたいな巨大な窪みの真ん中に佇むツートンのちびっこ像。
並木の間に突如現れたストーンヘンジ。お分かりいただけただろうか、中でおじさんが円を描くように動き太極拳に勤しんでいる。スピリチュアルなパワーが得られそう。
こちらは「かめ」の像。何故かは分からないがこの川沿いには動物をモチーフにした像が点在している。向かいの通りにあるらしい「小鳥」も探していたが残念ながら見つからなかった。
触られすぎてか削れた鼻先に供えられたケロッピのラバマス。
意気揚々と冬物を下ろしてみたものの、日中の気温を見誤り汗だくになる。それなりの距離を早足で歩いてきたせいでもある。
午後の予定が差し迫っていたため、川沿いの道を外れて商店街から西永福駅を目指す。
時間ギリギリで駅に到着。ホームから見えた街の一角に風情があった。
今回の制作物はこちら。
往来の和やかさと、紅葉を前に感じるしんみりとした気持ちの両方に寄り添う音として暖かみのあるローズ・ピアノをメインに使いエレクトロニカを作りました。
採集音声の方は、寄り合ってはしゃぐ子供たちや部活に打ち込む学生などそこで過ごす人々の画が浮かんでくる記録になっていると思います。どこも賑わっていてかつうるさくもない、暖かくて居心地の良い街でした。
もう程なくして冬を迎えるこの頃ですが、次回も季節感の伝わるような画を届けられたらと思っています。それではまた。