知らない土地を散歩したくて、苫小牧に来ていた
- 更新日: 2023/12/14
偶然性に身を委ねてみる
最近、なんだか知っている場所ばかり散歩している。サンポーで書いた記事も、ディズニー、お台場、近所の神社……いずれも「知ってる土地」の知らない場所を探す散歩だった。
久々に全く知らない土地を歩きたい。空気の味も違うような場所を歩きたい。
気づいたら、北海道の苫小牧に来ていた。
一応、苫小牧というのには理由がある。理由はその日の朝、千歳駅前のホテルで起床したときに決まった。
「朝ごはんに海鮮丼が食べたい」
ホテルの朝食とか、新千歳空港のレストランとか、そういうことじゃない。朝から近くの海鮮市場に行って食べたい。そう思い立ち、Googleマップで「市場」と調べて出てきたのが苫小牧だった。そんな行き当たりばったりな旅行ばかりしている。
苫小牧駅から市場まで、徒歩で約30分。気温は4度だったけれど、寒さより散歩欲が勝ってしまった。歩いてみよう、知らない土地。
見事な曇天。11月の東京では体感できないようなピンと張った冷たい空気。この気温で天気が崩れたら、雨なのかな、雪なのかな。
天気は悪いけど、知らない土地は駅前の大通りを歩くだけでも楽しいはず。手始めに、駅前のビルでも覗いてみようか。
あれ?
廃墟だ……。
天井が抜けるくらいにはちゃんと時間の経過した廃墟のようだ。こんなにも大きな廃ビルが建つ駅、初めて見た。
調べてみると、ここは「旧サンプラザビル」。2014年に閉鎖されてから9年もそのままなんだそう。ニュースをみるに、苫小牧市は本気で再開発に取り組もうとしているみたいなので、数年後には景色が変わっているかもしれない。
比較的大きな街だと思っていたけど、ドあたまから廃墟に出会ってしまい、どきどきする。市場まで無事つけるかな。
どうやら杞憂だったようで、整備された大通りがまっすぐ伸びていた。
それにしても、苫小牧の人は気温4度くらいじゃマフラーも手袋もしないのか。完全防備で防寒している私がよそ者だとすぐにバレてしまいそうだ。
北海道ならではの風景もあった。
停止線。車に乗らないから実際のところは分からないけれど、これって雪で埋もれてしまうから標識にしてるような気がする。
すべりどめ砂。撒いてみたい。
「雪捨場」、関東じゃあんまり聞かないフレーズ。
ひろーいグラウンド!高校かなぁ?
小学校だった……。小学生の足じゃ一周するのに結構時間がかかりそうだ。私が通っていた高校は、100mの直線を確保するだけでもギリギリだったからうらやましい。
まっすぐ進めばもう漁港。そんなところにある日焼けサロン。漁師さん、バランスよく全身を焼きたいのかも。
歩き始めて30分ほどで、目指していた場所、「海の駅ぷらっとみなと市場」についた。
ネーミング的にちょっと観光地っぽい大きめの施設なのかなと思っていたけれど、1階建て・2棟の建物からなるアットホームな施設だった。
そうは言っても観光客向けの海鮮レストランは充実。
あ! マー君のサインだ!
野球に疎いけど、駒大苫小牧高校が強いことだけは知っていた。
ニコニコのほっき地蔵。
ゆるキャラ、ホッキちゃん。
右も左も、ほっき貝だらけ。そうか、苫小牧はほっき貝の街なのか。そんなことも知らずに来ていた。
朝起きたときは海鮮丼の気分だったのに、実際に食べたのは苫小牧名物の「ほっき貝カレー」だった。あちこちのほっき貝アピールと、この寒さも相まって、誘惑に誘われた。
カレーの具はほっき貝オンリー。真ん中にご飯。ほっき貝は刺身で食べられるほど新鮮なものを注文毎に調理しているのだそう。
食べてみると……シャキシャキだ!
貝の歯ごたえって「くにゅ」だと思っていたけれど、これは完全に「シャキ」。
思わぬご当地グルメに出会うことができた。
さて、ご飯も食べたし帰るか……と思っていたら小雨が降ってきた。この気温だとまだ雪じゃなくて雨なんだ。さすがに雨のなか30分歩く気になれない。バスに乗ろう。
バスまでの時間潰しに周辺をぶらついてみる。
市場の道路を挟んだ向かいには、漁港が広がっていた。たくさんの漁船が並んでいる。
ふと、水面を覗いてみる。
写真では伝わりきらないが、北海道の海は雨でも透明度が高い。沖縄の海のような明るい水色ではないけれど、深くて暗くて黒いのに、なぜか透き通っている。ついつい、前屈みになって覗き込んでしまう。吸い込まれそうだからこのくらいにしておこう。
長蛇の列を見つけた。どうやらレストランらしい。こういうの、旅行先でご飯を食べたあとに見つけがちだ。こっちの店のほうが評価は高かったのかもしれないけど、忘れよう。旅のグルメは一期一会だ。さっきの店が一番美味しいに決まってる。
周辺の散歩を続けていると、市場の隣にこんな施設があるのを見つけた。
「ほっき貝資料館」。入口の前になんだかすごいオブジェがあるな。入ってみようか。
うおぉ……
この暗さ……
雑多さ……
……いい!
私好みのクセ強めな資料館だ!!!
左の部屋の扉を開ける前に、まずこの暗い廊下を見てみよう。
みっちり掛けられているほっき貝の貝殻は、絵馬代わりらしい。
使われていない顔はめパネル。え! 顔の位置に穴がないパターンってあるんだ。
「北寄美人の図↓」と書かれている。下を覗くと……
奥の鏡に自分が映った。そういう方向性のジョークね。
廊下の一番奥には、真実の口を開けたホッキ大王が鎮座している。おそるおそる手を入れたけど、噛まれることはなかった。
廊下だけでも息切れしそうな情報量だ……。いざ、室内に入ってみよう。
うわーーーー!!!!
「カオス」とは、こういうことを言うんだな。すごくいい。
もちろん、資料館らしく勉強になる展示もたくさんある。
ほっき貝の年輪や、
縄文時代の貝殻利用について学べる。
ただ、それより多いのがナゾの手作り人形たち。
天井にまで独特な人形ワールドが広がっている。
ニコニコした人形が多いので、ハッピーな空間になっているのが救いだ。ホラーテイストだったら一瞬でこの部屋を出ている。
愉快な気持ちでバスが来るまで時間を潰し、熊の人形に見送られて駅に戻った。
たった2時間も満たない散歩だったけれど、久々の「知らない土地散歩」は濃厚な時間だった。(半分くらいほっき貝資料館に印象を持って行かれた感じは否めない。)
たまには、まったく知らない場所を、まったく下調べせず、行き当たりばったりで歩いてみる散歩もしよう。満たしたかった「散歩欲」はこれだった気がする。
新千歳空港を発つ前に結局、海鮮丼を食べた。結局、やっぱりうまかった。
久々に全く知らない土地を歩きたい。空気の味も違うような場所を歩きたい。
気づいたら、北海道の苫小牧に来ていた。
一応、苫小牧というのには理由がある。理由はその日の朝、千歳駅前のホテルで起床したときに決まった。
「朝ごはんに海鮮丼が食べたい」
ホテルの朝食とか、新千歳空港のレストランとか、そういうことじゃない。朝から近くの海鮮市場に行って食べたい。そう思い立ち、Googleマップで「市場」と調べて出てきたのが苫小牧だった。そんな行き当たりばったりな旅行ばかりしている。
苫小牧駅から市場まで、徒歩で約30分。気温は4度だったけれど、寒さより散歩欲が勝ってしまった。歩いてみよう、知らない土地。
見事な曇天。11月の東京では体感できないようなピンと張った冷たい空気。この気温で天気が崩れたら、雨なのかな、雪なのかな。
天気は悪いけど、知らない土地は駅前の大通りを歩くだけでも楽しいはず。手始めに、駅前のビルでも覗いてみようか。
あれ?
廃墟だ……。
天井が抜けるくらいにはちゃんと時間の経過した廃墟のようだ。こんなにも大きな廃ビルが建つ駅、初めて見た。
調べてみると、ここは「旧サンプラザビル」。2014年に閉鎖されてから9年もそのままなんだそう。ニュースをみるに、苫小牧市は本気で再開発に取り組もうとしているみたいなので、数年後には景色が変わっているかもしれない。
比較的大きな街だと思っていたけど、ドあたまから廃墟に出会ってしまい、どきどきする。市場まで無事つけるかな。
どうやら杞憂だったようで、整備された大通りがまっすぐ伸びていた。
それにしても、苫小牧の人は気温4度くらいじゃマフラーも手袋もしないのか。完全防備で防寒している私がよそ者だとすぐにバレてしまいそうだ。
北海道ならではの風景もあった。
停止線。車に乗らないから実際のところは分からないけれど、これって雪で埋もれてしまうから標識にしてるような気がする。
すべりどめ砂。撒いてみたい。
「雪捨場」、関東じゃあんまり聞かないフレーズ。
ひろーいグラウンド!高校かなぁ?
小学校だった……。小学生の足じゃ一周するのに結構時間がかかりそうだ。私が通っていた高校は、100mの直線を確保するだけでもギリギリだったからうらやましい。
まっすぐ進めばもう漁港。そんなところにある日焼けサロン。漁師さん、バランスよく全身を焼きたいのかも。
歩き始めて30分ほどで、目指していた場所、「海の駅ぷらっとみなと市場」についた。
ネーミング的にちょっと観光地っぽい大きめの施設なのかなと思っていたけれど、1階建て・2棟の建物からなるアットホームな施設だった。
そうは言っても観光客向けの海鮮レストランは充実。
あ! マー君のサインだ!
野球に疎いけど、駒大苫小牧高校が強いことだけは知っていた。
ニコニコのほっき地蔵。
ゆるキャラ、ホッキちゃん。
右も左も、ほっき貝だらけ。そうか、苫小牧はほっき貝の街なのか。そんなことも知らずに来ていた。
朝起きたときは海鮮丼の気分だったのに、実際に食べたのは苫小牧名物の「ほっき貝カレー」だった。あちこちのほっき貝アピールと、この寒さも相まって、誘惑に誘われた。
カレーの具はほっき貝オンリー。真ん中にご飯。ほっき貝は刺身で食べられるほど新鮮なものを注文毎に調理しているのだそう。
食べてみると……シャキシャキだ!
貝の歯ごたえって「くにゅ」だと思っていたけれど、これは完全に「シャキ」。
思わぬご当地グルメに出会うことができた。
さて、ご飯も食べたし帰るか……と思っていたら小雨が降ってきた。この気温だとまだ雪じゃなくて雨なんだ。さすがに雨のなか30分歩く気になれない。バスに乗ろう。
バスまでの時間潰しに周辺をぶらついてみる。
市場の道路を挟んだ向かいには、漁港が広がっていた。たくさんの漁船が並んでいる。
ふと、水面を覗いてみる。
写真では伝わりきらないが、北海道の海は雨でも透明度が高い。沖縄の海のような明るい水色ではないけれど、深くて暗くて黒いのに、なぜか透き通っている。ついつい、前屈みになって覗き込んでしまう。吸い込まれそうだからこのくらいにしておこう。
長蛇の列を見つけた。どうやらレストランらしい。こういうの、旅行先でご飯を食べたあとに見つけがちだ。こっちの店のほうが評価は高かったのかもしれないけど、忘れよう。旅のグルメは一期一会だ。さっきの店が一番美味しいに決まってる。
周辺の散歩を続けていると、市場の隣にこんな施設があるのを見つけた。
「ほっき貝資料館」。入口の前になんだかすごいオブジェがあるな。入ってみようか。
うおぉ……
この暗さ……
雑多さ……
……いい!
私好みのクセ強めな資料館だ!!!
左の部屋の扉を開ける前に、まずこの暗い廊下を見てみよう。
みっちり掛けられているほっき貝の貝殻は、絵馬代わりらしい。
使われていない顔はめパネル。え! 顔の位置に穴がないパターンってあるんだ。
「北寄美人の図↓」と書かれている。下を覗くと……
奥の鏡に自分が映った。そういう方向性のジョークね。
廊下の一番奥には、真実の口を開けたホッキ大王が鎮座している。おそるおそる手を入れたけど、噛まれることはなかった。
廊下だけでも息切れしそうな情報量だ……。いざ、室内に入ってみよう。
うわーーーー!!!!
「カオス」とは、こういうことを言うんだな。すごくいい。
もちろん、資料館らしく勉強になる展示もたくさんある。
ほっき貝の年輪や、
縄文時代の貝殻利用について学べる。
ただ、それより多いのがナゾの手作り人形たち。
天井にまで独特な人形ワールドが広がっている。
ニコニコした人形が多いので、ハッピーな空間になっているのが救いだ。ホラーテイストだったら一瞬でこの部屋を出ている。
愉快な気持ちでバスが来るまで時間を潰し、熊の人形に見送られて駅に戻った。
たった2時間も満たない散歩だったけれど、久々の「知らない土地散歩」は濃厚な時間だった。(半分くらいほっき貝資料館に印象を持って行かれた感じは否めない。)
たまには、まったく知らない場所を、まったく下調べせず、行き当たりばったりで歩いてみる散歩もしよう。満たしたかった「散歩欲」はこれだった気がする。
新千歳空港を発つ前に結局、海鮮丼を食べた。結局、やっぱりうまかった。