ゆめが丘が夢みたいだった

  • 更新日: 2021/08/05
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ゆめが丘が夢みたいだった。



駅舎からして夢みたいだった。




人が誰も居なかった。




そこでは夢をかなえる乗車券が売っていたし、



夢みたいな花が咲いていた。




外に出ると、駅舎が野原にぽつんとあることが分かってきた。
たぶんここは夢の中だろうと思った。




道が不確かだった。




架空の線に注意しながら歩いた。




写真撮ってくださいと声をかけられた気がした。




曖昧なままそこに在った。




空色のバスが飛んだ。




複雑な植え込み。いい夢だな。
こういう夢を毎日見たい。



ピョンピョンしている草もいい。




いい鋭角。




鹿の親子が隠れていた。






動かない河童が居た。今日の暑さで、もう助からないんだろう。




おじさんが夏を下っていって、



その先に川があった。




おじさんは対岸に居た。




夢の中だからネムノキの態度がでかい。




この街の正しさだ。




ステレオタイプな夏が迫ってきて笑っちゃった。夢だもんな。
俺の想像力の限界がこれだ。入道雲が遠くから迫るのが夏。
麦茶のボトルに朝陽が当たってテーブルに茶色い影を落とすのが夏。




橋のようなもの。ナイスドリーム。




カーブに沿った田植え。ナイスドリーム。




急に実家付近の夏が出てきやがった。
あの原付は俺だ。養鶏場に卵を買いに行くところ。
帰りは割れないように、少しスピードを落とす。途中、アイスとコロッケを買う。これじゃあ暑いんだか寒いんだか分かんないね! と肉屋のおばちゃんが言った。アイスを開けると、コロッケの熱で凹レンズのように溶けている。溶けた部分から「はずれ」の文字が見えた。






ステレオタイプな昔が迫ってきて笑っちゃった。夢だもんな。
20世紀のおわり、カジュアルなコミュニケーションツールはポケベルからPHSのPメールや携帯電話のショートメッセージに変わった。
公衆電話がホットスポットから風景に変わって、父親が会社から大量に貰ってくる富士山に賀正と書かれたテレホンカードは誰も欲しがらなくなった。






道路の上を渡る大層なニールセン・ローゼ橋。




ガラスブロックの向こうに違う世界が見える。
別の誰かの夢のような気がする。アイスピックのようなもので強引に押し入ったらびっくりするかな。




夢を作っているところ。
森の向こうは夢の外なんじゃないかしらね。




夢と現実がせめぎ合っている。
若干、現実が押しているようにも見える。




夢の境界まで来た。
この先通り抜けできないと来たもんだ。ほらな。



そのわりに矢印が森へ誘ってくる。どっちなんだ。
夢に聞いても無駄か。




森の入り口にシャトルが落ちている。
これは吉兆か、凶兆か。














なんか人の気配が出てきた。



抜けた。何だったんだ。



今どこに居るんだかまったく分からないけど、生活がある。



現実味がある。ここは夢じゃないっぽい。



そうだ、こんな毎日だった。








さて、ゆめが丘付近を夢遊してしまったけれど、実際のところ、ここは再開発のまっただ中らしい。泉ゆめが丘土地区画整理組合のサイトによると、令和4年までにとんでもない駅前が誕生することになっています。
それで、2021年のゆめが丘というのは、更地の中に奇抜な駅だけが存在するという現実離れした世界になっているわけでした。





1999年に開業したものの乗降者数は相鉄で毎年最下位、あいみょんのジャケット写真も撮りやすかったのではと思ったりする。



ただ数年後には一変しているはずで。
ドラスティックに町並みが変わるのってそうそうないので、少し楽しみではあります。



その一方で、シムシティの初手みたいなこの風景も儚いものだと思いました。






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ヤスノリ

サンポー主宰。最近おちつきがある。

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