一年だけ、北海道

  • 更新日: 2026/05/28

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模範的北海道

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こんにちは。王田土人です。

私は3月まで、函館市の近くの小さな町に一年間だけ住んでいました。

今回は、北海道での暮らしを中心に振り返ってみようと思います。


3月



北海道はやたらと漢方を推してくる




去年の3月終わり。函館のホテルから見た風景。
雪が残っているどころか普通に降ってるけど。

これ真冬になったらどうなるんだろうと戦慄したことは言うまでもありません。

北海道に引っ越すにあたり、「4月くらいまでは寒いから小さめのヒーターがあった方がいいよ」と言われ、家電一式とともに買いました。
結局、その「小さめのヒーター」だけで、一冬を乗り切ることに成功しました。

また、東京のユニクロで取りあえずベンチコートを買いました。結局、その「ベンチコート」だけで、一冬を乗り切ることに成功しました。


4月



北海道といえばこれでしょ。
道央や道東に比べると、これでもまだ「北海道らしくない」らしいです。
確かに道南は、リンゴの栽培が盛んだったり、マグロが美味しかったり、青森の影響を強く受けているなと感じることが多かったです。
方言も、なんとなく東北のイントネーションと近い。




いや、クマ!お前はこっち来たらダメだよ。
クマは割りと洒落にならなくて、出会ったことはないが、確実に「いる」という感じでした。




道南のローカルチェーンとして有名なラッキーピエロ。
内装からお土産まで全てがもの凄い情報量のお店。それが「何となくできてしまった」ではなくて、意図的に作り込んでいるので、執念のようなものを感じる。
しかも、ご飯がちゃんと美味しい。

あと、ホワイトデーの日に行ったら、「ホワイトデーなんでお菓子お配りしています」と謎にお菓子をもらったりした。ありがとう。
観光地から少し離れるとすいている店舗もあるので、ぜひ行ってみてほしいです。



美しくってなんだろう。
誰が決めるんだろう。店長かな。
仮に店長が決めるとして、その人の美意識が社会通念から激しく逸脱していたらどうなんだろう。
仮に自転車が整然と並んでいたとして、それを見た店長が「これは美しくない!」とか言って自転車を逆さまにしだしたりして、お客さんとケンカになったら、どちらの言い分が正しいことになるんだろうか。


5月


仲良く水を飲んでいる。

驚くべきことに、この時期は車を持っておらず自転車だけで生活しています。
買い出しも、隣の町まで片道1時間くらいかけて、自転車で行きました。

そうなると、最も手ごわいのは風で、北海道は建物が低く土地も広いので遮るものがないです。そのため、自転車に乗っていると風の影響をダイレクトに受けるのです。
ということで、向かい風になると風速5メートル程度で早くもママチャリの限界が出来し、いくらこいでも前に進まん。
したがって突然吹いてくる風にキレ散らかしながら、「は?そもそも風っている!?」とプリミティブな怒りと疑問を噛みしめながら、自転車をこぐハメになる。

ちなみに風が地球からなくなると、天気が固定され、寒暖差が極端になるそうです。地獄。




ただ、こういう景色は本当に美しい。極楽浄土があるとすればこういう場所なんだろうなと思ったりしました。

あと、5月のある時期にだけ茶色いガの幼虫みたいなやつが、うねうねと道路を横切ろうとしてきて、あれは気持ち悪いながらもちょっとシュールで面白かった。



水平線がきれいに見える条件をほとんど満たしている気がする。


8月



夏だ。
北海道は梅雨がなく、春からシームレスに夏に移行します。
北海道の夏は、東京の夏に比べれば確かに湿度が少なく過ごしやすい。

しかしそれは屋外の話。

屋内は基本が冬仕様なので、熱を逃がさない構造になっている。
そのため、家のなかはとてつもなく暑い。特にトイレ。
窓から日差しが入ってくるのでトイレの暑さはすさまじかった。

短い夏のためにエアコンを買うのは馬鹿らしく思えたので、1万円程度の冷風扇を買う。これが全く使い物にならず、「粗大ごみくん」という名前を勝手に付ける。「粗大ごみくん」の風が出る部分は、なぜかやたらとエッジが利いており、そこに足をしたたかにぶつけて結構な出血をしました。ここに至って怒りが頂点に達し、ハードオフに売却することに相成候。
ハードオフでは、「え、今年買ったものですか」と店員さんが怪訝そうに査定をしてくれ、果たして「粗大ごみくん」は1,500円で売れた。その後、ちょっといい牛肉に姿を変え、最終的には肉じゃがに転生しました。よかったね!

結局、ウィンドエアコンを取り付けたが、こいつは相当頑張ってくれました。


8月(帰省)

帰ったら行きたい場所があった。



分倍河原と中河原。
私は街灯が好きなので、気になっている街灯を見にいきました。




踏切はなんで夏と相性がいいんだろうか




USJのマリオエリアが2%くらい出張している




大型車の通り抜けが出来ないことは教えてくれるけど、どこに行くのか教えてくれない看板。






鎌倉街道商店会の街灯たち。
密度がすごい。こんなに頭の部分が重たそうな街灯は珍しい。しかも、お互いにデザイン上の関連性があまりないのもいい。

しかし目的はこの街灯たちではなく、偶然見つけたもの。
中河原のポテンシャルの高さがうかがわれます。




これを見にきました。



いや、なんだこれ。圧倒的な存在感。
文字という抽象的な記号を平行四辺形でかたどって柱にどん!と乗っけている。

最初に見た時は、寿司の折詰みたいだなと思いました。
波平さんとマスオさんが駅前で飲み明かし、酔っぱらってお土産に買ってくる寿司みたいな街灯。

しかも、文字の下の部分は夜になると光るに決まっている。
よく見ると、オレンジや黄色の三角形が描かれていて、点灯するとどうなるのか大変気になる。




この道とか最高ですよ。
抽象的な塊が柱に乗っている様は、合成のようで現実感がない。
夜に「住吉銀座」の文字と、オレンジと黄色の三角形が浮かび上がったら、どんな景色になるんだろうか。

私は、街灯の魅力の一つは夜に点灯した街灯が並んだ時の「異世界感」だと思っているので、この街灯はすごく訴えかけてくるものがあります。




これもすごい。
商店街の始点と終点に、ゲートが置かれることがありますが、二種類のゲートが2個横並びになっている。
初めて見た。ゲートが並ぶといよいよテーマパークみたいになってくる。




さらに、ファイバースコープのような街灯や



街灯かどうか怪しいものまで。

住吉銀座が目的でしたが、他にも見たことのない街灯をたくさん浴びせてくれました。


9月



札幌出張。

生まれて初めて札幌に行きました。
札幌の規模は函館と比べ物にならず、別格でした。

しかも、街がいわゆる碁盤目状になっていて、交差点も「北2西4」みたいなシステマティックな名付け方をされており、超合理的パキパキ人工シティでした。

地下街が東京でいう原宿みたいな場所になっています。そこでナウなヤングに囲まれて挙動不審になりながら食べたソフトクリームが、ただ事ではない美味さで、晴れて生涯ベスト3の一角になりました。
ちなみに、知人に教えてもらった函館のトラピスト修道院のソフトクリームもベスト3の一角であり、何度も通いました。




もしかして札幌の車のデフォルトこれなの?



市電の駅の街灯。かっこよすぎる。
ラピュタの石にこんなマーク入ってた気がする。いや、ナウシカだったかもしれない。



中島公園で見つけたライト。

豊平館という洋館をライトアップするために設置されているっぽいですが、石の塊の上に置いてあるのがよかった。


11月

ヘルニアになった(今はほとんど治っています)。

たまたま東京に帰る用事があったので、ついでに日帰り手術を受ける。
日帰りといっても、術後はほとんど動けない。
アマプラで「沈まぬ太陽」をひたすら見て過ごした。

術後3日くらいでようやく少し歩けるようになり、リハビリを兼ねて自宅近くを歩くことにしました。

そこで、前から歩道橋の手すり玉が気になっていたことを思い出し、撮って集めてみることにした。










手すり玉には、思ったより色々な表情がある。

新しいもの、古いもの。つるつるしているもの、ざらざらしているもの。銀色のもの、黄土色に近いもの。
スノードームのようなもの、梨のようなもの、天体の表面のようなもの。

ちゃんと考えたことはないが、多分私はもともと球体が好きだ。

角度を変えて撮り直し、スノードームに見えるように立ててみた。











いい。だいぶいいぞこれは。

何かできそうな予感がする。ただ、ここからの展開が難しく、ここで止まっている。
ちょっと語らせてください。

①アングルがむずい
→完全な球体にするためには手すりが写ってはならず、下から見上げるようなアングルになる
②自分が写り込む
→金属なので撮っている自分の姿やスマホが写ってしまう。これはちょっといやだ。
③地域性がない
→街灯と違うところ。街灯のように、自覚的に商店街や街の特徴がデザインに反映されることはない。
④ぜんぶ球体
→カラスネットと違うところ。私は街灯の他に、カラスネットの形を集めたりしています。カラスネットはゴミの回収が終わった後、思い思いの状態でしまわれており、その形の偶発性に面白さを感じます。できあがった形を生き物や和菓子に見立てて遊んだりすることができます。でも、手すり玉はすべて球体。形に面白さを見出すことはできません。

①と②は、撮影上の問題なので私が少し頑張ればいい話。
しかし、③と④は表現の幅の問題というべきか、街灯やカラスネットと比べると、様式ががっちりと定まっており、あまり自由が利かない。
形や色のバリエーションをほとんど期待できないので、表情の面白さに全振りするしかない。もちろん、そこが魅力なんですが。
ただ、展開の余地があまり広くないといえばいいのか。

ということで、目下、撮りだめてひたすら並べていくしかないかなというところで止まっている。


12月

ヘルニアの手術から戻ってくると、季節が明らかに進んでいた。



石がいい感じに雪をかぶっており、それこそ和菓子のようだ。

北海道には「一年に降る雪の量は決まっている」という謎のジンクスがあり、例えば、12月は雪があまり降らなくても1月や2月にドカ雪が降って、最後には必ず帳尻が合うということらしい。

そして、去年の12月は「まだ雪が根雪になっていないから、雪が少ない」と、しきりに言われていた。
北海道(というか雪国?)では、地面の一番下で固まっていて冬の間融けない雪のことを「根雪(ねゆき)」というらしい。一年で、雪に関する新しい言葉を色々と知った。


1月

年末年始に帰省して、北海道にまた戻ってきた。

東京の冬がいかに良いものであったかを思い知った。
寒くて乾燥しているが、基本的にはいつも気持ちよく穏やかに晴れている。

しかも、暖房のない場所(家の廊下とか)に出るときは「ここからは寒いぞ」と覚悟を決めるのだが、その寒さが想定していたものより遥かに穏やかなものに感じられ、どうやら北海道の寒さに順応しかけていることに驚いた。




住んでいた家。

基本的に雪にはうんざりさせられるものの、たまにハッとするくらい美しい瞬間があります。
これも、仕事帰りに雪の降る景色がきれいだったので、思わず撮ってしまった。



1月下旬はものすごい雪が降った。ジンクス通り本当に「帳尻が合って」しまった。

雪かきは下手をすると、一日二回。
当然ながら雪が降っている間にしなければならず、ここで邪魔になってくるのがまたしても風。

あの、ディッピンドッツのアイスってあるじゃないですか。

一昔前に流行った粒状のカラフルなやつ。
北海道の雪は粒がさらさらとしていて、初めて雪を見た時はディッピンドッツだと思った。
風が吹くと、そのディッピンドッツの粒粒たちを巻き上げてくるので視界が悪くなる。これが地吹雪である。
雪かきをしている最中に地吹雪になると、「風っている!?」と半年ぶりにプリミティブな疑問と怒りに立ち戻る。



ついに頭がおかしくなって、ディッピンドッツにダイブして人型を作りました。一緒に雪かきをした同僚が少し引いていた。
きれいな人型を作るには、起き上がるときの体勢にも注意を払う必要があります。みなさんも覚えておいてください。

雪は節分辺りを境に落ち着いてきた。
北海道なのに、節分て本当に季節の変わり目なんだなあと思った。多分、今年だけ。

3月



北海道とおわかれ。一番好きだったかもしれない景色。
茶色と白と緑は、そのままケーキにできそう。

冬の山道は危ないけど、美しい。

車の運転は、DKスノーマウンテンみたいになるのかと思ったが、スタッドレスタイヤがあると割りと何とかなりました。スタッドレスタイヤってすごい。




カレーパンとドライブしているところ。

3月中旬になると、引越の準備で目まぐるしい忙しさになる。




引越前夜。この窓からいつも雪の様子を眺めていた。

さようなら、北海道。またいつか。



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王田土人

絵描き。幻想的なもの、幾何学的なもの、しょーもないもの、シュールなものなど好きです。コーヒー牛乳も好きです。

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