夢で見た街のこと

  • 更新日: 2018/11/20

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たしかこんな坂だった

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大人になってから、あまり夢を見なくなった。

あ、なるほど、大人になると夢って見ないんだーと思っていたら、どうやらそうでもなくて、みなさん今でも夢の中でいろいろご活躍をされていると言うではないですか。
自分が見ないものだから、そういうの全部嘘だと思ってた。大人の「昨日こんな夢みてさー」は、私は子供の心を忘れてないぞアピールみたいなやつだと思ってた。大人で夢占いとかする人は、二重三重にすごいなあとか思ってた。
でも見るものらしい。すみませんでした。おかしいのはいつも僕。おかしいぞ、と思ったら自分を疑っておけばだいたいあってる。

自分が大人になって、特に働き始めてから何故夢を見ないのか思い当たることはあって、入力信号が人と比べて少ないんだと思う。覚醒時にインプットした情報の整理が睡眠であり、夢がそのノイズであるという説をとるならば、僕の情報整理とか3分くらいで終わっちゃうんじゃないかしら。マイドキュメントにサンプル壁紙とかしか入ってないPCをウイルススキャンするあの感じ。えっもう終わった? もっかい押してみよ。あれ? 終わった? 嘘だあ~! みたいなやつ。

会社員時代、あまり気乗りのしない単純労働を、無の心で遂行することにわりと長けていた自覚がある。そのあたりのログがごっそり抜けていて、脳の公式記録には、朝変なサンドイッチを食って、夜はカレーを食った、くらいしか無い可能性。
これはこれで、便利な特性かもしれない。例えば脳スキャナーみたいなのが発明されて、僕の見た機密情報をKGBにスキャンされるピンチみたいな時に、多分びっくりされる。虚空。あるべきものが無いことは恐い。例えばのっぺらぼう。例えばメアリー・セレスト号事件。スキャナーを持つ手が震えるKGB捜査官。ぼけーっとしたぼく。そのあと僕は、あっと思い出したように、唯一の情報である変なサンドイッチについて、これが成城石井のパストラミサンドであることを伝える。

何の話でしたっけ。
そう、昨日、久々に夢を見たんですよ。何年ぶりだろう。

どっかの駅で降りたんだけど、駅前なのに突然坂が立ち上がる。
住宅街風の坂を抜け、幹線に出ると、後ろからドヤドヤと昼食へ向かうようなスーツの一団が来た。
一人が「この一旦下ってまた上る感じ、損ですよねー」と言って、全員が雑に同意していた。「うんうん」みたいな。谷底の駅のさらに向こうの台地から歩いてきたらしいんだけど、地形なんぞ毎日変わるもんでもないからきっと毎度お決まりの台詞なんでしょう。そういうの毎回言う奴居るよね。もう周りの「うんうん」を引き出すだけの合図。笛に等しい発言。ちなみに僕けっこうこういう発言しますよ。
そのあと、その人たちにうっすらついていって、食べたものがなんか旨かった。

と、まあ、このくらいしか覚えていないし、特に面白いことも起きなかったんだけど、久しぶりの夢だったしたぐり寄せるように反芻して、長期記憶に移し替えた。
それで、夢で散歩した架空の街の記録でもとっておこうかと思ったんだけど、そのうち、知らない街だと思ってたあの街、実はあるんじゃないか、どこだっけかなー、みたいなことを考え始めて。

街を特定するために鍵となりそうな情報はいくつかあります。
まず、谷に駅舎がある。あーまあ、これはよくある。むしろだいたいそうかもしれない。
駅前から坂が立ち上がる。これも結構ある。尾根に沿って線路が敷かれると、片方が急な斜面、というのはわりとある。
坂の途中が住宅街。そのうち幹線道路に出る。これもよくあるといえばある。
問題は次ですよ。スーツの一団が、昼食を求めて谷を越えて来た。降りて、上ってきた。これはちょっと有力な情報だと思う。
かなり忙しい地形だということ。
それからスーツ。住宅街だけでなくオフィスもある、ということ。これで外れる駅は多い。
あとその飯は、谷を越えるほど旨いということ。

今まで降りたことのある駅で、一個思い当たるとこがあって、翌日来てみた。




代々木上原駅。
10年位前に、数ヶ月くらいだけこのあたりで働いていた時期があって、それでなんとなく、ここじゃないかな的な。




あれ、代々木上原の駅に駅ビルのイメージ無かった。
アコルデ代々木上原だって。1993年からあったらしいんだけど、ぜったい無かった。ぜったいこんなのなかった!
調べたら2011年にリニューアルオープンしているので、多分、これのリニューアル工事中に来てたんだと思う。絶対そう! そういえばなんか工事してた気がする!

曖昧な記憶のくせに、否定されるとムキになって都合の良い解釈をしてそれが強い記憶として定着する様子です。ご査収ください。




ところで代々木上原とは小田急線の駅で、代々木公園の西に位置します。




駅は低地になって、これは宇田川が削ったものらしい。
小田急は南の尾根づたいに走っていて、明治神宮(代々木公園)を北へ迂回して新宿を目指します。
代々木上原の立地は尾根と尾根に挟まれていて、夢で見た街の条件を軽々とクリアしている。




たとえばここに、左側は駅そば線路沿いの道で平坦だけど、すぐ南の土地が急に高くなっているために右側が坂になっているY字路があります。
要は、いいY字路です。




代々木上原駅前といえばここに本屋があったんだけど無くなってた。
調べたら幸福書房といって、有名だったらしい。
何も知らなかったけど何度か立ち寄って、何か買った気がする。本的なものを。



ビルの看板はまだ幸福書房だった。2Fの不動産屋さんが今1Fに降りてきているのか。




駅には文教堂がある。




南側を目指そうとすると、すぐに坂が立ち上がる。
おう。
夢で見たのはこの感じであったので、まだ散歩も序盤ではございますが、もう、ここです
数年ぶりの夢で、出てきたのがこの坂か。特に、思い入れ無いんだけどな。もっとマシな記憶は無かったのか。

ここでおしまいにしてもいいんだけど、もうちょっと、昨晩の僕の軌跡を辿ってみる。




ちょっと脇にそれると細っこい路地が広がっていて、お店になってたり、人が住んでたりよろしくやっている。




このスペース、僕が新卒で押し込まれた寮より広い気がする。要る? ちょうだい?




意地でも作り直さない。













SMプレイ中かしら。恥ずかしいパイロンだこと!




広い道に出た。井ノ頭通りですね。
このあたりはオフィスも多くて、スーツ姿の人も多い。



具体的には、JASRACとかがある。
ロゴの下に伸びているのは著作権侵害者を狙い撃つJASRAC砲です。3門あります。



近くのカラオケ屋さんとかは戦々恐々だったりするのかな。




そこから南はまた上り坂の住宅街になっている。夢だと階段もあった気がするけど、そのあたりはほら、夢だから。
高いところには今も昔もお殿様が住みます。このあたりは高級住宅街です。そういう意味でも夢の。




カッコ書きの強調って、なんかイラッとするな。そこまで強調しなくてもわかるわ、みたいな、馬鹿にされた感じがある。
僕もメールで、どうしても見落としてほしくない単語をカッコでくくることたまにあるけど、こんなイメージか、やめよう。
気づき。気づきの看板。




赤文字が晩年のそれじゃないですか。ちょっと! 魂抜けかけてますよ!




代々木上原教会ですって。



教会の直近のイベントタイトルが「2018年総ざらい」なのが良かった。




縦に積んだの?




高級住宅街進んでたら急に店舗みたいな建物があってびっくりする。
なんで!?



ナカちゃんデース。解説するデース。
上原仲通り商店街。駅の方からゆるく商店街が続く道もあって、君はそこにぶつかったデース。
こんなしゃべり方かどうかは知らないけど。




また広い道に出た。
奧に見えるこんもりは東京大学の何かで、周りには低階層のマンションとオフィスが混在している。
いろいろな種族が歩いている。
このあたりで働いてたことがあった。会社を辞めたあとしばらく暇してたんだけど、先に辞めた同僚が会社を作ったというから誘われてちょっとだけ手伝った。
やっていることは最初はセンスがあって、うまくやってたらなんかあったかもしれないなーとか思う。でもとにかく意見が合わなかった。末期には支給されたイケアのちゃんと作ってもガタガタになるテーブルにすらイッライラして、いや、ちゃんと作ってもガタガタになるテーブルは日常でもイッライラするけど、僕はただの手伝いであったしここへ来なくなった。その会社もどうなったか知らない。それ以来代々木上原には来てないし、率先して降りたい駅ではなかったんだけど、なんとなく、夢の回収に来た。

とにかく、夢で見た住宅街からの幹線道路。これもクリア。
残るは、うまそうな食べ物なんだけど。




ベアブリックが並んでるお店、何のお店かは知らないけど、これ10年前もあった。
だからこれからもきっとあり続ける。




それで、最後の謎、夢でスーツの集団と僕が行ったお店はまったく思い出せないんだけど、ここ、ということにしたい。
とても良い二郎インスパイア系のラーメン屋です。
いやあ、正直、西原とか幡ヶ谷のほうからご飯食べるためだけに上原まで歩くかなあ、というのは思ってて、こればっかりは苦しいな~! そんなこと無いんじゃないかな~! と思ってたんだけど、二郎系ファンは谷とか軽々と越えてくるイメージがある。ここってことで、いいんじゃないですかね。

ただですね、僕いまおなかすいてないんで行かないです。なんか記事的に、とかそういうのないんで、すみません、今日は行かないです。でも皆さんは行ってください。

超久しぶりの夢が、どうして代々木上原だったのかちょっと分からないんだけど、先週、ふか子さんが愛が止まらない感じで下北沢のことを書いていて、ああ僕も、10年前に代々木上原からシモキタの王将まで歩いてたなあ、そのあと変なバーに連れてかれたなあ、なんて、そんなことを思い出したからだと思う。小田急沿いに、愛が伝染した。
いや、僕と代々木上原は10年前に袖振り合ったくらいの薄い縁で、愛とかではないんだけど、夢きっかけで来る散歩も、たまにはいいんじゃないですかね。




僕の夢で覚えてるのはここまで。
そんなわけで、あとは惰性で駒場東大前まで歩いて帰る。

このあたりに、たまに妻に買って帰ってたパン屋あったんだけどな。



このお店はベーカリーとしか書いてないけど、このあたりだった気がする。お店が変わったかどうかは分かんない。




駒場公園。



ほら。今日やってないんですよ。こういうの得意なんです。




立派な邸宅の玄関に、犬がおしっこをしている絵が飾られている、と考えてみてくださいよ。
異常じゃないですか?




かえるが「かえ郎」なら、「五時だ、かえろう」にして、象は要らなかったのでは?
かえる蔵って何だよ。

というのを、10年前も思ったというのを、今思い出した。何も変わっていない。俺も、かえる蔵も。




これもいいY字路。Y字路というか、U字?



柵の、外部世界を全く信用していない感じが良い。




壁にお皿がはってあった。




竹取物語のおじいさんはこういうの見たら「またっ!」って思うかな。




今歩いてた道は「駒場通り」って言うらしい。



目黒区のマーク、マイナスドライバーで開きそうだな。




駒場東大前駅が近づいてきた。
さっきから東大生みたいな人がいっぱい歩いている。




脳に良い東大パスタだって。駅前はやっぱそういうのあるんだ。
東大生、これ見て「あっ脳に良いんだ食べよう~」ってなるかな。
僕の思う東大生は、一周回って食べててほしいですけど。




その下のメニューは痺れ。
脳に良い、からの、痺れ。東大生をどうしたいんだ。




おやすみなさい。






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ヤスノリ

街の歪み研究家。1年に100駅以上降りる。駅を制覇する系のアプリは本気出せば結構なとこまでいくと思うのだけど、毎回起動を忘れる。

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