ディズニーの「ファストパス発券機」という遺跡〜ランド編〜

  • 更新日: 2023/03/16

ディズニーの「ファストパス発券機」という遺跡〜ランド編〜のアイキャッチ画像

思い出の地は形を変えていく

  • hatebu
  • feedly
  • rss

「ファストパス」と聞いて何を思い浮かべるだろうか。「ディズニーのアレだよね!」と思う人、「そんな昔の話をいまさら」と思う人、いろんな人がいるだろう。

私にとっては「ディズニーでの青春」が詰まった場所だった。そんな場所が消えようとしている。いや、すでに消え始めている。完全に消えてなくなるまで秒読みだ。今のうちにインターネットに残さなければ。


ファストパスとは



ディズニー公式サイトより:https://www.tokyodisneyresort.jp/tdl/guide/fastpass.html

「まずそもそもファストパスとは」と説明しようにも、ご覧の通り公式サイトの記載も跡形なく消えているため、引用のしようがない。こまった。

かんたんに言うと、ファストパスとはディズニーリゾート園内における優先案内のチケットだ。人気アトラクションの近くに発券機が十数台並んでいる。入場券をかざすことで、時間指定の優先チケットを無料発券できる仕組みだ。

ちなみにファストパスには「次にファストパスを発券できる時間」が併記してあった。だいたい2時間後くらいだった気がする。

つまり「入園したら片っ端からファストパスをとる」という手段は取れないのだ。これが中高生のころの私たちにとっては計画性の問われるパズルのようで、楽しみのひとつになっていた。


なぜファストパスは消えなければならなかったのか

今現在、公式サイトには「当面の間休止」と書いてあるが、ほぼファストパスの復活はないだろう。理由は2つあると考えられる。

1つ目は、もともと推し進めていた公式アプリの利用がコロナ禍で一気に促進されたことだ。ファストパスの代替となる「スタンバイパス」の取得はもちろん、チケット購入から園内の待ち時間確認、お土産購入まですべて一貫してこれでできてしまう。まさにDX化って感じ。ファストパスで長蛇の列ができるより、スマホからワンタッチでスタンバイパスを取得できたほうが、ゲストもキャストも楽なのは頷ける。
公式アプリ:https://www.tokyodisneyresort.jp/tdr/app.html

2つ目は、その公式アプリ内で、有料の優先チケット(プレミアアクセス)が発券できるようになったことだ。西のテーマパーク、USJはもともと有料優先チケットがあったが、ついに東のディズニーも取り入れ始めた。

つまり、もともとあったDX化の流れと、コロナ禍というタイミングと、「お金を払ってでも確実に乗りたい」という需要が、ぴたっと合致した。

1枚1枚手作業で、現地で紙の券をかざして発券するなんていう前時代の仕組みは、afterコロナにおいてお役御免になってしまったのだ。

そんな前時代の施設が、ディズニー内にはまだギリギリ撤去されずに残っている。前置きが長くなったが、ファストパス発券機の現在の姿を見ていこう。


スプラッシュ・マウンテン



ディズニーランド入口から見て最も最果てにあるファストパス発券機。ランド園内の地図が頭に入ってないと、開園直後に一直線に向かうことは難しい。

私はというと、中学3年生のころにはディズニーの地図が全て頭の中に入っていたので、よく友だち全員分の入場券を持って発券しにいく係を買って出ていた。その間みんなは他のアトラクションに並んでいるので、何とかガラケーで連絡を取り合い合流するお決まりの流れがあった。

そんなスプラッシュ・マウンテンの発券機の看板には、小さな小動物用のドアがついていた。





このエリア(クリッターカントリー)にはたくさんの小動物が住んでいる(設定)なのは知っていたが、ファストパスの看板にもドアがあったとは。看板の時間表示もこの家に住む小動物が、よいしょよいしょと更新してくれていたのかもしれない。




看板の裏にはちいさなポットらしきものがあった。フタは開かないので、実用的なものではなくオブジェだ。こんな裏側にまでわざわざオブジェを置くのはさすがディズニークオリティー。




役目を終えたファストパス発券機はカバーに包まれている。単なるカバーではなくて、ざくざく布を縫ったような縫い目がある。動物が仕立てたのかもしれない。




木の屋根は所どころ補修されているようなデザインだった。とことん手作り風味だ。


ビッグサンダー・マウンテン



スプラッシュ・マウンテンほどは混まない印象なので、朝イチではなく日中に発券していた思い出がある。絶叫マシーンが苦手な私にも優しめのジェットコースターだ。

そんなジェットコースターのファストパス発券機は……





ベビーカー置き場とベンチになっていた。

ベンチはもう、簡易的なものではなくしっかり重厚感のあるものだ。「一時的にこの有効スペースを利用していますよ」というノリではなく、「もうここはベビーカー置き場兼休憩所なんだ」という宣言をされたような、もの悲しさがある。

そんなお役御免の発券機周辺を観察してみる。



スプラッシュ・マウンテンとは異なり、こちらのカバーはシンプルで単色だ。

ふと、待ち時間が表示されていた看板部分の裏を見ると……



「DYNAMITE」と書いてあるではないか!

この辺りは炭鉱の町(という設定)。鉱山を掘り進めるためにダイナマイトを使うこともあっただろう。その空き箱の再利用をしているのかもしれない。これまた芸が細かすぎて驚くし、発券機周辺をうろうろできる今だからこそ見えた発見だ。


ホーンテッドマンション



お化け屋敷のような名前だが、全く怖くない陽気で愉快なお化けたちのマンション。丸一日ディズニーにいると、お昼くらいに「そろそろ取っておくか」となるファストパス。




ほんとうは近くで見たかったけれど、この期間はちょうど改修中でファストパス発券機のエリアにも入れず断念。




だれもいないホーンテッドマンションは暗く静かで、ほんとうに墓地のようだ。

もうこの記事を書いているときにはリニューアルオープンしているはずなのだけど、ファストパス発券機が撤去されていないかだけが心配だ。

検索してみる限り「ファストパス発券機が撤去された」なんてニュースは見当たらない。けど、それはもうだれも気にしていない過去の存在だからであり、なくなったところでだれも話題にしないのかもしれない。近いうちに自分の目で存在を確認しにいかなければ。


プーさんのハニーハント



大人気アトラクション。中高生時代は普通に並んだら3時間待ちもざらだったため、「どのファストパスを取るか」の計画を練るうえで、「プーさんのハニーハントに乗るのか」は必ず事前判断する必要があった。

そんなファストパス計画のキーになっていた大事な発券機は、大きな大きな変化を遂げた。私が「ファストパス発券機をインターネットに残さねば」と思ったのは、ここの光景を見たことがきっかけだった。




完全なるベビーカー置き場である。ファストパス発券機すら置いていない。

……いや?





なぜか1個だけ、お情けのようにおいてあった。なぜ?

せっかくなので後ろへ周ってみる。





本邦初公開かもしれない。だれも覗いたことがなかったファストパス発券機の中身。木箱のなかにはサーバーのようなものが入っていた。プーさんらしからぬデジタルだ。

たぶん、このファストパス発券機が撤去されるときが、ディズニーが本腰を入れてファストパスを撤廃するときだ。最後の1つがなくなるときまで見守っていきたい。


美女と野獣 “魔法のものがたり”



2020年にオープンした新アトラクション。なんと、すでにコロナ禍に入りファストパスが使われなくなっていたにも関わらず、ファストパス発券機は立派に構えられているという、ねじれ現象が起きている。

私も、だれも、ここのファストパス発券機で発券した思い出はない。コロナがなかったら、この発券機を使う機会があったんだろうか。どっちにしろ時代の流れで使われることはなかったんだろうか。

そして悔しいことに、この最新かつおそらく最後のファストパス発券機はどこから撮っても映える。意味のない施設だけど、景観として優秀なのだ。





発券機にはもちろんカバーが掛かっていた。元々どんな姿をしていたんだろう。





パッチワークのようなデザインは、美女と野獣のヒロイン、ベルが住んでいた田舎町のイメージにぴったりだった。


バズ・ライトイヤーのアストロブラスター



小さい頃あんまり乗った覚えがないな……と思ったけれど、私が小学校4年生のときにはもうオープンしていた。なんでだろう。大人になってからのほうが、こういうシューティングゲームが楽しい。

そんなバズ・ライトイヤーのファストパス発券機は通常の列のすぐそばに、謎空間として残っている。





矢印の下のファストパス発券機はもう使われていないので、このでかい青矢印はどこも指していない。意味不明な案内板になってしまった。




同じく子ども向けアトラクションであるプーさんのハニーハントでは、完全にベビーカー置き場と化していたけれど、こちらはなぜかファストパス発券機エリア外にベビーカー置き場ができていた。せっかくならこのスペースを活用したらいいのに。


スペース・マウンテン



老舗ジェットコースター。スプラッシュ・マウンテンやビッグサンダー・マウンテンと比べて入口からの距離が近いので、「ファストパス取得難易度」は低かった。初心者向けのファストパスだ。

ファストパス発券機、どこにあるのかなときょろきょろしていると……





完全に列に埋まっていた。もはや並ばないと近寄ることができない。

あれ?今となってはこういう列の並びになんの違和感もないけれど、昔はここにファストパス発券機があって、通常の列はどんな風に並んでいたんだっけ?きっとファストパス発券列とは混じらないように並んでいたはずなんだけど、全く思い出せない。街中の新築ビルを見て、元々そこに何が建っていたか思い出せない現象に似ている。


スター・ツアーズ:ザ・アドベンチャーズ・コンティニュー



びっくりした。これがスター・ツアーズのファストパス発券機だということを認識していなかった。なんせスター・ツアーズのアトラクションの場所から離れている。スペース・マウンテンに隣接しているので、初見ではまずスペース・マウンテンのファストパス発券機だと思うだろう。

そもそもあまり並ぶアトラクションではないので、ファストパスを発券した覚えがなかった。アトラクションができた最初のころは、けっこう人気だったのだろうか。




ここはほんとうに、「虚無感」が段違いだ。





ディズニーランドの端っこで、だれも見ることも、気にすることも、ベビーカー置き場にされることさえない。キャストが出入りするくらいだ。

言わば「ディズニーで一番必要とされていない場所」は、無機質で冷たく、時が止まったような感覚を覚えた。


モンスターズ・インク “ライド&ゴーシーク!”



私が中学3年生のときにできたアトラクションだ。バズ・ライトイヤー同様、子どものころはあまり楽しみを見いだせていなかったけれど、今となっては大好き。子ども向けアトラクションは一周回ってアラサー女性に刺さるものなのかもしれない。




プーさんのハニーハントに倣い、こちらもすっかりベビーカー置き場の装いだ。モンスターズ・インクのキャストさんがベビーカーの整頓をしている。「ベビーカー置き場」としてのこの場所の管理も、すっかり仕事の1つに組み込まれているということが伺えた。




写真だと伝わりにくいが、このファストパス発券機、どのアトラクションの発券機よりも背が高い。180㎝くらいあるんじゃないだろうか。子どもにとってはけっこう圧迫感があったのだろう。


思い出のファングッズ「ファストパス発券機フィギュア」

さて、ディズニーランド内に残る全てのファストパス発券機を回りきったところで、ふらっとモンスターズ・インク近くのお土産屋さんに入った。おもちゃ中心のお土産屋さんだった。

ふと棚の片隅に目をやると……





なんと、ファストパス発券機がフィギュアコレクションとして販売されているのだ!!!!

あまりにもこの日のディズニー巡りのテーマと合いすぎていて、全6種が入ったコンプリートボックスを大人買いしてしまった。5,000円くらいする。



なかには手のひらサイズのファストパス発券機が6つ入っている。





左から、スペース・マウンテン、ホーンテッドマンション、タワー・オブ・テラー(シー)、バズ・ライトイヤー、ソアリン(シー)、海底2万マイル(シー)。

ディズニーランドから3種、ディズニーシーから3種といった具合だ。

かわいい!!!かわいすぎるぞ!!!!これを家で毎日眺めれば、ファストパス発券機の存在を忘れないでいられる。

そして何より、ディズニー公式がファストパス発券機の存在を忘れていないことが伝わってうれしかった。お土産にするくらいには需要があることを分かっているんだろう。そうだと信じたい。

近いうちに、ディズニーシーのファストパス発券機も見に行かなくてはいけないな。みなさんも今のうちに。遺跡はいつ取り壊されるか分からないから。









このサイトの最新記事を読もう

twitterでフォローFacebookでフォロー
  • hatebu
  • feedly
  • rss

ぼっちのazumiさん

ひとりでふらふらと歩いたり自転車に乗ったり電車に乗ったりします。埋め立て地の隅っこや、休日のオフィス街、ディズニーの木陰や、だれもいない海岸などが好きです。東海道ウォーカーです。

関連する散歩

フォローすると最新の散歩を見逃しません。

facebook      twitter      instagram      feedly

TOPへ戻る