朝焼けを駆けるサラブレッド

  • 更新日: 2024/07/25

朝焼けを駆けるサラブレッドのアイキャッチ画像

今から一緒に会いに行こうよ。朝焼けを駆けるサラブレッドに。

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こんばんは、一流です。
今回は神奈川県のJR川崎駅に来ています。

写真をご覧いただくとずいぶんと辺りが暗いのがよく分かるかと思います。
それもそのはず。現在の時刻はなんと深夜の4時近く。周囲は暗闇と静けさに包まれています。



日中は多くの人で賑わう川崎駅構内も人の姿はほとんどありません。改札口ももちろん閉鎖中です。



刑事さん、私は事件のあった日は深夜4時に駅にいたんですよ。この写真が何よりの証拠です。なんて。



エスカレーターも封鎖されており、頼れるのは自分の脚のみです。


なんとも寂しい時間帯ですが、今回は敢えてこんな遅い(早い?)時間から散歩を始めたいと思います。

その理由は...『朝焼けに駆けるサラブレッド』に会いに行くためです。


これが一体どういう意味なのかは、歩きながらゆっくりとお話ししていくとしましょう。



それでは散歩スタートです。
あらゆる場所を散歩してきた私ですが、さすがに深夜4時に街を歩いた経験はほとんどありません。
川崎駅前ほどの規模の街であればこの時間でも真っ暗ということはありませんが、人や車がほとんどいない感覚は普段の散歩では味わえない新鮮さです。



地下街も完全封鎖です。深夜の地下街ってめっちゃ怖そうだけど見てみたいかも。Backrooms的な雰囲気がありそう。



駐車場の前を歩いてみると、



「空」でも「満」でもない。全てが「閉」でした。



これはラゾーナ川崎プラザの裏側にある「女躰(にょたい)神社」という気になる名前の神社。深夜の神社というのもまた独特な雰囲気がしますよね。



ここはその名の通り女性の悩みを解決してくれるという神社だそうです。
なんでもかつて水害に悩まされていたこの地で、一人の女性が村人たちのために川に身を投じ水神様の怒りを鎮めたという逸話があるそうです。立派すぎる。そりゃ神社も建ちますわ。



そんな神社を通り過ぎて、今日の目的地であるとある場所へ向かって歩きます。



一見するとなんの変哲のない道を歩いていると...



人感センサーが反応したのか一気に厳戒態勢に変貌。
急にパニック映画のワンシーンに引き込まれたみたい。



赤い光からそそくさと逃れ深夜の住宅街を歩きます。なんだか悪いことしてる気分。



さて、そろそろ今回の散歩の目的についてお話ししていきましょう。

冒頭で申し上げた通り、今日は『朝焼けに駆けるサラブレッド』に会うためにとある場所へ向かっています。
ここでいうサラブレッドとは何かの比喩などではなく、皆さんご想像の通り競馬などで走る競走馬のことを指しています。

果たしてサラブレッドに会いに行くとは一体どういうことなのでしょう。


ところで、ここ川崎には川崎競馬場という地方競馬の競馬場があります。川崎駅からは少々離れたところにありますが、平日のナイターのレースを中心に盛り上がりを見せているほか、商業施設なども併設され多くの人の賑わいを感じられる競馬場です。

そんな川崎競馬場にはとある特徴があります。それは日本にある競馬場で最も敷地面積が狭いということ。


敷地面積が狭いと何が起きるのか、というと...。




うわ、ちょっと待って、電柱に思いっきり名前を隠されてるコインランドリーだ。



めちゃくちゃ暗いけど24時間やってるみたい。自分で電気つけるのって勇気いるだろうな。



その隣にある銭湯。今度は明るいうちに来てみたいです。



この住宅街を抜けて目的地へと急ぎます。



深夜に見るちっちゃいポストっていいな。



大きな公園に辿り着きました。



忘れられたボール。ここで一晩ご主人様を待つのはさぞ寂しいでしょう。
それとも誰でも使えるパブリックなボールだったりする?



深夜の公園というのもまた特別な雰囲気がある場所の一つです。
昼間の賑わいと対照的な寂寥感がある一方で、日が昇ればまた活気が戻ってくるという確かな予感が共存していてなんだか不思議です。



数時間後に子供が遊んでいる姿が目に浮かびます。絶対楽しいもんね、ここ。



しかし今はシンとした空気が張っている。世界に一人だけみたいな気分になりますね。



公園の向かいにある団地。
なんだか迫力があるように見えたあなた、お目が高いかもしれません。



敷地内に咲き誇る花や



立派な木。



そしてこの独特な構造の団地。



ここは知る人ぞ知る神奈川の名建築、河原町団地という巨大な団地群です。

この団地はかつて丹下健三氏の研究室にも所属していたという大谷幸夫氏により設計されたもので、近未来やSFの世界観を感じさせる逆Y字の景観は竣工から50年近くたった今も多くの建築ファンを魅了しています。いやー、やっぱりかっこいいなこの構造。




すみません、そういえば話が途中でしたね。どこまで話したんだっけ。
確か競馬場の敷地面積が狭いという話だったかと思います。競馬場の面積が今回の散歩とどう関係があるのか、というところがまだでしたね。


川崎競馬場は面積が狭いが故に、その敷地内に競走馬の練習場や厩舎が併設されていません。代わりに少し離れた多摩川の土手沿いの河川敷にそれらの施設が作られており、競走馬たちは競馬場内ではなくその河川敷で練習をしているそうです。
そしてその練習は深夜から早朝にかけて行われいるそうで、なんと誰でも見学ができるというのです。


さて、ここまで書けばもうお分かりでしょうか。

今私が目指しているのは河川敷にあるというその練習場です。
本日は朝焼けの中、栄光の未来に向かって練習している馬たちの姿、すなわちサラブレッドを見に行こうという散歩だったのであります。




さあここまで来ればその河川敷まではあと少し。



夜の公園part2。



尻尾に「dolphin」のタトゥーを入れている親切なイルカ。



河川敷に着きました。いやぁかなり暗いですね。



いや待って。ちょっとこれ暗すぎます。急に怖くなってきたな...。

本当にこの先に馬が走っている場所があるんでしょうか?
実はそれは都市伝説で、信じ込んで訪れてしまった人たちはみんな深夜の河川敷で失踪してたり...みたいな話、無いですよね?



あれ、向こうの方が何か明るいような...。



いや、確かに明るいぞ!河川敷の方を照らしているように見えます。



なんだか競馬場のコースっぽいものがあるぞ!?



待って待って!!!あれ...馬じゃないですか!?!?
土手の道を馬が歩いている!?(興奮してるのでブレブレ)



うわー!本当に馬だ!!!土手に掛かる信号を馬が渡っています!!職員の方がたくさん付いて馬を一頭一頭確実に渡らせている!
緑のおばさんに見守られながら信号を渡る小学生みたい!



確かに本物の馬です...。よかった、都市伝説じゃなかったんだ...。
しかしこんな間近の距離で競走馬を見れるとは驚きました。競馬場のパドックよりも近い距離感です。すごい迫力。



馬横断注意の標識もあります。これはかなりレアですね。



お、ちょうど空が明るんできました。綺麗な空色です。
私もたまに競馬場でレースを見ることがあるのですが、その時とは趣が全く違います。競走馬はどんな空色も似合いますね。



この練習場は一周1200mのダートコースを基本としており、その他にも複数の馬が同時に準備などができるように細かい道が入り組んだような作りをしています。



見てください。なんと美しい景色でしょう。これぞまさしく求めていた『朝焼けを駆けるサラブレッド』。
真っ暗な街中を散歩した甲斐があったというものです。



おーきたきた!目の前を走り抜けていく!!行けーー!!差せーーー!!!(言ってみたかった。)



いやー早い!!早すぎて写真がブレちゃいます。
しかし朝焼けの色合いと馬の疾走感が感じられるいい一枚になりました。河川敷の練習場ならではの写真です。



普段のレースと違いそれぞれのペースで練習してるのがいいですね。馬たちの個性や性格が見えるというか。レースとは違うオフの感じがして肩に力が入らず見られます。

競馬場に行った時はパドックで馬たちの様子を見ては「黒い馬ってかっこいいな〜」とか「あいつ興奮してる!」とか「なんか表情しょげてない?」とか思いついたことばっかり言ってる私ですが、みんなこんな陰の努力を乗り越えてきていたんですね。いつも適当な言葉を投げかけていてごめんなさい。



なんとか馬たちにピントを合わせられました!左側の赤いメンコ(顔に付けているマスク)の馬が気になってます。

こんなにかっこよく走っているのに馬の名前がわからないのがとってももどかしい。思い入れができつつあるからいつかレースに出たら馬券を買ってあげたいのに。がんばれ赤メンコくん!名前教えて!



お、いよいよ本格的に日が登ってきました。
赤メンコくんは練習を終えたようで帰ってきているのが見えますね。



見てください、こりゃいい〜景色だ。やっぱりたまには早起きもしてみるもんですね。

競走馬には基本的に寒さに強く暑さに弱いという特徴があるため、この場所に限らず練習は早朝から朝方にかけて行うケースがほとんどだそうです。
馬たちもそうですが、騎手やスタッフの皆さまもこんな朝早くからお仕事本当にお疲れ様です。毎日のようにこの練習をされていると思うと頭が下がります。



馬たちの駆ける姿を眺めているとなんだかしみじみしてきます。かの名馬たちにもこういう時代があったのかと思うと朝焼けが心に染み渡る...。
もしかしたら競走馬たちの原風景はこの朝焼けの光なのかもしれませんね。



あ、赤メンコくんだ!いい走りしててかっこよかったよ〜お疲れ様!
練習を終えた馬はまた信号を渡り厩舎へと戻って行きます。



そして入れ替わりでまだ練習をしていない馬たちが次から次へと河川敷に向かいます。お行儀よく一列に並ぶ姿が愛おしいですね。


競走馬たちは牧場で生まれた後、6ヶ月頃には乳離れして1歳ごろから人を乗せる訓練を始めるそうです。そしてこの練習場で行うようなトレーニングを行うのは2歳ごろ。ということはさっきの赤メンコくんも他の走っていた馬たちも2歳前後ということになります。

いやー、2歳って。2歳ですよ2歳。みんな2歳の頃あんなに速く走れました?
私が2歳の頃なんて泣いて寝るしかしてなかったのに、サラブレッドたちは早朝から練習に励んでいるんです。本当に立派なものですね。


この早朝練習はほぼ毎日のように深夜2時半ごろから朝9時ごろまで行われているそうです。
ただ河川敷での練習ということでやはり台風による水没などのリスクがあることから移転の話も浮上しているらしく、今回のような景色が見れる期間も残り少なくなっているかもしれません。

将来の栄光を夢見て走る馬の姿を見たい方はぜひお早めに夜中の河川敷を訪れてみてください。



さて、今の時間は7時すぎ。
ずいぶんゆっくり馬たちを眺めていましたが、今日という1日はまだ始まったばかりです。



今日はどんな1日にしようかな。健気ながらも立派な馬たちの姿を思い出しながらのんびりと家路に着くのでした。





おわり





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一流

歩くことに特化した足を持っています。東京を愛し東京に愛される男を目指して。

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