谷保を味わう散歩会レポ
- 更新日: 2025/03/13
直売所の野菜、生で食べがち
きっかけは、インターネットでクナーファが紹介されており、食べてみたくなって谷保に足を運んでみたことだった。クナーファとはとても甘いシロップのかかった中東の伝統的なお菓子だ。ケーキのような見た目で、甘さとさっぱりさ、生地のサクサクとチーズのモチモチが両立している。日本では販売されていることは稀で、中東のレストランなどでしか食べることができない。クナーファの店は、国立駅が最寄りだと紹介されてはいたものの、私の家からだと南武線の利用の方が便利であるという理由だけで谷保駅で降りた。しかし、駅を降りた瞬間から、この場所に満ち溢れる生活の匂いがとても魅力的に感じた。一目惚れというのか、ここで散歩会を開いてみたいと考えた。

谷保駅に飾られたプランター。日当たりの良い場所で、手入れされている。
クナーファ屋さんは「富士見台トンネル」という日替わりで運営されるスペースで毎週水曜日に開かれている。商店街のある団地の側にある、アットホームで居心地の良い空間で、キッチンとカウンターの距離が近く、スイーツを作るところがよく見えて、生活を感じるような距離の近さだった。それを感じることでクナーファの味が心に残るように感じて、とても印象深い出来事だった。
そんな距離だからこそ、クナーファをこの店で作る山田柊さんとカウンター越しにお話しすることができた。私の中には、食を通じてパレスチナをはじめとする中東を知るということへの疑念があった。それを友人に話すと、それは消費の態度をとることに繋がるからではないかと言っていた。そのことについて質問をした。柊さんの答えは「この町に住む人々の生活の中にクナーファがある、ということを目指している」という言葉だった。
そして、彼は実際に中東の人道支援に携わった過去があったと話した。そして2023年の1月に実際にパレスチナでスイーツ作りの修行をして店を開いたという。彼はこの場所でクナーファ屋を始めて、彼の中でパレスチナとの距離は寧ろ近いものになったと話していた。例えば、食材が手に入るかな?といった心配。その言葉は私の中で印象深いものだった。一見、人道支援の方が直接的だが、彼の生活の一部になると、ずっと思い続けるのだということが...

そして柊さんは小鳥書房という本屋を教えてくれた。若い女性の方がやっている本屋であり、古本と新書の販売を行うほか、出版社でもあるという。小鳥書房の方へ足を運ぶと昔ながらの商店街があり、肉を買う住民の姿が見えた。書房の二階には小さな図書館があって、そこは都市や場所に纏わる本が沢山置かれていた。そこにはおじいさんと、かける君という17歳の男の子が二人で話をしていて、どうぞ、と迎えてくれた。二人は映画を町で上映する話なんかをしていた。勇気を出して話しかけてみると、そこでは「市民の力ででき上がったまち、それが国立」という言葉を聞いたのだった。その言葉に私はグッとくるものを感じた。
ある日、地域住民と話した際には、「障害者があたりまえに暮らすまち宣言」というものが平成15年に採択されたものの、実際にはまだ手が届いていない部分も多いのではないかという声が上がった。例えばそれは、社協による子ども食堂には障害者用の席がなく、バリアフリー化はされていないことや、国立駅舎の北側の入り口は車椅子が通れないこと、手話の条例はできたが、国立市には手話通訳者が少ないことなどを彼らは指摘していた。しかし、だからこそ「自由に勝手に(自分たちで)やる」のだという言葉も聞くことができた。
そして、後日かける君とのリサーチ(彼は国立の出身で、子ども食堂案内所なるものを運営し、起業家として活動している。また、彼自身が子ども食堂でボランティアをしている。小さい頃から自然に親しんで来たため生態系問題に詳しく、自らが谷保の自然で遊んだ経験を元にこの町を紹介してくれた!)、クナーファ屋さんである山田柊さん、コトナハウスの管理人鈴木幹雄さんの協力のもと散歩会を開催する運びとなっていったのだった。

昭和レトロな小鳥書房さん

小鳥書房の斜め前にあるコトナハウス。富士見台トンネルと同じく、ここもまた、食事スペースとキッチンスペースがひと続きになっている。シェアハウスは入居者募集中。
さて、2024年10月SUUMO調べでは谷保がなんと「住み続けたい街」(東京版)一位になったという。(suumo_2024)その理由の中には様々な世代がチャレンジしやすい、というものがあるが、ここまで紹介した富士見台トンネル・小鳥書房・コトナハウスはどれも若い世代が中心となって盛り上げている実験的なスペースであると同時に、子供から高齢者まで幅広い世代にとっての拠り所になるような場所である。この記事では、そんな谷保の「住み続けたい」理由を解き明かしてみたい。
【11:00 コトナハウス前で集合】

コトナハウスのあるダイヤ街商店街は1965年から今に続く。まだまだアクティブな明るい商店街だ。

天候に恵まれ、温かいので、自己紹介は商店街前にある谷保第一公園で日向ぼっこをしながら。谷保の住民の皆さんには谷保の好きなところを伺ってみた。車椅子ユーザーである山ちゃんから、「人が優しいところ」という言葉があった。私の知人のほとんどは谷保に来るのが初めてだというのに、早速谷保駅周辺のお気に入りポイントを見つけて、話してくれた。自己紹介は大いに盛り上がった。また、この時私の友達であるミソが自分が留学生であることを明かしたことも個人的に強く記憶に残った。

出発!

素敵な八百屋さん。

これは私が好きな谷保スポット。手作りアルミ缶の提灯が風でくるくると回る。

面白いものみっけ。こういったものをジマーマンさんはしょっちゅう見つけて私に教えてくれた。彼は先頭がよく似合っていて、私は時折彼に前を歩いて貰っていた。

ラーメン屋に隠れているカエル。

歩き出して早10分のところで、スナック水中のママさん(坂根千里さん)が赤ちゃんをあやして散歩しているところにばったり会って立ち話をした。(プライバシー保護のため、ママさんとお子さんが映らない画角の写真を選んだ)散歩会参加者である石井君は、谷保の住民ではないはずなのに、どうやら彼女と知り合いだったみたいで彼が真っ先に彼女に話しかけていた。坂根さんは2022年3月に一橋大学を卒業し、卒業という形で閉店する「すなっく・せつこ」を継業。彼女の店・水中は女性一人でも入りやすいカフェのような雰囲気がある。
ちなみに水色の壁は子供服のリサイクルショップで、ここもまた私のお気に入り。この店沿いの道には地域の人々のための食にまつわる店舗が多く、スナック水中はもちろん、町中華や弁当屋、子ども食堂もある。

一台しか停められない駐車場。
【11:35 谷保天満宮】

最初の目的地は東日本最古の天満宮であり関東三大天神と呼ばれる谷保天満宮だ。万灯行列やどんと焼き、獅子舞といった歴史的な行事が引き継がれていることも、かつて谷保村だった時代の記憶を今に引き継ぎ、コミュニティ作りに一役買っている。

最近までは湧き水が湧いていたものの、秋頃からは見られなくなってしまったようなのだが、歴史的行事の保存のみならず、緑豊かな境内は自然も保存している。

秋晴れのコントラストが美しい。

牛の頭を撫でる。私は今日の散歩がうまく行きますように、とみんなを代表してお賽銭をしてみた。

神社の奥に池があって、ここにも独自の生態系が存在する。亀や小魚の姿も確認できる。

神社の横の用水路も綺麗だ。

毛虫を発見。私がリサーチ中、谷保で編み出した遊びがある。谷保の道にはしょっちゅう何かの幼虫がいて、それが無事に道を渡りきるのを見届けるという遊びだ。自転車なんかが来ると私は幼虫のそばに立って轢かれないようにする。
毛虫好きのひなちゃんに、「好きそうなのがいるよ」などと声をかけていると、トラックがやって来た。みんな思わず、「あーっ!」みたいな声をあげたので、運転手さんはびっくりして、どうかしましたか、と降りてきた。「け、毛虫が・・・」とみんながおずおずとして言うと、彼は車から降りてきて、ペットボトルで毛虫を移動させた。

ミソはその様子を見て、「CMにすべき」と呟いた。そう、この青ジャージが示す通り、彼はサガワのお兄さんである。

野口さんは時々、アクロバティックなことをする。

貝殻を採って来てくれた。
【12:00 はたけんぼの方へ行く】

この近くには「くにたちはたけんぼ」と呼ばれるコミュニティ農園がある。

富士見台幼稚園の観察用水田の看板があって幼い頃から自然に親しめる環境なのだろうと想像する。リサーチの日(10/26)に来た時はノンタンがいた。画面の端を見てわかるように、実は宅地化も進みつつある…。そのことを嘆く住民の方は多い。

ちょっと珍しい野菜がリーズナブルな価格で売っていたりして、みんなが野菜をゲットしていく。

稲作シーズンには水が引かれる用水路。冬を迎えるこの時期には植物が芽生えていて、それも素敵。

このお花のまわりには蜜蜂が沢山飛んでいる。

貝が描いた絵画とザリガニの死骸。

あ、また!アクロバット。

たそがれている。

大根の収穫跡がインスタレーションのようだ。ランド・アート的な?

この辺りで石田君が先ほど買った野菜を路上でつまみ食いし始める。

青々と元気に水の中で揺らめいている水草、実は外来種。

富士見台という名前にふさわしく、富士山が見えた。

元気なお野菜とヤクルト工場。

【12:20 城山公園】

防災井戸があって、手を洗ったりすることができる。

そろそろ昼ごはんの時間だし、手を洗う。

靴を履いたわんちゃんがいた。飼い主さんは私達にフレンドリーに挨拶してくれる。

何の、絆、、?

林の中にキャンプでもしているかのような不思議なオブジェがあって、みんな思わず駆け寄っていく。

その先にあるのは「城山さとのいえ」。国立市の農業情報の発信をしており、お散歩マップや直売所マップをゲットできる。家のベランダでバラを育てているミソは、施設の人からバラの花の育て方を伝授されていた。こんな風に、行く先々で町の人々が私たちに色んなことを教えてくれた。

平和のシンボル・アンネのバラが植えられている。よく見ると蕾がついている。このバラのために、庭師の人を呼び、丁寧に育て続けているという。

この写真は9/5のリサーチ時に撮影したから夏の空の色をしている。このバラに近づく時は足元に要注意。アリが沢山いるから踏まないように気をつけて。

面白いものを見つけるのが得意なジマーマンさん。私たちがここにいることで、googleにこの公園が「通常に比べて混んでいます」と表示されている。

豆苗が育てられている。

これは沖縄の花。

はるかちゃんと影で遊んだ。

すぐ隣で農業。
【12:30 古民家で昼ごはん休憩】

旧柳澤住宅は、江戸時代から使われていた農家を移築し、復元したものだ。もとは、甲州街道沿いの青柳村(現国立市青柳)に建てられていたもので、当時の典型的な家屋。江戸時代後期に建築されたものと思われる。昭和60年10月に、所有者である柳澤勇一郎さんから国立市に寄贈され、それを機に古民家の復元事業がはじまる。平成3年3月に城山公園の南側の田園地帯に移築し、建築当初の姿を復元し、国立市文化財として一般に公開されるようになった。
ここにはいつもおじいさんやおばあさんがいて、この場所について教えてくれる。この日もみんなからの質問に答えていた。

昔からの農家の家にあるつるべ井戸の再現。

屋敷の南側に四角く切り込まれた特徴的な木は風・日除けのための白樫の高垣(カシグネ)。鬼門(北東)には魔除けのエンジュの木が植えられるなど、庭としてデザインされている。



山ちゃんの車椅子を持ち上げ、古民家の段差を乗り越える。

「石井君、石田君」と声をかけると、二人はすぐにサポートしてくれた。それまでは鈴木さんと柊さんが車椅子を押していてくれたんだけれど、以降二人も順番に車椅子を押すようになった。

カメラマンのひなちゃんはカマキリに夢中。

昼ごはんの時にみんなで食べたのはザリガニのおにぎり。自然保全や外来種の問題について考えるきっかけとして作った。谷保で手に入れたタイナス・絹さや・ネギを混ぜ、付属の中華だれで味付け。業務スーパーには食用の冷凍ザリガニが売られている。しかし、取り扱いのない店舗もあるようで、横浜方面では取り扱いがない傾向が強かったが、鶴見方面では取り扱いがあるなどということがわかった。中国ではザリガニを屋台などで食べることが一時ブームとなり、元は外来種のザリガニを、今では養殖するようにもなった程の人気だという。どちらかといえば高級なもので、可食部は少ない。けれどもプリッとした食感や独特の甘みがあり美味しい。

朝、私とひなちゃんで握ったものだ。甲殻類アレルギーの可能性を考えて,ナス味噌(ナスは谷保の名産)のおにぎりも用意した。また、さっと茹でたビタミン大根(これも国立でゲットした)を付け合わせにした。
子ども食堂や谷保の祭りに参加した時、地域の皆さんが自らの手で作ったものを振る舞う、というのが印象に残った。そこで、私も今回手作りのおにぎりを振る舞ってみたのだ。みんなが驚きながら美味しそうに食べてくれて嬉しかった。

ここでまた、生でかじる!

初対面同士でも、ここでゆったりとおしゃべりする。

みんなで同じ鳥を見てる。

【13:15 つながる小道を歩く】

ヤクルトが設置し、国立市が管理している緑道。北側の緑豊かなハケ(青柳崖線)に自生する植生を参考にして周辺自然関係との調和を計算して作られたものだという。

ここでみんなが気になって覗いたもの。
この小道を通る時、石田君が山ちゃんの車椅子を押していたのだけれど、石田君が車椅子を押すとペースがとてもゆっくりになる。自然や景色を山ちゃんに見せてあげたいとも感じていたのだろうし、車椅子を押す経験があまりないから、慎重に運転するのかもしれない。随分と列から外れていたので、心配になって、私は駆け戻って行った。すると、二人は鳥の話を静かな声でしていた。私が近寄っても気づかないような、二人だけの世界にいるみたいだった。
ミソが急に私に話しかけて、「自販機に…忘れてきた…お釣り…しかも1000円!(で買ったあとのお釣りだから850円くらい?)」と言う。それを見かねた鈴木さんは「僕が彼女について行くから、みんなで先に」とミソのために一緒に自販機のある場所まで行った。おそらく鈴木さんは、お喋りで明るく元気なミソにすっかり心を許している気がする。次の目的地の場所を鈴木さんはよく知っている。

ネギがお花みたいに並んでいる。住宅地を通り抜けた先に郷土資料館がある。
【13:30 くにたち郷土文化館へ到着】

バリアフリー用の大きなエレベーター。全員が乗りこめてしまう大きさだ。

このタイミングでミソと鈴木さんが合流!

ぎゅうぎゅう

剥き出しの配線がお洒落。

この文化館では子供達が捕まえた生き物を水槽の中で育てている。在来種も、外来種も綺麗な水槽の中で大切にされている。川の中を覗いても簡単には見ることのできない魚たちの姿を知ることができる。ここでもまた青いジャージを着た文化館の学芸員さんが魚たちについて解説をしてくれた。


絶滅危惧種のドジョウ。

これ、何気に面白い。かける君とも遊んだな。

土器パズルなるものがあって、そこに偶然居合わせた小学生の男の子と一緒に楽しんだ。制限時間内に土器を修復するゲーム。時間が来ると縄文土器が爆発するよ。
この資料館は土器が出土した跡地であり、その地形を生かして設計された。

国立駅舎の模型。2020年に駅のシンボルとして再建されたものだけれど、賛否は両論。

【14:15 ママ下湧水公園を目指す】
「ママ」というのは崖のこと。意外なことに、地域住民の方でもママ下の方までは行かないらしい。一駅先の矢川というエリアだ。

草の生え方が可愛い。

カモがよくいる水辺。

川の横にこんな看板が。生きものたちのおうちはここだ。

立派な柿の木。

この橋を渡って収穫するのかな。

石田君は川に近づきたいって言ってた。

綺麗な水にしか住まないカワニナがいる。

畑のすぐ隣は高速道路が通っている。

保育園の門にかわいらしいザリガニがいた。(カニによく似ている)

自然保全が活発で、畑や田んぼ、湧水と豊かな環境の中で、在来種や外来種について詳しい子どもたちがよく遊ぶ姿が見られる。この日もある男の子が私たちに捕まえた生き物について、見せながら話してくれた。
卵がついてる、とか怪我をしているとか、一匹一匹をじっくり観察する。
印象深かったのは、この近くの小学校は用水路に囲まれるような形で建てられ、ビオトープのようなものが敷地内にあった。彼らは自然に親しみながら学校に通い、自然の中で遊ぶ時間を過ごしている。

山ちゃんが花を拾う。彼の好きな色は紫で、車椅子も紫だ。

湧水に到着。都内でも有数の湧水量だという。とても澄んだ水だけれど、実はよく見ると小石が赤い。これは化学物質が付着したことが原因だ。

この張り紙にみんなが注目。この町の事件だ。
【14:50 コトナハウスを目指して再び谷保方面へ】

白鷺をみんなで見つめていた。「見れてよかった」と山ちゃんは言ってくれた。

突如私達の前に現れたおにぎり。

四軒在家公園。古墳にまつわる公園だ。ここにある横穴式石室は移築・復元されたもので、みんながこの公園で思わず寝転がった。疲れも出てくる頃だしね。

住宅地なんだけれど、畑がいっぱい。

あるおうちの前に、「ご自由にどうぞ」と書かれた段ボール箱があり、その中には柚子や植木鉢やお皿なんかが置いてあった。柚子は人気だけれど、全部無くなっちゃうから「私は我慢した」とミソは言った。今日(12/20)ミソも呼んで鍋パーティーするんだけれど、この柚子の皮を入れて一緒に食べようと思っている。

酸っぱいね!

滝野川学園の紅葉。この辺りは福祉に関する施設が多い。

私達は野菜の直売所を見つける度に野菜を買っていった。この辺りには直売所が数十歩歩くごとにある。

はるかちゃんが見つけた優しいもの。

踏切の隣が畑。この辺りからはジマーマンさんに先頭を任せて彼のオススメの道順で歩いている。野口さんのお母さんが足をさすりながら歩いているのが心配になったため、野口さんにはお母さんの隣を歩いてもらった。ご家族三人での参加だった。お母さんは手術をしたばかりで、当初は行けるところまで、と言っていた。けれども最後まで一緒に歩いて下さった。
ふと、どうして散歩会をしているんですか?とお母さんに聞かれた。「みんなと一緒にいると私は幸せだからです」と答えた。

市役所の前を通り過ぎる。

フクロウを発見して、盛り上がる一同。石田君は鳥が好き。

素敵な庭。

出発点の富士見台団地へと戻ってきた。この特徴的な屋根の下にあるのが富士見台トンネル。この日はお休みだったけれど。

商店街には絵やソファのあるリビングスペースが設けられ、そこには北朝鮮から来たピアノが置かれていて、この日も町の人が音色を響かせていた。お母さんは「私、ここが一番好きなの!」と嬉しそうな声色で私に伝えてくれた。

その脇のスペースをみんなが面白がっている。

ここも生活空間。


昔ながらのお菓子が売られているパン屋さんの前。

ダイヤ街が近づいてくる。

【16:00 コトナハウスでみんなでクナーファを食べる】

同じテーブルの上で、一枚の大きなクナーファをみんなで作り、それを人数分に切り分けて食べた。山田さんがパレスチナで修行をした際の写真を見ながら、参加者からの質問に答えるような形で山田さん自身の経験が語られていく。5時間の間、一緒に散歩したからなのか、すっかり打ち解けて、みんなは色々なことを山田さんに質問していた。



大きなクナーファをひっくり返した時には「サスペンスを感じた」と声が上がった。


実はこの日が還暦の誕生日の山ちゃん。みんなでお祝い。
“生活”というテーマでの散歩会だったけれども、山田さんがクナーファを作ることも、農家のみなさんが自然保全をすることも、町の人々が子ども食堂を開くなどの活動をすることも、歴史的な行事や資料を守り語っていくことも…どれもその人の生き方やあり方は、人生や社会や世界に対しての闘いなのではないかと思う。手作りのオブジェ、お祭り、スペース...DIYの精神に満ちた谷保。そしてその闘いはこの場所で「住み続けたい」という思いに繋がり、また人の心を結びつけるのではないだろうか。
そんな谷保を私たちは一日歩き、見て、食べて、触れて、みんなで感じて、心や記憶にとどめる。そんな時間を過ごしていた。
2024年11月30日、国立市谷保で、住民の皆さまにもご参加頂き、14人で散歩会を開催した。内容としては、谷保の市民の皆さんが自らの手で作る生活の形を町の中に発見しながら、秋の谷保を散策し、散歩の終わりにはコトナハウス(月に二回、子ども食堂が開かれているシェアハウス)で、みんなでクナーファを作って食べるというものだ。私の周りの知人、谷保の住民の方、クナーファ屋の常連さんが集まり、緩やかな交流の時間となった。

谷保駅に飾られたプランター。日当たりの良い場所で、手入れされている。
クナーファ屋さんは「富士見台トンネル」という日替わりで運営されるスペースで毎週水曜日に開かれている。商店街のある団地の側にある、アットホームで居心地の良い空間で、キッチンとカウンターの距離が近く、スイーツを作るところがよく見えて、生活を感じるような距離の近さだった。それを感じることでクナーファの味が心に残るように感じて、とても印象深い出来事だった。
そんな距離だからこそ、クナーファをこの店で作る山田柊さんとカウンター越しにお話しすることができた。私の中には、食を通じてパレスチナをはじめとする中東を知るということへの疑念があった。それを友人に話すと、それは消費の態度をとることに繋がるからではないかと言っていた。そのことについて質問をした。柊さんの答えは「この町に住む人々の生活の中にクナーファがある、ということを目指している」という言葉だった。
そして、彼は実際に中東の人道支援に携わった過去があったと話した。そして2023年の1月に実際にパレスチナでスイーツ作りの修行をして店を開いたという。彼はこの場所でクナーファ屋を始めて、彼の中でパレスチナとの距離は寧ろ近いものになったと話していた。例えば、食材が手に入るかな?といった心配。その言葉は私の中で印象深いものだった。一見、人道支援の方が直接的だが、彼の生活の一部になると、ずっと思い続けるのだということが...

そして柊さんは小鳥書房という本屋を教えてくれた。若い女性の方がやっている本屋であり、古本と新書の販売を行うほか、出版社でもあるという。小鳥書房の方へ足を運ぶと昔ながらの商店街があり、肉を買う住民の姿が見えた。書房の二階には小さな図書館があって、そこは都市や場所に纏わる本が沢山置かれていた。そこにはおじいさんと、かける君という17歳の男の子が二人で話をしていて、どうぞ、と迎えてくれた。二人は映画を町で上映する話なんかをしていた。勇気を出して話しかけてみると、そこでは「市民の力ででき上がったまち、それが国立」という言葉を聞いたのだった。その言葉に私はグッとくるものを感じた。
ある日、地域住民と話した際には、「障害者があたりまえに暮らすまち宣言」というものが平成15年に採択されたものの、実際にはまだ手が届いていない部分も多いのではないかという声が上がった。例えばそれは、社協による子ども食堂には障害者用の席がなく、バリアフリー化はされていないことや、国立駅舎の北側の入り口は車椅子が通れないこと、手話の条例はできたが、国立市には手話通訳者が少ないことなどを彼らは指摘していた。しかし、だからこそ「自由に勝手に(自分たちで)やる」のだという言葉も聞くことができた。
そして、後日かける君とのリサーチ(彼は国立の出身で、子ども食堂案内所なるものを運営し、起業家として活動している。また、彼自身が子ども食堂でボランティアをしている。小さい頃から自然に親しんで来たため生態系問題に詳しく、自らが谷保の自然で遊んだ経験を元にこの町を紹介してくれた!)、クナーファ屋さんである山田柊さん、コトナハウスの管理人鈴木幹雄さんの協力のもと散歩会を開催する運びとなっていったのだった。

昭和レトロな小鳥書房さん

小鳥書房の斜め前にあるコトナハウス。富士見台トンネルと同じく、ここもまた、食事スペースとキッチンスペースがひと続きになっている。シェアハウスは入居者募集中。
さて、2024年10月SUUMO調べでは谷保がなんと「住み続けたい街」(東京版)一位になったという。(suumo_2024)その理由の中には様々な世代がチャレンジしやすい、というものがあるが、ここまで紹介した富士見台トンネル・小鳥書房・コトナハウスはどれも若い世代が中心となって盛り上げている実験的なスペースであると同時に、子供から高齢者まで幅広い世代にとっての拠り所になるような場所である。この記事では、そんな谷保の「住み続けたい」理由を解き明かしてみたい。
【11:00 コトナハウス前で集合】

コトナハウスのあるダイヤ街商店街は1965年から今に続く。まだまだアクティブな明るい商店街だ。

天候に恵まれ、温かいので、自己紹介は商店街前にある谷保第一公園で日向ぼっこをしながら。谷保の住民の皆さんには谷保の好きなところを伺ってみた。車椅子ユーザーである山ちゃんから、「人が優しいところ」という言葉があった。私の知人のほとんどは谷保に来るのが初めてだというのに、早速谷保駅周辺のお気に入りポイントを見つけて、話してくれた。自己紹介は大いに盛り上がった。また、この時私の友達であるミソが自分が留学生であることを明かしたことも個人的に強く記憶に残った。

出発!

素敵な八百屋さん。

これは私が好きな谷保スポット。手作りアルミ缶の提灯が風でくるくると回る。

面白いものみっけ。こういったものをジマーマンさんはしょっちゅう見つけて私に教えてくれた。彼は先頭がよく似合っていて、私は時折彼に前を歩いて貰っていた。

ラーメン屋に隠れているカエル。

歩き出して早10分のところで、スナック水中のママさん(坂根千里さん)が赤ちゃんをあやして散歩しているところにばったり会って立ち話をした。(プライバシー保護のため、ママさんとお子さんが映らない画角の写真を選んだ)散歩会参加者である石井君は、谷保の住民ではないはずなのに、どうやら彼女と知り合いだったみたいで彼が真っ先に彼女に話しかけていた。坂根さんは2022年3月に一橋大学を卒業し、卒業という形で閉店する「すなっく・せつこ」を継業。彼女の店・水中は女性一人でも入りやすいカフェのような雰囲気がある。
ちなみに水色の壁は子供服のリサイクルショップで、ここもまた私のお気に入り。この店沿いの道には地域の人々のための食にまつわる店舗が多く、スナック水中はもちろん、町中華や弁当屋、子ども食堂もある。

一台しか停められない駐車場。
【11:35 谷保天満宮】

最初の目的地は東日本最古の天満宮であり関東三大天神と呼ばれる谷保天満宮だ。万灯行列やどんと焼き、獅子舞といった歴史的な行事が引き継がれていることも、かつて谷保村だった時代の記憶を今に引き継ぎ、コミュニティ作りに一役買っている。

最近までは湧き水が湧いていたものの、秋頃からは見られなくなってしまったようなのだが、歴史的行事の保存のみならず、緑豊かな境内は自然も保存している。

秋晴れのコントラストが美しい。

牛の頭を撫でる。私は今日の散歩がうまく行きますように、とみんなを代表してお賽銭をしてみた。

神社の奥に池があって、ここにも独自の生態系が存在する。亀や小魚の姿も確認できる。

神社の横の用水路も綺麗だ。

毛虫を発見。私がリサーチ中、谷保で編み出した遊びがある。谷保の道にはしょっちゅう何かの幼虫がいて、それが無事に道を渡りきるのを見届けるという遊びだ。自転車なんかが来ると私は幼虫のそばに立って轢かれないようにする。
毛虫好きのひなちゃんに、「好きそうなのがいるよ」などと声をかけていると、トラックがやって来た。みんな思わず、「あーっ!」みたいな声をあげたので、運転手さんはびっくりして、どうかしましたか、と降りてきた。「け、毛虫が・・・」とみんながおずおずとして言うと、彼は車から降りてきて、ペットボトルで毛虫を移動させた。

ミソはその様子を見て、「CMにすべき」と呟いた。そう、この青ジャージが示す通り、彼はサガワのお兄さんである。

野口さんは時々、アクロバティックなことをする。

貝殻を採って来てくれた。
【12:00 はたけんぼの方へ行く】

この近くには「くにたちはたけんぼ」と呼ばれるコミュニティ農園がある。

富士見台幼稚園の観察用水田の看板があって幼い頃から自然に親しめる環境なのだろうと想像する。リサーチの日(10/26)に来た時はノンタンがいた。画面の端を見てわかるように、実は宅地化も進みつつある…。そのことを嘆く住民の方は多い。

ちょっと珍しい野菜がリーズナブルな価格で売っていたりして、みんなが野菜をゲットしていく。

稲作シーズンには水が引かれる用水路。冬を迎えるこの時期には植物が芽生えていて、それも素敵。

このお花のまわりには蜜蜂が沢山飛んでいる。

貝が描いた絵画とザリガニの死骸。

あ、また!アクロバット。

たそがれている。

大根の収穫跡がインスタレーションのようだ。ランド・アート的な?

この辺りで石田君が先ほど買った野菜を路上でつまみ食いし始める。

青々と元気に水の中で揺らめいている水草、実は外来種。

富士見台という名前にふさわしく、富士山が見えた。

元気なお野菜とヤクルト工場。

【12:20 城山公園】

防災井戸があって、手を洗ったりすることができる。

そろそろ昼ごはんの時間だし、手を洗う。

靴を履いたわんちゃんがいた。飼い主さんは私達にフレンドリーに挨拶してくれる。

何の、絆、、?

林の中にキャンプでもしているかのような不思議なオブジェがあって、みんな思わず駆け寄っていく。

その先にあるのは「城山さとのいえ」。国立市の農業情報の発信をしており、お散歩マップや直売所マップをゲットできる。家のベランダでバラを育てているミソは、施設の人からバラの花の育て方を伝授されていた。こんな風に、行く先々で町の人々が私たちに色んなことを教えてくれた。

平和のシンボル・アンネのバラが植えられている。よく見ると蕾がついている。このバラのために、庭師の人を呼び、丁寧に育て続けているという。

この写真は9/5のリサーチ時に撮影したから夏の空の色をしている。このバラに近づく時は足元に要注意。アリが沢山いるから踏まないように気をつけて。

面白いものを見つけるのが得意なジマーマンさん。私たちがここにいることで、googleにこの公園が「通常に比べて混んでいます」と表示されている。

豆苗が育てられている。

これは沖縄の花。

はるかちゃんと影で遊んだ。

すぐ隣で農業。
【12:30 古民家で昼ごはん休憩】

旧柳澤住宅は、江戸時代から使われていた農家を移築し、復元したものだ。もとは、甲州街道沿いの青柳村(現国立市青柳)に建てられていたもので、当時の典型的な家屋。江戸時代後期に建築されたものと思われる。昭和60年10月に、所有者である柳澤勇一郎さんから国立市に寄贈され、それを機に古民家の復元事業がはじまる。平成3年3月に城山公園の南側の田園地帯に移築し、建築当初の姿を復元し、国立市文化財として一般に公開されるようになった。
ここにはいつもおじいさんやおばあさんがいて、この場所について教えてくれる。この日もみんなからの質問に答えていた。

昔からの農家の家にあるつるべ井戸の再現。

屋敷の南側に四角く切り込まれた特徴的な木は風・日除けのための白樫の高垣(カシグネ)。鬼門(北東)には魔除けのエンジュの木が植えられるなど、庭としてデザインされている。



山ちゃんの車椅子を持ち上げ、古民家の段差を乗り越える。

「石井君、石田君」と声をかけると、二人はすぐにサポートしてくれた。それまでは鈴木さんと柊さんが車椅子を押していてくれたんだけれど、以降二人も順番に車椅子を押すようになった。

カメラマンのひなちゃんはカマキリに夢中。

昼ごはんの時にみんなで食べたのはザリガニのおにぎり。自然保全や外来種の問題について考えるきっかけとして作った。谷保で手に入れたタイナス・絹さや・ネギを混ぜ、付属の中華だれで味付け。業務スーパーには食用の冷凍ザリガニが売られている。しかし、取り扱いのない店舗もあるようで、横浜方面では取り扱いがない傾向が強かったが、鶴見方面では取り扱いがあるなどということがわかった。中国ではザリガニを屋台などで食べることが一時ブームとなり、元は外来種のザリガニを、今では養殖するようにもなった程の人気だという。どちらかといえば高級なもので、可食部は少ない。けれどもプリッとした食感や独特の甘みがあり美味しい。

朝、私とひなちゃんで握ったものだ。甲殻類アレルギーの可能性を考えて,ナス味噌(ナスは谷保の名産)のおにぎりも用意した。また、さっと茹でたビタミン大根(これも国立でゲットした)を付け合わせにした。
子ども食堂や谷保の祭りに参加した時、地域の皆さんが自らの手で作ったものを振る舞う、というのが印象に残った。そこで、私も今回手作りのおにぎりを振る舞ってみたのだ。みんなが驚きながら美味しそうに食べてくれて嬉しかった。

ここでまた、生でかじる!

初対面同士でも、ここでゆったりとおしゃべりする。

みんなで同じ鳥を見てる。

【13:15 つながる小道を歩く】

ヤクルトが設置し、国立市が管理している緑道。北側の緑豊かなハケ(青柳崖線)に自生する植生を参考にして周辺自然関係との調和を計算して作られたものだという。

ここでみんなが気になって覗いたもの。
この小道を通る時、石田君が山ちゃんの車椅子を押していたのだけれど、石田君が車椅子を押すとペースがとてもゆっくりになる。自然や景色を山ちゃんに見せてあげたいとも感じていたのだろうし、車椅子を押す経験があまりないから、慎重に運転するのかもしれない。随分と列から外れていたので、心配になって、私は駆け戻って行った。すると、二人は鳥の話を静かな声でしていた。私が近寄っても気づかないような、二人だけの世界にいるみたいだった。
ミソが急に私に話しかけて、「自販機に…忘れてきた…お釣り…しかも1000円!(で買ったあとのお釣りだから850円くらい?)」と言う。それを見かねた鈴木さんは「僕が彼女について行くから、みんなで先に」とミソのために一緒に自販機のある場所まで行った。おそらく鈴木さんは、お喋りで明るく元気なミソにすっかり心を許している気がする。次の目的地の場所を鈴木さんはよく知っている。

ネギがお花みたいに並んでいる。住宅地を通り抜けた先に郷土資料館がある。
【13:30 くにたち郷土文化館へ到着】

バリアフリー用の大きなエレベーター。全員が乗りこめてしまう大きさだ。

このタイミングでミソと鈴木さんが合流!

ぎゅうぎゅう

剥き出しの配線がお洒落。

この文化館では子供達が捕まえた生き物を水槽の中で育てている。在来種も、外来種も綺麗な水槽の中で大切にされている。川の中を覗いても簡単には見ることのできない魚たちの姿を知ることができる。ここでもまた青いジャージを着た文化館の学芸員さんが魚たちについて解説をしてくれた。


絶滅危惧種のドジョウ。

これ、何気に面白い。かける君とも遊んだな。

土器パズルなるものがあって、そこに偶然居合わせた小学生の男の子と一緒に楽しんだ。制限時間内に土器を修復するゲーム。時間が来ると縄文土器が爆発するよ。
この資料館は土器が出土した跡地であり、その地形を生かして設計された。

国立駅舎の模型。2020年に駅のシンボルとして再建されたものだけれど、賛否は両論。

【14:15 ママ下湧水公園を目指す】
「ママ」というのは崖のこと。意外なことに、地域住民の方でもママ下の方までは行かないらしい。一駅先の矢川というエリアだ。

草の生え方が可愛い。

カモがよくいる水辺。

川の横にこんな看板が。生きものたちのおうちはここだ。

立派な柿の木。

この橋を渡って収穫するのかな。

石田君は川に近づきたいって言ってた。

綺麗な水にしか住まないカワニナがいる。

畑のすぐ隣は高速道路が通っている。

保育園の門にかわいらしいザリガニがいた。(カニによく似ている)

自然保全が活発で、畑や田んぼ、湧水と豊かな環境の中で、在来種や外来種について詳しい子どもたちがよく遊ぶ姿が見られる。この日もある男の子が私たちに捕まえた生き物について、見せながら話してくれた。
卵がついてる、とか怪我をしているとか、一匹一匹をじっくり観察する。
印象深かったのは、この近くの小学校は用水路に囲まれるような形で建てられ、ビオトープのようなものが敷地内にあった。彼らは自然に親しみながら学校に通い、自然の中で遊ぶ時間を過ごしている。

山ちゃんが花を拾う。彼の好きな色は紫で、車椅子も紫だ。

湧水に到着。都内でも有数の湧水量だという。とても澄んだ水だけれど、実はよく見ると小石が赤い。これは化学物質が付着したことが原因だ。

この張り紙にみんなが注目。この町の事件だ。
【14:50 コトナハウスを目指して再び谷保方面へ】

白鷺をみんなで見つめていた。「見れてよかった」と山ちゃんは言ってくれた。

突如私達の前に現れたおにぎり。

四軒在家公園。古墳にまつわる公園だ。ここにある横穴式石室は移築・復元されたもので、みんながこの公園で思わず寝転がった。疲れも出てくる頃だしね。

住宅地なんだけれど、畑がいっぱい。

あるおうちの前に、「ご自由にどうぞ」と書かれた段ボール箱があり、その中には柚子や植木鉢やお皿なんかが置いてあった。柚子は人気だけれど、全部無くなっちゃうから「私は我慢した」とミソは言った。今日(12/20)ミソも呼んで鍋パーティーするんだけれど、この柚子の皮を入れて一緒に食べようと思っている。

酸っぱいね!

滝野川学園の紅葉。この辺りは福祉に関する施設が多い。

私達は野菜の直売所を見つける度に野菜を買っていった。この辺りには直売所が数十歩歩くごとにある。

はるかちゃんが見つけた優しいもの。

踏切の隣が畑。この辺りからはジマーマンさんに先頭を任せて彼のオススメの道順で歩いている。野口さんのお母さんが足をさすりながら歩いているのが心配になったため、野口さんにはお母さんの隣を歩いてもらった。ご家族三人での参加だった。お母さんは手術をしたばかりで、当初は行けるところまで、と言っていた。けれども最後まで一緒に歩いて下さった。
ふと、どうして散歩会をしているんですか?とお母さんに聞かれた。「みんなと一緒にいると私は幸せだからです」と答えた。

市役所の前を通り過ぎる。

フクロウを発見して、盛り上がる一同。石田君は鳥が好き。

素敵な庭。

出発点の富士見台団地へと戻ってきた。この特徴的な屋根の下にあるのが富士見台トンネル。この日はお休みだったけれど。

商店街には絵やソファのあるリビングスペースが設けられ、そこには北朝鮮から来たピアノが置かれていて、この日も町の人が音色を響かせていた。お母さんは「私、ここが一番好きなの!」と嬉しそうな声色で私に伝えてくれた。

その脇のスペースをみんなが面白がっている。

ここも生活空間。


昔ながらのお菓子が売られているパン屋さんの前。

ダイヤ街が近づいてくる。

【16:00 コトナハウスでみんなでクナーファを食べる】

同じテーブルの上で、一枚の大きなクナーファをみんなで作り、それを人数分に切り分けて食べた。山田さんがパレスチナで修行をした際の写真を見ながら、参加者からの質問に答えるような形で山田さん自身の経験が語られていく。5時間の間、一緒に散歩したからなのか、すっかり打ち解けて、みんなは色々なことを山田さんに質問していた。



大きなクナーファをひっくり返した時には「サスペンスを感じた」と声が上がった。


実はこの日が還暦の誕生日の山ちゃん。みんなでお祝い。
“生活”というテーマでの散歩会だったけれども、山田さんがクナーファを作ることも、農家のみなさんが自然保全をすることも、町の人々が子ども食堂を開くなどの活動をすることも、歴史的な行事や資料を守り語っていくことも…どれもその人の生き方やあり方は、人生や社会や世界に対しての闘いなのではないかと思う。手作りのオブジェ、お祭り、スペース...DIYの精神に満ちた谷保。そしてその闘いはこの場所で「住み続けたい」という思いに繋がり、また人の心を結びつけるのではないだろうか。
そんな谷保を私たちは一日歩き、見て、食べて、触れて、みんなで感じて、心や記憶にとどめる。そんな時間を過ごしていた。