中延「どうかしてるマーケット」と「撫で白蛇さま」

  • 更新日: 2019/05/09

中延「どうかしてるマーケット」と「撫で白蛇さま」のアイキャッチ画像

「どうかしてるマーケット」戦利品。スターウォーズの立体組み立て紙(ペーパークラフト)キット1,000円。大河原邦男のデザイン・ノート(雑誌Animage 1982年3月号ふろく)300円。初代ビックリマン当時の簡易ポケットティッシュ10円、など。


これは『FINAL FANTASY XIV』プレイヤーのCooley Geeが、好きを追って未知のコンテンツに突入するおはなしです。


 中延駅より徒歩1分、「インストールの途中だビル」で『どうかしてるランド(DOUKASHITERU LAND)』開催というツイートを見て、ガタッ! と立ち上がったのが2018年7月。

 ビルの名称からして「なにそれ?」と。

 妙なゲームタイトルをその場でジャケ買いしてしまうような、ある種の高揚感に包まれた気分だった。詳細をみると、ビルに実店舗のある「どうかしてるショップ」が、不定期でひらいているフリーマーケットの案内だった。
 
中延駅周辺のマップリンク。ビル住所は東京都品川区戸越6-23-21、駅間近



 「インストールの途中だビル」
 
 なんかこう、突入するだけでじぶんの中の秘めたステータスが開花してしまいそうな、むちゃくちゃ経験値を稼げそうなビル名だ。そのツイートが、ヒカセン(光の戦士)的には、クエスト受注マークの「!」がポップしているように見えてしまって、積極的にどうかしに行きたいと思った。

▼胸に「カラータイマー」がない設定段階のウルトラマン。ポストカードを左右にうごかすと別の絵がみえる。おそらく、2015年の青森県立美術館「成田亨 美術/特撮/怪獣」展でのミュージアムグッズ。アツい


 それから1年もしないうちに、「どうかしてるショップ」4月閉店のお知らせが届いた。最後のフリマ『どうかしてるマーケット』が同ビル401号室であるという旨も。実は、サンポーではすでに中延駅の近隣地域「戸越公園を散歩する」記事が掲載されている。そのすぐそばで、またディープなお散歩ができたので、ぜひ読んでほしい。

▼改めて、中延の読み方って「なかのぶ」なんだなあと確認


 おでかけ先で、よく道をきかれる。迷子になりがちで、わき道からひょっこり出てきたりするから、街のモブ感がすごいのかもしれない。実際のわたしは、まったくそんなNPC(話しかけると特定の情報を教えてくれる生身の人が操作していないキャラクター)的な存在じゃない。「中延」をどう読むかも知らなかった、都会のなかの旅人だ。なかのぶ、なんだね。

▼中延駅の「だれでもトイレ」はいつも入るのをためらう


 オンラインゲーム『FINAL FANTASY XIV』(SQUARE ENIX)が開催した「ファンフェスティバル2019 in 東京」終わり際、プロデューサーの吉田直樹さんが、「家に帰るまでがファンフェスです。階段一個もギミックだと思って……」と、すべてのヒカセンたちが旅の終着点まで無事でいられるよう注意喚起をしていたらしい。
 
 「そんな発想なかった」とおもったわたしは、以来、街にあるギミック探しが習慣になった。壁や床や天井や空間を見ながら、ありそうなトラップを空想する。ゆえに、中延駅の「だれでもトイレ」付近のようすはどことなく怖い。入室をためらってしまう。もちろん、安全面や使い勝手に問題があるって言いたいわけじゃない。だがこのビジュアルである。ぶっとい柱の横、狭い通路、真正面のとびら、スルーすれば抜け道。なんだか、ディープダンジョンの一角っぽい。

▼FF14の攻略コンテンツ「死者の迷宮」低レベル帯。これくらいに見えてる

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▼8ビット世界のダンジョンに潜り込んだかのよう。前後慎重に進む


▼きっと似た質感の場所は全国にある。見つけて楽しんでほしい


 中延駅の、何かがじわじわと始まりそうな質感がいい。足を踏み込むごとにカクカク見えてくる、まるで8ビット世界のマップ感だ。モンスターとのエンカウント率が極めて高そうな道幅なのもゾクゾクする。

▼「この出入り口は海抜21.9m」、駅や学校施設に提示がある


▼のぼってきた中延駅を地上からのぞき込むとこんな感じ


 地上フィールドにでる直前、「海抜表示板」が目についた。海抜とは、この近隣にある海面を0mとして現在いる位置がどれくらいの高さにあるかを記したものだ。それを踏まえて、のぼってきた階段を見下ろす。RPG特有の世界壊滅系イベントが起こったら、実はこういうところこそ一番の隠れ家になるんじゃないか。想像がふくらむ。他の駅でも気にかけてみよう。

▼中延駅すぐ「インストールの途中だビル(光洋ビル)」外観


▼黒板に白チョークで落書きしてあるような感じがイイ


▼「インストールの途中だバル」修正済みだがBarでもイイ


 さて、ざっくりFF14風にいうとID『狂乱大祭どうかしてるマーケット』突入地点にたどり着いた。右脇のエレベータならダンジョンまですぐだが、できれば4階まで足を使ってのぼってほしい。何があるか予測不能な市場への侵入前に、心の準備をするんだ。

▼ビル初見未予習の冒険者には4階まで階段使いを推奨


▼のぼっていくと壁ごとに赤いアートをみることができる


 くり返すが、「どうかしてるショップ」は2019年4月で閉店だ。しかし、「インストールの途中だビル」そのものは、今後もさまざまなカルチャーイベントをひらく場として運営される。

 ここで期待を込めた朗報がある。

 場所は変わるものの、「希望が多ければもしかするとまた“どうかしてるマーケット”をやる日もくるかも」と、ショップオーナーから伺ったのだ。
 
 じぶんで作ったものを世に送りだしてみたいクラフター勢や、旅が好きでいろんな世界の珍品を集めている冒険者、ひとに施すとよろこばれる技術のある異能力者などで、“どうかしてる”に当てはまる自覚のあるツワモノは、これでおしまいだとはおもわずに、わたしと一緒に動向を見守ろう。

▼ID突入!踏み込んだ先にあった店のほんの一角。どうかしてる


 わたしが突入したとき、ダンジョンには6つのギルドが発生していた。品揃えの一部を激写(撮影了解済)できたので見てほしい。素人にはちょっと分からないカルチャー品が所狭しとギュウ詰めになっている。たとえばここ。少しでも視線を向けると、ギルド主から「あっコレね」と声がかかる。すごい。あちこちピン!ピン!とターゲットを飛ばすわたしに、時代背景込みでアイテム説明をしてくれる。しんせつ~!っていうか、めちゃくちゃ優秀なタンクかもしれない。

▼ほぼ100~300円、買ってしまいそうになる。というか、買った


 別地帯に迷い込む。見知らぬ冒険者と重なるように物色していると、「寄ってくれたひとにあげてるんダ」と、ギルド主。差し出されたのは、写真右下のフェイスマスク。……なにこれ一番高そうなんだけど。顔面が別人になる系の美容パックって、けっこうお土産品で流行ってるものじゃなかろうか。

▼「コロッケのまんま」というお菓子を彷彿させるエビフライが……


 からっと揚がったエビフライ型のアイテムがヤバい。手裏剣みたいにギル(所持金)を投げまくって根こそぎ仲間にしたかった。眺めていると目が合って、「もしかして……私の……ファン、かな?」って、見つめられてる気分に。1点3,000ギル、むりだ。(財産的に)敵わないボスとエンカウントしたとおもって、早々に撤退することにした。

▼仮面ライダーや戦隊ヒーロー系の懐かしいアイテムが充実


 落ちるとヤバそうなヒーロー沼に突入。実は、特撮戦隊モノはほとんど知らない。科学戦隊ダイナマンのオープニング曲のサビ(だいだいだいだいだいなまーん)だけ歌えるのと、超電子バイオマンのイエローフォーが殉職して号泣した記憶しかない。確か、ソフビも持っていた。地元の夏祭りで母親にせがんで買ってもらったやつだ。というか、わたし史上では子ども心にあれがショックで戦隊モノを見なくなった説すらある。

▼『ジョジョの奇妙な冒険』の磁力を操作するスタンド・メタリカ発動中


 ギルド主のひとりが、衣装やフィギア、シルバーアクセだけでなく特殊メイクを施す技術者だと分かり、さっそくやってもらう。実はこの前日、深夜放送されたばかりのTVアニメ『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風』に登場した、「メタリカ」というスタンドを左手ににょきにょきしてもらった。そういえば、FF14ではメタリカのように、ひとの体内にある血液中の鉄分を操って鋭い刃に変形させ、内側からそのひとを攻撃するといったヤバい術がない。

▼実物かなりグロい!ワンポイント傷メイクを300円で施術してもらう


 さて、ぼちぼち「どうかしてるダンジョン」を抜け出し、中延(なかのぶ)駅の周辺フィールドマップの解放を決意した。

 「インストールの途中だビル」は大通りに面しており、駅が近い。わたしは超絶ド方向音痴だけど、なんとなく中延駅のまわりならどの方角をさまよっても勘で戻ってこれる気がした(この感覚が危ういのだけど)。

 ずんずんと歩く、歩く、歩く。
 ……次の駅に行くだけになるかも。どこかで曲がりたい。おっ。

▼東京の「蛇の街」らしい品川区二葉四丁目共栄商店街


 目に留まったのは、ばたばたと風になびくカラフルな商店街の旗。

 ご当地キャラクター「蛇窪のくぼっち」が描かれたオレンジと、「荏原七福神めぐり」のキャラクターが集結したピンクの旗。これが路地に連なっている。ニ葉四丁目共栄商店会のものらしい。あとでも触れるが、「痛絵馬コンテスト」という実に味わい深いイベントの開催地だったのに、「ふーん」と流し見てしまって後悔している。描けばよかった!

▼三間通り。さんまどおりではなく、さんげんどおり。


 ふと、右をみると「三間通り」の標識が。少し歩くとY字路に。マップをまったく見ていなかったのだけど、ふっと誘われるように左折した。なにかありそうな予感がしたけど、気のせいだったかな?なんて思った矢先、「蛇の街」といわれる所以に出くわす。

▼曲がり角があると行きたくなる。スタート地点に戻る方角なら方向音痴も安心


▼土地勘がないので一見なにもなさそうな風景が続くとやや焦る


▼「東京 福めぐり」という、のぼり旗。いくつかあるお遍路の1つなのかな


▼「蛇窪詣」と、「蛇窪大明神」というのぼり旗。わくわくする


 見知らぬフィールドで、あてもなく歩き、新しい街やダンジョンをようやく発見したときのガッツポーズ感。どうやら神社のようだ。わたし以外の訪問者もちらほら。「蛇窪大明神」とあるが、果たしてこの土地の人々にとってどんな存在なのか。みんな、どうして足を運ぶのか。祀(まつ)られているわけだし、わるさはしないはずだけど、RPG好きの視点からどうしても「神」には善悪の二面性がある可能性を想像してしまう。
 
 あと、これがオンライン上の出来事なら、じぶんが冒険者として関与すべき攻略対象がほぼ必ずといっていいほどポップするわけだけど、リアルにおいては基本それが見えないし、わたしの物語にどんな影響があるかも分からない。「寄り道」で付与される経験値は、たまっていくと、どうなるんだろう。

▼幼い頃から、赤い鳥居ときつねがなんとなく怖くて苦手


▼「稲倉魂神」のふりがなには、「うがのみたまのかみ」とある


 「赤は止まれ」という習慣と、「きつねは化ける」という固定概念から、その両方がある神社の鳥居は幼い頃からずっと苦手だ。レンズを向ける所作をするだけで冷や汗をかく、というか。

 でも、その「なんとなく怖い」感覚はきっと間違っていないのだろう。鳥居って、神のいるところと人のいるところが別の領域にあると可視化された、いわば結界のようなものだというし。

▼「白蛇祈願のご案内」をみて癒される。美白清浄って!!


 美白清浄

 ウェブ検索でそのワードをひっかけようと試みたけれど、そんな四字熟語はない。完全一致でヒットした!とおもったら、まさにこの「上神明天祖神社」の公式ホームページだった。白蛇さまに美白祈願、目からうろこだった。蛇だけに。
 
 ここの神さまがもしも擬人化されたら、肌がピュアホワイトでめっぽう艶やか、アクセサリー類は一切つけず、どこかあどけなさも残した透明感のあるビジュアルになりそう。そして、ふだん穏やかなぶん怒るとめっぽう恐い。なんだろう、「痛絵馬コンテスト」をスルーしてしまったことへの悔やみがすごい。描けたんじゃないか? わたしにも白銀の美蛇が。

▼東京の白蛇さま神社、お目見え。こいのぼりが風に揺らぐ


▼お賽銭をする傍の蛇窪提灯、筆致のスネイクっぽさが粋


▼風化で読めなくなっている文字が多く、かえって神秘的で好感触


 平日、昼間のフィールド探索だったけれど、「東京の白蛇さま」を拝みにくる人はけっこういた。誰もいない瞬間を撮るのにしばらく待っていたくらい。訪問者の顔触れは、まさに多国籍で老若男女。小・中学・高校生のみなさんはいなかったけども。

 手をあわせたまま、ずっと頭をもたげているご老人の傍ら、一度もしたことのない祈りを託した。いつもと違う意識があったことで、なにげない景色がたびたびリフレインする。「寄り道」の効果は、わたしにとって絶大なものになりうるかもしれない。

 あと、RPGで神聖な場所がでてくると、だいたい強いボスが奥で待っているとか、絶大な信頼を得ている誰かに裏切られるとか、大変なシーンを挟むことになるので、この地に意図せずエンカウントしてしまったことからも、わたしの人生ちょっとなんかあるんじゃないかって嫌な予感がしてる。

▼荏原七福神めぐりの「痛絵馬」は、ぜひとも現地で直接見てほしい




 現代人にはスマートフォンとかインターネットという便利なツールがあるのに、なぜわたしはこの時、なんにも検索しなかったのだろうか。自力で歩きまわって、この目で見てとれた情報だけで楽しもうと思ったからだけど、写真に撮って満足してきちんと目前のネタをチェックしていなかった!という凡ミス事件を起こしてしまった。

 ①東急電鉄各駅にポスターとパンフレットが設置されていて、
 ②全7種あるスタンプを集めるとA5クリアファイルがもらえて、
 ③パンフレットには各寺社の詳細とか載っていて、
 ④七福神シール(1点300円)もキュート、
 ⑤上神明天祖神社でのみ「痛絵馬コンテスト」を開催中!

 というのにパッと気づけなかったのがつらい。もっと、注意深くポスターやお土産品について神社のかたに聞けばよかったなあ。クエスト完全攻略まで道端の小石につまづきまくりそうな冒険者だ。まあ、それって確かにいつものことだけど。

▼看板「東京の白蛇さま」というキーワード、初見未予習だけどグッときた


「撫で白蛇」というパワーワード。もちろん、まんべんなく撫でまくる


▼うわーっ! 「撫で白蛇」に群がる大量の白蛇さまッ


 「じぶんの身体のなかで、よくなってほしいところがあれば撫でるといい」というのを幼少期に母から教わって以来、「タッチOK」の彫刻をみるとありとあらゆるところをナデナデしたくなる。場所を誤ると変な人だとおもわれるので注意が必要だが、わたしのような「撫でラー」は、きっと他にもいるはずだ。さわさわ。
 
 こちらにおわす東京の白蛇さまは、彫刻家・吉村サカオさんが手掛けたものらしい。ご本人のホームページで紹介されているパブリックコレクションに、「亀有駅南口バスロータリー」とだけ書かれているのだけど、もしかして、駅にカメの彫刻でもいるんだろうか。

▼おまけ写真。気になって調べてみた亀有駅南口バスロータリー


 現地まで行ってみたが、「亀有駅南口バスロータリー」付近に3体ある両津勘吉の像そのものに彫刻家・吉村サカオさんのお名前はなかった。もしかしてこのあたりかな?とわたしが勝手におもっているところを載せておこう。まったく違うかもしれないので、情報求む!

 ……では、中延(なかのぶ)のお話に戻る。

▼右のドラゴン的な巨大白蛇さんが気になり、赤い鳥居が怖くない


▼……いやっ、白蛇じゃなくてドラゴンだよな? まじまじと観察


 「白蛇縁起」と題された看板に、由来が記されていたので大まかにまとめておこう。鎌倉時代、清水の湧き出る洗い場があり、そこに白蛇が住んでいた。時がたち、それが消滅すると戸越公園の池に移り住むことになったが、地主の夢枕に立ち「はやくもとの住処に帰してほしい」と懇願した。地主は宮司にそれを伝えると、宮司は弁天社を建立する。池を掘り、中央に小島を設け、石窟に石祠をつくって白蛇をまつることにした。
 
 この後の展開がすごく神話的で好きだ。「白蛇を迎える日の夜、いよいよお迎えの祝辞を奉上しようとしたとき、それまでのかがやくばかりの星空が一天にわかにかき曇り、雷鳴とともに台風が立ち起こり、そのさまは身のすくむ思いだった」(原文ママ)。

 神になりうるナニモノかが人と絡むと、ふつうではみれない自然現象がぶわっと起こる、みたいな伝説がずっと残っているのが好きだ。誰かがコマンド選択をミスれば、いまごろ神と対峙していたかもしれない……とか妄想しては、そんな道を辿らずにすんだことに感謝するというか。

▼「防犯カメラ設置」の文字が気になりながらの参拝


▼タッチNGの気迫。目がわらっていたら撫でたかもしれない


 「どうかしてるマーケット」突入目的で中延駅まで来て、まさかこんなにも白蛇で頭がいっぱいになるとは思わなかった。この後も街歩きはしたのだけど、「おもしろいキャラやグッズが豊富」つながりでこの2件はどうしても離せなかった。中延という街は、そういう魂を呼び寄せる街なのかもしれない。そういえば弁天様って、音楽や芸道の神さまなんだっけ。

▼神社からのお願いごと。次の冒険者のためにも守っていきたい







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Cooley Gee

ヒカセン(光の戦士)の皮をかぶった栗。
『FINAL FANTASY XIV』プレイヤー。
雑多な「すき」を追うひと。
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