マチノネ#5 根府川、橋梁と日の入りの赤
- 更新日: 2023/03/29
岩礁の端で迎える日の入り
【本企画について】
到着駅から目的地へと向かう道中で景色が変わるごとにハンディレコーダーをかざしてフィールドレコーディング=自然音・環境音の採集を行い、その成果物として録音物を使いイメージに沿う音を足しながら楽曲を制作する。制作した楽曲は採集風景の映像とともに動画として公開する。

駅のホームに降り立つ途端に飛び込む一面の海。静岡へ帰省で向かう度、車窓越しの景色を目に留めてはいつか降りてみたいと思っていた。

思い付きで家を飛び出したため、時刻は午後3時を回っていた。海に着く頃にちょうど日の入りを見られるだろうか。

こぢんまりと可愛らしい駅舎の外観。改札外のベンチにぎっしりと人が収まっていた。

さて海へ向かうわけだが、道はこのとおり歩道がまるで無くて不安になる。恐る恐る歩き出す。

枯草に絡み付かれたフェンスの囲いの中に何かの標がある。

豆相人車鉄道駅跡という、かつて鉄道があった場所だそうだ。

フェンスの向こうにはこれから目指す先の景色と新幹線の線路が下に見える。思ったより近いみたい。

山間の小鳥のさえずりを掻き消すように時折轟音が駆け抜けていく。


民家の木や道端の草木にいちいち迫力がある。途方もない歳月をここで刻んできたのだろう。

降りていくと現れた荒涼とした川。この辺りから人の歩く通りと自然との境目がどんどん曖昧になっていく。川の流れる方向に従って進む。

地図と見比べてもどれが道なのかがそもそも分からない。当てずっぽに歩いては誰かの家に辿り着きを繰り返し、ようやく目的の橋が見えてきた。


下からのビジュアルは迫力満点。画像で見ていたより大きく感じる。この橋を潜った先に海があるようだ。

お土産屋さんが賑わっている。真裏がすぐこうだとは思わなかった。

歩道とガードレールの安心感たるや。

直売所のお兄さんに海への降り方を尋ねたところ、一帯がキャンプ場(有料エリア)なのでそれを避けて反対から回るのだと教えてくれた。


食事処の裏手に回るとすぐに海が見えた。テトラポッドや岩礁を見ると、あの荒々しい波間の目の前まで近づけるんじゃないかとワクワクする。

波打ち際のギリギリから望む日の入りは美しいグラデーションを描いていた。時刻は16時半、ベストタイミングだったと思う。岩礁の端に座ってメンチカツを食べるとしよう。

ここには自分しか居ないようだったが、遠くの岸辺では釣り人が群れていた。よく見れば足元に撒き餌の残骸や捨てられた竿が見受けられる。

バナナの皮もちゃんと持ち帰りましょう。

寒さもこたえてきたので海を後にする。

気付けば街灯が灯り出していた。直売所の前を通りかかると、外で休んでいたお兄さんが「海、降りられました?」と声を掛けてくれた。お陰様で良い景色が見れました、と会釈をした。
今回出来た楽曲はこちら。
これまではミニアコがメインでしたが新たにエレキギターを導入しました。これまでの回にはなかった、冷たさや寂寥感をテーマに据えて制作しました。
波打ち際の激しい波音からイメージした深い残響音のあるジャリっとしたギターが気に入っています。
レイアウトの更新に続きギターの導入により更に楽曲表現の幅が広がったので、新たな角度から街を描ける予感がしています。それではまた。