渋谷駅周辺を獅子舞の視点で歩いてみた

  • 更新日: 2022/01/18

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獅子舞の卵(?)

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獅子舞といえば、お正月にショッピングモールで子供達の頭を噛んで歩く賑やかしのものもあれば、地域の神社で神事の時に行われる厳かな獅子舞もある。

僕は田舎で「門付け」をする獅子舞がとてもお気に入りで、地域の家を一軒一軒回っていく獅子舞になぜか惹かれる。地域の各家に舞いに行くときは、玄関の前でまず家主からご祝儀という名のお金を受け取ってから、各地域独自の舞い方を披露する。以下の写真をご参照いただきたい。


▲石川県で見た獅子舞

門付け獅子舞の良いところは、普段見慣れた街になんか異様な生き物が出現して、普段見慣れているような街がちょっと違う風景に見えてきて。そして、子供が喜んだり泣いたりしてそれを見て大人が笑っていて、ちょっぴり厄を落としてもらえるようなありがたい気持ちになれるところだ。




さて、今回は獅子舞が歩いていることを想像しながら、渋谷駅周辺を歩いてみることにした。獅子舞がこの町に存在していたのか?存在しているのか?は、もはやよくわからない。少なくとも、僕は門付け獅子舞が歩いているところを見たことがない。だから、獅子舞を追いかけている気分で、楽しい妄想に浸りながら歩いてみることにした。



まずは夜の渋谷から。道幅が広いのでここを獅子舞が歩いていたら、人にぶつかることを気にせず、堂々と歩けるだろう。道が光に照らされていて安全だ。




工事が行われている歩行者用通路は、光の配線が面白い。ピンク色の美しい蛇がうねうねとしている。ここはたぶん、獅子舞にとって通りにくい。




フェンスが格好良くおしゃれをしている。渋谷ではあらゆるところに、光が仕込まれているのだ。




渋谷ヒカリエは夜でも光の粒に覆われている。あのビルのてっぺんまで、獅子舞が舞いに行くのは大変そうだな。




お酒が安い。門付け獅子舞では、たまにお獅子にお酒を飲ませることがあるので、こういう所に立ち寄ったら喜ぶだろうな。




木に取り付けられた光の玉=イルミネーション。人って光るものが本当に好きだよなと思う。超大昔の獅子舞なんかは神事との結びつきも強いだろうから、真っ暗なところでやるやつもあったのかな?と想像を膨らませる。今は、獅子舞も明るいところが好きそうだ。




次に僕が歩いたのは、昼の渋谷だ。昼に歩くと夜に歩くのに比べて、光に引っ張られることなく、情報量が豊富で客観的な情報を捉えられると思う。



夜のイルミネーションは、朝には単なる飾りと化して、間が抜けたようにそこに存在していた。それでもこういう遊びが街に溢れているのは楽しい。




渋谷にはこういう空間の存在が貴重だと思う。玄関前と道路までにある程度の空間があり、門付け獅子舞の舞い場には最適だ。家やマンション、お店など、獅子舞が舞えそうな場所とそうでない場所があるので、それについてはよく観察しておきたい。




このカフェも良い。ガラス張りで、内と外の空間があたかも連続しているように見える。内側から外側が覗けるので、門付け獅子舞が通りかかったら、その様子に気づくことができ、その演舞を見て楽しめるかもしれない。外の事象を受け止め自分ごとにしていけるようなカフェ空間だ。




このアプローチも素晴らしい。玄関前の広々としたアプローチで、思いっきり獅子舞を演じることができる。おまけに玄関が自動ドアなので、ドアを開けることが難しい門付け獅子舞でも、建物の中に入って人と交流できそうだ。




渋谷区文化総合センターの前まで来た。これはすごい。近未来的な公民館という印象を受ける。プラネタリウム、図書館、学習センターのほか、伝承ホールなどがある。地域活動を足し算した結果、こんな巨大な建築物ができたのかもしれないと思った。




これが、渋谷区文化総合センターへの緩やかなアプローチ。1階部分の作り方から考えて、獅子舞が舞うには十分なスペースがある。ただし、どこで舞おうか?広すぎても悩みどころになるだろう。




巨大な恐竜の卵!?生き物の匂いを感じる広場だ。僕は脳内で勝手に獅子舞の卵に変換してしまった。




こういう犬と飼い主が多数戯れるような場所は土地の余剰であり、獅子舞が舞っていても迷惑にはならないだろう。むしろ、犬と獅子舞が戯れたら面白いだろうな。




神の存在をかすかに感じたショーウィンドウ。




SHIBUYA109の正面玄関はなかなかに広いし人もまばらだった。獅子舞が舞うのには、ちょうど良い空間かもしれない。




渋谷のビルは一階から最上階までテナントでパンパンだ。全部回っていると、門付け獅子舞は疲れてしまうんだろうな。




ドラックストアのマツモトキヨシとアディダスのビルは、1階から上まで同じ会社で、しかも玄関が開放的だ。このような場所で、獅子舞は舞いやすい。

一方で、横のスシローなどの入ったビルは、玄関が閉鎖的で、4~8階までずっと異なる会社が入っている。こうなると、獅子舞が個別に舞いに行くというのがなかなかに難しい。かといってビルごとまとめて舞おうとすれば、誰がご祝儀を払うのか?という話にもなるだろう。




酒のケース(P箱)が建物の間に挟まっている。「酒」という存在が、居酒屋の内部を通り越して、街に踊り出ていることに、喜びを感じた。獅子舞は家々を回りながらも、演舞の合間に路上でお酒をラッパ飲みするということも多いが、そういう気楽な行為が広がっていくような可能性を感じる。




MEGAドンキがあった。ハロウィンの衣装を売っているなら、獅子舞の道具も売ってくれないかなという妄想をした。




天高くそびえる渋谷ヒカリエ。夜見た時に比べると静かで厳かな感じだったので、仏像みたいだなと思った。獅子舞が上まで舞いに行くのは大変そうだから、もはやビルごとお祓いの舞いをするのもあり。




渋谷には自販機がたくさん設置されている。獅子舞の合間に喉が渇いたら飲み物を補給できそうだ。ただ、飲み物を飲むにしても、自販機の目の前のスペースが休憩地(土地の余剰部分)ではないため、休憩地を探すのはやや苦労するかもしれない。




スクランブル交差点は渋谷で最も人が行き交う場所であり、最大の観光スポットだ。獅子舞は着ぐるみ(或いは胴幕)を纏った人間であり、体は大きくて実際の人間よりは歩くスピードが遅い。だから、このような大勢の人が行き交う交差点を渡るというのが少々きついかもしれない。でも通りがかりの人にたくさんちやほやされるだろう。




渋谷駅の周辺を、獅子舞気分で歩いた感想

門付け獅子舞の気分で渋谷を歩いたら、獅子舞を受け入れるだけの道幅がある町なの?道から玄関までのアプローチは確保されている?建物の高さは高すぎない?などと、「町の余白」みたいなものを好ましく思っている自分がいた。どうも資本主義と逆行したような思考に陥ってしまっている。資本主義の考えに照らし合わせてみれば、古民家みたいなものを取り壊して、高いビルを建てて、土地あたりの収益可能性を最大化していった方がお金は儲かるし効率が良いはずだ。

町の余白があり、スカスカな状態を好んでしまうということは、ただでさえ芳しくない昨今の日本のGDPに対して迷惑をかけてしまっているのではないかとさえ思ってしまう。町の余白を最大化した先にあるものが手付かずの自然とすれば、消滅可能性が高い限界集落は町の余白が限りなく存在するような場所だろう。でも、このような場所は税金を納める住民の数が少なくて、インフラコストが高く自治体からしてみればお荷物になってしまう。だから、このような町の余白にこだわるような民は、自分の資本力にモノを言わせて、「自分がこの村を守り抜く!」などと自分の趣味やこだわりのために、自分の身銭を犠牲にせねばならない。さもなくば、泣く泣くこういうお金持ちに頼るしかないのだ。果たしてそのような自分勝手な行為が許されて良いのだろうか。

それで故郷に未練のない高齢者やこれから社会を背負って立つ若者たちなどは、東京都心部や地方都市、コンパクトシティに建てられた高層マンションに移り住むことが奨励される。便利快適な生活を送れるし、お金もたくさん稼げるし、税金をたくさん納めて日本の経済活動に貢献することができる。渋谷ヒカリエの高層ビルを眺めていると、あのような場所があり日本を支えてくれているから、獅子舞を愛でることができるということを否応なしに考えさせられる。だから、獅子舞的な思考の持ち主も、渋谷の町と和平交渉をせざるを得ないのだ。






渋谷駅の周辺との和平交渉^^

其ノ壱
獅子舞は高層ビルの最上階まで、頑張って登って、仕事人たちを鼓舞すべし。

其ノ弐
獅子舞は交差点で人とぶつかってしまったら、謝って頭を噛んであげるべし。

其ノ参
道幅が狭い場所において獅子舞はゆっくり、のそのそと歩くべし。

其ノ肆
玄関までのアプローチが狭いお店でも、獅子舞は胴体を小さくしてでも舞うべし。

其ノ伍
例え通りすがりの人に無視されても、獅子舞は積極的にコミュニケーションを図るべし。




スクランブル交差点を横断する獅子舞








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稲村行真

文章を書きながらも写真のアート作品を製作中。好奇心旺盛でとにかく歩くことが好き。かつてはご飯を毎食3合食べてエネルギーを注入していた。

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