池袋は住みやすい町?獅子舞の生息地をMAP化して再考する

  • 更新日: 2022/06/14

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獅子舞が生息しそうな場所を塗ってみた

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地域の家々を一軒一軒回る「門付け型の獅子舞」の視点で街を歩いたらどのような姿が浮かび上がるか?を確かめている。門付け型の獅子舞とは、地域の家を一軒一軒回り、玄関先で披露される獅子舞のことである。この写真は石川県で見た門付けをする獅子舞だ。



獅子舞を受け入れる家の人は舞ってもらったお礼にご祝儀を包んで渡す。獅子舞は地域交流やコミュニケーションを促進させていく存在である。

今回の対象地は池袋。獅子舞の視点でどのような街の姿が浮かび上がるのだろうか?


豊島区の歴史

まずはじめに、池袋が属する豊島区について概観しておこう。江戸時代、豊島区は人口が3000人ほどで、7つの小さな村の集合体で形成されていた。ほとんどのエリアがのどかな農村地帯だったため、今とはまるで違った風景が広がっていたことだろう。

豊島区の市街化が進んだのは、明治時代の鉄道敷設以降の話。現在の山手線の原型ができ、大正から昭和にかけて人口が急激に増加した。その中で、1978年のサンシャインシティ開業、1990年の東京芸術劇場の開館など文化交流施設の集積が進み、演劇、映画、漫画など様々な文化活動が花開くこととなる。

1999年に財政破綻の危機を迎え、施設の統廃合や人件費の削減などの政策を実施。一時回復したものの、2014年には東京23区唯一の消滅可能性都市の指定を受けた。少子高齢化の問題が顕在化したため、アートとカルチャーを軸に、安心安全なまちづくりを推進。2020年には「SDGs未来都市」と「自治体SDGsモデル事業」に東京都で初めて採択された他、近年は人口も増加して待機児童ゼロなども実現している。

このように、豊島区は逆境をバネに住みやすい暮らしを追求してきた歴史がある。


獅子舞生息地について

豊島区の政策を色々と紹介することはできるものの、ここではあえて省略させていただこう。あくまでも門付け型の獅子舞の視点で、豊島区は住みやすいか?について考えていきたい。

今回の調査地域は、以下の図の黄色で示した「商業地」の部分だ。豊島区の用途地域を大まかに3分割するとしたら、低層住宅、商業地、中高層住宅地に分けられ、この中でも豊島区の象徴であるサンシャインシティなどの文化施設が集積している「商業地」について見ていきたい。



このエリアには無論、門付け型の獅子舞が生息しているという話は聞いたことがない。では実際に、獅子舞を生息させることは果たして可能なのだろうか?

獅子舞の生息のしやすさは土地の空間的な余白や、人の寛容さ、経済的な余剰などと関係する。ひとまず、池袋駅をスタート地点として、歩いてみることにしよう。


池袋駅周辺を獅子舞の視点で歩いてみた

JR池袋駅の改札を出ると、通勤時間帯はとくに、通行人が多く見られる。人の渦に巻き込まれてしまいそうだ。駅の外に出るまでにちょっと迷ってしまう。まず第一印象として、池袋駅の周辺は、人間より巨大な獅子舞にとって、空間的に少し歩きにくい道が多いと思った。



駅前の建物はとても高さが高い。エレベーターを使って上に行くのも一苦労だし、威圧感が半端ない。




ビルの一角に置かれた人形に遊び心がくすぐられる。人形が手を上げてくつろいでいるのだ。マッサージ屋さんの看板は、やけに手を強調してくる。ツッコミどころ満載の空間に、獅子舞の息遣いが少し聞こえたような気がした。




少し歩いていたら、道幅が広いことに気づく。池袋は「ウォーカブルシティ」などと呼ばれているようだが、やはり歩きやすい街だと思う。同時に、自転車も通りやすい道である。体が大きい獅子舞も通行しやすい道と言えるだろう。




ひとまず南池袋公園を目指そう。噂によれば、この公園は獅子舞にとって聖地のような場所だと聞いている。大通りから路地に入ると、住宅街に突入する。なんか草木が生い茂った家が多い印象だ。中には、大きな庭を持っている家もある。池袋のオアシスは意外と些細な場所に溢れている。




ファミマの横に、布袋尊がいた。布袋尊の家はとても綺麗で掃除が行き届いている。祈りを捧げる習慣が根付いているようだ。祈りを捧げ何かに感謝をする習慣がある土地には、獅子舞も生息しやすいと言えるかもしれない。



布袋尊は晴れと雨を予知できるらしい。すごい能力だ!日本全国を見渡せば、実は獅子舞にも同じような能力を持った仲間がいる。祭りの日にからっと晴れさせる石川県の「晴天獅子」や、五穀豊穣の願いとも結びつき雨を降らせる能力をもつ関東地方の「雨乞獅子」などである。

地域住民がその土地の自然環境を読み、願わくばこのような天気になってほしいという想いを獅子に託したのだ。天気予報以前の土地の気候との密接な関わり合いが立ち現れてきたようで、タイムスリップしたような気分になった。




南池袋公園に近づくにつれて、なんだか個人商店が増えてきた気がする。情緒溢れる街並みである。その個人商店のエリアにスッと入りとけ込んでいるのが、「まいばすけっと」というイオン系のスーパー。個人商店と同様に、どこか親しみやすさを感じる名前だ。

地域に馴染んだスーパーマーケットがあると安心する。池袋駅から少し離れたところに、こういうオアシス的なスポットがある。獅子舞をしているときに、お酒などをご祝儀として出してくれたら嬉しいなと想像を膨らませる。




近代的なお寺を発見した。目の前には、獅子舞が舞えるくらい大きな空間がある。獅子舞は神社に属していると思っている方も多いだろうが、もともと獅子舞が大陸から伝わった時は仏教との結びつきが強かった。獅子舞はお寺にも馴染みがあるのだ。こういう場所で舞ってみるのも面白そうである。




自転車置き場を発見!とても美しい自転車置き場だ。自転車置き場というと無造作に自転車が敷き詰められて息苦しいイメージが拭えないが、ここはもはやオシャレの域に到達している。



駐車場の利用料金はまあまあ安い。2時間以内は無料だ。獅子舞もずっと舞っていては疲れるから、お昼休憩の時などに、こういうところで重い体を休ませたいくらいだ。



実際に自転車はこのように停められている。実はこの地下に東京電力の変電所が存在しており、その占有料によって駐輪場脇にある南池袋公園がリニューアルされたとも言われているので、すごい仕組みである。土地を地下に伸ばすことにより、財政的な潤いと地上の暮らしの豊かさをもたらしているのだ。




駐輪場の脇にあるのが、噂の南池袋公園だ。ぱっと見で都市空間のオアシスとも呼べる場所である。獅子舞にとってここは、聖地のような場所と言えるだろう。



まず美しいテラスと大きな芝生に注目していただきたい。とにかく空間が広々としており、活用の自由度が高い。ざっくりといえば、なんでも受け入れてくれるみたいな寛容さを感じる。獅子舞がドカドカと走り回っても大丈夫そうだ。



これは「ベンチ」じゃなくて「段差」である。いや、体の大きさに関わらず、座ったり寝転がったりできるベンチとも言えるだろう。




さあ、日も暮れてきた。お腹がすいたら、近くには食事をするところも、飲み会ができる場所もある。獅子舞はお酒が大好物だ。お酒は昔、祀りごとの場だけで飲まれていた。お酒はクスリだったし、邪気払いでもある。だから、獅子舞とは相性の良い飲み物なのだ。

獅子舞の中には、祭りの日にお酒をたくさん口から流し込まれるものもいる。酔ってしまったら、ふらふらしたり暴れ獅子になったりする場合も多い。飲み会の話は後のお楽しみということにしておいて、もうちょっと周りを歩いてみることにする。




町内会の看板にお知らせが少なくて寂しい。最近はどこもそうだ。近所に迷惑がかからないように」という貼り紙だけが貼ってある。貼りつけるのは、なんでもいいと思う。獅子舞仲間たちのニュースでも貼りつけたいくらいだ。

獅子舞の世界では、なんでも褒める。とりわけ東北地方の獅子舞だと、「あなたの家は綺麗ですね」とか、「あなたの家は大きくて立派ですね」とか、訪問先の家々を褒めまくる場合もあるのだ。

もっと突っ込んで話すと、獅子舞が息づく世界では警察はいらないかもしれない。なぜなら、そういう人たちがいなくても、なんでもプラス思考に転じてユーモアにしてしまうため、ストレスが溜まらずに秩序が保たれるからである。




さあ、ここからはパーク街を抜けて、大きな道路に飛び出す。こういう大きな道路は町と町の境界になっていることが多い。向こう側にはサンシャインシティや東急ハンズなど、大きな商業地が広がっている。住む場所というよりかは、買い物をする場所だ。ちょっと散策してみることにしよう。




東口五差路というのは、なんだか渋谷のスクランブル交差点みたいだ。人が多すぎる。人と人とがぶつかり合うから、もちろん獅子舞だってぶつかる。でもなんだか、賑やかで楽しげな感じもする。これがとても不思議な感覚なのだ。堂々と歩けなくて窮屈で嫌な場所は多いけれど、ポジティブなエネルギーを放っている場所もたまにはある。




さあ、ここがサンシャインシティと東急ハンズの入り口だ。この空間をよくみていただきたい。池袋で一番騒がしいスクリーンがある。

でもこれだけ騒がしい大きなスクリーンがあるということは、広告ビジネス的には素晴らしい立地だ。それだけこの場所は人に訴えかけるのにちょうど良い場所なのだ。

そう考えると、ここで獅子舞を舞うのはグッドアイデアかもしれない。獅子舞は目立つことを好むからだ。人にちやほやされてなんぼなので、無視されると悲しい。だからこういう場所で演舞できることは、獅子舞にとっては誇りである。




巨大な生き物が出現!?大きな蛇が横たわっているようにも思える。これがいわゆる首都高速道路だ。




そこから一本道を入ると、綺麗なマンションが出現!実はこれ、豊島区役所が入っている建物で、上階が分譲マンションになっている。行政が住民に寄り添っている感が半端ない。緑がところどころからこぼれ出ているのがなんか良い。

獅子舞の体毛は元々ふさふさしていたのだが、沖縄の獅子舞以外は途中から布に変わったから表面に毛がある感じがしない。でもこの風景見てたら、ドバドバと野生味を感じてきて、獅子舞が先祖返りしたような気分になってきた。




このバスは色は赤いが、ダンゴムシみたいだ。ダンゴムシのおかげで、町がおしゃれに見えている。それにしてもバスより路面電車っぽくも見えるダンゴムシだ。




ここが豊島区役所の入り口である。なんか、映画のワンシーンを見ているみたいだ。ちょっと中に入ってみよう。




豊島区役所の総合案内所がある。今日はもう終了しちゃっているらしい。ここで色々と獅子が悩みをぶっちゃけちゃうのもありかもしれない。いや、それはちょっとご迷惑になっちゃうだろう。




ここから池袋駅まで繋がっているらしい。区役所と池袋駅を繋ぐ地下通路があったとはびっくりだ。ここにも地下空間が広がっているようである。さて、再び地上の路地歩きに戻ってみよう。




このそろばん塾、なんか素敵だ。窓が広くて地域に開かれた感じが良い。親御さんも、子供の送り迎えに来ているようで、中をのぞいている。酔っ払いは遊びに来ちゃいけない場所だ。




都会にも、クマが住み着く森があったとは。このお店の柱をみていただきたい。なんか、鬱蒼とした感じ、伝わるだろうか?窓からはキノコみたいなものが見えているが、多分キノコではない。

獅子舞のシシはライオンだけじゃなくて、人間の身の回りにいる獣も含まれるので、クマをモチーフとしたものも多い。身近な動物に寄り添う心が、獅子の生息する町を作るとも言える。




丸々と太った雀もいた。なぜ髪が2本なのだろうか?寝る前にお風呂に入っちゃったのかもしれない。




さて、池袋駅付近まで戻ってきた。なんだか人が多くてやっぱり賑やかだ。西武百貨店がドカーンとある。そういえば、とっておきの場所があったことを思い出した。ちょっと西武百貨店の屋上まで上がってみたい。



西武百貨店の屋上には、食と緑の空中庭園がある。




さあ、ご覧いただきたい。ぶわっと広がる小宇宙!とでも言うのがふさわしいだろうか。「空のほとりで逢いましょう」と遠くに書かれている。

闇から光が見えてきた。やっぱり、池袋は獅子舞が生きやすい土地になっていくだろう。池袋が属する豊島区は2014年に消滅可能性都市に指定されてしまったが、公園整備、ウォーカブルシティなどの政策を頑張ってきた。これからは、獅子舞が生きる可能性の高い都市として、評価されるようになる日も近いだろう。




屋上庭園の端にはひっそりとお稲荷さんが佇んでいる。渋谷の街をじっくりと見守ってくれているのだ。屋上という商業空間の上に立つこの神社は、池袋で最も高い所に存在する神社と言えるだろう。

西武百貨店が池袋駅に直結しており、商業地の中心を占めると考えるならば、このお稲荷さんは実は人々の精神的支柱となる存在と言えるかもしれない。まず、池袋の生業の中枢を担う商業を基盤として発達した信仰は、屋上の一角にその姿を顕現させたのだ。さて、今回はこのお稲荷さんを終点としておししまいとしたい。


池袋の獅子舞生息地をMAP化

さて、池袋の獅子舞散歩はいかがだっただろうか?まず池袋は概して、獅子舞に優しい街だと感じた。文中に登場した獅子舞が生息しやすい場所をまとめてみると、以下のような場所が挙げられる。

・はりきゅうマッサージグローバル治療院池袋東口
・まいばすけっと南池袋2丁目店
・常在寺
・豊島区立池袋駅南自転車駐車場
・豊島区立南池袋公園
・サンシャインビジョン
・豊島区役所
・東原そろばん教室
・WOODPEPEライフスタイルショップ
・食と緑の空中庭園(西武池袋店屋上)
その他

これらを踏まえた上で、門付け型の獅子舞が実際に池袋に生息するならば、以下のようなスポットを巡ることになるだろう。緑のラインで囲ったエリアが獅子舞のホットスポットと言える場所である。



獅子舞が舞う経路を考える上で、もっとも重要な場所は南池袋公園である。ここを起点として、獅子舞の舞い始めとなる神社選びをする。そうなると、様々な神社があるものの、結局このエリアの信仰の中枢がどこにあるかを考えると、西武池袋店の屋上にあるお稲荷さんが最もふさわしいように思えてくる。

そこで、このお稲荷さんで舞い始め、南池袋公園周辺のエリアを丁寧に回り、豊島区役所という行政の中枢と、池袋の象徴とも言えるサンシャインシティを回り、再び西武池袋店の屋上にあるお稲荷さんに戻ってくるという順路がしっくりくる。

池袋の獅子舞の生息地を俯瞰すると、以前に調査した新宿や渋谷の生息域に比べて広域的であると感じる。これは池袋がとりわけ獅子舞が生息しやすい町であることを示している。実際に獅子舞を舞ってみると、その生息のしやすさに驚くことだろう。新宿や渋谷などと比較されやすい池袋ではあるが、獅子舞の住みやすさという視点では、勝ち越していると言えるかもしれない。








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稲村行真

文章を書きながらも写真のアート作品を製作中。好奇心旺盛でとにかく歩くことが好き。かつてはご飯を毎食3合食べてエネルギーを注入していた。

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