マチノネ#13 築地、鳴動する鯨の骨格から
- 更新日: 2025/04/23
液体金属の様に妖しく輝く
カメラを持って来なかったことを後悔することがよくある。そういう時に見た景色ほど頭に残って忘れられない。
土曜午後2時、澱む曇天の佃大橋から見た仄暗い水面。幾何学的に交錯する道路とスロープ。歩けども誰ともすれ違わず、自分だけが迷い込んできてしまったかのようだった。
もう一度足を運ばねばなるまい、出来ることなら同じ条件の下がいい。
半年ほど経ったある土曜日、晴れのち曇りの予報を確認し足早に家を出た。

降りたのは築地駅ではなく築地市場駅。その名の通り場外市場の最寄り駅だ。出口に面した大通り沿いは撮影が憚られるほどに人通りが激しい。

ほどなくすると場外市場が見えてきた。何時ぞやの社員研修で市場内部に入ったことはあるがこちらは写真ですら見たことがない場所だ。

想像以上の人混み。ガヤガヤとひしめき合う人通りの中、路面店はあれがいくら、これがいくらだとしきりに呼び込みをする。さながらお祭りのような活気だ。

バラック造りの並びの2店はのぼり旗と暖簾が入り乱れもはや何の店なのか分からない。せっかく来たので何か食べ歩きでもしようかと思ったがどこも列の並びがあり断念。

荷運びに使われる荷台付きスクーターがそこかしこに停まっている。ターレットトラックに乗ったお兄さんがこちらに気付きピースをくれたのにみすみす撮り逃してしまった。

ここはほとんど歩行者天国状態なのか、こういった資材も歩道の外に構わず置かれている。まれに通りかかるタクシーやトラックが慣れた速さですり抜けていく。

前に来た佃大橋のちょうど向かいに架かる勝鬨橋。シンプルに道を間違えたがこちらの方が見応えがあって良いかもしれない。

何のための信号なんだろうか。歩道の柱上なので車とも船とも違うはずなのだが...。
(後々調べてみたところ、この橋は本来真ん中からパカンと開く可動橋で信号は開けている際に人を通さないようにするためのものらしい)

薄曇りの空から滲み出す陽が温かみを添える浅葱色の運河。近くを行き交う車が足元を揺らし地響きを立てている。吹き荒ぶ風の中、寒さに鼻をぐずらせながら歩く。

どうやら下に降りられるみたいなので運河を正面から見に行く。

下を人が通ることに配慮してなのか、物が落ちないようにアクリル板で塞がれている。

潮風を受けて藍染のような風合いに。雰囲気があると言えば聞こえはいいが同時に塩害の強さを実感させられもする。

橋上からは淡く輝いて見えた水面が、眼前に近付くと溶けた鉛のような仄暗い色に姿を変えている。何かがこちらにせまってくる音がする。

橋を潜って現れたのは浅草から豊洲やお台場へ向かう観光船だった。以前乗ったことがあるのだが夕暮れ時は素晴らしい景色が見られる。

橋の迫力に人の小ささが際立って見える。見上げる橋はまるで鯨の骨格標本を間近に見ているようだ。音を立てて身体を捩るかのように揺れている。
今回の制作物はこちら。
橋から覗き見る運河の雰囲気を感じてもらえたら嬉しいです。
かつてないほどショートコースの散歩でしたが、同時に撮影カット数はこれまでで一番多く見どころに溢れていた事を実感しました。
それではまた次回。
土曜午後2時、澱む曇天の佃大橋から見た仄暗い水面。幾何学的に交錯する道路とスロープ。歩けども誰ともすれ違わず、自分だけが迷い込んできてしまったかのようだった。
もう一度足を運ばねばなるまい、出来ることなら同じ条件の下がいい。
半年ほど経ったある土曜日、晴れのち曇りの予報を確認し足早に家を出た。

降りたのは築地駅ではなく築地市場駅。その名の通り場外市場の最寄り駅だ。出口に面した大通り沿いは撮影が憚られるほどに人通りが激しい。

ほどなくすると場外市場が見えてきた。何時ぞやの社員研修で市場内部に入ったことはあるがこちらは写真ですら見たことがない場所だ。

想像以上の人混み。ガヤガヤとひしめき合う人通りの中、路面店はあれがいくら、これがいくらだとしきりに呼び込みをする。さながらお祭りのような活気だ。

バラック造りの並びの2店はのぼり旗と暖簾が入り乱れもはや何の店なのか分からない。せっかく来たので何か食べ歩きでもしようかと思ったがどこも列の並びがあり断念。

荷運びに使われる荷台付きスクーターがそこかしこに停まっている。ターレットトラックに乗ったお兄さんがこちらに気付きピースをくれたのにみすみす撮り逃してしまった。

ここはほとんど歩行者天国状態なのか、こういった資材も歩道の外に構わず置かれている。まれに通りかかるタクシーやトラックが慣れた速さですり抜けていく。

前に来た佃大橋のちょうど向かいに架かる勝鬨橋。シンプルに道を間違えたがこちらの方が見応えがあって良いかもしれない。

何のための信号なんだろうか。歩道の柱上なので車とも船とも違うはずなのだが...。
(後々調べてみたところ、この橋は本来真ん中からパカンと開く可動橋で信号は開けている際に人を通さないようにするためのものらしい)

薄曇りの空から滲み出す陽が温かみを添える浅葱色の運河。近くを行き交う車が足元を揺らし地響きを立てている。吹き荒ぶ風の中、寒さに鼻をぐずらせながら歩く。

どうやら下に降りられるみたいなので運河を正面から見に行く。

下を人が通ることに配慮してなのか、物が落ちないようにアクリル板で塞がれている。

潮風を受けて藍染のような風合いに。雰囲気があると言えば聞こえはいいが同時に塩害の強さを実感させられもする。

橋上からは淡く輝いて見えた水面が、眼前に近付くと溶けた鉛のような仄暗い色に姿を変えている。何かがこちらにせまってくる音がする。

橋を潜って現れたのは浅草から豊洲やお台場へ向かう観光船だった。以前乗ったことがあるのだが夕暮れ時は素晴らしい景色が見られる。

橋の迫力に人の小ささが際立って見える。見上げる橋はまるで鯨の骨格標本を間近に見ているようだ。音を立てて身体を捩るかのように揺れている。
今回の制作物はこちら。
橋から覗き見る運河の雰囲気を感じてもらえたら嬉しいです。
かつてないほどショートコースの散歩でしたが、同時に撮影カット数はこれまでで一番多く見どころに溢れていた事を実感しました。
それではまた次回。