藤野を散歩しました
- 更新日: 2022/03/10
用事のない街の景色
中央線の藤野駅に降りました。
なんで藤野かっていうと、僕の心の引っ張り合いの結果です。

直接的な理由はいくつかあって、ちょっと前に山梨へ行ってた城戸さんが楽しそうだったから、というのはある。俺も遠出したい。
そうね、月並みな言い方をすると、旅情を感じたい。
それで、あてもなく中央線に乗ったはいいけれど、一方で僕は「逆旅情」みたいな気持ちが湧くことがあって、具体的には、プチ冒険をしても夕方までには横浜にしれっと戻って普段の生活パターンに合流すると落ち着くみたいな、そういうのがある。この気持ちはあまり説明できないんだけど、すべてを踏み外す勇気がない、みたいなことなのかもしれない。ちょっと違うかな。わかんない。
そんなこんなで、旅情と逆旅情の綱引きの結果、ヤー! って降りたのが、神奈川県相模原市緑区、藤野駅だったってわけ。
高尾駅から2つ目。近い。東京から全然離れてないな。ヘタレが感すごい。旅情とは?
しかも神奈川県横浜市を出発して東京都八王子市を経てふたたび神奈川県に居るってのはなんだか損した気分になる。ふりだしに戻る、みたいな。

いや、まわりを見よう。ずいぶん遠くまで来た。すぐそこ山梨だし。


普段見ない行き先。こういうのがいいのだ。大月とか甲府とか、行こうと思えば行ける場所に居る。行かないけど、旅の入り口には立っている。
大月は終電で寝過ごし流れ着いた人たちが拓いた町だと風の噂で聞いたことがある。

人が殆ど降りない。
まあ、ふつうこのあたり降りるなら隣の相模湖降駅りますわ。
ボート乗ったり相模湖観光するならお隣へどうぞ、という感じ。

じゃあ藤野駅は何だというと、どうやら山登りができるらしく、そういう格好の人達が何人か降りた。
そういうのに紛れて、カジュアルに降り立った。山を舐めていると思われたらどうしよう。
ところで藤野駅、初めて降りたんだけど、何か見覚えあるなと思ったら、トンネルマニアであるところの息子と車でこのあたりに来たことがあった。
降りてから気付いた。

駅のすぐ裏手に沢井隧道という妙ちくりんな形のトンネルがあって、これを見に来たのでした。

トンネルを潜った先に日野という名前の集落があった。

午後に訪れると、山に囲まれたその集落だけに陽が差しており、まさに日野じゃんか……と思ったんだった。
じっくり歩きたかったんだけど車で来ているし、次の予定(トンネル)もあったのでそのときは足早に藤野を後にした。
まさか、ヤー! って降りた駅がそこだったとは。
あの日の続きの散歩ができる。
そんなこんなでスタート。

藤野駅前、お店いくつかあるんだけど、薬屋さんのほかに、

本屋があったんだけど、登山関連とかではなさそうだった。

すぐに甲州街道に出る。
藤野ってば人には殆ど会わないんだけど、この道の交通量だけはすごい。
そのくせ、狭い。

トラック近いな!
これ、俺の努力で牽かれてない感じだからね。

倉だ。いいな!

おお、自営の駐輪場だ。
駅の駐輪場が遠かったり小さかったりしたときに駅近の地主だけができる羨ましいビジネス。
俺も高校時代、駅の近くの家と契約していた。契約者は変な猫のステッカーを自転車の泥よけに貼る決まりで、そのステッカーを貼った者は猫の一族と呼ばれていた。

ポストの輪郭

要らないならくれ。

赤いというアイデンティティが失われた発泡スチロールの天狗。

看板の屋根と、"山形に上"の屋号が相似でいいなと思いました。

藤野交通のマークは藤。車内いい匂いしそう。

多分このあたりのコンビニ的役割を果たしているお店だった。
青果、惣菜、パン、なんでもあるんだけど、近所の人の嗜好が反映されるのか売ってるものがいちいち興味深い。
おじいちゃんが飲み終わったオロナミンCの瓶を大量にレジに並べたあと、新しいオロナミンCを買っていった。
へえ、瓶の回収やってるお店まだあるんだな、と思ったら「もう持ってこないで」と注意されていた。
あと、藤野屋だとずっと思ってたんだけど今写真見返したら藤田屋でした。

これが、

ゴミでいっぱいだった。
それともホイールの漬物でも作ってんのかな。

唐突な一番宣言。
俺もそう思うよ。

その看板の背後が空(くう)で、はるか下に深緑の川が流れていてぞっとした。
のどかなローカル駅の散策気分でいたけど、そうだ、ここには相模川があった。

改めて藤野付近を見る。
北へ向かう県道522号というのが、沢井隧道を抜けて日野へ向かう道です。あとでいく。
南には相模川。
相模湖よりも上流なのに相模川。
相模湖はダム湖だからあとから出来たもので、相模川は富士五湖のひとつ、山梨県の河口湖を水源としている。
相模川はもうちょっと西へ行くとすぐ山梨県に入って、そこでは桂川と呼ばれているので、「相模湖より上流の相模川」区間はかなり短くて、ここらでしか見られない、と考えると藤野の希少価値が出てきませんかね。

出てきませんかね? 出てきましょうよ。

遠くに橋が見える。
付近に橋は一つしか見当たらないのでとりあえずそこを目指します。


細っこい道があって、そこから相模川の橋のほうへ下れそうでした。
やった、いい抜け道見つけた! と思ったのですが、

これみよがしな案内看板があって、なんか有名な道っぽかった。
みんな通る、整備された道だった。
まあ、そんなもんですよ。全部誰かのお膳立て。感謝感謝の毎日です。

しかしいい道だなー。どんどん下れる。

山の斜面は日当たりが良くて、畑になっていていた。
所々、民家があって人が住んでいる。
勝手な憶測だけど、もとから住んでいる人と、好んで住んでいる人の両方が居そうな感じがした。
一般的な住宅のほかにお洒落な建物がいくつかあったので、そう思った。

谷を見下ろすプロパンガスが良かった。
この集落の支配層かな。

あれっ、橋まで行かなくても渓谷まで直滑降の道があった!
ひゃっほう! かわ!

と思ったら行き止まりだった。
でも、すぐそこに深緑の水を湛えた淵が見える。
ふだん都心で見るコンクリートの護岸で縛られた川ではなくて、谷に抱かれた川は本来の怪しさを解放している。
いまそこから河童出てきても全然信じる。全然キュウリ渡す。

そんなところにもNHKは等しく降り注ぐ。

斜面に生えた木のうねり。

いつのまにかまとまった住宅街になった。
谷の斜面に居るはずなんだけど、このあたりは平地に見える。

あんまり見たこと無い透かしブロック。
縁取りがしてある。

かっこいいバイクにかわいい敷物をかぶせている。

これすごくない? 縦樋に、コンクリ巻いてる。
アスパラベーコン巻きみたいな仕上がり。

そりゃあ割れるよねえ。割れるよ。

冬は寄り添いたい。


藤野に越して一年目の人に与えられる駐車スペースだ。

よそ者をすごい威嚇してくるじゃん。

お?

手乗りカーブミラーだ。

かわいい。藤野名産にしたらいいのに。

一段低い本流に合流するような交差点好き!
水の流れのごとく左に折れると、

あー、こうなるのか。なるほど!
わりとあっけなく橋に着いてしまった。

渡る気になったので渡る。しかい遠いな。

「飛んで渡ればよくね?」
みたいな奴らめ。


静かな川は心がどこか落ち着かない。むしろ少し怖い。
山に対する畏怖みたいなものに近いのかもしれない。
ここの夜とかを想像すると、取り込まれそうになる。

実際、落ちても誰も見てないだろうし助からなさそう。

お前もそう思う?

あたたかそうな斜面に人が住んでいる。
淵との温度差がまぶしい。

対岸に来た。
時間のせいか、こちらは暗い。

なんとなく行くのやめようと思った道。
この道はずっとこうなのかな。
やっぱり、日向の時間がある場所に集落があるんだろうな。
一方で、世田谷区の住宅街には陽が当たらずになぜかずーーっとアイスバーンの道があるのなんでだ。雪降ったの4日前よ? みたいな。

ところで、先ほどから人と一切出会わない。

おっ!

はい。

すごく高いところにある注意書き。
付近の住民はこのくらいが目線なんだろうか。会わないから想像するしかない。

ここは……普通にネクターを売ってる地なのか? 最高だな。

もういいよ。

景観に考慮しすぎた駐車場だ。

下手すぎない?
と思ったんだけど、ここらへん街路灯が無いんだよな……
川に落ちなくてよかったですね……

無理矢理平面を創り出す技術だいすき!

唐突だな。まあ、街はいつも唐突か。

お顔が見えない。擦ると叶う系のお地蔵様でこんな感じのを見たことがある。

いつのまにか、大分登ってきた。さっきまでいた集落と橋が小さく見える。
すごく良い眺めなんだけど、俺、この街に一切用事がないんだよな。

本当に近くて、踏切の向こうにすぐにトンネルが見える。

しかし中央線って迷いがなくていいな。
敷いたとき、なんもなかったからな。

ハチィ~~
いまのは「HACHI~約束の犬」のリチャード・ギアです。

沢井トンネルは、中央自動車道と、あとその後ろの山を一気に潜る感じになってるっぽくて、わりと長い。
あとこれ、お察しのとおり、車は中ですれ違えません。
一直線で見通しはよいので、向こうから来るかどうかは分かるんだけど。

だからまあ「おたくらで譲り合ってうまいことやってよ」みたいな感じです。
これは山の習わしじゃないか。まあ。ここ山だわ。

ほんで狭いくせに歩道がちゃんとあるんですよね。
山向こうの集落へ帰っていく中学生を見た。生活。

中でなぜかさらに狭くなる。出たとき小人になってたらどうしよう。
前回車で通ったとき、向こうからヘッドライトが見えて、「ステイステイステイステイ……!」って叫びながら通ったの思い出した。
相手はこちらが先行しているのが見えてるはずなんだけど、もし話の通じない奴で突っ込んできたらどうしよう、みたいな恐怖はある。

さらに何回かせまくなったあと、

ゆかいな形状の出口が見えて笑っちゃう。

ゆかいだなあ。

いまゆかいだから土も撮っちゃう。よかったね土!

ちょっと歩くと、谷戸に人が住んでいるのが見えてくる。

この辺が日野だと思う。

すみません、少しだけお邪魔します。

ご挨拶を頂きました。

水が湧いているっぽい。

飲食店がある。
コロナ禍で休止中でした。残念。

誰にも会わない、静かな集落なんだけど、意外にも工場エリアがあってそこだけ人がいてゴンゴン稼動していました。
先ほどの飲食店も、工場の人が行くのかもしれない。

家と畑と倉。

この谷には沢井川が流れている。

そんなに深くないし、整備されている。
昔はどんな感じだったんだろ。田んぼやってたかしら。

川に向かって鉢植え。
この仕草、都心でもたまに見るんだけど、人の視界には入ってこないので、目を楽しませるというより、川に供えるみたいな意図なんだろうか。

これだけ木に囲まれても松を育てるんだよな、と当たり前のことを思った。

近づいたら怖いやつでびっくりした。
俺とか、ワー! ってネットに体預ける確率ゼロではないよ?

手数! って思った。

「わたし」とは。

ひとつだけ栗が残っていた。
さっきから、帰るきっかけを失って歩いています。
あと一個なにかあったら帰ろう……

なんかあの山から雲が湧いてる気がするなー。

いいY字路! やったー! よし! 帰ろう!!!

悪い奴が三角の向きを逆にしていなければあっちが藤野駅だ。帰ろう!

でも帰り際に神社を見つけてしまった。御嶽神社というらしい。
同名のオオカミ信仰で有名な神社あるけど関係あるかな。
暗い山へ続く階段が見える。

石段が劣化していて、幅が踏み外しそうなくらいに狭いからか、ご丁寧にバリアフリーになっていた。
この、素朴でささやかな神社がバリアフリーで手厚い感じ、なんと形容しようか考えたけど出てこなかった。ピカピカチュウ、ピカピカピカチュウ、ピカピカピカチュウ、ピッカチュピッカチュピッカッチュウ!

死ねるな。そしてしばらく気付いてもらえなさそうだ。
山間は明暗がはっきりしていて、この神社はたぶん午後はずっと暗い。

と思ったら、社殿だけ眩しくて、神々しかった。そういう場所に建てたのかしら。

脇に目をやると谷が見えた。
吸い込まれそうで、しばらく見てしまった。

神社の一角、薪割りしながらお酒を飲んだ人が居るな。
最高のスペース。これのジオラマ作ろうかな。

というかこのエリアの日没は、思ったより早いのでは……
とインテリジェンス脳が気付いたので、今度こそ帰ることにしますね。

えっ今言う? 熊出るの?
それ知ってたらやってない行動いくつかあるよ?

無銘の墓標こわ! と思ったら、幹をガードしているだけだった。

あたらしい信仰だろうか。

そんなこんなで県道沿いは既に薄暗くなりつつありましたが、

日野はやっぱり日野という感じで、素晴らしいなと思いました。

では、私はもとの世界に戻ります。



こっちめちゃくちゃ昼じゃん。時差?

藤野で最後に撮った写真。
みじ階段。
このあと、藤野のコンビニこと藤田屋にもう一度入って、昼ご飯になりそうなものを漁ったのですが、すぐに袋開けて食べられそうなものがヤマザキの「大きなメロンパン」しか見つからず、全然メロンパンの口ではなかったんだけど、がんばって食べて500kcalを摂取し、藤野の後味はぜんぶそれに持っていかれた。
なんで藤野かっていうと、僕の心の引っ張り合いの結果です。

直接的な理由はいくつかあって、ちょっと前に山梨へ行ってた城戸さんが楽しそうだったから、というのはある。俺も遠出したい。
そうね、月並みな言い方をすると、旅情を感じたい。
それで、あてもなく中央線に乗ったはいいけれど、一方で僕は「逆旅情」みたいな気持ちが湧くことがあって、具体的には、プチ冒険をしても夕方までには横浜にしれっと戻って普段の生活パターンに合流すると落ち着くみたいな、そういうのがある。この気持ちはあまり説明できないんだけど、すべてを踏み外す勇気がない、みたいなことなのかもしれない。ちょっと違うかな。わかんない。
そんなこんなで、旅情と逆旅情の綱引きの結果、ヤー! って降りたのが、神奈川県相模原市緑区、藤野駅だったってわけ。
高尾駅から2つ目。近い。東京から全然離れてないな。ヘタレが感すごい。旅情とは?
しかも神奈川県横浜市を出発して東京都八王子市を経てふたたび神奈川県に居るってのはなんだか損した気分になる。ふりだしに戻る、みたいな。

いや、まわりを見よう。ずいぶん遠くまで来た。すぐそこ山梨だし。


普段見ない行き先。こういうのがいいのだ。大月とか甲府とか、行こうと思えば行ける場所に居る。行かないけど、旅の入り口には立っている。
大月は終電で寝過ごし流れ着いた人たちが拓いた町だと風の噂で聞いたことがある。

人が殆ど降りない。
まあ、ふつうこのあたり降りるなら隣の相模湖降駅りますわ。
ボート乗ったり相模湖観光するならお隣へどうぞ、という感じ。

じゃあ藤野駅は何だというと、どうやら山登りができるらしく、そういう格好の人達が何人か降りた。
そういうのに紛れて、カジュアルに降り立った。山を舐めていると思われたらどうしよう。
ところで藤野駅、初めて降りたんだけど、何か見覚えあるなと思ったら、トンネルマニアであるところの息子と車でこのあたりに来たことがあった。
降りてから気付いた。

駅のすぐ裏手に沢井隧道という妙ちくりんな形のトンネルがあって、これを見に来たのでした。

トンネルを潜った先に日野という名前の集落があった。

午後に訪れると、山に囲まれたその集落だけに陽が差しており、まさに日野じゃんか……と思ったんだった。
じっくり歩きたかったんだけど車で来ているし、次の予定(トンネル)もあったのでそのときは足早に藤野を後にした。
まさか、ヤー! って降りた駅がそこだったとは。
あの日の続きの散歩ができる。
そんなこんなでスタート。
藤野駅前

藤野駅前、お店いくつかあるんだけど、薬屋さんのほかに、

本屋があったんだけど、登山関連とかではなさそうだった。

すぐに甲州街道に出る。
藤野ってば人には殆ど会わないんだけど、この道の交通量だけはすごい。
そのくせ、狭い。

トラック近いな!
これ、俺の努力で牽かれてない感じだからね。

倉だ。いいな!

おお、自営の駐輪場だ。
駅の駐輪場が遠かったり小さかったりしたときに駅近の地主だけができる羨ましいビジネス。
俺も高校時代、駅の近くの家と契約していた。契約者は変な猫のステッカーを自転車の泥よけに貼る決まりで、そのステッカーを貼った者は猫の一族と呼ばれていた。

ポストの輪郭

要らないならくれ。

赤いというアイデンティティが失われた発泡スチロールの天狗。

看板の屋根と、"山形に上"の屋号が相似でいいなと思いました。

藤野交通のマークは藤。車内いい匂いしそう。

多分このあたりのコンビニ的役割を果たしているお店だった。
青果、惣菜、パン、なんでもあるんだけど、近所の人の嗜好が反映されるのか売ってるものがいちいち興味深い。
おじいちゃんが飲み終わったオロナミンCの瓶を大量にレジに並べたあと、新しいオロナミンCを買っていった。
へえ、瓶の回収やってるお店まだあるんだな、と思ったら「もう持ってこないで」と注意されていた。
あと、藤野屋だとずっと思ってたんだけど今写真見返したら藤田屋でした。

これが、

ゴミでいっぱいだった。
それともホイールの漬物でも作ってんのかな。

唐突な一番宣言。
俺もそう思うよ。

その看板の背後が空(くう)で、はるか下に深緑の川が流れていてぞっとした。
のどかなローカル駅の散策気分でいたけど、そうだ、ここには相模川があった。
改めて藤野付近を見る。
北へ向かう県道522号というのが、沢井隧道を抜けて日野へ向かう道です。あとでいく。
南には相模川。
相模湖よりも上流なのに相模川。
相模湖はダム湖だからあとから出来たもので、相模川は富士五湖のひとつ、山梨県の河口湖を水源としている。
相模川はもうちょっと西へ行くとすぐ山梨県に入って、そこでは桂川と呼ばれているので、「相模湖より上流の相模川」区間はかなり短くて、ここらでしか見られない、と考えると藤野の希少価値が出てきませんかね。

出てきませんかね? 出てきましょうよ。

遠くに橋が見える。
付近に橋は一つしか見当たらないのでとりあえずそこを目指します。
斜面の集落


細っこい道があって、そこから相模川の橋のほうへ下れそうでした。
やった、いい抜け道見つけた! と思ったのですが、

これみよがしな案内看板があって、なんか有名な道っぽかった。
みんな通る、整備された道だった。
まあ、そんなもんですよ。全部誰かのお膳立て。感謝感謝の毎日です。

しかしいい道だなー。どんどん下れる。

山の斜面は日当たりが良くて、畑になっていていた。
所々、民家があって人が住んでいる。
勝手な憶測だけど、もとから住んでいる人と、好んで住んでいる人の両方が居そうな感じがした。
一般的な住宅のほかにお洒落な建物がいくつかあったので、そう思った。

谷を見下ろすプロパンガスが良かった。
この集落の支配層かな。

あれっ、橋まで行かなくても渓谷まで直滑降の道があった!
ひゃっほう! かわ!

と思ったら行き止まりだった。
でも、すぐそこに深緑の水を湛えた淵が見える。
ふだん都心で見るコンクリートの護岸で縛られた川ではなくて、谷に抱かれた川は本来の怪しさを解放している。
いまそこから河童出てきても全然信じる。全然キュウリ渡す。

そんなところにもNHKは等しく降り注ぐ。

斜面に生えた木のうねり。

いつのまにかまとまった住宅街になった。
谷の斜面に居るはずなんだけど、このあたりは平地に見える。

あんまり見たこと無い透かしブロック。
縁取りがしてある。

かっこいいバイクにかわいい敷物をかぶせている。

これすごくない? 縦樋に、コンクリ巻いてる。
アスパラベーコン巻きみたいな仕上がり。

そりゃあ割れるよねえ。割れるよ。

冬は寄り添いたい。


藤野に越して一年目の人に与えられる駐車スペースだ。

よそ者をすごい威嚇してくるじゃん。

お?

手乗りカーブミラーだ。

かわいい。藤野名産にしたらいいのに。

一段低い本流に合流するような交差点好き!
水の流れのごとく左に折れると、

あー、こうなるのか。なるほど!
わりとあっけなく橋に着いてしまった。
相模川を渡る

渡る気になったので渡る。しかい遠いな。

「飛んで渡ればよくね?」
みたいな奴らめ。


静かな川は心がどこか落ち着かない。むしろ少し怖い。
山に対する畏怖みたいなものに近いのかもしれない。
ここの夜とかを想像すると、取り込まれそうになる。

実際、落ちても誰も見てないだろうし助からなさそう。

お前もそう思う?

あたたかそうな斜面に人が住んでいる。
淵との温度差がまぶしい。

対岸に来た。
時間のせいか、こちらは暗い。

なんとなく行くのやめようと思った道。
この道はずっとこうなのかな。
やっぱり、日向の時間がある場所に集落があるんだろうな。
一方で、世田谷区の住宅街には陽が当たらずになぜかずーーっとアイスバーンの道があるのなんでだ。雪降ったの4日前よ? みたいな。
ところで、先ほどから人と一切出会わない。

おっ!

はい。

すごく高いところにある注意書き。
付近の住民はこのくらいが目線なんだろうか。会わないから想像するしかない。

ここは……普通にネクターを売ってる地なのか? 最高だな。

もういいよ。

景観に考慮しすぎた駐車場だ。

下手すぎない?
と思ったんだけど、ここらへん街路灯が無いんだよな……
川に落ちなくてよかったですね……

無理矢理平面を創り出す技術だいすき!

唐突だな。まあ、街はいつも唐突か。

お顔が見えない。擦ると叶う系のお地蔵様でこんな感じのを見たことがある。

いつのまにか、大分登ってきた。さっきまでいた集落と橋が小さく見える。
すごく良い眺めなんだけど、俺、この街に一切用事がないんだよな。
沢井トンネル
さて、藤野駅に戻ってきて、今度は駅北の沢井トンネルを目指します。
本当に近くて、踏切の向こうにすぐにトンネルが見える。

しかし中央線って迷いがなくていいな。
敷いたとき、なんもなかったからな。

ハチィ~~
いまのは「HACHI~約束の犬」のリチャード・ギアです。

沢井トンネルは、中央自動車道と、あとその後ろの山を一気に潜る感じになってるっぽくて、わりと長い。
あとこれ、お察しのとおり、車は中ですれ違えません。
一直線で見通しはよいので、向こうから来るかどうかは分かるんだけど。

だからまあ「おたくらで譲り合ってうまいことやってよ」みたいな感じです。
これは山の習わしじゃないか。まあ。ここ山だわ。

ほんで狭いくせに歩道がちゃんとあるんですよね。
山向こうの集落へ帰っていく中学生を見た。生活。

中でなぜかさらに狭くなる。出たとき小人になってたらどうしよう。
前回車で通ったとき、向こうからヘッドライトが見えて、「ステイステイステイステイ……!」って叫びながら通ったの思い出した。
相手はこちらが先行しているのが見えてるはずなんだけど、もし話の通じない奴で突っ込んできたらどうしよう、みたいな恐怖はある。

さらに何回かせまくなったあと、

ゆかいな形状の出口が見えて笑っちゃう。

ゆかいだなあ。

いまゆかいだから土も撮っちゃう。よかったね土!

ちょっと歩くと、谷戸に人が住んでいるのが見えてくる。

この辺が日野だと思う。

すみません、少しだけお邪魔します。

ご挨拶を頂きました。

水が湧いているっぽい。

飲食店がある。
コロナ禍で休止中でした。残念。

誰にも会わない、静かな集落なんだけど、意外にも工場エリアがあってそこだけ人がいてゴンゴン稼動していました。
先ほどの飲食店も、工場の人が行くのかもしれない。

家と畑と倉。

この谷には沢井川が流れている。

そんなに深くないし、整備されている。
昔はどんな感じだったんだろ。田んぼやってたかしら。

川に向かって鉢植え。
この仕草、都心でもたまに見るんだけど、人の視界には入ってこないので、目を楽しませるというより、川に供えるみたいな意図なんだろうか。

これだけ木に囲まれても松を育てるんだよな、と当たり前のことを思った。

近づいたら怖いやつでびっくりした。
俺とか、ワー! ってネットに体預ける確率ゼロではないよ?

手数! って思った。

「わたし」とは。

ひとつだけ栗が残っていた。
さっきから、帰るきっかけを失って歩いています。
あと一個なにかあったら帰ろう……

なんかあの山から雲が湧いてる気がするなー。

いいY字路! やったー! よし! 帰ろう!!!

悪い奴が三角の向きを逆にしていなければあっちが藤野駅だ。帰ろう!
御嶽神社

でも帰り際に神社を見つけてしまった。御嶽神社というらしい。
同名のオオカミ信仰で有名な神社あるけど関係あるかな。
暗い山へ続く階段が見える。

石段が劣化していて、幅が踏み外しそうなくらいに狭いからか、ご丁寧にバリアフリーになっていた。
この、素朴でささやかな神社がバリアフリーで手厚い感じ、なんと形容しようか考えたけど出てこなかった。ピカピカチュウ、ピカピカピカチュウ、ピカピカピカチュウ、ピッカチュピッカチュピッカッチュウ!

死ねるな。そしてしばらく気付いてもらえなさそうだ。
山間は明暗がはっきりしていて、この神社はたぶん午後はずっと暗い。

と思ったら、社殿だけ眩しくて、神々しかった。そういう場所に建てたのかしら。

脇に目をやると谷が見えた。
吸い込まれそうで、しばらく見てしまった。

神社の一角、薪割りしながらお酒を飲んだ人が居るな。
最高のスペース。これのジオラマ作ろうかな。

というかこのエリアの日没は、思ったより早いのでは……
とインテリジェンス脳が気付いたので、今度こそ帰ることにしますね。

えっ今言う? 熊出るの?
それ知ってたらやってない行動いくつかあるよ?

無銘の墓標こわ! と思ったら、幹をガードしているだけだった。

あたらしい信仰だろうか。

そんなこんなで県道沿いは既に薄暗くなりつつありましたが、

日野はやっぱり日野という感じで、素晴らしいなと思いました。

では、私はもとの世界に戻ります。



こっちめちゃくちゃ昼じゃん。時差?

藤野で最後に撮った写真。
みじ階段。
このあと、藤野のコンビニこと藤田屋にもう一度入って、昼ご飯になりそうなものを漁ったのですが、すぐに袋開けて食べられそうなものがヤマザキの「大きなメロンパン」しか見つからず、全然メロンパンの口ではなかったんだけど、がんばって食べて500kcalを摂取し、藤野の後味はぜんぶそれに持っていかれた。