千川通りで「桜台のさくら祭り」は本当にあったのか
- 更新日: 2018/04/25
お天気にも恵まれ
この連載は「せとゲノム」が祭りの翌日に顔を出し、本当に祭りが開催されたのか、どのような祭りだったのかを痕跡から推理します。
おはようございます。せとゲノムです。
本日は、4月9日月曜日の早朝です。
こちらの桜台駅付近の千川通りというところで、4月7日、8日にさくら祭りというお祭りがあったと聞いて来ました。
でも、本当に祭りなんてあったのでしょうか。
確かに、この桜台という駅名は、桜の名所だったことに由来してますよ。
駅が開設された1936年当時は、近くを通る石神井川や千川上水で綺麗な桜が見られましたからねえ。
でも、どちらも1940年代後半から暗渠化が進み、最終的には廃止しているんですよ。
もちろん工事に伴って桜も切り倒されました。
人間の都合で、一回名所を潰しているんです。
それを今さら、桜で盛り上がっていこうなんて雰囲気になりますかね。
※2018年現在は、東京都主導による清流復活事業の一環で、千川上水の一部は武蔵野付近に復活しています。
どうも怪しいです。
実際に千川通りに赴いて、祭りがあったのか調べてみましょう。
あった!祭りありました。
何回もやっている連載なので、駅を出ていきなり証拠に出くわすこともあります。
それは私がコントロールできることじゃないので、仕方ないでしょう。
わー!
桜台さくら祭りは、練馬区桜台の千川通りで開催されているお祭りです。
通り沿いの桜を見ながら、様々な屋台で飲食を楽しむことができます。
今回で2年目という新しいお祭りなので、知らないという方も多いかもしれませんね。
主催は、練馬区桜台商業協同組合です。
どうやらここの青年部チームが優秀らしく、桜台フードフェスタという別のお祭りの成功を引っさげて開催に漕ぎつけたようです。
若い人主導だから、桜の名所を潰した歴史にいい意味で拘らず、柔軟なイベント展開ができたんですね。
完全に私の頭が固かった。
「謎解きゲーム」のような感覚の新しいコーナーが自然に織り込まれているのも納得です。
引き続き、町並みを見ましょう。
おっ、ゴミですね。
しかも、容器の感じから、右半分は祭りに関係しているゴミと思われます。
祭りの翌日にあるゴミは貴重な情報源ですよ。
ふむ。
透明のプラスチックパックと割り箸が見えますね。
定番から考えると、焼きそばでしょうか。
深めの耐熱ポリスチレンっぽい白いカップもあります。
きっと温かいスープ系のものを売っていたんでしょう。
豚汁とかポトフとか。
どん伝は、地元のうどん屋さんです。
カレーうどんとか食べられたような記憶が。
花見にカレーうどんいいですね。
夜桜の風流さをカレーうどんのパワフルさで吹っ飛ばしたい。
近隣の方の賭ける思いがすごい。
千川通りに出ました。
桜をイメージしたピンクの提灯がかわいい。
4月ともなると日が早く昇っていいですね。
因みに、千川通りは先述の千川上水から名前が来ています。
千川上水のルーツは古く、徳川綱吉の時代に玉川上水から分水して作られました。
このときに上水の工事を任されたのが、太兵衛、徳兵衛という多摩郡仙川村出身の男達でした。
工事の後で、「仙川」を「千川」に改めて苗字をもらうことになり、以後は千川家の人間が千川上水の維持管理を務めることになりました。
現在も千川家の墓所は、練馬区内で確認できます。
まだ光ってるライトがありました。
夜には桜のライトアップをするようです。
さぞや、いいムードだったんでしょう。
電力供給ボックス。
のっぺりしている。
電灯に使う分であれば、これくらいコンパクトなタイプでも大丈夫なんですかね。
「防雨」の表示が心強い。
プラスチックのパックですね。
全然汚れていないので、使用前に風で飛ばされてしまったのでしょうか。
屋台のおばちゃんの「あっ!」という顔が頭に浮かびます。
おばちゃんかどうかは知りませんが。
パックあるところに輪ゴムあり。
祭りの翌日の鉄則ですね。
紙のカップ、しかも小さめです。
例えば、甘酒とか日本酒とか、ちびちび飲む感じだったんでしょう。
誰だって桜を見ながらちびちびやりたいですもんね。
ニーズを的確に把握している。
ほう、旗とか立てるやつですね。
旗と一緒に持ち帰ることが大半なので、これ単独で残ってるのはけっこうレアかもです。
中に水を入れると十分に重くなりますし、水を捨てれば簡単に持って帰れます。
作った人めちゃくちゃ頭いいな。
これもポール状の旗などを立てたのでしょう。
クラシックタイプ。
プラスチックのもいいですが、こちらも味があります。
茂みの中にあるプラスチックパック。
目ざとく見つけていきます。
割り箸がついているのを見ると、反射的に焼きそばかたこ焼きを思い浮かべてしまいますが、今日はちょっと違うのを言ってみます。
餃子。
ラー油っぽい汁がついているので、焼き餃子じゃないですかね。
調べてみたところ、地元の中華料理屋さんが惣菜の屋台をやっていたらしいので、いい線いっているんじゃないかと思ってます。
袋に入れられた電球。
子供の頃ぶどう狩りに行ったとき、ぶどうがこんな風に紙で覆われていたような、断片的な思い出が蘇ります。
ぶどうがおいしかったとかは一切覚えてない。
氷だ氷だ!わーい!
ふむ。バルーンアート用の風船ですね。
おそらくですが、「とりぴえろ」という居酒屋のブースのものかと。
なんだそのピンポイントの予想と思われるかもしれませんが、ちゃんと根拠はあります。
住民の方が書いている去年のレポに、ここのご主人が大道芸人で子供にバルーンをプレゼントしてたという記載があるんです。
大道芸人のいるお店なんてそうそういませんし、きっとそうじゃないかなあ。
「とりぴえろ」っていい名前だな。
桜だあ。わあい。
今年は暖かい日が多くて、桜が既に散り始めていたため、急遽違う品種を持ってきたのでしょうか。
それとも、元々予定していたゲスト桜なんでしょうか。
ゲスト桜?
いずれにしても、こんな立派なの見れてラッキーです。
枝の挿し方もいいバランスの非対称で、プロの人がやったって感じしますしね。
左の重みを5としたときに右が8くらいの割合になるように配置するんでしたっけ。
それはただの8分の5チップでしたっけ。
電飾コードは今回も健在です。
千川通りに櫻を植える会の石碑が立っていました。
昭和12年(1937年)は、桜台駅ができた翌年、上水の暗渠化が始まる10年ほど前ですね。
日本史で言えば、ヘレンケラーの初来日や日中戦争のような出来事と同時代です。
千川上水にあった桜が切り倒される前に、こちらに植えといてよかったですね。
昔の人の功績が、今の祭りに繋がっています。
耐熱ポリスチレンのカップ。
住民の方のレポと照らし合わせると、玉こんにゃく辺りですかね。
あったかいものが飲み食いできてうらやましいぜ。
風鈴みたいに短冊のついた電灯。
当日の風の強さを見るのに役立ちそうです。
単なる飾りかもしれません。
ラムネのペア。
カップルで飲んだか、ラムネ好きが2本飲んだかでこちらの対応も変わってきます。
市販のビールですが、これ見よがしに支柱に寄り添っているので、祭りのものでしょう。
サイコメトリーしたら、ラフな格好したおじさんの姿が見えそう。
おお!三点セット。
容器と箸とお茶が全て揃っている。
保存状態いいですね。
化石が好きな人でいう、翼の折れていないプテラノドン。
遺跡が好きな人でいう、潤いを保ったままのミイラ。
それくらいの興奮があります。
しかも、からしまで残っています。
これはもう、おでんです!
もし目の前に平成教育委員会のパネルがあっても、自信を持って書けます。
パイロンとポールで通行止め。
道路側から無理やり屋台の裏に入ってこないための措置ですね。
祭りが始まって2年目にしては、対策がちゃんとしてます。
地元でお金出してくれた人を称えるパネル。
いつか下半分もいっぱいに貼られるようになるといいですね。
今はまだ、一種類のポスターをまばらに貼っているだけのスペースだけれど。
因みにこのポスターの絵の人、多分去年のポスターの人と同じで、さらに桜台フードフェスタの方も手がけているみたいです。
全幅の信頼。
看板設営や電灯の設置に使ったと思われる脚立です。
大活躍だったんでしょう。
今は安らかに眠れ。
模擬店コンセント用Fケーブル。
手作り感のあるいいテープです。
かつてバナナの入っていたダンボールに、今はケーブルという無機物が入っていると思うと、その不思議な巡り合わせにフフッとなります。
グレープのちうちう吸い出すゼリー!
グレープのちうちう吸い出すゼリーじゃないか!
懐かしいなあ、こんなところで会うとは。
確かにたまーに祭りでも売ってましたよね。
摂取という観点から見たときに、決して効率がいいとは言えないこの食べ物、好きでした。
うどん200円。
うどんが200円で食べられるって情報だけでもう、いい祭りだと断言できます。
ガムテープ貼るの、ちょっと下手ですね。
息を吹くとストローみたいなのがミョーンって伸びるやつです。
今はこんなコンパクトで、動物の絵までついてるんですね。
茶色で丸くて黄色い縁があることで、脳がどらやきと錯覚する。
この「商協」は、主催者の練馬区桜台商業協同組合のことですね。
お茶のカゴのようなものを置いて、自由に飲めるスペースがあったのでしょう。
運営の人は、こういう透明のカップで飲んでそうなイメージがあります。
マジックで名前書いといてって言われるけど、面倒なやつ。
こちらは「きもの」ですか。
さくら祭りのポスターに「着物の着付け無料体験」と書いてあったので、そのことでしょう。
全ての消費の鍵を握っているのは若い女性ですから、こういう施策は効果的ですよね。
運営陣の手腕が光ります。
本部もあります。
さっき手腕を褒めましたが、こちらでは一回「きもの」って書いて上から本部って貼るような、おっちょこちょいな面が見えます。
憎めないねえ。
八重垣は、おそらく桜台の居酒屋でしょう。
下に書いてある「G×1 100V」は、運営本部が貸し出しする電源設備のメモっぽいです。
よく分からない板です。
凧紐をストックしておくというのは分かるんですが、凧紐を何に使ったかが分からないんですよね。
謎板。
カップヌードルの謎肉に対抗する概念。
ビニール手袋が茂みに紛れていました。
食品系の屋台で、衛生に気を配っていた様子が見えます。
食中毒になったらアウトですからね。
祭りを長く運営させていくのには、大事ですよ。
唐揚げの現物です。
「落ちててもちょっと食べたい」と思うレベルでおいしそうでした。
翌日に現れてこのクオリティってことは、当日はどれだけ食欲をそそったんだ。
祭りに欠かせないチカチカ。
直接役には立たなくても、盛り立てるのに必要なものってポジションがいいですね。
多分、ポールを立てるために掘ったものの、場所を間違えて結局使わなかった穴。
「ありゃー、やっちゃったよ」と頭を掻く業者の姿が脳裏をよぎります。
間違えるのはいいけど、埋めておいてくれ。
まとめ
以上です。残っていた形跡を見ているだけでも、かなりの充実度を感じることができました。
屋台のバリエーションも豊かで、きっと大盛り上がりだったんでしょう。
歴史の浅いお祭りながらも、衛生面や交通面での配慮もしっかり感じます。
桜台フードフェスタの方で培ったノウハウかもしれません。
地域に根付いて欲しいところです。
うどん200円ですしね。
ではまた。
参考資料(URL最終確認は、いずれも2018/4/10)
『練馬・桜台情報局 桜台のさくら祭り2018@千川通り(桜台)』http://s-nerima.jp/wp/118004
『練馬・桜台情報局 桜台のさくら祭り2017(桜台)』http://s-nerima.jp/wp/105613
『練馬区桜台商業協同組合』http://www.city.nerima.tokyo.jp/kusei/sangyo/n_shotengai/sakuradaisyokyo.html
『千川上水 ―昭和27年の写真を中心に―』練馬区教育委員会 2000
『昭和30年・40年代の練馬区 なつかしい青春の記憶』桑島新一 監修 2009 三冬社
『西武池袋線 街と駅の1世紀』矢嶋秀一 2014 彩流社