梅が良い
- 更新日: 2019/05/07
フォォォォ
横浜の大倉山には梅林があって、これは昭和初期に観光目的で東急がはじめました。
当時は1000本以上の梅があって「観梅号」なる特別列車も出ていたそうなのですが、現在はこぢんまりと、大倉山公園の一部として存在しています。
三月中旬の梅。
先週は雨続きで、風もとても強かったからもう散ってしまっているかと思ったけど、不思議なほど大丈夫でした。
なんで? 逆に不安になる。
例えば同僚が車に牽かれたあと立ち上がってそのまま歩いて帰ったら、いや何事もなくて良かったけど逆に不安になるでしょう? ほんとに人? みたいな。
そういう類いの不安です。
梅、個人的に花はあまり興味が無いんだけど、その枝ぶり、その形にため息が出る。
意味不明で怖いのです。
奇妙な形があったとき、その理由について考える余地というのが普通ある。
例えば、光に向かっているのだなあ、とか。そういうのは分かる。
梅は分からなくて怖い。
その、中央に花を咲かせるために、こう、一周ぐるっとする意味が分からない。
最短で行かない。
どこ行くんすか。
意図が分からないものは怖い。
こんな感じで、梅の姿形は非常に怖くて良いと思う。
もっとも、これは人の仕業であったりもすると聞いた。
去年一緒に梅見した方の知り合いに植木屋さんが居て、こういうのはある程度、剪定によって味のある形にできるのだそう。
自然の仕業でないところは個人的にはちょっと残念ではあったんだけど、それならばそれを作り出す庭師が怖いし、それを愛でる文化も怖くて良いなと思った。
例えば若い木を斜めの土地に植えて曲げるとかいう話を聞いた。
これがそうなのかは知らないけれど。
若いうちから曲がったまま成長すると、こんな感じになるんじゃないかなあ。
へび花火みたいに地面をうろうろする。
定点カメラで100年撮ったやつを早回しで見たら、へび花火に見えるかもしれない。地を這いながら、毎年一回、火花を散らす。
梅は切りながら形をおもしろく育てるのが基本らしい。
一方で僕は、手が出ないことをいいことに髪の毛を面白く整えられたらきっと怒ります。
それで、梅的には、人間殺したいと思ってないか不安になることがあります。
多分、思っている。
フォォォォ……人間どもよ……よくも我々をおもちゃにしてくれたな……
複雑な形状のなかに確かな殺気を2つ3つ感じる。
特に右の蛇に似た形状の枝は、20年くらいで到達する攻撃を放っている途中なのではないか。
ただ動きが遅すぎて切られちゃう。
攻撃的な梅といえば、白梅で有名な湯島天神も良いなと思っています。
あっ、境内の梅はとても従順で綺麗なんです。
昔は花見といえば梅のことだった、というのは有名な話ですが、これはとても分かります。
酒の肴に話すこといっぱいありそう。
そうだ、攻撃的な梅。
参道の梅にとても殺気がある。
人を狙っている。太陽でも水でもなく、人に伸びている。
「かかれー!!」
梅VS人間の戦いの火蓋は切って落とされた。
たぶん数百年位前に。
ワーワーワー!
ぬううううんん!
ゲェ~ッヘッヘヘ! 一人残らず殺ってやるぜ!
構図的には、参拝客の背中にドスドス行く感じになっている。
ただし、攻撃態勢に入ってからきっと随分経っている。
参拝客は、動く。木は、ちょっとずつ伸びる。
動かないものはやられる。
手始めにお前だ……
ミシミシ……
柱だけど。
あんまり見えてないから。梅。あんまり見えてない。
お酒にも漬けられちゃう。
これは湯島の白梅っていう地元のお酒です。
僕は梅酒が殆ど飲めないのであけてない。だれかあけましょう。
梅酒飲めない人にも買われちゃう。
梅かわいい。