【大阪】降りたことのない駅で、吟行しようぜ!

  • 更新日: 2019/08/02

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吟行(ぎんこう)という、聞き慣れない言葉を実際じぶんでやることになるとは、おもってもみなかった。目がいくつあっても足りない!と思えるほど、視点がふえる旅になった。


1、わたし、短歌をやることになったぞ

 「経験」といえば、小学校の頃に授業でならった程度のド素人だが、きっかけがあって、「短歌を詠むひとになろう!!」と、思い立った。

 短歌のすみっこを伝えるwebマガジン『TANKANESS(タンカネス)』。
 
 もっぱら大阪で活動する実践報告型の歌詠みメディアである。ここでは、「短歌」を軸にして、大人の知的探求心をくすぐるようなおもしろい取り組みを継続して行っている。

 たとえば、

 ①ワークショップ「もしも短歌がつくれたら」を通して、不慣れな人がどれくらい詠めるようになるかをガチの初心者がレポートしていたり、

 ②編集長が短歌のオリジナル・カードゲーム『ミソヒトサジ』を開発して、実店舗や通販で販売するだけでなく遊びかたを広めていたり、

 ③不要な紙を集めておいて短歌コラージュを作る! という変わったレポートをして、短歌のハードルをぐっと下げてくれたり。



 短歌って、わたしにとっては「そういう文化があると学校で習った」以上のものにはなりにくい印象があった。文字数が5・7・5・7・7となるように歌を詠むという知識はあっても、それを日常化・習慣化・趣味化している人をほとんど見かけない。でも、それはじぶんがその世界をみようとしないから気づかないだけで、プロ・アマを問わず「歌人」の顔をもって日々を暮らすひとは、いっぱいいるのだ。

 そして今回、そのTANKANESSから吟行(町歩きをするなかで見たり感じたりしたことを短歌にする)を一緒にしないか?というお誘いがきた!街を観察して読み物にするサンポーの作業と通じるところがあるんじゃないか、ということだった。

 サンポーからの参加枠に、わたしは全力で挙手をした。「わたしでもできちゃうかも」という淡い期待と、「うまくできなくて当然だよね」という免罪符のような気持ちが重なり、どんどん、やる気につながっていった。


吟行はTANKANESSの本拠地、大阪で行った。
この日のできことは、TANKANESSでも公開されている。

散歩をする人と短歌を詠む人が集まって散歩をして短歌を詠んだ 〜コラボ吟行〜

「散歩をして町の見えているのに見えていないところを見るのが路上観察で、それを短歌や俳句にすればたちまち吟行となる」町中 歩(1875-1941)という名言があるように、散歩(路上観察)と短歌(吟行)の



2、わたし、吟行(ぎんこう)をやってみるぞ

 サンポー東京在住勢のわたしが、大阪の歌人たちと4人パーティを組んで、1つのクエストを攻略することになった。タイトルは、「みんなが降りたことのない駅で、吟行しようぜ!」である。
 
 
 吟行の当日、JR大阪駅にて――。
 わたしは待ち合わせ場所に3番手で到着した。


 「みどりの窓口、分かりにくかったですか? ……ああ、規模がおっきすぎて逆に見えへんかったと。まあ、まだ来てへんひとおるし。あっ! さてはこのでかい柱の向こう側にもう本人がおるというありがちな展開では」

 初対面の歌人・多賀さんがなめらかな声で言う。

 長身の彼は、すこし丸みを帯びたメガネをかけて、うまれてこのかた東京のイントネーションなんて口にしようとおもったこともないといったふうなしゃべりでわたしの歩幅をゆるやかに矯正させる人だ。

▼大阪メトロ谷町線の沿線をゆく「吟行」の旅


 もう一人を待つあいだ、それとなく進行する会話。
 4人が揃ってからすべてが始まる、みたいな空気感だった。

 
 「吟行(ぎんこう)しやすい場所ですか? TANKANESSでも書いてますけど、動物園とか。限られた範囲に、見られるものが多いから。看板とかもけっこう文字があるからヒントになる。みんなでまわって詠んでもいいし、ひとりでネタ探しもできる」

 TANKANESS編集長の なべとびすこさんが言う。彼女とは、前日に顔合わせをしたばかりの、「2度目まして」である。

 短歌は初心者、吟行は初体験のわたしだが、ほんとうになんの下調べもせず手ぶらで大阪までおもむき、おもいつくことを質問しまくっていた。まるで、「手をつながれてちょっと遠いところにおでかけする幼子」みたいな心境だった。旅のあいだはずっと彼女についていけば大丈夫という妙な安心感があって。ちなみに、彼女も丸みのあるメガネをかけていた。

▼一見なにもなさそうな大阪メトロ構内。凝視してしまう


 どうも電車の遅延があったらしい。
 大きな駅なので、どこから来ても改札口までの道のりが長そうだ。

 
 「すみませ――ん! 遅れましたああァ!! えっ、みなさんけっこうふつうに集まっちゃってました?」

 アウェーな土地に乗り込んでいるわたしの緊張をほぐしたのは、TANKANESSの初心者代表であり、サンポーの散歩者でもある高下(koge)さんだった。待ち合わせ場所は、JR大阪駅中央口にある、みどりの窓口。電車の遅延でほんの少しあとにきた彼は、ほくほくした顔で駆け寄ってきた。なんの因果か、彼も丸みのあるメガネをかけていた。



 

3、吟行(ぎんこう)ってどんなことをするの?

 

 【吟行(ぎんこう)】とは、大辞林(三省堂)によると、

 (1)詩歌を吟じながら歩くこと。
 (2)和歌・俳句などを作るために、景色のよい所や名所・旧跡に出かけて行くこと。


 サンポーとTANKANESSのコラボ企画では、(2)の方法でいく。

 まずは、大阪メトロ谷町線の沿線で、「誰も降りたことのない駅」にフォーカスをあてる。駅に着いたら、みんなで同じルートを散歩して、気になるものがあればシェアしたり、疑問があれば考察する。誰かが投げた「これ、なんやろ?」をひたすら拾っていく。短歌を読むネタの元になりそうなものは写真に撮る、メモを取るなどしておく。
 
 「誰かか機会を与えてくれないと足を踏み入れなさそうなフィールドにあえて行く」、というのは立派な冒険だ。ふだん東京の、いかにもファミリー向けのハウジングエリア然とした地域でのほほんと暮らしているわたしにとって、この刺激はとてもうれしい。

 初めて4人でパーティを組んだその日に、おもいきって未踏のダンジョンを潜るバイブスの合う面々でなければギスギスしそうだが、全員が目標をもって、まっさらな手持ちのマップをざくざく更新していくのは、かなり楽しかった。

▼大阪メトロの切符・カード販売機「あずき色だ!」


 歌を詠むための新鮮なネタが、どこに転がっているか分からない。なにごともスルー禁止!と、序盤はずっと気を張っていた。ずーっとスマホをかばんにしまう余裕がないかんじ。ただ、歩きスマホは危ないだけでなく、ひらめきと実写のピントがずれる。何かするときは、まず止まるのが鉄則だ。


 テクテクと、足どりが常に軽いのは多賀さんとなべとさんだ。

 ふたりの身長差はけっこうあるが、ズンズン進む。

 たぶん、小柄な なべとさんは曲がり角とかで見えなくなったときビューンと空中移動している。多賀さんは、わたしが写真1枚撮るあいだ3回はモノ突っ込みをしているふうなのに距離が縮まらないので、むちゃくちゃ時速のでるエンジンを積んでいる。……と、妄想しながら歩く

 一方、サンポー族の血もまじっている高下さんは、わたしと似ていて動きがカクカクしている。じぶん特有のフィールドワークがいくつかあるせいで、少し歩いてはピタっ、そろりそろり、ピタっ。まったく動かなくなったり、いきなり早足で追いついたり。お互い、8bit世界でバグった人みたいになる。全員ちょっと特殊なかんじだ。

 「あれっ、またおらんようなってる」
 「きっと何か発見してしまったんやろ」
 「本当だ(笑)。もう動じないぞ……」

 旅の途中で、高下さんだけ忽然と姿を消してしまう事件が数回あった。

 すべては蒐集品(ある一定のクオリティをもって納めると誰かに喜ばれる品)のためである。それはもう、吟行のネタとは関係ないんじゃないの? という、「作品」になりうる何かを彼は求めていたのだ……。

 撮って、載せて、保存しておきたいきもちは、よくわかる。こういう根っからのスクショ体質の人と歩くと、じぶんではふだん見ないモノの角度に気づけるからすてきだ。ほうっておけば目も向けなかったはずの余白で、なにか一首詠みたくなるかもしれない。


4、いっぱい旅をするときの便利アイテム

▼大人600円の「1日乗車券」(エンジョイエコカード)購入


 「3回以上乗れば、あとはもうずっと勝ちつづけるヤツです

 なべとさんが言う。わたしがむちゃくちゃ気に入ってしまったフレーズだ。この度のクエスト「みんなが降りたことのない駅で、吟行しようぜ!」攻略にあたり、忘れず装備しておくとクリアまでの難易度がやわらぐ便利アイテムがあるという。ででーん。

 大阪メトロと大阪シティバスの線内ならばどこでも使える「1日乗車券」、通称「エンジョイエコカード」。「エコ」ってきっと、消費される切符(紙)の枚数が減って環境にいいエコロジーな面と、使えば使うほどお財布にやさしいエコノミーな面をあわせたものなのだろう。グッジョブすぎる。ほんとうに、終電までなら際限なく使えるので、あったほうがいい。


▼「土曜・日曜・祝日」限定のエンジョイエコカード


▼改札口に通す前は「通用日」がプリントされていない


 アッいいなあとおもったのが、駅の改札口を通すまでカードは未使用な状態を保てるところ。単発で買う切符や、その代替カードって当日すぐ使うものという固定概念があったので、「買っておいてあとから人に渡してもいい」システムは、目からうろこだった。

 エンジョイエコカードを改札に通すと、「吟行が、何時何分、どの駅から始まったのか?」という印字が くっきり裏面に記されていく。旅の記録になるので、この打刻はすなおにうれしい。


 1つ、びびったことがある。
 

 なべとびすこという人は、「偶然そこにあることば」をうまく切り取って、じぶん好みに再利用するという特殊な言語能力を磨いてきている歌人なので、その印字すらも歌を詠むネタにしようとしていたのだ……!

 なるほど、その発想は面白いなあ。


 使用済みのエンジョイエコカードをよく見ると、駅名が3文字または2文字で省略されている。しかも、印字スペース的に、改札を1度目に通ったとき(行き)は3文字、2度目に通ったとき(帰り)は2文字であらわしていることが多い。たとえば、中崎町駅なら中崎町か中崎、太子橋今市駅なら太子橋か太子というふうに。「各駅の名称が省略されたらこうなる」パターンを2種類たのしめるわけだ。

 ただ、駅によっては、行きも帰りも2文字であらわしているケースも見られた。もう、そういう略しかたで定着している場所なのかもしれない。大阪メトロと大阪シティバスがどんな略しかたをしているのか、全駅・全バス停でチェックしちゃうのもありだなあ、なんておもった。すっごく時間がかかるけど。


5、「降りたことのない駅」に向かおう

▼大阪メトロ谷町線の車内にある「路線ご案内」


 ホーム到着時に、どちらの扉が開くか。各駅とも「右」か「左」で教えてくれている。最終駅やダイヤの違いで開く扉が変わることもあるようだ。吟行って、じぶんにとって珍しいものを発見したときの「!」とか「?」なきもちをことばにすることもあるだろうから、スマホでパシャリ。

 グレーに群青色という配色も、「東京にこんなセンスの路線あったっけ?」なんて考えるきっかけになった。
 

▼大阪メトロ谷町線「たいしばしいまいち」(ひらがな編)


▼大阪メトロ谷町線「太子橋今市」(漢字編)


 余談だが、大阪メトロって、たとえば谷町線なら「谷町」駅があるし、御堂筋線なら「御堂筋」駅、今里筋線なら「今里」駅、長堀鶴見緑地線なら「鶴見緑地」駅や「長堀橋」駅や「西長堀」駅があって、地名と線路名がそれなりにリンクしているかんじがする。

 東京メトロって、たとえば千代田線に「千代田」駅はないし、大江戸線に「大江戸」駅、丸ノ内線に「丸ノ内」駅、南北線に「南北」駅、東西線に「東西」駅、副都心線に「副都心」駅はない。そのあたりをざっくりくくっています感のある表現だ。いや、大江戸だけはちょっと雰囲気が違うか。その一方で、浅草線、新宿線、三田線、銀座線、日比谷線、有楽町線、半蔵門線って、もろに見覚えのある駅名ばかり。必ずしもリンクはしてないんだなってことを、その場でふとおもった。

▼駅の出口案内「今市1・2丁目はこちら」


▼駅の出口案内「太子橋1・2丁目はこちら」


 ひらがなでは「たいしばし/いまいち」で、漢字では「 太子橋今市」とあらわされた駅名。どこかで区切りを付ければ読みやすくなるわけだが、そういうことじゃなかった。出口を指す黄色い案内板をみて、大阪のTANKANESS勢がこう言うのだ。

 「この駅、太子橋と今市で分かれているのをくっつけただけですね」
 「出口がもう、どっちに行くかって話にしかなってないようにみえる」
 「案内が町名しかないんやな。出口の数が少ないのにこれは……」

 大阪メトロには、実在する地名2つをガッチャンコ(合体)した駅がわりと見受けられるそうだ。それでおもい浮かんだのは、お笑い芸人とか漫才師がじぶんたちのコンビ名を付けるときの方法

 「ああ!苗字を合体させる系のコンビ名みたいな勢いで駅名が成り立ってるじゃないですか、さすが大阪」
 「てきとうなだけやん~」

 おぎやはぎとか、クワバタオハラ、品川庄司、ますだおかだみたいな印象だ。確かに、所在地がまたがる駅では、合体技をキメるのが解決の近道になりそうだ。

▼太子橋今市駅は、谷町線(T)と今里筋線(M)が走る


▼「ようおこし」、おじぎする男女の公衆トイレマーク


 「ようおこし、だってー!」
 「それね、東京の人がくるとだいたい言う(笑)」
 「気に入るんやね、方言ってそういう和ませかたができるからイイ」
 「ようおこしで用を足し……メモメモ」


 こどもみたいにはしゃいだのは、東京勢のわたしだけ。

 頭をもたげておじぎしているのが分かる男女のデザインは、この壁だけじゃなくて実際の公衆トイレでも使われていた。「ようおこし」というインパクトのある挨拶が目に映っちゃったので、深々と腰をまげる姿が関西っぽくみえてしまう。

▼「ようおこし」版の女性トイレの一室でJKの絵画!


 じぇ、じぇーけーだ。JKが描いた絵だ……。

 誰もいない女性用の公衆トイレで、おそるおそるスマホを向ける。JKでおもいつくのは「女子高生」の略語だが、そうじゃないだろうってのはもちろん分かっていて、けれど「JK 画家 鹿」あたりでウェブ検索をしてもヒットはしない。好みのイラストなので、「誰なの?」とむずむずしてしまう。実は有名な画家なのだろうか? 知っている人がいたら教えてほしい。


6、知らない街を歩いてみよう

▼なにもないかんじを予告させる平日お昼の駅通路


▼「イタセンパラ」とだけ記された謎のマスコットキャラ


 「イタセンパラ」と書かれた魚のかぶりモノを身にまとうキャラクター。

 初見・未予習で大阪メトロ「太子橋今市駅」というコンテンツに突入をしている冒険者にとって、これは唐突すぎるポスターだった。ダンジョンだったら第1ボスのところまできちゃったのかな? っていう。よく分からないけど、よく分からないから撮る

 調べてみると、大阪府旭区の「城北ワンド」に生息していた天然記念物の魚らしい。ワンドというのは、淀川本流とつながっている、もしくは川が増水したときつながる場所のことを指すみたい。類語としては、入り江、淵、川のよどみなど。

 
 語彙力、増えるわあ……。

 わたしを駅で一旦停止させたのは、「イタセンパラ」のマスコットキャラクターで「パラッチ」という名前だそう。語尾に「~パラ」が付く。かわいい。そして、あんまりパラパラいわれると、DQX(ドラゴンクエスト10)とかに登場する職業「パラディン」の略称をおもいだしてしまう。

 パラッチが季節外れの羽子板を掲げて進んでいる姿が、完全に「盾」の役目を担う冒険者のようすに見える。パラディンって、モンスターが現れたとき、率先して敵の前に張り付いて後方にいる仲間と距離をとらせて、なるべく安全かつ的確に攻撃をさせる役目をもってるんだけど、パラッチ……は、どちらかというと「あそびにん」のような。


 さて、歩こう。

▼大阪メトロ「太子橋今市駅」を出てすぐ、自転車ばっかり!


▼白シャツがまぶしい男子学生さんがワーッと吸い込まれる


▼「旭区町名街区ご案内」の住宅街っぽさ


▼向かって左の道へ。クマがお酒のんでる建物の外壁


▼巨大な仏像のある仏具展。みんな意外と反応しない


▼太子橋今市駅の周辺、おもったより開けていてビル多め


▼「NTTドコモ大阪ビル」は太子橋今市駅の案内にもあった


▼この形の黄色い「視覚障碍者用押しボタン」がいっぱいある


 実は、この黄色い「視覚障碍者用押しボタン」がわたしにとっては衝撃的だった。手のひらをのせて点字を確認できるじゃん……!

 高さ・太さともにそこそこの存在感があるし、これは分かりやすさを追求しているといえそうだ。しかも、クルマ通りの激しい大きな十字路の横断歩道に2ヶ所あるだけじゃなく、車道を挟む道路にはけっこうな頻度で設置されている。東京なんて、だいたいは、四角いお弁当箱のようなボックスが押しボタン式信号機のそばにあるだけではなかろうか……。

▼太子橋今市駅3番出入口。山吹色は今里筋線カラー


 この山吹色が今里筋線カラーらしく、遠目で見ても分かりやすい。

 多賀さんが、「なんかどっか既視感あるんやけど、なんやったかな……」ってこぼしてたけど、昭和生まれのわたしからするとこれは、漫画『Dr.スランプ アラレちゃん』(鳥山明)に登場する、山吹みどり先生のヘアカラーである。ロボットのアラレを生んだ則巻千兵衛(のりまき せんべえ)博士が惚れる、お色気たっぷりな小学校教師だ。だから、すごく勝手だけど今里筋線には、ちょっとやそっとじゃ動じない、笑顔のシンボルみたいなイメージがついた。

▼駅まで徒歩1分の犬ちゃりんこイラスト


▼太子橋今市駅の自転車「駐車」場。「駐輪」じゃない


 看板1つに、突っ込みどころが3点ある。

 ①犬は、みずから走るほうが速そうだし駐輪の手間が省けそう。
 ②「駐輪」でなく「駐車」なのが気になる。
 ③わざと白塗りで消してある電話番号が通じるのか気になる。


▼大阪のあちこちで見かける「自転車放置禁止区域」


▼左の道に向かってぐるっと一周する。いいお天気!


▼分かりにくいがオレンジの看板に「省力化の店」とある


 省電力化でも省エネ化でもなく「省力化」というワードなのが4人のなかで話題になった。大辞林(三省堂)によると、「機械の導入や作業の合理化などで、手間や労働力を省くようにすること」。ひと一人ぶんの作業をがっつり減らせないなら省力化とはいわない! 減らすことでよそにしわ寄せがいくのは言語道断!という、おもったより強いメッセージだった。

▼日よけもかねて高架下を歩く。3人は、左の道路へ


▼わたしだけ右の歩道をいってみたら、なにか発見!


▼靴だ、キッズの……。片方だけ脱げてしまったのか


▼別アングルから撮影。うーん、なんの意図もないが切ない。


▼とんでもないものを見つけてしまった


 「まちをきれいに 犬のフンは飼い主が始末をして持ち帰ろう マナーを守りましょうポイ捨て禁止」という守口市の看板が、根こそぎひっこ抜かれて、地べたに横たわっている。しかも、もう、どこにも立てられないよう、穴を土でざっくり埋められている……。その看板自体がポイ捨てされて始末が悪く、まちの美化に反したマナー知らずな存在になり果ててしまっているというのが、なんともシュール。

 けっこう辛辣な扱いを受けているのでは。


▼煙突が見える。なにかの工場? それにしては、小さいし低すぎる?


▼煙突の正体は「もみじ湯」という銭湯のものだった


▼「台風のため故障、休業致します」の張り紙!


 実は、このコラボ企画があった当日、全国の天気予報は「大雨」「暴風」「雷雨」のどれかだった。ものすごくヤバい、大荒れな1日になるとおもわれていた。なのに、吟行をしているあいだの大阪は晴天ピーカン

 張り紙に「故障」という文字がなければ、「これからくるやばい天気を見越したお休み」と解釈できなくもなかった。だが、故障したあとなので、前々からなんだなと。こういう微妙な点が、大きなおもい違いにつながるんだなあ。

▼大阪城が描かれたマンホールは花びらが目立つ


▼消防車が消化のとき水を汲むためのマンホール


▼水道の蛇口をひねって水がジャバジャバのマンホール


▼大阪メトロ太子橋今市駅に戻ると、方角を教えるマーク


▼谷町線に戻る階段。さっきとだいぶ違う道である


 確かに、「行き」(改札口から出たあと)と、「帰り」(再び改札口に戻るとき)で別の出入口を使った。……とはいえ、いい大人が4人してウロウロ、うろうろ。「えっ、今どこ? 道、ここで合ってる?」な状態。


 途中で、駅ホームに向かう通路が分からなくなったのだ。

 仕方なく、うしろからやってくる、白シャツがまぶしい学生さんたちの動向を見守る。みんなスッと細長い階段を下りていくのをみて、「ああッ、ここで合ってるのか! なんだぁ~」となった。

 前方後方どこを見てもそれ以外の未踏ルートはなかったし、ホームにつながる唯一の階段でまちがいないのだが、「エッ、本当に、ここが正式ルートなの??」とおもってしまうくらい、幅が狭くてきゅうくつだったのだ。

▼「絶対ラスボスおるやつやん」で全員一致した奇妙なマップ


▼階段の角度がもう、「どうやってこれのぼるの??」


 「あれや、歩くと永遠に巡回してしまう絵
 「エッシャーね、階段のだまし絵。どっかにラスボスおるって……」
 「この角度とか絶対のぼれへんやろ!」
 「どうりでさっき全員迷ったわけだ」
 

 見れば見るほどじわじわくる。

 パッと見、高さの比率が合ってなさそうなナゾの階段が目についたりして、建築の妙なゆがみをかんじてしまう。じぶんたちが実際歩いてきたゆえに分かる極端さがあるのだ。

 笑いとショックを隠せない一行は、「次行く駅は、まず構内図をチェックする」と決めた。太子橋今市駅がやっぱり特異だったのかどうかを判断するためにも……!


7、別の駅にも降りてみよう

▼大阪メトロ今里筋線で「瑞光四丁目」駅へ


▼駅名の下に「大阪経大前」の表記がある


真っ先に撮影した瑞光四丁目駅の構内マップ、ふつう!


▼出入口が2つ。瑞光4丁目にいくか3丁目にいくか


▼どっちから出ても大阪経済大学にいってしまう


▼土曜の昼、誰もいない駅の通路。平日なら大学生がいそう


▼2番出口から地上に行くと、反対側に1番出口が見える


 くり返すが、山吹色は、今里筋線カラーだ。それが完全に目に焼き付いてしまって、けっこう離れていてもこのビビットな色が見えるとなぜか安心する。そこに大阪メトロがあると分かるから、というのもあると思う。

▼白い紙テープで「カメラ カメラ カメラ」という文字


 細い柱の下から上まで、かなりしつこく「カメラ」の文字が。

 紙テープをちぎって、手作業で貼り付けたとおもわれるが、けっこう高いところまである。意図が分からず、いったい誰がこんなことを? 写真屋さんがあるってことかな? と、首を傾げたわたしだが、

 「てっぺんにカメラがついてるんや!


 という声でハッとした。あー、なるほど~!! ……って……えっ、いや待て。それでも納得できない。監視してますよってこと? 真意は分からず。

▼ナナメに突き出している理容室のサインポール


 青い空にグッとそり立っているようすが好きで、スマホでパシャリ。

 何を基準に? と訊かれると難しいが、ちょうどいい角度で撮れたと思う。たとえ曇りでも、雨ならもっと、このサインポールは映えなかっただろう。赤と青と白のラインがトクトクと流れていくさまをみて、こんなふうに安定した脈を誰かからかんじたい、とか思っていた。

 
 ううーん、エモーショナル。

▼さび付いて元のマークが分からなくなっている


▼「なにかあるかも」を進んだ道はごくふつうの住宅街だった


▼建物と建物のすき間からのぞく大阪経済大学の風見鶏


 経済大に風見鶏があるのって、暗喩なのでは?

 ……などと、変に勘ぐってしまう。たとえば、「風向きはおもったより変わりやすい」とか「風向きが変われば人が向くほうも変わる」とか。大阪のTANKANESS組には、考えすぎやでと一蹴されてしまったけれど。

▼お持ち帰りの弁当屋さんが多い印象。学生街だからかな?


▼大阪経済大学は休講日、学生食堂もお休み、ざんねん!


▼経大前商店会の看板と街灯は、ほかの道にもあった


▼油そば『きりん寺』の顔ハメが、キリンの顔でなく首元


▼ひたすら、どこが何丁目なのかだけ分かるマップ


▼裏路地こそネタが潜んでいるかもと、進んでみる


 けっこう歩いた。ここまで旅のスクロールに付き合ってくれた読者の皆さんには、感謝しかない。まだまだ吟行する時間はある! けど、ぶっちゃけ疲れた!という辺りで、休憩がてらメモをまとめてみようとなり、歩いてるうちたどり着いたショッピングセンター内の喫茶店にもぐり込んだ。
 

 わたしはその時点で、頭が真っ白だった。

 写真をいっぱい撮ってはいたのだが、現場でピン!ときたものはなかった。シナプスがつながればいいなと思って念入りにパシャパシャしていたけれど、画像をスライドしても何も浮かばない。これまでの記憶をたどりつつ、ネタにできそうな材料を探すしかないのに。


 制限時間は、せいぜい30~40分といったところか。
 それで一首詠むというのが、その時のわたしにはとても難題に思えた


8、集めたネタで短歌を詠もう

▼サイフォン式珈琲の店「三番館」でいっぷく


▼みんな、おもいおもいにスマホをひろげている


 もしも、「歩きながら、思いついたものをその都度、一首詠む」という吟行スタイルだったら、初心者のわたしにはハードルが高かったろうな……と思う。とにかく現地でネタをいっぱい仕入れて、落ち着ける場所でゆっくり考えるやり方でよかった。

 そのきもちは、大いにあると先に伝えておく。


 そして、実は、この喫茶店で一服したあともう一駅をぐるりと歩いている。途中、けっこう本降りの雨になり、例のごとく「1日乗車券」(エンジョイエコカード)を使って大阪駅までバス移動をしたのだが、疲れ果てて乗車中ほぼ眠っていた。

 
 もしかすると、もっとも冴えていたのが、この店内で涼んでいた時だったのかもしれない。街じゅう、目につくものはいっぱいあったのに、最終的にわたしが詠んだのはここでの出来事だった。

▼コーヒー喫茶『Cafe Malacca』で最終稿を考える


▼ノートを広げたり写真を撮ったり談話したり


 わたしが詠んだ短歌は、こちら。↓↓↓


シロップを入れる? 入れない? 迷う「ポチャッ」
でも歩いたの、ぜんぶこのため。



 (意味)いっぱい歩いたから体力を使った。でも、無糖のブラック珈琲に、高カロリーのシロップを入れるかどうかで一瞬迷う。注がなければダイエットになるかもしれない。そんな、ちょっとした乙女心があるけれど、本音では「そのくらいどうってことない」と思っている。ええい、即投入してぐびぐびのんでしまえ! うーん、うまい!



 喫茶店も、道中といえば道中。

 だが、それまで見てきた景色よりも「休憩」しているときの心境やようすが鮮明にあらわれてしまったのは、じぶんでも驚きだった。あと、あれだけ歩きまくってこれなの!? という、じぶん自身へのがっかり感もある。……が、初回だしおおめに見よう。

 

 吟行を終えてみて、はじめてわかったことだけど、わたしって、たとえば、ドッと疲れているときならその強い感情でじぶんが支配されがち。もしかすると、じゃんじゃん歩きまわるのではなく、いったん立ち止まって「その時どう感じたか」を考えてみるのが合っているかもしれない。そう、先ほど言っていたこととは正反対の感想だ。この気づきがじぶんにとっては大きい。

 たとえ、その瞬間その瞬間では何も思いつかなくても、それをくり返して、ひねりだそうとしていくと、本当にその場でしか出てこない言葉がうまれるかもしれない。ただ、他の3名はしっかりとそれまでの旅を振り返りながら一首詠んでいたから、わたしが刹那的なだけという可能性もある。でも、そっちのバージョンも試してみたいなー!と、思った。


 ああ……、また吟行ツアーに行きたい!! 吟行パーティを組みたいぞ!!!


 大阪、また行くからなっ、まってろ~~!








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Cooley Gee

ヒカセン(光の戦士)の皮をかぶった栗。
『FINAL FANTASY XIV』プレイヤー。
雑多な「すき」を追うひと。
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