西日暮里とは何なのか。住んでる人に聞いてきた

  • 更新日: 2017/08/10

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富士見坂からの景色。

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こんにちは。お散歩おじさんのヤスノリです。
突然ですがみなさん、これ何か分かりますでしょうか。



簡単すぎですかね。じゃあせーのでいきます。せーの、「おとなの潮干狩り!」「名古屋で毎年開催される自動車将棋!」「ジャスコの駐車場!」

全然揃いませんでした。特に3人目は何だよ。こんなクレーンで買い物こねえわ。
えっとこれは、品川と田町の間にできる新駅と周辺施設の工事です。新駅だって。わくわくするよね。リニアもこのあたりに駅ができるっていうし、2020年代は品川の時代来るんじゃないか。ついに。



やっとるやっとる。やっとるね~! しかし広い。
ここらはもともと田町車両センターという大きな車両基地がありました。「山手線に新駅ができる本当の理由(メディアファクトリー新書)」によれば、この広大な土地を空けるのにはいろいろな努力や要因がございまして、一番大きいのは「上野東京ライン(東北縦貫線)の開通」なんですって。東海道本線と東北方面の線路が繋がったことにより、田町車両センターの列車を東北側の車両基地に移し、この土地を空けることができたんだとか。まあ、なんかいろいろ、こう、パズルみたいにやった結果、この広大な土地が生まれたというわけなんですね。



ちなみにこの下には、高さ1.5Mの通路があります。高輪橋架道橋です。



首の筋肉が痛くなる。しかもけっこう長くて、冗談抜きにつらい。僕は身長ド平均で高いわけではないのですが、慣れないから、こう、必要以上に身をかがめてしまうんですね。
一方で、地元民はスレッスレの感覚が掴めているようで、わりと背筋が伸びています。あと、自転車もびゅんびゅん通ります。見た感じ、頭と天井の隙間は数センチくらいで走り抜けていく。すごい。やりこみゲーのなれの果てみたい。

とまあ、品川高輪の話をしだすといろいろあるんですけど、今日は品川の話じゃないんですよ
さて。品川・田町間の新駅ですが、山手線では40年ぶりの新駅、といって盛り上がっております。ん? 40ねんぶり? じゃあ、40年前にも山手線に駅がぽっとできたの? はい、できたんですね。それが西日暮里なんです



荒川区、西日暮里駅。この駅の謎さは、気になっている方多いんじゃないかしら。そもそもこのエリア、山手線の駅は間に合ってるんです。谷中銀座などで栄えている日暮里駅がででんと鎮座しておりますから。そして、そこから500mの西日暮里駅。日暮里駅のホームから西日暮里のホーム見えますからね。なんでわざわざそれを作ったの? 西日暮里駅とは、何なのか。


40年前、なぜここにわざわざ駅ができたのか。それは、混雑解消と交通の利便性向上が理由なんだそうです。
ものすごく単純に説明すると、常磐線と千代田線が直通運転をはじめて、いろいろ駅を飛ばして走った結果、亀戸とかの人が山手線内へのアクセスが悪くなったので、千代田線・常磐線と山手線の乗換駅として作られた駅、それが西日暮里なんです。



駅前の開発計画とかは特に無かったんでしょうね。これが西日暮里駅の駅前です。
道灌山通り。みちです。実用的。いやでもね、これは仕方ないですよ。乗り換えのための駅なんですから。
とはいえ、天下の山手線の駅として、開業から40年の月日が経っているわけです。西日暮里って、今、どうなのよ? ってのを、新駅ができる今こそ、確かめたい。

というわけで、早速本題。今日は、そのあたりを、西日暮里に住んでる人に聞いてきましたよ。



今回案内してくれるのは、生まれも育ちも西日暮里の熊井さんです。西日暮里大好き。

いい街ですよ。あーでも、飲み屋街とか最近再開発でどんどん無くなってるのは悲しい。昔のほうがいろいろありましたよ。


えー、そうなんだ。何もないところに突然駅ができて発展して今に至る、というシナリオを想定してやってきたんですけど。えー。昔のほうがあったんですか?


そう、むしろ昔のほうがありました。


困ります……


そう言われても困ります……







さて、ここで西日暮里について軽く説明しておきましょう。
西日暮里は日暮里、千駄木と三角形を成す位置にあり、それぞれ徒歩圏内です。
南は不忍池を端とする谷でして、ここの地名にも「谷中」というドンピシャなやつがあります。生姜が有名ですね。



谷にはいい街ができる、という定説のとおり、昔からこのあたりは静かで落ち着いていて、ここに居を構える文化人も多く居ました。
ちなみに、日暮里という地名は、かつては「新堀」だったのですが、一日中過ごしても飽きない里として「日暮里」という当て字が江戸時代から使われていたそうです。一日中過ごしても飽きない……今でいうとスパリゾートハワイアンズみたいなもんですかね。まあ、それはともかく、実は昔から「持ってる」エリアだったんですね。



昔はあった、っていう話で、例えばここの京成の高架下とかは、いい感じの飲み屋が並んでたんですけど、成田高速鉄道の開業のときに高架の耐震工事をやって、そのまま撤去されてしまいました。


あー、そうなんだ。アメ横の高架下も今やってますし、高架下建築がここに来て一気に無くなってきてますねー。



実は昭和のはじめ、ここには京成の駅があったんです。



道灌山通り駅。西日暮里駅ができる30年以上も前の話です。
しかし昭和18年に廃止。その生涯わずか9年。理由はWikipediaによれば「日暮里駅から徒歩圏内だから」だそうです。戦争も関係してるかもしれませんが、なんだその理由。作る前にわかるだろ……。
それはともかくとして、このあたりには西日暮里駅開業以前からにぎわいがあって、よろしくやっていたことが伺われるエピソードです。



この建築とか古そうですよね。実は古くからある繁華街であることを物語っています。



JRの高架下は今もお店が健在です。飲み屋が立ち並んでとてもにぎやか。西日暮里、今でも持ってますよ!
お店の入れ替わりはけっこうあるのだそう。






線路多すぎない? っていうか!!! 会話に不都合があるほど!!! 電車が!!! うるさいですね!!!


高架は日暮里・舎人ライナーと、京成線ですね。 特に京成がうるさいです。でも昔からこうだったんで。友達の家で遊んでても電車が来そうになると会話の途中でもみんな一回黙って、過ぎると何事もなかったかのように会話を再開します。


騒音に適応した子ども、やだなー。


でもそれも駅の東側だけで、あとで行きますけど西側は静かですよ。







この線路の密集度を見て! 西日暮里には山手線、京浜東北線、千代田線(と直通の常磐線)が乗り入れています。まさに交通の要所です。
あ、日暮里・舎人ライナーもありましたね。荒川を越えて、足立区を串刺しにするように運行する新交通システム。西日暮里、持ってるなあ。

日暮里・舎人ライナーって出来たの最近ですよね。


そうです、2008年に出来ました。これができたおかげでバスの混雑がすごく改善したんです


おっ、そうなんですね。巷では「都内一マイナーな路線」「日暮里・舎人ライナー不要説」みたいなのばっかり聞くので、地元民の意見は貴重だなあ。


日暮里・舎人ライナーは必要。


バスの話でちょっと気になってたことあるんですけど、西日暮里って、駅前ロータリーが無いじゃないですか。バスプールってどうしてるんですか?


バス停、ちょっと離れてるけどありますよ。


あ、そうなんですね。





山手線駅のバス停の佇まいではないな……。昔住んでた相鉄線のローカル駅のバス停がこんな感じですよ。






椅子が2個、しかも種類が違う。持ち寄ったんでしょうか。
確かに、このバス停が混雑したらすごくうざいな……。日暮里・舎人ライナーは正義ですね。




これが駅前で一番高いビルですかねー。西日暮里の109的なやつは虹がお洒落。


このビルは昔からずっとあります。中のお店も変わってないですよ多分。社交ダンスのドレスのお店とか……


社交ダンス?





あ、一番目立つビルの一番よさげなポジションがほんとに社交ダンスだ……


何故か知らないですけど、駅前に社交ダンス関連のお店が多いんですよ。









ほんとだ。気づかなかったけどよく見ると駅前の社交ダンス率がすごい。


理由は特にないそうなんですけど、多いんですよ。


じゃあ、西日暮里は社交ダンス盛んなんですかね。


どうなんでしょう……? あ、でもうちの姉はプロで、ググると名前出てきます。


え、すごいじゃないですか。ちなみに、ご家族でほかに社交ダンスやっている方は?


母がやってますね。


めちゃくちゃ盛んじゃんか。社交ダンス。ちなみにご家族は何人ですか?


5人です。


2/5がやってるじゃんか。めちゃくちゃ盛んじゃんか。






駅前の一角に、わりとおおっぴらにホテル街があったりします。
城北はホテル街のゾーニングがなぜかゆるい気がする。風俗店もちゃんと? あります。
個人的な意見ですが、このくらいゆるいほうが、街の「ゆがみ」が生まれて、おもしろい街になると思います。

西日暮里駅の東側は低地で、荒川が氾濫したらわりと終わります。


今ちょうどその荒川さんを見つけたんですけど、





氾濫する気満々ですね。


なかなかキャラが定着しないあら坊。



西日暮里駅東側だけでなく荒川区はだいたい低地で、実際に過去の台風では被害が出ています。
しかし西日暮里は、荒川区では唯一の高台を持っているんですって。



区のホームページにも、「西日暮里」と名指しで記載があります。西日暮里の優秀さがここでも出てしまいました。




さて、その高台は駅の西側。JRの高架をくぐります。

諏訪神社っていう神社があるんです。西日暮里の人はみんなこの神社が好きです。


みんな好き? 独裁政治の香りがしますね。






ここ諏訪神社に続く道なんですけど、このトンネルを抜けるとホントいい景色ですから。みんな好きな神社。





いまのところ、そのみんな好きとされる神社の香りはゼロですよ。大丈夫ですか?


このトンネルを抜けたらホントに! あとこのトンネルも昔よりは良くなったんですよ。昔は両脇にホームレスがずらーっと居て、神社行くの超怖かったんです。今は駐輪場になってます。









わー。いいですねー。


ここはJRのいろんな電車が通るので、撮り鉄の人にも人気スポットみたいですよ。






絶好のトレインビューから、諏訪神社はわりとすぐ。



新堀、谷中総鎮守の文字が見えます。新堀とは日暮里の古い呼び名です。ここらの一番えらい神様。





さっきまで電車の騒音の中を歩いてたのが嘘のようです。これは、西日暮里の人がみんな好きになるわ。
諏訪といえば信州ですが、やはり信州諏訪明神を勧請したものだそうです。創建は1205年とかなりの古さです。



近々お祭りがあるみたい。っていうか今日だ。



納涼踊り大会……これは、やっぱり、社交ダンスなんですかね。


普通の盆踊りですけど、いきなりタンゴとか掛かっても、わりとみんな対応できると思います。


めちゃくちゃ盛んじゃんか。






あとひとつ見せたいものがありまして。


富士見坂だって。





天気のいい日はここから富士山が見えるという。


あー。いい坂。こっちは谷中の谷ですね。






脇には、富士見坂の調子がめっちゃ良かった頃の写真が飾られています。
富士見坂、という名前自体はよくあるのですが、西日暮里の富士見坂は地上からちゃんと見える(見えた)富士見坂として、富士見坂ファンの間では有名な富士見坂なんです。残念ながら、今は見えないとされているそう。



こちらは2012年の写真。

このあたりから、ビルが建っちゃったんですね。


けっこう大胆に建てましたねえ。あのビルからはめっちゃ富士山見えるんだろうなあ。


富士見ビルですね。





眺望保全の呼びかけをしている。


この表紙は、完全にあのビルを見せしめにしてますね。


もう、ビルに富士山描いちゃえばいいんじゃない。銭湯のタイルみたいな感じで。






さて、もうちょっとだけぶらぶらしますよ。駅の西側は路地路地していて静かで楽しい。




ひまわり畑だそうですが、今7月なので、今ダメだと、ダメだろうな。




第一日暮里小学校だって。「日」と数字の相性が良すぎて、目が「第一日」をグルーピングしてしまう。面白くて何度も見ちゃう。目ってすごい。


ここは某子役が通ってたっていう噂の小学校です。


ところで小学校のわりにこう威圧感が無いというか、校舎の圧倒感が無いというか。


1学年1クラスしか無いですからね。小さいんですよ。子どもが少ないから。


そうなんですね。西日暮里は子どもが少ない。





ひぐらし門かあ。風情がある。学校七不思議に出てきそうだなー。ところで「ひぐらし」ってのは、日暮里の「ひぐらしの里」から来てるんですかね。


そうだと思います。この辺の人は、わりと「ひぐらし」って名前をつけがちです。


かっこいいからですかね。


かっこいいからだと思います。ちなみに「ひぐらし小学校」もあります。


あれ、さっき第一小学校だったから、第二、第三っていうナンバリングじゃないんだ?


第四と真土小が合併して「ひぐらし小学校」になって、ここが今勢力を拡大中です。


そういう国盗り合戦が繰り広げられているんですね、西日暮里では。


子どもが少ないから合同で運動会やるんですけど、ひぐらし小は圧倒的に強いんです。人数多いから人材が豊富。


信長の野望で終盤のシナリオの織田家みたいな感じですね。






いい高台でございました。坂をくだると西日暮里駅のホームが見えます。



ちなみにここの坂は安全横丁だって。絶対過去にここで何らかの事故が起こって戒めで命名したパターンだ……。




駅前の道灌山通りまで戻ってきました。駅の斜め向かいすぐに開成中学があります。東大合格者数がすごいとこ。
やはり、といってはアレですが、閑静な西側に存在します。道灌山通りをちょっと行くともう文京区に入ります。そこで気づいたのですが、西側はちょっと文京区の雰囲気なんですね。納得。


いや、いい街でございました。ザ・繁華街! みたいなところは無いんですけど、あるべくしてあるお店が元気なので楽しそうだし住みやすそう。山手線内なのに、ローカルな感じがする。


ローカル感は確かにありますね。家族経営の会社が多くて、それぞれ工程を受け持ったり、西日暮里内でぐるぐるお金が回っている感じがします。うちも運送屋やってますし。


わたし、西日暮里を完全に誤解してましたね。人の居ないところにぽっとできた駅じゃなくて、勝手によろしくやってた下町が、たまたま交通の要所になった感じなんですね。


どこ行くのにも便利ですし、みんなも住んだらいいと思います。




さてさて、品川・田町間の新駅からはじまり、ギューンと40年前の先輩新駅、西日暮里をぶらぶらしてまいりました。駅が出来るってのは確実に人の流れを変えるのですが、西日暮里に関しては、むしろ「変わらないもの」がたくさんあったような気がします。

品川・田町間は、どうなっていくんですかねえ。先に紹介した高さ1.5mの「高輪橋架道橋」は無くなってしまうという話があります。







これからあの界隈の景色はめちゃくちゃ変わるんでしょうか。まあでも、変わらないものもたくさんあって、それがまた、面白い風景を作っていくんだろうな、と思ったのでした。

あと全然関係ないですけど、西日暮里のドトールでこれ書いてたら、隣のおばさんが社交ダンス教室に遅刻の連絡電話をしていたので、やっぱり西日暮里は社交ダンスがめちゃくちゃ盛ん。


(おしまい)

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参考文献
山手線に新駅ができる本当の理由 / 市川宏雄
Wikipedia 道灌山通駅
荒川区
西日暮里富士見坂からの眺望の変遷
街並み変貌 消えた母校



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ヤスノリ

サンポー主宰。最近おちつきがある。

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