上野恩賜公園で日本伝統文化フェスタは本当にあったのか
- 更新日: 2018/02/28
祭りの有無に関係なく上る朝日
この連載は「せとゲノム」が祭りの翌日に顔を出し、本当に祭りが開催されたのか、どのような祭りだったのかを痕跡から推理します。
おはようございます。せとゲノムです。
本日は、2018年2月13日の早朝です。
上野恩賜公園に来ております。
2月の9日から12日にかけて、この場所で日本伝統文化フェスタというお祭りがあったと聞いて来ました。
しかし、本当に祭りなんてあったんでしょうか。
事前に10年分ほど読み込んだ台東区の地域誌『うえの』には、このお祭りの記載が一切ありませんでした。
おやおや?
地域のネタを血眼になって探すはずの地域紙が、ノータッチ?
こいつはどうも怪しいですね。
現地に赴いて、実際に祭りがあったのか調べてみましょう。
その前に!
今回の検証には、上野公園という土地ならではの注意点があります。
まずは、こちらの写真をご覧下さい。
剣です。ソード。
おそらく空気を入れて弟か妹をバコバコ殴るやつでしょう。
いつもならこれ、祭りの後の残り香としてカウントしていました。
ただ!
今回は、そうはいきません。
上野動物園近くの売店で買った可能性もあるからです。
上野公園という超メジャーな観光スポットは、他の場所よりも日常と非日常の境目が曖昧です。
普通に祭りで売ってそうなおもちゃも落ちています。
他の公園や神社のように、「日常離れしているから祭りで使ったものだろう」という判断基準だけでは通用しません。
経験に基づく読みが必要になってきます。
祭りの翌日に現れ続けて約1年。
私の目利きが問われるわけですね。
その辺りの判断も、併せて楽しんでもらえればと思います。
私としても、難易度が高いほど燃えるというものです。
さあ行きましょう。
明け方ですが、年配の方々は既に活動されています。
アクティブ。
竹の台噴水にやって来ました。
ここの大噴水は昭和30年代の公園整備の一環としてできた、当時の最新型噴水です。
『上野公園ものがたり』によると「88本のノズルから噴出す水は17分間に36通りの変化を見せ」るとのことです。
数えたことなかったですが、多彩ですね。
夜間は68個の投光器で照らし、その色彩の変化も39通りあります。
事前情報では、ここを中心にフェスタが行われていたらしいですが、屋台などの形跡はないですね。
一見祭りなんてなかったかに見えますが、果たして…。
不自然な土の残り方ですねえ。
例えば、屋台のような四角形のテントが急に撤去されたような、ね。
もちろん、これだけで祭りがあったなんて言うつもりはないですよ。
続けましょう。
福引券、でしょうか。
左端の漢字の形から、割引券ではないですよね。
福引だとすると、祭りのプレゼントコーナーで使われた可能性がありますね。
祭りがあるとすればですけど。
証拠が少ない場面で雄弁に語ってくれるのが、ゴミ箱です。
ただのゴミに見えますが…。
このトレーは、祭りでよく見る使い捨て容器ですね。
いか焼きや串ものなど、長細いものを置くのに便利です。
あっ、お面だ!
おかめですかね。
日本の伝統文化と言えば、おかめですもんね。
意外とあっさり祭りの証拠が見つかって、拍子抜けです。
念のため、裏返してみましょう。
ぎゃー!!
何これ。
日の出を見ながら、じっくり歩き回ります。
自然が豊かで気持ちいいです。
上野公園、明治3年の時点では医学校や病院が建てられる予定だったんですって。
それを、ボードウィンというオランダの軍医が「こんな自然が美しい場所なら公園にしなさい」と白紙に戻したんです。
ボードウィンが声を上げたからこそ、祭りの翌日に現れてウロウロすることもできるわけですね。
ありがとうございます。
芸術には目もくれず、ゴミを探しています。
小粒の氷。
ジュースなどに入れていたのでしょうか。
太めのストロー。
これもジュースの形跡を感じますね。
一周してしまいました。
これは、祭りがあったというには証拠不足ですね。
撤収しますかあ。
ん?
蛇口のところに何か書いてあるぞ。
すみません、祭りありました。
日本伝統文化フェスタは、2017年から年に3回ほど行われているお祭りです。
第一回は池袋、それ以降は全て上野恩賜公園で行われています。
日本の伝統文化が一度に楽しめるのが特徴で、忍者体験やコマ遊びといったコーナーがあります。
ご当地グルメの屋台も充実しているようです。
地域誌に取り上げられていないのは、去年始まったばかりだということや、運営団体が民間の会社だということに関係があるのかなと思いました。
引き続き、残り香を嗅いでいきましょう。
パンフレットを発見しました。
佐世保バーガーの出店を許したら、和の世界観崩れませんか?
日常ゴミと祭りゴミが入り混じっている。
ご当地グルメの文脈を踏まえると、黒豚フランクは祭りのものだと思うんですよね。
頑丈そうな串。
黒豚フランクでしょうか。
たこ焼きの容器ですね。
プラスチックの容器に紙をさらに敷いているのが、手厚い。
紙だけで渡すところもけっこうあるんですよね。
んー、これは祭りゴミでしょう。
多分、ビールか何かの屋台があったんじゃないかなと思われます。
見つかるのは、お酒に合う食べ物ばっかりですしね。
焼きとうもろこしですかね。
定番を押さえてあって安心します。
割り箸を突き刺して柄にしているのがワイルド。
発泡スチロールの箱かあ。
日常ゴミにも見えますが、祭りで使ったものっぽくもあります。
何となくですが、焼き鳥用の鶏肉とかを保存するのに使ったような、サイズ感なんですよねえ。
焼きそばの現物です。
この布テープは間違いなく、祭りのものです。
強度があって大活躍しますからね。
テントの位置が分かるように地面に貼ったのでしょう。
えー、メトロン星人だ。
祭りに関係したものかは、分かりませんねこれ。
円谷プロを伝統に含めるかどうかも微妙なラインです。
この袋は祭りでしょう。
飴類が入っていたと予想します。
かっこつけて英語で言わなくていいから。
黒豚フランクでしょ?
やったー!
大きい氷だー!
朝日に照らされて、本当に綺麗だなあ。
笹八というお店の、お手拭き。
調べてみたら、大正10年創業のおにぎり屋でした。
渋谷と浦和にしか店舗がないようなので、伝統文化フェスタのために出張してきた可能性があります。
諭吉のからあげは、大分のからあげ店のようです。
出張シリーズですね。
ここはフェスタのHPに記載があったため、祭りの食べ物で確定です。
クレープの袋。
売店のクレープなのか、祭りのクレープなのか、判別しづらいです。
上野公園全体で、噴水の周りにだけ複数見られたので、祭りのクレープかなあと判断しました。
ホットコーヒー400円。
今回で一番、祭りのものなのか周りのお店のものなのか悩みました。
400円という、微妙な値段。
2、3日しか使わない前提にも見える、ガムテープの貼り方。
かと思いきや、ラミネート加工で底上げしてある耐久力。
デザインのこだわりのなさから、やや祭り寄りに感じます。
インスタントライトですね。
複数落ちていたので、祭りのステージか何かに使ったのかもしれません。
「史上最大級の明るさ!!」「大閃光 極」という大げさなコピーが特徴的です。
まとめ
以上です。総じて、片付けのレベルは高かったです。
早朝でも人の往来が割と激しいことや、ホームレスの住む一角があることで、
祭りのセットを朝まで残しておけない事情もあったのでしょう。
上野公園という土地柄も相俟って、高難度の現場検証になりました。
上級者の方は是非。
最後に、帰りがけに上野の丸井ビルで見た温度だけお伝えしておきます。
2℃!
参考資料
『上野公園の歴史と史跡』1956 豊島寛彰 総合出版社
『上野公園とその付近』1962 豊島寛彰 芳洲書院
『こんなに面白い上野公園』1994 林 丈二、丹尾安典 新潮社
『上野公園ものがたり』1996 財団法人東京都公園協会
『日本伝統文化フェスタ』http://jtc-festa.com/(最終確認2018/2/14)