トンネルマニアと行く横須賀トンネル巡り ~JR横須賀線編~
- 更新日: 2018/09/27
横須賀はトンネルがたくさんある。
トンネルの風景、という写真集がある。
写真集団「岬」というグループが3年にわたり横須賀のトンネルを淡々と撮影したもので、もともとは神奈川新聞横須賀版の連載であったそう。
横須賀にある100近くのトンネルの写真と、短い説明が収められています。
横須賀というのはトンネルの街で、私設のトンネルを合わせると数はどうやら日本一らしい。なぜこんなにも数が多いのかというと、三浦海岸のすぐ後ろに三浦丘陵がせり出していて、谷戸に点々と街があるからだと。
本をめくると、いろんなトンネルがあることに気づきます。明治時代の手掘りから、軍事要塞のために作られたもの(そういえば横須賀は海軍の街でした)。
技術革新により扁平な形で成立しているもの。装飾が凝っているもの。
ところで、僕はその本をざっと読んで満足してしまい、リビングに置いていたのですが、それを小1の息子が見つけたんですね。
気がつくと、名前とか、長さとかを、全部暗記していて、潜ってみたいトンネルがある、みたいなことを言い出した。
親の目が届かないところで、トンネルマニアが誕生していた。暗く深い穴が育っていた。いいけど。
それで、僕たちはこの本に載っているトンネルのうち、グッとくるやつを選んで潜ることをしています。
帰ったら、絵にすることにしました。
トンネルへのアクセスは、基本的には車のほうが良いと思います。特に、長くて重厚でかっこいいトンネルは大山をぶっ通した車道であることが多い。
一方で、電車でトンネルを巡るのも良いものです。電車でしか見られないトンネルもありますし、たまたま駅近くにある車道のトンネルもあります。
ということで、今回は、JR横須賀線の駅から徒歩10分以内で体感できるもの、に絞った上で、トンネルマニアお薦めの穴を紹介することにします。
穴、とか呼んでみました。かっこいいかと思って。
横須賀線。
大船から鎌倉、逗子を経て横須賀、久里浜までを繋ぐローカルな電車なのだけど、湘南新宿ラインや総武線に乗り入れているために横浜駅でも非常に見かける、クリーム色と青色の電車。
10年以上前、毎週のように横須賀線に乗っていたことがあって、北鎌倉にお熱だったのでした。北鎌倉には有名な円覚寺がある。でも僕は円覚寺よりも東慶寺派です。奧にあまり人が来ないところがあって、そこに座って、だらだらするだけの日がよくあったんだけど、本当にだらだらするだけだったので、そういえば僕は東慶寺のことを何も知らない。いま調べたら東慶寺は円覚寺派だった。僕は円覚寺よりも東慶寺派で、東慶寺は円覚寺派だった。円覚寺が僕派なら三角関係が成立する。そうであれ!
そんなわけで、北鎌倉までは来たことはあったんだけど、トンネルのことは全く気にしたことがなかった。横浜から北鎌倉までのトンネルといえば、戸塚のあたりに品濃トンネルと、あれえ、あとあったっけ、まあ、そのくらいしかない(東海道線では戸塚区のこのあたりに清水谷戸トンネルという現役最古の有名なトンネルがあるんだって)。
なので、横須賀線ってそんなトンネルあったっけかな、と思っていたのですが、実は、北鎌倉から先、僕が殆ど行ったことなかったところが、トンネルの宝庫だったのでした。
うちのトンネルマニア一押しの駅だし、多分世のトンネルマニアも田浦駅は挙げるんじゃないか。それか逆にベタで挙げないのかしら。でも一周回ってやっぱあれいいよね、みたいな感じで挙げる気がする。カレーでいうところのデリーとかボンディみたいな、いわゆる殿堂入り。
そこまでトンネルマニアでもない僕でも良さが分かるこの奇跡の駅は、なんとホームがトンネルに挟まれている。
横浜側は田浦トンネル、横須賀側は七釜(しっかま)トンネル。その間にホームがある。
こちらはホーム横浜側の田浦トンネル。鼻の穴みたい。
横須賀線開通と同じ明治22年に出来た。レンガが古い。長いレンガだけ、短いレンガだけ、と1段ずつ使うイギリス積み。
開通当時より車両が増えたから、入りきらなくて1車両トンネルに突っ込んでおりドアが開かない。不便だけど、両サイドが山だから、ホームの拡張ができない。こういうのを「詰んだ」と言うべき。
詰んでいるし限界である。良い。
反対のこちらはホーム横須賀側の七釜トンネル。なんか増えてる。
上りと下りと、一番左の今使われていないやつは、戦時中に作られた運搬用の引き込み線なんだそう。
開通は右から明治、大正、昭和。明治のは馬蹄型だけど、昭和のは今っぽい半円のトンネルになっている。変遷が一目で分かるという意味でも素晴らしい駅。
さて、1時間くらいホームで粘ったあと、トンネルマニアにここのお薦めポイントを聞いてみました。
マニア「電車のドアが開かないのがおもしろい」
そこか。
これらも素晴らしいトンネルなんだけど、今回は降りて体感できるトンネルを挙げたいのですっ飛ばす。ポッポー。
そしてJR横須賀駅。
駅前すぐに港が広がる。護衛艦が見えます。でも今日は海ではなくて。
反対側の山です。
ホームから、横須賀線のトンネルと、あと右の奧、車道のトンネルが見えるの分かりますかねえ。
これが、ホームから見えた横須賀線の逸見(へみ)トンネル。昭和19年開通。実に短くてかわいいトンネルなのです。
息子も僕も、かわいい以上の情報を持っているわけではないので「かわいい~」と言います。かわいいのだから仕方が無い。
ねんのため、トンネルマニアにここのお薦めポイントを聞いてみました。
マニア「かわいい」
はい。
踏切雀が居た。
踏切を越えると横須賀街道に出る。
戦前から栄えている街だからか、ロードサイドのお店も貫禄がある。ビッグボーイとかない。
ホームから見えた奥のほうのトンネルです。
上りと下りで穴が違うだけでなくて、なんかちょっとずれてるのがいい。実はこの2つ、作られた時期が違うんですね。
上りは横須賀隧道。ちなみに「隧道」という言葉には墓穴へ通じる道という意味もあるので、昭和40年くらいからだんだん使われなくなっているらしい。
こちらは昭和20年開通。もともとはこちらだけで運用していたのですが、渋滞が酷くてもう一個作った。
それで、下り側には「新横須賀隧道」と書いてある。これ1990年開通なので、一般的に隧道と書かれなくなった時代だと思うんだけど、そこは横須賀隧道に引っ張られたんでしょうか。
こちらは「新」のほう。あんまり、車のトンネル歩かないから新鮮だな。ブーンとか言ったほうがいい?
ヒビが入っているのをチョークで可視化している。
ああいうヒビの入り方、亀ヒビっていうんだ。
なんか消化器曲がってない?
非常電話も曲がってた。
地面に対して平行なのでは、ともちょっと思ったんだけど、ここはゆるい上り坂で、多分そういうことでもない。
そろそろ出口。
検査もラストスパート。めっちゃいろいろ書いてあるけど大丈夫でしょうか。
遠くから見るとすごいな。魔界村かなんかのダンジョンに見えてくる。
一番上の家にボスが居る。
ちょっと登ってみるかー、ということになった。
この角度からトンネル見たこと無いかも。
そういえば、横須賀トンネルは花の模様がいいよね。上りと下りで花の種類も違う。
ちょっとした参拝じゃないですか。
あの家詣でじゃないですか。
この山だけでなく、あちらにも山が見える。
これはトンネル大国にもなる。
こんどは古い方のトンネルから駅のほうへ戻る。
やっぱりちょっと趣違うねえ。
あと、こっちはなんか、落書きが多いな。
ただこれ、排気ガスの汚れがタイルについたやつを、指で拭き取る感じで書かれた落書きなので、ワル度は低い。
むしろ「うんち」という形でタイルを掃除した、というべきかもしれない。
みんなお掃除が好きだな。
こんな感じで、横須賀駅徒歩1分で二度楽しめる新旧横須賀トンネル。良いです。
さて、トンネルマニアにここのお薦めポイントを伺ってみましょう。
マニア「2個ある」
そうね。2個あるね。
横須賀から衣笠のあいだに、横須賀線で一番長い、横須賀トンネルがあります。
ここを通るたびにトンネルマニアが動画を撮るので、同じ動画ばっかり増える上にiPhoneがパンパンです。
それを抜けると衣笠です。
三浦半島というのは山深いので、だいたい海岸線沿いに街があるんだけど、衣笠ってのはかなり奧まった土地です。
そんなところで突然拓けた街がよろしくやってる様が面白くて、僕はなんとなく多摩センターを思い浮かべてしまう。こちらは全然ニュータウンではなくてわりと歴史ある街なので全然違うんだけど。突然のびっくりシティ感が。伝わるかしら。
綺麗なマンションや住宅街も多い。
アーケード街もある。衣笠大通り。
この街は京急が完全に掌握している。
全然関係ないけど、中央の禁煙が分身の術使った感じになってた。
さて、ここいらは山であるので、実は衣笠からアクセスできるトンネルはわりとある。この道をずっといくと「池上十字路」というところに出て、そこらは四方八方にトンネルがあるトンネル確変エリアなのですが、今回のテーマであるところの「駅から歩ける」を考慮して、一番近くの「大明寺トンネル」を目指そうと思います。
平作川が流れている。
これのおかげでこのあたりは山にかかわらず平地があって、昔から人が住んでいたのだそう。
パン屋もある。ぱんく~る。
たしかに、パンが来ている。
メニュー直接壁に書いちゃうスタイル。
ラーメンの未来は変わる。
強い言葉。
すごい繁盛してる弁当屋があった。
そんなこんなで金谷の大明寺に着いた。
これの脇にあるから大明寺トンネル。横須賀のトンネルの名前は基本的には地名からとっていて、寺の名前がついているのはこれだけ。
表面のこのレンガの感じは、横須賀では実はそんなに珍しくない。
二重の煉瓦アーチ。その外側に境目を作って、あとは普通に積む。
ただしこれ、見て分かるとおり、トンネル内部は煉瓦ではなくてコンクリなので、お飾りです。
近辺にある新池上トンネルや新坂本トンネルなどもこんな感じで、どれが大明寺トンネルか当てるクイズがあったら悩む。
唯一特徴あるとすれば、歩行者注意を促す表示器が上についている。
車乗っていてこんなとこ見るか大いに疑問だけど。あとまぶしくてよく見えない。
表示器はここで制御している。
これちゃんとセンサーで居るかどうか見て表示してるんだろうか。なんかずっと点滅してた気がする。
では。
照明はトンネルごとにいろいろ違っていて面白い。
よーく見ると天井がごちゃごちゃしていて、汚部屋? って思うことが多いんだけど、大明寺はとてもスッキリしている。煩悩が枯れている。
上に一列だけの照明ってこともあるかな。
照明が上に一列だけなので、引き込む電線も上から一本だけで、それで、正面からの佇まいもシンプルな美しさが保たれている。
これが二列だと、こう、斜めに這わせる必要があって、どうしても目立っちゃう。
もっともこれ、横須賀のトンネルはレンガで配線が目立つっていう可能性ある。コンクリだったらそこまで目立たない。
大明寺は落書きが一切ない。煩悩が枯れている。
そのうち、模様がエジプト壁画に見えてきた。
これは、異民族を戦車で駆逐するファラオ。
ここも調査をやってる。亀裂けっこう入ってるな。
さっきの横須賀トンネルも相当亀裂入ってたっけ。
そういえば、トコトンやさしいトンネルの本(日刊工業新聞社)の力学の説明のところで
とあった。崩落します! 一般に! わー!
まあ、砂場のトンネルの儚さを考えれば納得できる。
いろいろな技術でだましだまし穴を維持しているけれど、放っておけばそのうち塞がれる。
刹那の道と考えると、なんとなく、潜っておきたくなる。
そんなトンネル巡り。
最後に、トンネルマニアに大明寺トンネルのお勧めポイントを伺いましょう。
マニア「表示器がある」
そう。そうなのよ。表示器がね。
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参考資料
トンネルの風景
横須賀市追浜がトンネルだらけなのはなぜ?
http://hamarepo.com/story.php?story_id=5230
トコトンやさしいトンネルの本 / 土門剛・三浦基弘
トンネル工法の”なぜ”を科学する / 大成建設
写真集団「岬」というグループが3年にわたり横須賀のトンネルを淡々と撮影したもので、もともとは神奈川新聞横須賀版の連載であったそう。
横須賀にある100近くのトンネルの写真と、短い説明が収められています。
横須賀というのはトンネルの街で、私設のトンネルを合わせると数はどうやら日本一らしい。なぜこんなにも数が多いのかというと、三浦海岸のすぐ後ろに三浦丘陵がせり出していて、谷戸に点々と街があるからだと。
本をめくると、いろんなトンネルがあることに気づきます。明治時代の手掘りから、軍事要塞のために作られたもの(そういえば横須賀は海軍の街でした)。
技術革新により扁平な形で成立しているもの。装飾が凝っているもの。
ところで、僕はその本をざっと読んで満足してしまい、リビングに置いていたのですが、それを小1の息子が見つけたんですね。
気がつくと、名前とか、長さとかを、全部暗記していて、潜ってみたいトンネルがある、みたいなことを言い出した。
親の目が届かないところで、トンネルマニアが誕生していた。暗く深い穴が育っていた。いいけど。
それで、僕たちはこの本に載っているトンネルのうち、グッとくるやつを選んで潜ることをしています。
帰ったら、絵にすることにしました。
小さなトンネルマニアが不定期開催する「隧道会」では、グッとくるトンネルのスケッチと気づいたことを描きます。 pic.twitter.com/7j0UBG0FfO
— ヤスノリ (@yasunori) 2018年8月16日
トンネルへのアクセスは、基本的には車のほうが良いと思います。特に、長くて重厚でかっこいいトンネルは大山をぶっ通した車道であることが多い。
一方で、電車でトンネルを巡るのも良いものです。電車でしか見られないトンネルもありますし、たまたま駅近くにある車道のトンネルもあります。
ということで、今回は、JR横須賀線の駅から徒歩10分以内で体感できるもの、に絞った上で、トンネルマニアお薦めの穴を紹介することにします。
穴、とか呼んでみました。かっこいいかと思って。
横須賀線のこと
横須賀線。
大船から鎌倉、逗子を経て横須賀、久里浜までを繋ぐローカルな電車なのだけど、湘南新宿ラインや総武線に乗り入れているために横浜駅でも非常に見かける、クリーム色と青色の電車。
10年以上前、毎週のように横須賀線に乗っていたことがあって、北鎌倉にお熱だったのでした。北鎌倉には有名な円覚寺がある。でも僕は円覚寺よりも東慶寺派です。奧にあまり人が来ないところがあって、そこに座って、だらだらするだけの日がよくあったんだけど、本当にだらだらするだけだったので、そういえば僕は東慶寺のことを何も知らない。いま調べたら東慶寺は円覚寺派だった。僕は円覚寺よりも東慶寺派で、東慶寺は円覚寺派だった。円覚寺が僕派なら三角関係が成立する。そうであれ!
そんなわけで、北鎌倉までは来たことはあったんだけど、トンネルのことは全く気にしたことがなかった。横浜から北鎌倉までのトンネルといえば、戸塚のあたりに品濃トンネルと、あれえ、あとあったっけ、まあ、そのくらいしかない(東海道線では戸塚区のこのあたりに清水谷戸トンネルという現役最古の有名なトンネルがあるんだって)。
なので、横須賀線ってそんなトンネルあったっけかな、と思っていたのですが、実は、北鎌倉から先、僕が殆ど行ったことなかったところが、トンネルの宝庫だったのでした。
田浦駅の田浦トンネルと七釜トンネル
まずは逗子を越えて田浦駅まで来た。うちのトンネルマニア一押しの駅だし、多分世のトンネルマニアも田浦駅は挙げるんじゃないか。それか逆にベタで挙げないのかしら。でも一周回ってやっぱあれいいよね、みたいな感じで挙げる気がする。カレーでいうところのデリーとかボンディみたいな、いわゆる殿堂入り。
そこまでトンネルマニアでもない僕でも良さが分かるこの奇跡の駅は、なんとホームがトンネルに挟まれている。
横浜側は田浦トンネル、横須賀側は七釜(しっかま)トンネル。その間にホームがある。
こちらはホーム横浜側の田浦トンネル。鼻の穴みたい。
横須賀線開通と同じ明治22年に出来た。レンガが古い。長いレンガだけ、短いレンガだけ、と1段ずつ使うイギリス積み。
開通当時より車両が増えたから、入りきらなくて1車両トンネルに突っ込んでおりドアが開かない。不便だけど、両サイドが山だから、ホームの拡張ができない。こういうのを「詰んだ」と言うべき。
詰んでいるし限界である。良い。
反対のこちらはホーム横須賀側の七釜トンネル。なんか増えてる。
上りと下りと、一番左の今使われていないやつは、戦時中に作られた運搬用の引き込み線なんだそう。
開通は右から明治、大正、昭和。明治のは馬蹄型だけど、昭和のは今っぽい半円のトンネルになっている。変遷が一目で分かるという意味でも素晴らしい駅。
さて、1時間くらいホームで粘ったあと、トンネルマニアにここのお薦めポイントを聞いてみました。
マニア「電車のドアが開かないのがおもしろい」
そこか。
横須賀駅からの新旧横須賀トンネル
そこから再び横須賀線に乗る。田浦から横須賀駅までの間に、長浦トンネル、田ノ浦トンネル、吉倉トンネルと続く。これらも素晴らしいトンネルなんだけど、今回は降りて体感できるトンネルを挙げたいのですっ飛ばす。ポッポー。
そしてJR横須賀駅。
駅前すぐに港が広がる。護衛艦が見えます。でも今日は海ではなくて。
反対側の山です。
ホームから、横須賀線のトンネルと、あと右の奧、車道のトンネルが見えるの分かりますかねえ。
これが、ホームから見えた横須賀線の逸見(へみ)トンネル。昭和19年開通。実に短くてかわいいトンネルなのです。
息子も僕も、かわいい以上の情報を持っているわけではないので「かわいい~」と言います。かわいいのだから仕方が無い。
ねんのため、トンネルマニアにここのお薦めポイントを聞いてみました。
マニア「かわいい」
はい。
踏切雀が居た。
踏切を越えると横須賀街道に出る。
戦前から栄えている街だからか、ロードサイドのお店も貫禄がある。ビッグボーイとかない。
ホームから見えた奥のほうのトンネルです。
上りと下りで穴が違うだけでなくて、なんかちょっとずれてるのがいい。実はこの2つ、作られた時期が違うんですね。
上りは横須賀隧道。ちなみに「隧道」という言葉には墓穴へ通じる道という意味もあるので、昭和40年くらいからだんだん使われなくなっているらしい。
こちらは昭和20年開通。もともとはこちらだけで運用していたのですが、渋滞が酷くてもう一個作った。
それで、下り側には「新横須賀隧道」と書いてある。これ1990年開通なので、一般的に隧道と書かれなくなった時代だと思うんだけど、そこは横須賀隧道に引っ張られたんでしょうか。
こちらは「新」のほう。あんまり、車のトンネル歩かないから新鮮だな。ブーンとか言ったほうがいい?
ヒビが入っているのをチョークで可視化している。
ああいうヒビの入り方、亀ヒビっていうんだ。
なんか消化器曲がってない?
非常電話も曲がってた。
地面に対して平行なのでは、ともちょっと思ったんだけど、ここはゆるい上り坂で、多分そういうことでもない。
そろそろ出口。
検査もラストスパート。めっちゃいろいろ書いてあるけど大丈夫でしょうか。
遠くから見るとすごいな。魔界村かなんかのダンジョンに見えてくる。
一番上の家にボスが居る。
ちょっと登ってみるかー、ということになった。
この角度からトンネル見たこと無いかも。
そういえば、横須賀トンネルは花の模様がいいよね。上りと下りで花の種類も違う。
ちょっとした参拝じゃないですか。
あの家詣でじゃないですか。
この山だけでなく、あちらにも山が見える。
これはトンネル大国にもなる。
こんどは古い方のトンネルから駅のほうへ戻る。
やっぱりちょっと趣違うねえ。
あと、こっちはなんか、落書きが多いな。
ただこれ、排気ガスの汚れがタイルについたやつを、指で拭き取る感じで書かれた落書きなので、ワル度は低い。
むしろ「うんち」という形でタイルを掃除した、というべきかもしれない。
みんなお掃除が好きだな。
こんな感じで、横須賀駅徒歩1分で二度楽しめる新旧横須賀トンネル。良いです。
さて、トンネルマニアにここのお薦めポイントを伺ってみましょう。
マニア「2個ある」
そうね。2個あるね。
衣笠駅の大明寺トンネル
横須賀から衣笠のあいだに、横須賀線で一番長い、横須賀トンネルがあります。
ここを通るたびにトンネルマニアが動画を撮るので、同じ動画ばっかり増える上にiPhoneがパンパンです。
それを抜けると衣笠です。
三浦半島というのは山深いので、だいたい海岸線沿いに街があるんだけど、衣笠ってのはかなり奧まった土地です。
そんなところで突然拓けた街がよろしくやってる様が面白くて、僕はなんとなく多摩センターを思い浮かべてしまう。こちらは全然ニュータウンではなくてわりと歴史ある街なので全然違うんだけど。突然のびっくりシティ感が。伝わるかしら。
綺麗なマンションや住宅街も多い。
アーケード街もある。衣笠大通り。
この街は京急が完全に掌握している。
全然関係ないけど、中央の禁煙が分身の術使った感じになってた。
さて、ここいらは山であるので、実は衣笠からアクセスできるトンネルはわりとある。この道をずっといくと「池上十字路」というところに出て、そこらは四方八方にトンネルがあるトンネル確変エリアなのですが、今回のテーマであるところの「駅から歩ける」を考慮して、一番近くの「大明寺トンネル」を目指そうと思います。
平作川が流れている。
これのおかげでこのあたりは山にかかわらず平地があって、昔から人が住んでいたのだそう。
パン屋もある。ぱんく~る。
たしかに、パンが来ている。
メニュー直接壁に書いちゃうスタイル。
ラーメンの未来は変わる。
強い言葉。
すごい繁盛してる弁当屋があった。
そんなこんなで金谷の大明寺に着いた。
これの脇にあるから大明寺トンネル。横須賀のトンネルの名前は基本的には地名からとっていて、寺の名前がついているのはこれだけ。
表面のこのレンガの感じは、横須賀では実はそんなに珍しくない。
二重の煉瓦アーチ。その外側に境目を作って、あとは普通に積む。
ただしこれ、見て分かるとおり、トンネル内部は煉瓦ではなくてコンクリなので、お飾りです。
近辺にある新池上トンネルや新坂本トンネルなどもこんな感じで、どれが大明寺トンネルか当てるクイズがあったら悩む。
唯一特徴あるとすれば、歩行者注意を促す表示器が上についている。
車乗っていてこんなとこ見るか大いに疑問だけど。あとまぶしくてよく見えない。
表示器はここで制御している。
これちゃんとセンサーで居るかどうか見て表示してるんだろうか。なんかずっと点滅してた気がする。
では。
照明はトンネルごとにいろいろ違っていて面白い。
よーく見ると天井がごちゃごちゃしていて、汚部屋? って思うことが多いんだけど、大明寺はとてもスッキリしている。煩悩が枯れている。
上に一列だけの照明ってこともあるかな。
照明が上に一列だけなので、引き込む電線も上から一本だけで、それで、正面からの佇まいもシンプルな美しさが保たれている。
これが二列だと、こう、斜めに這わせる必要があって、どうしても目立っちゃう。
もっともこれ、横須賀のトンネルはレンガで配線が目立つっていう可能性ある。コンクリだったらそこまで目立たない。
大明寺は落書きが一切ない。煩悩が枯れている。
そのうち、模様がエジプト壁画に見えてきた。
これは、異民族を戦車で駆逐するファラオ。
ここも調査をやってる。亀裂けっこう入ってるな。
さっきの横須賀トンネルも相当亀裂入ってたっけ。
そういえば、トコトンやさしいトンネルの本(日刊工業新聞社)の力学の説明のところで
ある時間経過すると一般にトンネルは崩落します。
とあった。崩落します! 一般に! わー!
まあ、砂場のトンネルの儚さを考えれば納得できる。
いろいろな技術でだましだまし穴を維持しているけれど、放っておけばそのうち塞がれる。
刹那の道と考えると、なんとなく、潜っておきたくなる。
そんなトンネル巡り。
最後に、トンネルマニアに大明寺トンネルのお勧めポイントを伺いましょう。
マニア「表示器がある」
そう。そうなのよ。表示器がね。
---
参考資料
トンネルの風景
横須賀市追浜がトンネルだらけなのはなぜ?
http://hamarepo.com/story.php?story_id=5230
トコトンやさしいトンネルの本 / 土門剛・三浦基弘
トンネル工法の”なぜ”を科学する / 大成建設